経済学・経済政策
標準物価指数
CPI、GDPデフレーター、ラスパイレス式、パーシェ式の違いを扱う。
この章で覚えておきたいこと
物価指数は、式だけ覚えるよりも、何を固定して比べるか、どの範囲の価格を見るか、名目値をどう実質化するかを一度につかむ方が得点につながります。最初に、次の5点を押さえてください。
- ラスパイレス式は基準年数量を固定します。
- パーシェ式は比較年数量を固定します。
- CPIは家計の購入価格を見ます。消費税も含みます。
- GDPデフレーターは国内生産物全体の価格変化を見ます。
- 実質化では、名目値 ÷ (物価指数 / 100) の向きを崩さないことが重要です。
試験では、式をそのまま書かせる問題だけでなく、「どちらの数量を使うか」「CPIとGDPデフレーターの対象はどう違うか」「物価上昇で実質値がどう動くか」を組み合わせて問う問題が多いです。
基本知識
物価指数は「何を固定して比べるか」で見る
物価指数は、基準年を100として、比較年の物価水準がどれだけ上がったか下がったかを示す指数です。まずは「同じ買い物かごを買ったらいくらになるか」を比べる発想で理解すると迷いにくくなります。
比較年の指数が120なら、基準年に比べて物価が20%上昇したと読みます。ここで大事なのは、価格だけ平均するのではなく、価格と数量を組み合わせて比べることです。
- 物価指数は、価格の変化を指数で表したものです。
- どの数量を重みとして使うかで、指数の性質が変わります。
- 計算問題では、先に「固定する数量の年」を決めてから分子と分母を作ります。
ラスパイレス式とパーシェ式は数量ウェイトの年が違う
この論点は頻出です。名前を丸暗記するより、ラスパイレス式は基準年数量、パーシェ式は比較年数量と短く言える状態にしておく方が強いです。
ラスパイレス式は、基準年の買い物かごを固定して、比較年価格で買うといくらになるかを測る考え方です。パーシェ式は、比較年の買い物かごを使って、基準年価格と比較年価格を比べます。
- ラスパイレス式は、
Σ(比較年価格 × 基準年数量) ÷ Σ(基準年価格 × 基準年数量) × 100です。 - パーシェ式は、
Σ(比較年価格 × 比較年数量) ÷ Σ(基準年価格 × 比較年数量) × 100です。 - 違いは価格ではなく、数量ウェイトの時点です。
2015年や2025年の計算問題では、2財の価格と数量が与えられています。各財について価格×数量を出してから足し合わせるので、価格だけを単純平均しないことが重要です。
CPIとGDPデフレーターは対象範囲が違う
どちらも物価を見る指標ですが、見ている範囲が違います。CPIは家計の購入価格、GDPデフレーターは国内で生産された最終財・サービス全体です。
CPIは、家計が実際に支払う価格をもとに作られるため、消費税などの間接税を含みます。また、総務省が作成するCPIはラスパイレス方式です。コアCPIは、生鮮食品を除く総合指数を指します。
一方、GDPデフレーターは、名目GDPを実質GDPに直すための物価指数です。家計消費だけでなく、投資や政府支出など、GDPに含まれる国内生産物全体の価格変化を反映します。
- CPIは、代表的な消費財・サービスの価格を追います。
- GDPデフレーターは、GDP全体の価格変化を見る指数です。
- 輸入品の価格変化を直接測る指数ではない、という点でもCPIと見え方が変わります。
実質化では「名目÷物価指数」を崩さない
2023年度第2回の問題では、物価上昇が実質利子率や実質GDPにどう効くかが問われました。ここは「物価が上がると実質値はどうなるか」を式と意味の両方で押さえます。
名目GDPが一定なら、物価水準が上がるほど実質GDPは小さくなります。これは、実質値が「物価を取り除いた量」だからです。同じ考え方で、名目利子率が一定のときに物価上昇率が上がると、実質利子率は下がりやすくなります。
- 実質値 = 名目値 ÷ (物価指数 / 100) です。
- 物価だけ上がって名目値が変わらないなら、実質値は下がります。
- 物価上昇で負債の実質価値は下がるので、一般に債務者に有利、債権者に不利です。
- インフレ期待が高まると、買い控えよりも買い急ぎが起こりやすくなります。
コアCPIのグラフは「最も高い線」と「最も低い線」から読む
2024年のグラフ問題のように、日本、米国、ユーロ圏の線を見分ける問題では、細かい月次データを暗記する必要はありません。最も高い線、最も低い線、その中間、という順番で読むと処理しやすいです。
近年の典型的な読み方では、2021年以降に大きく上昇した線が米国、そこまでではないが高めに推移する線がユーロ圏、相対的に低い線が日本です。グラフ読解では、国名を先に覚えるより、相対位置を先に押さえる方が安定します。
- コアCPIは、生鮮食品を除く総合指数です。
- 物価グラフは、水準の高低と上昇の勢いで見分けます。
- 日本は長く低位、米国は急上昇、ユーロ圏はその中間、という順で読むと整理しやすいです。
この章のまとめ
物価指数の問題は、結局は「どの数量を固定するか」「どの価格範囲を見るか」「実質化の向きが合っているか」を順番に確認できるかどうかで決まります。最後に、判断の流れを1枚にまとめます。
- まず、指数の問題か、実質化の問題か、グラフ読解の問題かを見分けます。
- 指数の計算なら、基準年数量か比較年数量かを先に決めます。
- 知識問題なら、CPIはラスパイレス方式、コアCPIは生鮮食品を除く総合指数、消費税を含むを照合します。
- 実質化なら、名目 ÷ 物価指数の向きを確認します。
- グラフ問題なら、最も高い線と最も低い線から見分けます。
一次試験過去問での出方
- 2012年 第2問: CPIがラスパイレス式であり、ラスパイレス式が基準年数量をウェイトに使うことが問われました。
- 2015年 第5問: 2財の価格・数量表からラスパイレス指数とパーシェ指数を計算し、数量ウェイトの違いで値がずれることを確認する問題でした。
- 2016年 第5問: CPIの対象範囲、消費税の扱い、コアCPI、総務省CPIがラスパイレス方式であることが組み合わせで問われました。
- 2023年度第2回 第5問: 物価上昇によって実質利子率が低下し、負債の実質価値が低下することが問われました。
- 2024年 第3問: 日本、米国、ユーロ圏のコアCPIグラフを見分ける問題で、相対的な高低関係の読み取りが中心でした。
- 2025年 第5問: 2財の価格が同率で上昇していたため、ラスパイレス指数とパーシェ指数がどちらも120になるケースが問われました。