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NARITAI

経済学・経済政策

補助

供給曲線

限界費用曲線との関係を短く扱う。

この章で覚えておきたいこと

供給曲線で限界費用、AVC最小点、操業停止点、生産者余剰をつなげる図解

供給曲線は、完全競争企業の利潤最大化と費用曲線をつなぐ論点です。単独で暗記するより、生産量の決定操業継続の判断、図の面積が費用か生産者余剰かを順に確認します。

  • 完全競争企業は、価格を所与として受け取り、原則として P=MCP=MC を満たす生産量を選びます。
  • 短期供給曲線は、AVCAVC 最小点以上の MCMC 曲線です。
  • 価格が AVCAVC の最小値を下回ると、企業は操業を停止します。
  • 価格が ACAC の最小値に等しい点は、操業停止点ではなく損益分岐点です。
  • 供給曲線を限界費用曲線として読むと、曲線下の面積は必要最低限回収すべき費用、価格線との差は生産者余剰です。

試験では、「赤字なら必ず操業停止」と判断させる選択肢や、「供給曲線下の面積」と「生産者余剰」を入れ替える選択肢が出ます。価格、MCMCACACAVCAVC の位置関係を落ち着いて分けることが得点につながります。

基本知識

短期供給曲線は AVC 最小点以上の MC

短期供給曲線がAVC最小点以上のMC曲線であることを示す手書き風図解

完全競争企業は市場価格を変えられないため、価格 PP を所与として受け取ります。利潤最大化の基本条件は MR=MCMR=MC ですが、完全競争では MR=PMR=P なので、企業はまず P=MCP=MC を満たす生産量を候補にします。

ただし、MCMC 曲線のすべてが短期供給曲線になるわけではありません。短期では固定費用が生産してもしなくても発生するため、操業を続けるかどうかは可変費用を回収できるかで判断します。

価格が平均可変費用 AVCAVC の最小値以上であれば、企業は少なくとも可変費用を回収できます。この範囲では、価格が上がるほど P=MCP=MC の交点は右へ移り、生産量が増えます。したがって、短期供給曲線は**AVCAVC 最小点以上**の右上がりの MCMC 曲線として読みます。

操業停止点と損益分岐点を分ける

損益分岐点と操業停止点をACとAVCで区別する手書き風図解

短期供給の問題では、ACACAVCAVC のどちらを見ているかが重要です。

  • 損益分岐点は、価格が ACAC の最小値に等しい点です。この点では総収入と総費用が等しく、利潤はゼロです。
  • 操業停止点は、価格が AVCAVC の最小値に等しい点です。この点では総収入と可変費用が等しく、損失は固定費用に等しくなります。
  • 価格が ACAC を下回っても、AVCAVC を上回っていれば、赤字ではあるものの操業を続ける方が損失を小さくできます。

試験で特に狙われるのは、P=ACP=AC の誤判定と、P=AVCP=AVC の損失の取り違えです。P=AVCP=AVC では可変費用は回収できているので、残る損失は固定費用です。

費用関数から操業停止点を求める

費用関数からVCとAVCを取り出して操業停止点を求める手書き風図解

費用関数が与えられた場合、操業停止点に対応する価格は、平均可変費用の最小値で求めます。手順は次のとおりです。

  1. 総費用 TCTC から固定費用を除き、可変費用 VCVC を取り出します。
  2. AVC=VC/QAVC=VC/Q を計算します。
  3. AVCAVC が最小になる数量を求めます。
  4. その数量での AVCAVC の値が、操業停止点に対応する価格です。

たとえば、総費用が C=X32X2+6X+10C=X^3-2X^2+6X+10 であれば、固定費用は定数項の 1010、可変費用は X32X2+6XX^3-2X^2+6X です。平均可変費用は AVC=X22X+6AVC=X^2-2X+6 となり、この最小値が操業停止点の価格になります。

ここで総費用をそのまま XX で割ると、平均費用 ACAC を求めてしまいます。操業停止点は AVCAVC で見る、と先に決めてから計算します。

供給曲線の面積は費用と余剰に分けて読む

供給曲線下の費用と価格線との差の生産者余剰を区別する手書き風図解

供給曲線を限界費用曲線として見ると、ある数量まで生産するために必要な限界費用の積み上げが、供給曲線の下の面積に対応します。これは、生産者が必要最低限回収しなければならない費用として読みます。

一方、生産者余剰は、実際に受け取る価格と供給曲線との差です。図では、価格線との差として表されます。

価格が上がると、生産量も増え、生産者余剰の面積は広がります。ただし、価格上昇で追加的に増えた一部分だけを、その価格での生産者余剰全体と取り違えないようにします。生産者余剰を問われたら、対象数量までの全体の面積を確認します。

この章のまとめ

短期供給曲線で完全競争、P=MC、AVC最小点以上を確認するまとめ図

供給曲線の問題では、まず完全競争企業の短期の話かを確認します。完全競争なら、企業は価格を所与として受け取り、数量は P=MCP=MC で考えます。ただし、短期供給曲線として使うのは MCMC 曲線全体ではなく、AVCAVC 最小点以上の部分です。

操業判断では、ACACAVCAVC を分けます。P=ACP=AC は損益分岐点、P=AVCP=AVC は操業停止点です。AC>P>AVCAC>P>AVC なら赤字ですが、可変費用は回収でき、固定費用の一部もまかなえるため、短期には操業を続ける方が損失を小さくできます。

面積問題では、供給曲線の下を費用、価格線との差を生産者余剰として読みます。ひっかけは、供給曲線下の面積を生産者余剰とするもの、価格上昇で増えた部分だけを余剰全体とするものです。最後は、価格線、供給曲線、対象数量の範囲を確認します。

一次試験過去問での出方

2007年 第13問 設問3: 総費用関数から平均可変費用を求め、操業停止点に対応する価格を計算する問題。
2011年 第20問: 完全競争企業の短期供給曲線について、P=MCP=MCACACAVCAVC の位置関係から黒字、赤字操業、操業停止を判定する問題。
2022年 第12問: 供給曲線を使って、限界費用の増加、供給曲線下の費用、生産者余剰の面積を読み分ける問題。

最近の関連問題でも、短期完全競争企業の価格と生産量、生産者余剰、操業停止点がまとめて問われます。費用関数、利潤最大化、供給曲線を別々に暗記せず、P=MCP=MCPAVCP \ge AVC の2段階で判断します。