原価計算の種類と方法
この章で覚えておきたいこと
- 個別原価計算は、製造指図書ごとに原価を集計し、月末の状態に応じて仕掛品、製品、売上原価へ振り分けます。
- 総合原価計算は、期間総原価を完成品と月末仕掛品へ配分する方法です。完成品換算量を使って評価します。
- 材料が工程の始点で投入されるなら、月末仕掛品の材料費は100パーセント投入済みとして扱います。加工費だけ進捗度を掛けます。
- 平均法は、月初仕掛品原価と当月投入原価を合算して単位原価を出します。先入先出法は、当月加工分だけを切り出して計算します。
- 標準原価計算では、材料価格差異、材料数量差異、賃率差異、作業時間差異で、どの数量と単価を使うかを混同しないことが重要です。
- 製造間接費は、予定配賦率を使って各製品へ配賦します。差異問題では、予算差異と操業度差異の見分けが頻出です。
- ABC と部門別個別原価計算は、間接費配賦の精度を高める補助論点として出ます。中心は個別、総合、標準の3本柱です。
基本知識
個別原価計算は指図書ごとに集計します
個別原価計算は、製品や注文ごとに仕様が異なる生産に向く方法です。製造指図書ごとに、直接材料費、直接労務費、直接経費を集計し、製造間接費を配賦して製品原価を求めます。
個別原価計算で見る順番は次のとおりです。
1. 指図書ごとの直接材料費を集計します。 2. 指図書ごとの直接労務費と直接経費を集計します。 3. 製造間接費の配賦基準と配賦率を確認します。 4. 指図書へ製造間接費を配賦して、指図書別原価を求めます。 5. 月末状態に応じて、仕掛品、製品、売上原価へ振り分けます。
月末状態の判定は定番です。
- 未完成なら、仕掛品です。
- 完成したが未引渡なら、製品です。
- 完成して引渡済みなら、売上原価です。
試験では、完成しただけで売上原価へ振り替えてしまう誤りが多いです。引渡済みかどうかまで必ず確認します。
総合原価計算は完成品換算量が中心です
総合原価計算は、同種製品を大量に連続生産する場合に、一定期間の総原価を完成品と月末仕掛品へ配分する方法です。月末仕掛品は未完成なので、完成品換算量を使って評価します。
最初に確認するのは数量関係です。
- 月初仕掛品 + 当月投入 = 完成品 + 月末仕掛品 + 仕損や減損
この式で数量が合っていないと、その後の計算がすべて崩れます。先に必ず数量をそろえます。
材料と加工費は、同じように換算しません。
- 材料始点投入なら、月末仕掛品の材料費は100パーセント投入済みです。
- 加工費は、進捗度に応じて完成品換算量へ直します。
たとえば、完成品600個、月末仕掛品200個、加工進捗度50パーセント、材料始点投入なら、完成品換算量は次の考え方になります。
- 材料費は、完成品600個 + 月末仕掛品200個です。
- 加工費は、完成品600個 + 月末仕掛品200個 × 50パーセントです。
ここで材料費にも50パーセントを掛けると誤りです。進捗度を掛けるのは加工費だと固定してください。
平均法と先入先出法の違い
総合原価計算では、平均法と先入先出法の違いも頻出です。
平均法は、月初仕掛品原価と当月投入原価をまとめて扱います。したがって、単位原価は「期首分と当月分をならした平均値」になります。
先入先出法は、月初仕掛品を先に完成させたものとして扱い、当月に追加加工した分と当月着手分を分けて考えます。したがって、月初仕掛品原価をそのまま持ち込み、当月発生原価で追加加工分を計算する点が平均法と異なります。
見分け方は次のとおりです。
- 平均法:
月初仕掛品原価を当月投入原価へ混ぜます。
- 先入先出法:
月初仕掛品原価は区分して残し、当月加工分だけを別計算します。
問題文で「平均法」とあれば、月初仕掛品原価も原価計算の分子へ入ります。逆に「先入先出法」では、月初仕掛品完成に必要な当月加工量を切り出す必要があります。
標準原価計算は差異の式を使い分けます
標準原価計算は、あらかじめ定めた標準原価と実際原価を比較し、差異の原因を分析する方法です。一次試験では、材料費差異と労務費差異が中心です。
材料費差異は、次の2つに分けます。
- 材料価格差異:
実際数量を使って、実際価格と標準価格の差を見ます。
- 材料数量差異:
標準価格を使って、実際数量と標準数量の差を見ます。
覚え方は単純で、価格差異は数量を固定し、数量差異は価格を固定するです。
労務費差異も同じ考え方です。
- 賃率差異:
実際作業時間を使って、実際賃率と標準賃率の差を見ます。
- 作業時間差異:
標準賃率を使って、実際作業時間と標準作業時間の差を見ます。
ひっかけは次の2つです。
- 材料価格差異で標準数量を使わないこと
- 作業時間差異で実際賃率を掛けないこと
有利差異か不利差異かは、実際原価が標準原価より小さいか大きいかで判断します。実際価格が標準価格より低い、または実際数量が標準数量より少ないなら、有利差異です。
公式は「標準 - 実際」で置くと、有利差異がプラスになり、判断しやすくなります。
| 差異 | 公式 | 固定する要素 | |---|---|---| | 材料価格差異 | (標準価格 - 実際価格) × 実際消費量 | 実際消費量 | | 材料数量差異 | (標準消費量 - 実際消費量) × 標準価格 | 標準価格 | | 賃率差異 | (標準賃率 - 実際賃率) × 実際作業時間 | 実際作業時間 | | 作業時間差異 | (標準作業時間 - 実際作業時間) × 標準賃率 | 標準賃率 |
この表ではプラスが有利、マイナスが不利です。問題文が「実際 - 標準」型で式を置いている場合は符号が逆になるため、最後は必ず有利・不利の言葉で確認します。
製造間接費は配賦率と差異の意味を切り分けます
製造間接費は製品へ直接ひも付けにくいため、配賦基準を使って配賦します。典型的な配賦基準は、直接作業時間、機械時間、直接労務費などです。
予定配賦率の考え方は次のとおりです。
- 予定配賦率 = 製造間接費予算額 ÷ 基準操業度
各製品への配賦額は、予定配賦率に各製品の配賦基準量を掛けて求めます。
差異問題では、予算差異と操業度差異を切り分けます。
- 予算差異:
実際発生額と、実際操業度に対応した予算額との差です。
- 操業度差異:
実際操業度で配賦した額と、基準操業度ベースの固定費負担との差です。
公式法変動予算が出るときは、固定費と変動費を分けて考えます。
- 固定費は、一定範囲では操業度が変わっても総額を変えません。
- 変動費は、実際操業度に応じて予算額を修正します。
したがって、予算差異では、実際操業度に対応した変動予算額を使う必要があります。基準操業度のまま比べると誤ります。
公式法変動予算では、次の関係式を使います。
| 項目 | 公式・意味 | |---|---| | 予定配賦率 | 製造間接費予算額 ÷ 基準操業度 | | 予定配賦額 | 予定配賦率 × 実際操業度 | | 変動予算額 | 固定費予算額 + 変動費率 × 実際操業度 | | 予算差異 | 変動予算額 - 実際発生額 | | 操業度差異 | 予定配賦額 - 変動予算額 |
上の置き方では、プラスなら有利、マイナスなら不利として読みます。製造間接費差異は、どの金額同士を比べているかを図で追うより、まず「実際発生額」「変動予算額」「予定配賦額」の3点を並べると安定します。
正常仕損・減損は負担させる相手を確認する
総合原価計算では、仕損や減損を「なかったもの」として無視するのではなく、正常な範囲なら良品に負担させるのが基本です。一次試験では、詳細な会計処理よりも、どの完成品換算量に含めるか、誰に負担させるかが問われます。
| 発生点 | 基本処理 | 判断軸 | |---|---|---| | 工程の終点で発生 | 完成品に負担させる | 月末仕掛品は通常、負担しません | | 工程の途中で発生 | その発生点を通過した完成品・月末仕掛品に負担させる | 月末仕掛品の進捗度が発生点を超えたかを確認します | | 異常仕損 | 原価計算から切り離して異常損失として扱う | 正常仕損と混ぜません |
度外視法では、正常仕損の数量を分母から除くことで、良品側の単位原価に負担を含めます。問題文が平均法か先入先出法かを指定している場合は、その方法で完成品換算量を作ったうえで、仕損・減損の負担関係を乗せます。
部門別個別原価計算とABCは補助論点です
部門別個別原価計算では、補助部門費を製造部門へ配賦してから、各製造部門の間接費を製品へ配賦します。一次試験では、直接配賦法のような基本的な配賦手順が問われます。
ABC、活動基準原価計算は、間接費を活動ごとに集計し、コスト・ドライバーで製品へ配賦する方法です。伝統的な単一基準配賦よりも、間接費の因果関係を反映しやすい点が特徴です。
ただし、この章の主戦場はあくまで個別、総合、標準です。ABC や部門別個別原価計算は、間接費配賦の発展論点として整理すれば十分です。
この章のまとめ
- 個別原価計算は、指図書別集計と月末状態判定が中心です。
- 総合原価計算は、数量関係を確認したうえで、完成品換算量を材料費と加工費で分けて考えます。
- 材料始点投入なら、月末仕掛品の材料費は100パーセント、進捗度を掛けるのは加工費です。
- 平均法は月初仕掛品原価を合算し、先入先出法は当月加工分を切り出す方法です。
- 標準原価計算では、価格差異と数量差異、賃率差異と作業時間差異で、使う数量と単価を混同しないことが重要です。
- 製造間接費差異では、予定配賦率、予算差異、操業度差異の意味を切り分けます。
- ABC と部門別個別原価計算は、間接費配賦を深く問う補助論点です。
一次試験過去問での出方
2009年 第6問、2012年 第7問、2015年 第7問、2021年 第7問、2024年 第10問では、個別原価計算が出ています。製造指図書別に原価を集計し、完成、未完成、引渡済みを振り分ける形です。
2011年 第10問、2013年 第11問、2017年 第8問、2023年第1回 第10問、2025年 第12問では、総合原価計算が出ています。材料始点投入、加工進捗度、平均法、先入先出法、正常仕損や減損の扱いが定番です。
2013年 第10問、2016年 第7問、2017年 第9問、2023年第2回 第10問、2025年 第11問では、標準原価計算や原価差異が出ています。価格差異と数量差異、賃率差異と作業時間差異の式の使い分けが問われました。
2018年 第8問では部門別個別原価計算、2018年 第9問では公式法変動予算による製造間接費差異、2020年 第14問では活動基準原価計算が出ています。主論点に比べれば補助ですが、間接費配賦の考え方を問う問題として押さえておきたいです。