財務・会計
重要オプション取引(コールオプション、プットオプション)
コール、プット、権利行使価格、プレミアム、損益図を扱う。
オプション取引
この章で覚えておきたいこと
- コールは買う権利、プットは売る権利です。まずここを取り違えないことが最重要です。
- オプションの買い手は権利を持ち、売り手は義務を負います。したがって、買い手の最大損失は支払ったプレミアムに限定されます。
- 満期時の損益は、先にペイオフを出し、そのあとでプレミアムを足し引きして求めます。問題文が「収入」「ペイオフ」を聞いているのか、「損益」を聞いているのかを必ず確認します。
- イン・ザ・マネーかどうかは、コールなら「原資産価格が権利行使価格より高いか」、プットなら「原資産価格が権利行使価格より低いか」で判断します。
- オプション価格は本源的価値と時間的価値から成ります。本源的価値は負になりません。
- コール価値は、他の条件が一定なら、一般に原資産価格が高いほど上がり、権利行使価格が低いほど上がり、残存期間が長いほど上がり、価格変動性が高いほど上がると整理します。
- 現物株の買いとプットの買いを組み合わせるプロテクティブ・プットは、下値を守りつつ上昇益を残す典型戦略として過去問で繰り返し問われています。
基本知識
コールとプットの意味
コールオプションは、原資産をあらかじめ決めた価格で買う権利です。プットオプションは、原資産をあらかじめ決めた価格で売る権利です。あらかじめ決めた価格を権利行使価格といいます。
満期時の原資産価格を S、権利行使価格を K とすると、買い手側のペイオフは次のように表せます。
- コール買いのペイオフ:
max(S - K, 0) - プット買いのペイオフ:
max(K - S, 0)
コールは「市場で買うより安く買える」ときに価値が出ます。したがって S > K のとき有利です。プットは「市場で売るより高く売れる」ときに価値が出ます。したがって S < K のとき有利です。
この関係は通貨オプションでも同じです。たとえば将来ドル建て支払いがある企業が、一定価格でドルを買える権利を買えば、それはドルのコールオプションです。決済時の直物相場が権利行使価格より高いときに有利になります。
買い手と売り手の損益構造
オプションの買い手は、最初にプレミアムを支払います。その代わり、不利なら権利を放棄できます。よって、買い手の最大損失はプレミアムです。
一方、売り手は最初にプレミアムを受け取りますが、買い手が有利なときには権利行使に応じなければなりません。したがって、売り手の最大利益は受取プレミアムにとどまり、損失は大きくなり得ます。
基本4ポジションの損益は、次のように読むと整理しやすいです。
- コール買い
原資産価格が上がるほど利益が増えます。最大損失は支払プレミアムです。 - コール売り
最大利益は受取プレミアムです。原資産価格が大きく上がると損失が拡大します。 - プット買い
原資産価格が下がるほど利益が増えます。最大損失は支払プレミアムです。 - プット売り
最大利益は受取プレミアムです。原資産価格が下がると損失が拡大しますが、原資産価格の下限は0なので、コール売りのような理論上無限の損失にはなりません。
試験では、損失がプレミアムに限定されるのは買い手、理論上無限の損失があり得るのはコール売りという組み合わせがよく問われます。
損益図の読み方
損益図は、細かい数値よりも、どこで折れ曲がるか、左右のどちらが水平か、右上がりか右下がりかを見ると判定しやすいです。
- コール買いは、左側で損失が一定、右側で右上がりになります。
- コール売りは、その上下反転です。左側で利益が一定、右側で右下がりになります。
- プット買いは、左側で右下がり、右側で損失が一定になります。
- プット売りは、その上下反転です。左側で右上がり、右側で利益が一定になります。
折れ曲がる位置は権利行使価格です。ただし、損益が0になる位置はプレミアムの影響を受けるので、折れ点と損益分岐点は一致しないことがあります。
たとえば、行使価格1,200円のプットをプレミアム100円で買ったとき、損益分岐点は 1,200 - 100 = 1,100 円です。試験では、この「折れ点は1,200円、損益分岐点は1,100円」というずれを読ませる問題が出ています。
イン・ザ・マネーと本源的価値
オプションの状態は、次のように整理します。
- イン・ザ・マネー
今すぐ行使すると利益が出る状態です。 - アット・ザ・マネー
原資産価格と権利行使価格が等しい状態です。 - アウト・オブ・ザ・マネー
今すぐ行使しても利益が出ない状態です。
コールなら S > K でイン・ザ・マネー、S = K でアット・ザ・マネー、S < K でアウト・オブ・ザ・マネーです。プットは逆に、S < K でイン・ザ・マネーになります。
本源的価値は、「今すぐ行使したらいくら得か」を表します。
- コールの本源的価値:
max(S - K, 0) - プットの本源的価値:
max(K - S, 0)
重要なのは、本源的価値は負にならないことです。行使して損なら、買い手は行使しないからです。したがって、アウト・オブ・ザ・マネーでも本源的価値は0で止まります。
時間的価値とオプション価格の決まり方
オプション価格は、本源的価値 + 時間的価値で表せます。時間的価値は、「満期までに有利な方向へ動くかもしれない」という可能性に対する価値です。
本源的価値が0でも、時間的価値が正ならオプション価格は正になります。ただし、ここで価値があるのはオプションを保有したり売却したりする価値であって、今すぐ行使する価値ではありません。この点は頻出のひっかけです。
コールオプション価値の方向性は、過去問で繰り返し問われています。基本的には次の向きで覚えます。
- 原資産価格が高いほど、コール価値は上がります。
- 権利行使価格が高いほど、コール価値は下がります。
- 残存期間が長いほど、時間的価値が乗りやすくなります。
- 価格変動性が高いほど、上振れ余地が広がるため価値は上がりやすくなります。
- 金利が高いほど、コール価値は上がる方向に働きます。
特に、価格変動性が高いほどコール価値が下がると書かれていたら誤りです。コールの損益は上方に凸なので、変動が大きいほど価値は高まりやすいと考えます。
プロテクティブ・プットの考え方
現物株の買いとプットの買いを組み合わせる戦略をプロテクティブ・プットといいます。これは、保有株式に保険をかけるイメージです。
株価が権利行使価格より下がったときは、プットの利益で株式の損失を埋めることができます。株価が上がったときは、プットを使わずに株式の上昇益をそのまま受けられます。つまり、下値は守りつつ、上値は残せる戦略です。
満期時価値は、株式1株とプット1単位の組み合わせなら S + max(K - S, 0) となります。これは max(S, K) と同じ意味で、満期時価値が権利行使価格を下回らないことを表しています。
この戦略は、数値計算でも損益図でも頻出です。文章題では「株式保有者が下落リスクを抑えるためにプットを買う」と表現されやすく、図表問題では「左側が水平で、右側が右上がり」の形として出やすいです。
この章のまとめ
- 最初に、コールかプットか、買い手か売り手かを判定します。
- 次に、原資産価格
Sと権利行使価格Kを比べて、イン・ザ・マネーかどうかを判断します。 - 「ペイオフ」を聞かれたらプレミアムを入れず、「損益」を聞かれたらプレミアムを加減します。
- 買い手の最大損失はプレミアムです。売り手はプレミアムを超える損失を負う可能性があります。
- コール売りは理論上無限の損失があり得ますが、プット売りの損失は有限です。
- 本源的価値は負になりません。時間的価値が正でも、直ちに行使する価値があるとは限りません。
- 図形問題では、折れ点、左右の傾き、どちら側が水平かを見ると判定しやすいです。
- 通貨オプションでは、円高・円安という言葉に引きずられず、「何をいくらで買う権利か、売る権利か」に戻して考えます。
一次試験過去問での出方
2007年第15問では、株式の買いとプットの買いを組み合わせたプロテクティブ・プットが出題され、下値が権利行使価格で守られる構造を読ませました。
2009年第19問設問1・設問2では、損益図からコール買いとコール売りを識別し、買い手の最大損失がプレミアムに限定されることを問いました。
2012年第21問と2023年度第2回第21問では、イン・ザ・マネー、アット・ザ・マネー、本源的価値の判定が問われました。
2014年第22問と2021年第23問では、コール価値に影響する要因や、買い手と売り手の損失上限の違いが出題されました。
2017年第25問では、プット買いの損益図、権利行使価格、プレミアム、損益分岐点の関係が問われました。
2018年第15問と2019年第14問では、本源的価値と時間的価値の違い、本源的価値が0でも時間的価値がある場合の考え方が問われました。
2024年第24問では、通貨コールオプションについて、イン・ザ・マネーの判定と、オプション料を含めた総支出の比較が問われました。