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NARITAI

経済学・経済政策

体系補助

マネタリズム

金融政策と貨幣数量説の補助論点として扱う。

この章で覚えておきたいこと

マネタリズムで貨幣供給量、物価、k%ルール、自然失業率を押さえる図解
  • マネタリズムは、経済の安定にとって貨幣供給量が重要だと考える立場です。
  • 持続的なインフレは、長期的には貨幣供給量の増加と結びつけて理解します。
  • フリードマンの k%ルール は、貨幣供給量を一定率で増やすという政策ルールです。
  • 裁量的な景気対策には、政策効果が出るまでの時間差があるため慎重です。
  • 自然失業率仮説と合わせて、長期には失業率を政策で恒常的に下げ続けられないと整理します。

基本知識

マネタリズムの基本発想

マネタリズムが貨幣供給量の管理を重視する考え方を、中央銀行、企業、家計、店舗の関係で示した図解

マネタリズムは、ミルトン・フリードマンに代表される考え方です。ケインズ理論が有効需要や財政政策を重視するのに対し、マネタリズムは貨幣供給量の管理を重視します。

試験では、理論史として細かく覚えるより、貨幣量、物価、金融政策、自然失業率仮説とのつながりで押さえることが重要です。特に、金融政策の選択肢で「貨幣供給量を経済成長率に合わせて一定率で増やす」という記述が出たら、ケインズ理論ではなくマネタリズムとして判断します。

貨幣数量説と長期の物価

貨幣供給量の増加が長期には物価へ反映され、実質GDPは実物要因で決まりやすいことを示した図解

マネタリズムは、貨幣数量説を重視します。貨幣数量説では、貨幣供給量が増えると、長期的には主に物価水準へ反映されると考えます。

ここで大切なのは、名目変数と実質変数を分けることです。貨幣供給量が増えても、長期的に実質GDPが同じ割合で増えるとは考えません。実質GDPや雇用は、労働、資本、技術、生産性などの実物要因で決まりやすいからです。

したがって、選択肢に「貨幣供給量の増加によって、物価水準だけでなく実質GDPも比例的に増える」とあれば、貨幣数量説やマネタリズムの理解としては誤りになりやすいです。

k%ルール

k%ルールが物価上昇率目標ではなく、貨幣供給量を一定率で増やすルールであることを示した図解

k%ルールとは、中央銀行が貨幣供給量を毎期一定率で増加させるべきだという考え方です。ここでの k は、経済成長率などに対応した安定的な増加率として理解します。

このルールの狙いは、景気の状態を見ながらその都度政策を変えるのではなく、予測可能な貨幣供給によって経済を安定させることです。試験では、物価上昇率の目標と取り違えないようにします。k%ルールは、物価上昇率を k% にするという意味ではなく、貨幣供給量を k% で増やすというルールです。

また、k%ルールを「ケインズ的な金融政策」とする記述にも注意します。ケインズ的な考え方では、金融政策は利子率、投資、総需要を通じて景気へ影響します。一方、k%ルールはフリードマンのマネタリズムに対応します。

裁量政策への慎重な見方

裁量政策では判断、実施、効果発現に時間差があり、景気局面が変わるリスクを示した図解

マネタリズムは、裁量政策に慎重です。裁量政策とは、景気の状態に応じて政府や中央銀行が政策をその都度調整することです。

慎重に見る理由は、政策効果に時間差があるためです。景気悪化を確認してから金融緩和や財政拡張を行っても、効果が出るころには景気局面が変わっている可能性があります。その結果、景気を安定させるつもりの政策が、かえって過熱や不安定化を招くことがあります。

この論点は、政策の「有効か無効か」だけでなく、時間差を考える問題として押さえます。マネタリズムは、細かな裁量調整より、安定的なルールに基づく貨幣供給を重視します。

自然失業率仮説との接続

自然失業率仮説で短期のずれが期待調整により長期には自然失業率へ戻ることを示した図解

マネタリズムは、自然失業率仮説とも結びつきます。自然失業率とは、現実のインフレ率と期待インフレ率が一致するときの失業率です。摩擦的失業や構造的失業を含むため、ゼロではありません。

短期には、現実のインフレ率が期待インフレ率を上回ると、失業率が自然失業率を下回ることがあります。しかし、長期には人々の期待が調整されるため、失業率は自然失業率へ戻り、インフレ率と失業率の恒常的なトレード・オフは消えます。

このため、総需要拡大策で失業率を自然失業率より低く保とうとしても、長期的には失業率の改善ではなく、インフレの加速が残りやすいと考えます。

この章のまとめ

マネタリズムを短期の需要効果と長期の物価効果に分けてまとめた図解

マネタリズムは、単独の理論名として暗記するより、金融政策、貨幣数量説、物価、自然失業率仮説をつなぐ補助線として使います。

問題を解くときは、まず選択肢が短期の需要効果を述べているのか、長期の物価効果を述べているのかを分けます。短期のIS-LMでは、貨幣供給量の増加が利子率低下、投資増加、GDP増加へつながる場合があります。一方、貨幣数量説やマネタリズムの長期整理では、貨幣供給量の増加は主に物価水準へ反映され、実質GDPを比例的に増やすとは考えません。

ひっかけは、k%ルールの帰属です。k%ルールは、フリードマンのマネタリズムです。ケインズ的政策でも、物価上昇率目標でもありません。また、自然失業率仮説では、長期に失業率をゼロにできるとは考えません。自然失業率はゼロではなく、長期フィリップス曲線は自然失業率の水準で垂直になると整理します。

最後に、マネタリズムは「金融政策がいつでも短期にGDPを大きく増やす」という単純な主張ではありません。長期の貨幣と物価、裁量政策の時間差、期待インフレの調整を組み合わせて判断することが重要です。

一次試験過去問での出方

2021年度第8問では、金融政策を IS-LM、貨幣数量説、マネタリズムで切り分ける問題が出ています。k%ルールをケインズ的な金融政策とする記述は誤りで、フリードマンのマネタリズムとして判断します。
2014年度第10問では、k%ルールを物価上昇率の目標とするひっかけが出ています。k%ルールは、貨幣供給量を一定率で増やすルールです。
2019年度第8問、2022年度第10問、2024年度第12問では、自然失業率仮説が繰り返し問われています。短期と長期のフィリップス曲線、期待インフレ率、自然失業率がゼロではないことを確認します。