財務・会計
補助原価情報の利用
意思決定や利益管理における原価情報の使い方を短く整理する。
この章で覚えておきたいこと
- 原価情報は、原価計算書を作るためだけでなく、価格決定、利益管理、追加受注の可否、自製か購入かの判断に使います。
- 意思決定では、全部原価をそのまま比べるのではなく、将来発生し、案によって差が出る原価だけを見ます。これが関連原価です。
- すでに発生した原価は埋没原価なので、意思決定から外します。
- 固定費でも、ある案を選ぶと不要になるなら回避可能固定費として関連原価に含めます。
- 他の用途に使えた資源をあえて使うときは、失う便益である機会原価も判断に入れます。
- 出題実績では 自製か購入か が中心です。判断手順を短く確実に覚えるほうが得点につながります。
基本知識
原価情報は意思決定のために使います
原価情報は、製品原価の計算だけで終わりません。管理会計では、次のような判断材料として使います。
- 価格決定: 売価を決めるときに、最低限回収したい原価と確保したい利益を考えます。
- 利益管理: 売上から変動費を引いた限界利益を見て、どの商品や事業が利益に貢献しているかを確かめます。
- 追加受注: 遊休能力があるなら、増える収益と増える原価だけを比べます。
- 自製か購入か: 内製を続ける費用と外部購入費を比べ、差額で判断します。
どの場面でも共通するのは、会計上の全部原価ではなく、判断によって増減する金額を見ることです。
関連原価と関連しない原価を区別します
意思決定で見る原価は、関連原価かどうかで分かれます。
- 関連原価:
- 将来発生します。
- 案によって金額が変わります。
- 例: 追加材料費、追加労務費、外注単価、回避可能固定費
- 関連しない原価:
- すでに発生しています。
- どの案でも変わりません。
- 例: 埋没原価、共通固定費
特に区別したい用語は次のとおりです。
- 回避可能固定費: その案をやめれば発生しない固定費です。固定費でも関連原価になります。
- 埋没原価: すでに支出済みで取り戻せない原価です。判断材料に入れません。
- 機会原価: ある案を選んだために、別の用途で得られたはずの利益を失うことです。帳簿に出なくても判断では重要です。
自製か購入かは差額原価で判断します
自製か購入かでは、製造原価の総額をそのまま購入価格と比べないことが重要です。見るべきものは、自製を続けると増える原価と、購入すると増える原価です。
自製案で通常見ます。
- 直接材料費
- 直接労務費
- 変動製造間接費
- 購入すると不要になる回避可能固定費
購入案で通常見ます。
- 購入単価 × 必要数量
- 購入に伴って新たに必要になる費用
一方で、次のようなものは比較から外すのが基本です。
- すでに取得した設備の取得原価
- 購入しても残る共通固定費
- どちらの案でも変わらない配賦固定費
判断手順は次の順で十分です。
- 自製案と購入案で、将来増減する金額だけを書き出します。
- 自製案には変動費と回避可能固定費だけを入れます。
- 購入案には購入総額と追加発生費用だけを入れます。
- 両者の差額を比べて、有利な案を選びます。
追加受注でも考え方は同じです
追加受注や特別注文でも、考え方は同じです。
- 余裕がある生産能力の範囲なら、固定費の多くは増えないので、増分収益と増分原価を比べます。
- 既存販売を圧迫したり、設備の別用途をあきらめたりするなら、機会原価も含めます。
つまり、どの場面でも 全部原価ではなく差額原価を見る という姿勢が共通します。
この章のまとめ
- 原価情報は、価格決定、利益管理、追加受注、自製か購入かの判断に使います。
- 意思決定では、関連原価だけを比較します。
- 固定費でも、回避できるなら関連原価です。
- 埋没原価と共通固定費は、原則として判断から外します。
- 自製か購入かでは、全部原価ではなく差額原価を見るのが基本です。
- 迷ったら、「将来発生するか」「案によって変わるか」の2点で判定します。
一次試験過去問での出方
2019年度第10問では、部品Xを自製するか外部購入するかを比較させました。自製側では変動費に加えて、購入時に不要となる特殊機械の賃借料だけを回避可能固定費として含めます。
つまり、全部原価ではなく関連原価で比べられるかが論点です。購入しても残る固定費や、すでに支出済みの原価を入れてしまうと誤答しやすいです。