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NARITAI

経済学・経済政策

重要

費用関数

固定費、可変費、平均費用、限界費用、損益分岐を扱う。

この章で覚えておきたいこと

費用関数で固定費、可変費、平均費用、限界費用をつなげて見る図解

費用関数は、ミクロ経済学の中でも「式で計算する問題」と「図で読み取る問題」が両方出る重要論点です。最初に、次の対応を押さえます。

  • 総費用は、固定費用と可変費用の合計です。
  • 固定費用は、生産量がゼロでも発生する費用です。
  • 可変費用は、生産量に応じて増減する費用です。
  • 平均費用は AC = TC / Q、平均可変費用は AVC = VC / Q です。
  • 限界費用は、追加1単位の生産で増える費用です。式では総費用を微分し、図では総費用曲線の接線の傾きで読みます。
  • 総費用曲線の縦軸切片は固定費用です。
  • 原点から総費用曲線へ引いた直線の傾きは平均費用です。
  • 固定費用の高さから総費用曲線へ引いた直線の傾きは平均可変費用です。
  • 平均費用や平均可変費用が最小になる点では、それぞれ限界費用と一致します。
  • 短期では、固定費用は生産量を変えても減りません。操業停止や面積図では、この点がひっかけになります。

試験では、固定費用を平均可変費用に入れてしまう、原点からの傾きを限界費用と読む、平均費用の最小点を限界費用の最小点と混同する、といった誤りがよく出ます。

基本知識

総費用は固定費用と可変費用に分かれる

総費用を固定費用と可変費用に分け、固定費用が総費用曲線の縦軸切片になることを示す図解

総費用 TC は、固定費用 FC と可変費用 VC の合計です。

TC = FC + VC

固定費用は、工場の賃料や設備費のように、短期には生産量に関係なく発生する費用です。生産量がゼロでも発生するので、総費用曲線では縦軸切片として表れます。

可変費用は、原材料費や時間外労務費のように、生産量に応じて変わる費用です。生産量を増やすほど、可変費用は増えていきます。

費用関数が TC = 224 + 6x - 2x^2 + x^3 のように与えられたら、生産量に依存しない定数項 224 が固定費用です。残りの 6x - 2x^2 + x^3 が可変費用です。

平均費用、平均可変費用、平均固定費用

AC、AVC、AFCの式とACとAVCの差が生産量の増加で縮むことを示す図解

平均費用は、総費用を生産量で割ったものです。

AC = TC / Q

平均可変費用は、可変費用だけを生産量で割ったものです。

AVC = VC / Q

平均固定費用は、固定費用を生産量で割ったものです。

AFC = FC / Q

この3つの関係は、次のように整理できます。

AC = AFC + AVC

固定費用がある限り、平均費用は平均可変費用より大きくなります。生産量が増えると AFC = FC / Q は小さくなるため、ACAVC の差はしだいに縮まります。ただし、固定費用がゼロでない限り、両者が完全に一致するわけではありません。

限界費用は追加1単位の費用

限界費用 MC は、生産量を1単位増やしたときに総費用がどれだけ増えるかを表します。

式で費用関数が与えられた場合、限界費用は総費用を生産量で微分して求めます。

MC = dTC / dQ

たとえば、TC = X^3 - 2X^2 + 6X + 10 なら、限界費用は次のようになります。

MC = 3X^2 - 4X + 6

固定費用の定数項は、微分するとゼロになります。したがって、平均固定費用が下がることと、限界費用が下がることは別の話です。固定費用は限界費用を直接動かしません

総費用曲線の図で読む3つの傾き

総費用曲線で接線の傾き、原点からの傾き、固定費用の高さからの傾きを読み分ける図解

総費用曲線では、どの線の傾きを見ているかで意味が変わります。

  • 総費用曲線上の点における接線の傾きは、限界費用です。
  • 原点から総費用曲線上の点へ引いた直線の傾きは、平均費用です。
  • 固定費用の高さから総費用曲線上の点へ引いた直線の傾きは、平均可変費用です。

ここは図形問題で最も狙われます。原点から点を結ぶ直線を見ているのか、曲線そのものの接線を見ているのかを、必ず分けて読みます。

また、総費用曲線ではなく可変費用曲線上の点を見ている場合、原点からその点へ引いた直線の傾きは VC / Q なので平均可変費用になります。どの曲線上の点かを確認することが重要です。

平均費用と限界費用の関係

限界費用が平均費用を下から上へ横切るところで平均費用が最小になる図解

平均費用は、限界費用との位置関係で上がったり下がったりします。

  • MC < AC なら、平均費用は低下します。
  • MC > AC なら、平均費用は上昇します。
  • MC = AC となる点で、平均費用は最小になります。

平均可変費用も同じ考え方です。

  • MC < AVC なら、平均可変費用は低下します。
  • MC > AVC なら、平均可変費用は上昇します。
  • MC = AVC となる点で、平均可変費用は最小になります。

注意したいのは、平均費用の最小点は限界費用の最小点ではないことです。限界費用が最小になった後、限界費用が上昇して平均費用と交わるところで、平均費用が最小になります。

平均可変費用の最小点と平均費用の最小点

MCとAVC、MCとACの交点から操業停止点と損益分岐点を読み分ける図解

固定費用がある短期の費用曲線では、平均可変費用の最小点は、平均費用の最小点より左側、つまり少ない生産量のところに現れやすいです。

理由は、平均費用には平均固定費用が含まれるからです。生産量が増えると平均固定費用が薄まるため、平均費用は平均可変費用より遅れて最小になります。

図で総費用曲線が与えられた場合は、次のように読みます。

  • 固定費用の高さから引いた接線の接点は、平均可変費用の最小点です。
  • 原点から引いた接線の接点は、平均費用の最小点です。

2015年、2023年第1回、2025年の問題では、この対応が繰り返し問われています。

操業停止点と損益分岐点

価格と平均費用、平均可変費用を比べて操業継続と停止を判断する図解

短期の完全競争企業では、価格と平均費用・平均可変費用の位置関係で、黒字、赤字操業、操業停止を判断します。

  • P > AC なら、利潤はプラスです。
  • AC > P > AVC なら、赤字でも操業を続けることがあります。
  • P < AVC なら、操業を停止します。

操業停止点は、平均可変費用の最小点に対応します。価格が最小平均可変費用を下回ると、操業しても可変費用すら回収できないため、停止した方が損失を抑えられます。

損益分岐点は、平均費用の最小点に対応します。価格が最小平均費用を上回れば、固定費用も含めた総費用を回収できます。

操業停止点と損益分岐点は、どちらも重要ですが、基準にする平均費用が違います。停止は AVC、損益分岐は ACです。

費用関数の計算手順

費用関数から固定費、可変費、平均費用、限界費用を順に求める図解

費用関数の計算問題では、次の順番で処理します。

  1. 定数項を固定費用として分けます。
  2. 生産量に依存する部分を可変費用として取り出します。
  3. 平均費用を問われたら、総費用を生産量で割ります。
  4. 平均可変費用を問われたら、可変費用だけを生産量で割ります。
  5. 限界費用を問われたら、総費用を微分します。
  6. 操業停止点を問われたら、平均可変費用の最小値を求めます。

たとえば、TC = X^3 - 2X^2 + 6X + 10 の場合、固定費用は 10、可変費用は X^3 - 2X^2 + 6X です。

AVC = X^2 - 2X + 6

MC = 3X^2 - 4X + 6

このように、同じ費用関数でも、割るのか、微分するのか、固定費用を除くのかで答えが変わります。

面積で読む総収入、可変費用、利潤

価格線と限界費用曲線の面積から総収入、可変費用、固定費用と利潤の原資を読む図解

価格線 P と限界費用曲線 MC の図では、面積で総収入や可変費用を読む問題が出ます。

総収入は、価格と生産量の積です。

TR = P × Q

図では、価格線の下にできる長方形全体が総収入です。一部の面積だけを見て総収入としないように注意します。

可変費用は、生産量をゼロからその数量まで増やす間の限界費用の積み上げとして読めます。つまり、限界費用曲線の下側の面積が可変費用に対応します。

そのため、価格線の下の総収入から、限界費用曲線の下の可変費用を差し引いた残りは、固定費用と利潤をまかなう部分になります。

完全競争企業では、価格と限界費用が一致するところまで生産するのが基本です。その数量を超えて、MC > P の領域で増産すると、追加1単位ごとに費用が収入を上回り、利潤は減ります。

費用逓増と費用逓減の読み方

生産量が増えると追加費用が増える場合と減る場合を曲線の傾きで読む図解

総費用曲線の傾きは限界費用です。したがって、総費用曲線の傾きが小さくなっている局面では、限界費用は低下しています。総費用曲線の傾きが大きくなっている局面では、限界費用は上昇しています。

費用逓減・費用逓増という言葉が出たら、費用の総額が減るかどうかではなく、追加費用の増え方を見ます。

  • 傾きが小さくなる局面は、限界費用が逓減しています。
  • 傾きが大きくなる局面は、限界費用が逓増しています。

2018年の図形問題では、この向きを逆に読ませる選択肢が出ています。曲線が右上がりだから費用逓増、と単純に決めず、傾きの変化を確認します。

この章のまとめ

費用関数で固定費と可変費を分け、平均と限界を読み分けるまとめ図

費用関数は、まず固定費用・可変費用・総費用を分けてから、平均と限界を読みます。式の問題では「割るのか、微分するのか」、図の問題では「接線の傾きか、原点からの傾きか」を確認します。

  • 総費用 = 固定費用 + 可変費用です。
  • 総費用曲線の縦軸切片は固定費用です。
  • 平均費用は TC / Q、平均可変費用は VC / Q です。
  • 限界費用は総費用の増分であり、式では微分、図では接線の傾きで読みます。
  • 原点から総費用曲線へ引いた直線の傾きは平均費用です。
  • 固定費用の高さから総費用曲線へ引いた直線の傾きは平均可変費用です。
  • 平均費用の最小点では MC = AC、平均可変費用の最小点では MC = AVC が成り立ちます。
  • 平均費用の最小点は、限界費用の最小点とは別です。
  • 操業停止点は最小平均可変費用、損益分岐点は最小平均費用で判断します。
  • 短期の固定費用は、生産量を減らしても消えません。
  • 価格線と限界費用曲線の面積図では、総収入は価格線下の長方形全体、可変費用は限界費用の積み上げとして読みます。

最後に、選択肢を読むときは次の順番で確認します。

  1. 固定費用を平均可変費用に混ぜていないか。
  2. 接線の傾きと原点からの傾きを取り違えていないか。
  3. MC = ACMC = AVC のどちらを見ているか。
  4. 平均費用の最小点と限界費用の最小点を混同していないか。
  5. 固定費用を、生産量に応じて減る費用として扱っていないか。

一次試験過去問での出方

2007年 第13問 設問1・設問2: 費用関数から平均可変費用と限界費用を計算する問題。定数項を固定費用として除き、AVC と MC を分けて求める。
2013年 第16問: TC = 224 + 6x - 2x^2 + x^3 から、限界費用と平均可変費用を選ぶ問題。固定費用を AVC に入れないことが重要でした。
2015年 第15問: 総費用曲線に原点から引いた接線と、固定費用の高さから引いた接線を読み分ける問題。前者は平均費用、後者は平均可変費用に対応します。
2017年 第14問: 総費用曲線から固定費用、可変費用、平均費用、限界費用を読み分ける問題。切片、線分、接線を区別する必要があります。
2018年 第19問: 短期費用曲線で、総費用曲線と可変費用曲線のどちらを見ているか、平均費用と平均可変費用の最小点がどこにあるかを問う問題。
2022年 第15問 設問1: 総費用曲線の切片、平均費用の最小条件、平均費用が単調増加ではないことを問う正誤問題。
2023年第1回 第14問: 総費用曲線への接線から、MC、AVC、ATC の最小点を読み分ける問題。A を起点とする接線は AVC、O を起点とする接線は ATC を表します。
2025年 第15問 設問1: 限界費用、平均可変費用、平均固定費用、平均費用の関係を問う正誤問題。AFC の低下と MC の低下を同一視しないこと、AC 最小が MC 最小ではないことが問われました。
2025年 第15問 設問2: 価格線と限界費用曲線の面積図から、総収入、可変費用、固定費用と利潤、追加損失を読む問題。固定費用は短期では生産量を変えても減らない点がひっかけです。