経済学・経済政策
補助その他
他トピックへ分類しにくい統計論点を補助的に扱う。
この章で覚えておきたいこと
このトピックは、GDP、物価、雇用、景気動向指数のような主要論点に入りきらない統計問題の受け皿です。出題実績は多くありませんが、過去問では資金循環統計の資産・負債差額を見て、家計、一般政府、非金融法人企業を対応づける問題が出ています。
この章では、次の3点を押さえれば十分です。
- 資産・負債差額はストック統計であり、単年の黒字赤字ではありません。
- 家計は大きなプラス、一般政府は大きなマイナス、非金融法人企業はその中間になりやすいです。
- グラフ問題では、まず家計と一般政府を確定し、残りを非金融法人企業と判断します。
基本知識
資金循環統計は主体ごとの金融ポジションを見る統計です
資金循環統計は、日本銀行が公表する統計で、家計、企業、政府、金融機関、海外などの各主体が、どれだけ金融資産と金融負債を持っているかを整理したものです。一次試験では制度の細部よりも、どの主体が資産超過か、負債超過かを読めるかが問われます。
ここで出てくる資産・負債差額は、次のように考えます。
- 資産・負債差額 = 資産 - 負債 です。
- プラスなら資産超過です。
- マイナスなら負債超過です。
この差額は、ある年度末など一時点の残高を見ています。したがって、企業や政府の「今年の収支」とは別物です。ここを取り違えると、選択肢を逆に読みやすくなります。
主体別の典型的な並びを覚えます
資金循環統計のグラフでは、細かい数値よりも、各主体の相対的な位置関係を押さえることが重要です。
| 主体 | 典型的な位置 | 読み方 |
|---|---|---|
| 家計 | 大きなプラス | 金融資産超過の主体 |
| 一般政府 | 大きなマイナス | 負債超過の主体 |
| 非金融法人企業 | その中間 | 極端なプラスでもマイナスでもない主体 |
家計は、預金、保険、年金、株式などの金融資産を多く持つため、資産・負債差額がプラスになりやすいです。
一般政府は、国債などの負債が大きくなりやすいため、資産・負債差額が大きなマイナスになりやすいです。
非金融法人企業は、設備投資のための借入もあり、家計ほど大きなプラスにはなりにくい一方、一般政府ほど大きなマイナスにもなりにくいです。試験では、家計と一般政府を先に確定し、残りを非金融法人企業と見るのが基本です。
グラフ問題は極端な系列から先に決めます
この論点のグラフ問題は、次の順番で読むと安定します。
- 最も大きくプラスにある系列を探します。
- その系列を家計と判断します。
- 次に、大きくマイナスにある系列を探します。
- その系列を一般政府と判断します。
- 残った中間の系列を非金融法人企業と判断します。
この手順を使うと、非金融法人企業の特徴を単独で細かく覚えていなくても正解できます。低頻度論点では、こうした判定順の型を持っておくことが重要です。
ひっかけはフローとの混同です
このトピックで最も多いひっかけは、ストックとフローの混同です。
- 資産・負債差額は、1年間の収入と支出の差ではありません。
- 年度末時点の資産残高と負債残高の差です。
- 家計は消費主体だからマイナス、と考えるのは誤りです。
- 政府は公共サービスを提供するからプラス、と考えるのも誤りです。
また、非金融法人企業という語だけを見て、企業だから必ず大きなプラスと決めつけるのも危険です。試験では、家計の大きなプラスと一般政府の大きなマイナスを軸に相対比較します。
この章のまとめ
このトピックは補助論点なので、深追いしすぎる必要はありません。最後に次だけ確認します。
- 資産・負債差額はストック統計です。
- 家計は大きなプラス、一般政府は大きなマイナスになりやすいです。
- 非金融法人企業はその中間に位置しやすいです。
- グラフでは、まず家計と一般政府を決め、残りを非金融法人企業と判断します。
- 単年の黒字赤字と、資産・負債差額を混同しないことが重要です。
一次試験過去問での出方
2015年度第2問では、日本銀行「資金循環統計」のグラフを見て、aからcの系列を家計、一般政府、非金融法人企業に対応づける問題が出ました。大きなプラスの系列を家計、大きなマイナスの系列を一般政府、その中間を非金融法人企業と読むと、家計=a、非金融法人企業=b と判断できます。出題頻度は低いですが、判定順を知っていれば短時間で得点しやすい論点です。