経済学・経済政策
標準市場均衡
需給曲線のシフト、均衡、価格規制を扱う。
この章で覚えておきたいこと
- 市場均衡は、需要量と供給量が一致する価格と数量で決まります。
- 需要曲線の右方シフトは、均衡価格と均衡数量を押し上げます。
- 供給曲線の右方シフトは、均衡数量を増やし、均衡価格を押し下げます。
- 需要と供給が同時にシフトする場合、価格または数量の変化方向が一意に決まらないことがあります。
- 価格変化による曲線上の移動と、価格以外の要因による曲線そのもののシフトを区別します。
- 垂直な供給曲線や負の価格を扱う問題では、通常の右上がり供給曲線と同じ感覚で読まないようにします。
基本知識
需要曲線
需要曲線は、価格と需要量の関係を表します。通常は価格が下がるほど需要量が増えるため、右下がりに描かれます。
需要曲線そのものが動くのは、価格以外の要因が変わるときです。所得が増えて上級財の購入意欲が高まる、代替財の価格が上がってこの財へ需要が移る、消費者の好みが強まる、といった場合には需要曲線が右方へシフトします。
反対に、代替財の価格が下がる、補完財の価格が上がる、将来価格の下落が予想されるなどの場合には、需要曲線が左方へシフトしやすくなります。
供給曲線
供給曲線は、価格と供給量の関係を表します。通常は価格が上がるほど供給量が増えるため、右上がりに描かれます。
供給曲線そのものが動くのは、企業の費用条件や生産条件が変わるときです。技術進歩、原材料費の下落、生産補助金は、同じ価格でも多く供給できる状態をつくるため、供給曲線を右方へシフトさせます。原材料費の上昇、規制強化、災害による生産能力低下は、供給曲線を左方へシフトさせます。
均衡価格と均衡数量
需要曲線と供給曲線の交点が市場均衡です。需要が右方へシフトすると、価格は上がり、数量も増えます。供給が右方へシフトすると、価格は下がり、数量は増えます。
ただし、需要と供給が同時に動く場合は注意します。たとえば需要も供給も右方へシフトすると、数量は増えやすいですが、価格は需要増の効果と供給増の効果のどちらが強いかで変わります。選択肢の「必ず上昇する」「必ず低下する」は疑って読みます。
曲線上の移動と曲線のシフト
財そのものの価格が変わったときは、同じ需要曲線または供給曲線上を移動します。価格以外の要因が変わったときは、曲線そのものがシフトします。
たとえば、りんごの価格が下がってりんごの需要量が増えるのは、需要曲線上の移動です。一方、みかんの価格が上がって代替財であるりんごの需要が増えるのは、りんごの需要曲線の右方シフトです。
超過需要と超過供給
市場価格が均衡価格より低いと、需要量が供給量を上回り、超過需要が生じます。買いたい人が多いのに供給が足りないため、価格には上昇圧力がかかります。
市場価格が均衡価格より高いと、供給量が需要量を上回り、超過供給が生じます。売れ残りが出るため、価格には低下圧力がかかります。このように価格が需給の不一致を調整する考え方を、ワルラス的調整として押さえます。
特殊な供給曲線と負の価格
供給量が短期的に固定されている財では、供給曲線が垂直に描かれることがあります。この場合、需要が増えても数量は増えず、価格だけが上がります。需要が減っても数量は変わらず、価格だけが下がります。
また、廃棄や処理に費用がかかる財では、価格が負になることがあります。負の価格は、売り手が買い手へ支払ってでも引き取ってもらう状態として読みます。通常の財の価格感覚だけで判断すると誤りやすい論点です。
この章のまとめ
市場均衡の問題では、まず変化要因を需要側か供給側かに分けます。買い手の意欲や所得、代替財・補完財の価格は需要側です。技術、原材料費、補助金、規制、生産能力は供給側です。
次に、曲線を右方または左方へ動かし、新しい交点を確認します。需要右方シフトは価格と数量を上げ、供給右方シフトは数量を上げて価格を下げます。需要と供給が同時に動くときは、価格と数量のどちらが確定し、どちらが不確定かを分けます。
最後に、曲線上の移動と曲線のシフトを混同しないことが重要です。その財の価格変化なら曲線上の移動、価格以外の条件変化なら曲線のシフトです。垂直な供給曲線、超過需要・超過供給、負の価格のような特殊設定でも、この順番で整理します。
一次試験過去問での出方
2025年度第12問では、上級財について、代替財価格の下落、資産額の増加、単位当たり補助金、原材料費上昇が、需要曲線または供給曲線をどう動かすかが問われました。
2023年度第2回第11問では、健康効果に関する知見、技術進歩、生産補助金、家計所得の増大が、上級財の均衡価格を上げる要因かを判定しました。
2021年度第13問では、需要曲線と供給曲線のシフトが均衡価格に与える影響が問われました。需要右方シフトと供給左方シフトのように、価格を同じ方向へ動かす組み合わせを選ぶ力が必要でした。
2023年度第1回第12問、2021年度第14問では、垂直な供給曲線や需要曲線の下で、数量、価格、売り手収入がどう変わるかが問われました。