経済学・経済政策
標準利潤最大化
MR=MC、完全競争・独占の利潤最大化条件を整理する。
この章で覚えておきたいこと
利潤最大化では、企業が「どの数量を生産するか」と「その価格で操業を続けるか」を分けて考えます。完全競争企業では価格を自分で変えられないため、まず価格と限界費用の関係で数量を決め、その数量で平均費用や平均可変費用と比べます。
- 利潤は、総収入から総費用を引いた
π = TR - TCです。 - 利潤最大化の基本条件は MR=MC です。
- 完全競争では限界収入が価格に等しいため、P=MC で数量を決めます。
- 総収入曲線と総費用曲線の図では、同じ数量における縦の差が利潤です。
- 総収入曲線と総費用曲線の交点は損益分岐点であり、利潤最大点とは限りません。
- 短期の操業継続は、価格が平均可変費用を回収できるかで判断します。
- 価格が平均費用を上回れば黒字、平均費用を下回れば赤字です。
- 独占企業でも利潤最大化条件は
MR=MCですが、完全競争のようにP=MCとは限りません。
試験では、公式そのものよりも図の読み方が問われます。特に、接点と交点、総費用と利潤、平均費用と平均可変費用を取り違えないことが得点に直結します。
基本知識
利潤は総収入と総費用の差
利潤は、企業が得た総収入から、生産にかかった総費用を差し引いたものです。
π = TR - TC
総収入 TR は、価格 P と数量 Q の積です。完全競争市場では、個々の企業は市場価格を変えられないため、価格を所与として受け取ります。このとき総収入曲線は原点を通る直線になり、その傾きは価格 P です。
総費用 TC は、固定費用と可変費用を合わせたものです。固定費用がある場合、生産量がゼロでも総費用はゼロにならず、利潤はマイナスから始まります。この点は、利潤曲線を選ぶ問題でよく使います。
総収入曲線と総費用曲線を同じ図で見るときは、同じ数量における縦の差を読みます。総収入が総費用を上回れば黒字、下回れば赤字、交われば利潤ゼロです。
利潤最大化条件は MR=MC
限界収入 MR は、販売量を1単位増やしたときに総収入がどれだけ増えるかを表します。限界費用 MC は、生産量を1単位増やしたときに総費用がどれだけ増えるかを表します。
生産量を少し増やしたとき、
MR > MCなら、増産によって利潤は増えます。MR < MCなら、増産によって利潤は減ります。MR = MCなら、それ以上増やしても減らしても利潤が改善しにくい点になります。
したがって、利潤最大化の基本条件は MR=MC です。完全競争企業では価格が一定で MR=P なので、数量決定の条件は P=MC になります。
ここで注意するのは、AC=MC は平均費用が最小になる条件であって、利潤最大化条件そのものではないという点です。試験では、平均費用の最小点と利潤最大点を混同させる選択肢が出ます。
総収入曲線と総費用曲線で読む利潤最大点
総収入曲線と総費用曲線の図では、利潤最大点を「縦の差が最も大きい数量」として読みます。総収入曲線が直線なら、その傾きは MR です。総費用曲線上の接線の傾きは MC です。
そのため、総収入曲線と同じ傾きの直線が総費用曲線に接する点が、MR=MC に対応します。図で言えば、総収入曲線に平行な補助線を総費用曲線へ当てたときの接点が目印です。
一方、総収入曲線と総費用曲線の交点は、総収入と総費用が等しい点です。ここでは利潤はゼロなので、損益分岐点です。交点を利潤最大点と読まないようにします。
利潤曲線の形
利潤曲線は、各数量における TR - TC を描いた曲線です。固定費用がある場合、生産量ゼロでは TR=0 ですが TC は固定費用分だけ残ります。そのため、利潤曲線は原点ではなく、ゼロより下から始まります。
その後、MR>MC の範囲では生産量を増やすほど利潤は増えます。MR=MC の点で利潤が最大になり、MR<MC になると、生産量を増やすほど利潤は減ります。
利潤曲線の問題では、次の順で確認します。
- 生産量ゼロで利潤がマイナスから始まるか。
- 総収入が総費用を上回る範囲で利潤がプラスになるか。
MR=MCに対応する点で山の頂点になっているか。
平均費用図で読む総収入・総費用・利潤
平均費用曲線 AC、平均可変費用曲線 AVC、限界費用曲線 MC の図では、まず完全競争企業の数量を P=MC で決めます。そのうえで、同じ数量における価格、平均費用、平均可変費用の高さを比べます。
長方形の面積を読むときは、縦が1単位当たりの金額、横が数量です。
- 価格
P× 数量Qは総収入です。 - 平均費用
AC× 数量Qは総費用です。 - 平均可変費用
AVC× 数量Qは総可変費用です。 - 利潤は
(P - AC) × Qです。
価格線と平均費用曲線の差だけを見るのではなく、その差がどの数量で切られているかを確認します。数量がずれている長方形を、機械的に利潤や赤字と読まないようにします。
損益分岐点と操業停止点
短期では、固定費用は操業してもしなくても発生すると考えます。そのため、赤字だからといって必ず操業停止するわけではありません。短期に重要なのは、可変費用を回収できるかです。
価格と平均費用、平均可変費用の関係は、次のように整理します。
| 価格の位置 | 状態 | 判断 |
|---|---|---|
P > AC | 黒字 | 生産を続けます |
P = AC | 損益分岐点 | 利潤ゼロです |
AVC < P < AC | 赤字操業 | 固定費用の一部を回収できるため生産を続けます |
P = AVC | 操業停止点 | 生産してもしなくても損失は固定費用です |
P < AVC | 操業停止 | 可変費用も回収できないため停止します |
損益分岐点は P = min AC、操業停止点は P = min AVC として問われることが多いです。AC は黒字か赤字か、AVC は操業を続けるか止めるかを判断する基準です。
利潤一定線と生産関数
生産関数の図でも、利潤最大化が問われることがあります。生産量を y、投入量を x、生産物価格を p、要素価格を w とすると、利潤は次のように表せます。
π = py - wx
これを生産量 y について解くと、
y = π/p + (w/p)x
となります。この直線は、利潤が一定である組合せを表す利潤一定線です。傾きは w/p で、利潤が大きいほど切片 π/p が高くなります。
利潤最大化は、同じ傾きの利潤一定線のうち、最も高い位置で生産関数に接する点です。接点では、生産関数の傾きである限界生産物が w/p に等しくなります。
この章のまとめ
利潤最大化の問題は、最初に「どの図で問われているか」を分けると安定します。
- 総収入曲線と総費用曲線なら、同じ数量での縦の差が利潤です。
- 総収入曲線に平行な補助線が総費用曲線へ接する点は、
MR=MCに対応します。 - 総収入曲線と総費用曲線の交点は、利潤最大点ではなく損益分岐点です。
- 平均費用図では、まず
P=MCで数量を決めます。 - その数量で
PとACを比べると、黒字・赤字・利潤ゼロが分かります。 - その数量で
PとAVCを比べると、短期に操業を続けるかどうかが分かります。 - 利潤一定線の図では、同じ傾きの直線を最も高い位置まで動かし、生産関数との接点を探します。
ひっかけは、ほぼ「基準の取り違え」です。MR=MC と AC=MC、損益分岐点と操業停止点、総費用の面積と利潤の面積を分けて確認します。
一次試験過去問での出方
2009年 第13問設問2、2012年 第19問、2014年 第18問では、総収入曲線と総費用曲線から利潤最大点、損益分岐点、利潤曲線を読む問題が出ています。総収入と総費用の縦の差、平行な補助線の接点、固定費用による利潤曲線の出発点を確認します。
2015年 第17問、2019年 第16問、2023年第2回 第16問、2024年 第16問設問2では、MC、AC、AVCの図から、P=MCによる数量決定、総収入・総費用・利潤の面積、損益分岐点、操業停止点を判定しています。
2016年 第21問では、生産関数と利潤一定線の接点から利潤最大化を読む問題が出ています。傾きw/pの直線を、最も高い位置で生産関数に接するように置くのが判断軸です。