経済学・経済政策
重要生産関数
限界生産物、平均生産物、規模に関する収穫を扱う。
この章で覚えておきたいこと
生産関数では、企業が労働や資本を投入したときに、どれだけの産出量を得られるかを読みます。試験では、式を細かく変形するより先に、総生産物・平均生産物・限界生産物の違い、等産出量曲線と等費用線の読み方、規模に関する収穫の判定を押さえることが重要です。
- 生産関数は、投入量と産出量の関係を表します。代表的には
Q=f(L,K)と書きます。 - 総生産物は総産出量、平均生産物は
Q/L、限界生産物は労働を1単位増やしたときの産出増加分です。 - 総生産物曲線の接線の傾きが限界生産物、原点から曲線上の点へ引いた直線の傾きが平均生産物です。
- 等産出量曲線は、同じ産出量を実現する労働と資本の組合せを表します。
- 等費用線は、一定の総費用で購入できる労働と資本の組合せを表します。
- 費用最小化点では、等産出量曲線と等費用線が接し、要素価格1単位当たりの限界生産物が等しくなります。
- 規模に関する収穫は、すべての投入量を同じ倍率で増やしたとき、産出量が何倍になるかで判定します。
生産関数の問題は、図形問題に見えても、問われているのは「傾き」「切片」「接点」「同じ曲線上か、右上の曲線か」です。まず図の意味を言葉に戻してから、選択肢の正誤を判定します。
基本知識
生産関数は投入量と産出量の対応表
生産関数は、労働 L、資本 K、技術水準などの条件から、産出量 Q がどれだけ得られるかを表す関数です。
Q=f(L,K)
短期では、資本や設備のようにすぐには変えにくい生産要素を固定し、労働だけを可変投入として考えることが多いです。長期では、労働と資本の両方を調整できると考えます。
短期の問題では、横軸に労働投入量、縦軸に産出量をとった総生産物曲線がよく出ます。長期の問題では、横軸に労働、縦軸に資本をとった等産出量曲線と等費用線がよく出ます。
総生産物・平均生産物・限界生産物
総生産物 TP は、投入量に対応する総産出量です。労働だけを可変投入とする場合は、労働投入量 L に対してどれだけ Q が生産されるかを見ます。
平均生産物 AP は、労働1単位当たりの産出量です。
AP = Q / L
限界生産物 MP は、労働を追加的に1単位増やしたときの産出量の増加分です。
MP = ΔQ / ΔL
図では、平均生産物は原点からの傾き、限界生産物は接線の傾きです。この2つを混同しないことが最重要です。
たとえば、総生産物曲線が上に凸で、労働投入量が増えるほど曲線がなだらかになる場合、限界生産物は逓減します。これは、固定された資本に対して労働を増やしすぎると、追加労働1単位が生み出す産出量が小さくなる、という意味です。
平均生産物と限界生産物の関係
平均生産物と限界生産物は、次の関係で読みます。
- 限界生産物が平均生産物より大きいと、平均生産物は上昇します。
- 限界生産物が平均生産物より小さいと、平均生産物は低下します。
- 平均生産物が最大になる点では、平均生産物と限界生産物が一致します。
これは、平均点と追加点の関係と同じです。追加された1単位の成果が平均より高ければ平均は上がり、平均より低ければ平均は下がります。
総生産物曲線上では、原点から曲線へ引いた直線が最も急になる点が、平均生産物の最大点です。その点では、原点からの直線が曲線に接するため、原点からの傾きである平均生産物と、接線の傾きである限界生産物が一致します。
限界生産物逓減と労働需要
完全競争市場では、企業は労働の追加投入から得られる価値と賃金を比べて労働量を決めます。生産物価格を P、労働の限界生産物を MPL、名目賃金を W とすると、利潤最大化の条件は次の形で整理できます。
P × MPL = W
両辺を P で割ると、次のようになります。
MPL = W / P
W/P は実質賃金です。したがって、完全競争下では、企業は労働の限界生産物が実質賃金に等しくなるように労働量を決めます。
限界生産物が労働投入量とともに逓減するなら、実質賃金が高いほど採用できる労働量は少なくなります。そのため、労働需要曲線は右下がりになります。過去問では、総生産物曲線の傾きから限界生産物曲線を読み、そこから労働需要曲線を対応づける問題が出ています。
等産出量曲線
等産出量曲線は、同じ産出量を実現する労働と資本の組合せを結んだ曲線です。消費者理論の無差別曲線に似ていますが、表しているのは効用ではなく産出量です。
- 同じ等産出量曲線上では、産出量は同じです。
- 右上にある等産出量曲線ほど、より大きな産出量を表します。
- 標準的な等産出量曲線は右下がりで、原点に対して凸です。
- 労働を増やして資本を減らしても、同じ曲線上にいれば産出量は変わりません。
右下がりになるのは、同じ産出量を保つためには、一方の投入を増やしたら、もう一方の投入を減らせるからです。原点に対して凸になるのは、片方の生産要素を多く使うほど、その要素をさらに増やしてもう一方を減らす余地が小さくなるためです。
技術的限界代替率
技術的限界代替率は、産出量を一定に保ったまま、労働を1単位増やしたときに、資本をどれだけ減らせるかを表します。英語では MRTS と呼ばれます。
標準的な等産出量曲線では、労働を増やし資本を減らしていくと、技術的限界代替率は変化します。したがって、「どの投入量でも一定である」という選択肢は、通常の凸型の等産出量曲線では誤りです。
限界生産物で表すと、労働の資本に対する技術的限界代替率は、おおむね次のように整理できます。
MRTS = MPL / MPK
ここで MPL は労働の限界生産物、MPK は資本の限界生産物です。同じ産出量を保つには、労働を増やして得た追加産出を、資本を減らすことで打ち消す必要があるためです。
等費用線
等費用線は、一定の総費用で購入できる労働と資本の組合せを表します。賃金率を w、資本のレンタル価格を r、総費用を C とすると、次の式で表せます。
C = wL + rK
横軸に労働 L、縦軸に資本 K をとると、等費用線は次の形になります。
K = C/r - (w/r)L
このため、縦軸切片は C/r、横軸切片は C/w、傾きは -w/r です。
等費用線の動きは、次のように読みます。
- 総費用
Cが増えると、等費用線は右上へ平行移動します。 - 賃金率
wが下がると、横軸切片C/wは右へ動き、傾きは緩やかになります。 - 資本価格
rが上がると、縦軸切片C/rは下がります。 wとrが同じ割合で上がると、傾きは変わらず、切片は内側へ動きます。
「縦軸切片の値は、資本のみを投入する場合の資本量」です。費用額そのものではありません。ここは選択肢でひっかけられやすいところです。
費用最小化の接点条件
企業が一定の産出量を最小費用で生産するとき、図では等産出量曲線と等費用線が接する点を選びます。この点では、等産出量曲線の傾きと等費用線の傾きが一致します。
式で表すと、次の条件です。
MPL / MPK = w / r
同じことを言い換えると、次のようになります。
MPL / w = MPK / r
つまり、要素価格1単位当たりの限界生産物が等しい状態です。労働に1円使ったときの産出増加と、資本に1円使ったときの産出増加が等しくなるように投入を配分します。
もし MPL/w が MPK/r より大きければ、労働に費用を回した方が産出を増やせます。逆に MPK/r が大きければ、資本に費用を回した方が有利です。したがって、接点から外れている点では、労働と資本の組合せを変える余地があります。
等産出量曲線と等費用線の図の読み方
等産出量曲線と等費用線の問題では、次の順に読みます。
- 同じ等産出量曲線上か、右上の等産出量曲線かを確認します。
- 同じ等費用線上か、右上の等費用線かを確認します。
- 接点かどうかを確認します。
- 接点でない場合、労働を増やすのか、資本を増やすのかを、曲線上の移動方向で判断します。
「点Eは点Dと比べて産出量が同じか」「総要素費用が少ないか」「同じ費用でより高い産出量へ移れるか」といった選択肢は、点の位置だけで判断します。右上の等産出量曲線なら産出量は大きく、右上の等費用線なら費用は大きくなります。
規模に関する収穫
規模に関する収穫は、すべての投入量を同じ倍率で増やしたとき、産出量がどれだけ増えるかを見る考え方です。
- 投入を2倍にして産出も2倍なら、規模に関する収穫一定です。
- 投入を2倍にして産出が2倍を超えるなら、規模に関する収穫逓増です。
- 投入を2倍にして産出が2倍未満なら、規模に関する収穫逓減です。
限界生産物の逓減とは別物です。限界生産物の逓減は、他の投入を固定して1つの投入だけを増やしたときの話です。規模に関する収穫は、すべての投入を同じ倍率で増やす話です。
この違いを混同すると、短期の総生産物曲線の問題で「規模に関する収穫」を誤って選びやすくなります。
コブ=ダグラス型生産関数
過去問では、コブ=ダグラス型生産関数が繰り返し出ています。代表例は次の形です。
Y = A N^α K^(1-α)
ここで、Y は生産量、N は労働投入量、K は資本投入量、A は技術水準、0<α<1 です。
指数の和が α + (1-α) = 1 なので、この関数は規模に関する収穫一定です。つまり、労働と資本をどちらも2倍にすると、生産量も2倍になります。
また、完全競争を前提にすると、α は労働分配率、1-α は資本分配率として読まれることがあります。選択肢では、1-α を労働分配率とする誤りに注意します。
コブ=ダグラス型では、代替の弾力性は1で一定です。「労働投入量が増えると代替の弾力性が逓減する」という記述は、標準的なコブ=ダグラス型の説明としては誤りです。
全要素生産性
全要素生産性は、労働や資本の投入量だけでは説明できない生産量の増加を表す考え方です。コブ=ダグラス型生産関数では、技術水準 A として表されます。
全要素生産性が上がると、労働や資本の投入量が同じでも、より多くの産出量を得られます。新技術の開発、組織運営の改善、教育訓練、設備の使い方の改善などが、全要素生産性の上昇要因として考えられます。
ただし、全要素生産性は「生産量を労働投入量で割った値」ではありません。それは労働生産性です。試験では、TFPと労働生産性の混同がよく狙われます。
この章のまとめ
生産関数の問題は、式、曲線、接点条件を別々に暗記するより、何の傾き・何の比率を見ているかを整理すると解きやすくなります。
- 生産関数は
Q=f(L,K)で、投入量と産出量の関係を表します。 - 総生産物曲線では、接線の傾きが限界生産物、原点からの傾きが平均生産物です。
- 平均生産物が最大になる点では、平均生産物と限界生産物が一致します。
- 完全競争下の労働需要は、労働の限界生産物と実質賃金が一致する条件から導かれます。
- 等産出量曲線では、同じ曲線上の産出量は同じで、右上の曲線ほど産出量が大きいです。
- 等費用線は
C=wL+rK、傾きは-w/rです。 - 費用最小化点では、
MPL/w = MPK/rが成り立ちます。 - 規模に関する収穫は、すべての投入量を同じ倍率で増やしたときの産出量の倍率で判定します。
- コブ=ダグラス型で指数の和が1なら、規模に関する収穫一定です。
- 全要素生産性は技術水準や効率性を表し、労働生産性とは別概念です。
解くときは、まず短期の1要素投入問題か、長期の2要素投入問題かを分けます。短期なら総生産物曲線の傾き、長期なら等産出量曲線と等費用線の接点を見ます。最後に、選択肢が「平均」と「限界」、「産出量」と「費用」、「限界生産物」と「全要素生産性」を取り違えていないか確認します。
一次試験過去問での出方
2009年 第13問 設問1: 生産関数の図から、生産効率が最も高い点を選ぶ問題。
2012年 第18問、2014年 第13問、2016年 第20問、2019年 第14問: 総生産物曲線、平均生産物、限界生産物の関係。原点からの傾きと接線の傾きを区別する。
2014年 第13問 設問2、2020年 第16問、2023年第2回 第17問: 総生産物曲線から限界生産物曲線や労働需要曲線を読む問題。完全競争では限界生産物と実質賃金の一致が問われる。
2018年 第18問、2019年 第15問 設問2、2022年 第16問、2023年第2回 第14問、2024年 第15問: 等産出量曲線と等費用線の図を読み、接点、費用最小化、技術的限界代替率、要素価格1単位当たりの限界生産物を判定する。
2015年 第16問、2019年 第20問: コブ=ダグラス型生産関数と規模に関する収穫一定。投入を同率で増やしたときの産出量を確認する。
2021年 第12問: 全要素生産性の定義と効果。新技術でTFPが上がること、TFPと労働生産性を混同しないことが問われた。最近の出題では、単なる用語暗記より、図の点を動かしたときに「産出量が増えるのか」「費用が増えるのか」「接点へ近づくのか」を判断する形が多いです。等産出量曲線と等費用線の図は、後続の費用関数・利潤最大化にもつながるため、早めに得点源にしておきます。