財務・会計
最優先最適資本構成(財務レバレッジ、モジリアーニ・ミラー(MM)理論)
財務レバレッジ、MM理論、法人税、倒産コスト、企業価値を厚く扱う。
最適資本構成
この章で覚えておきたいこと
最適資本構成は、この章の中核です。負債と自己資本の組み合わせが、ROE、WACC、企業価値にどう影響するかを整理します。
- 財務レバレッジ は、負債を使うことで自己資本利益率や利益変動が増幅する効果です。
- ROA が負債利子率を上回る と、負債導入でROEは上がりやすいです。
- MM理論 は、前提によって結論が変わります。法人税なしと法人税ありを切り分けます。
- 法人税ありMM理論 では、負債の節税効果で企業価値が上がります。
- 現実の最適資本構成は、節税効果と倒産コストの トレードオフ で考えます。
- ペッキングオーダー仮説 は、内部資金、負債、株式の順で調達を選びやすいという考え方です。
このトピックは計算問題と文章問題の両方で頻出です。とくに、法人税の有無で結論が変わる点を曖昧にしないことが重要です。
基本知識
最適資本構成とは何か
最適資本構成とは、企業価値を最大にし、結果としてWACCを最小にする負債と自己資本の組み合わせです。負債を増やせばよい、自己資本を厚くすればよい、という単純な話ではなく、資金調達のメリットとデメリットを比較して決まります。
財務レバレッジの基本
財務レバレッジは、負債を使うことで自己資本に帰属する利益率が拡大する仕組みです。営業利益が好調ならROEを押し上げ、不調なら逆にROEを大きく押し下げます。
税金を考えない基本形は、次の式で整理できます。
ROE = ROA + (ROA - 負債利子率) × D/E
この式から分かるのは、ROA と負債利子率の差 が勝負だということです。ROAが高ければレバレッジはプラスに働き、ROAが低ければマイナスに働きます。
2023年の過去問でも、総資本営業利益率10%、負債利子率3%、D/E=1の条件から、ROEを17%と計算させる問題が出ました。式を知っていれば短時間で解けます。
MM理論の法人税なし
モジリアーニ・ミラー理論の基本形では、完全市場で法人税も倒産コストもないと仮定します。この世界では、資本構成を変えても企業価値もWACCも変わりません。
結論は次の2つです。
- 企業価値は資本構成に依存しません。
- WACCは一定です。
負債比率が上がると自己資本コストは上がりますが、その上昇分がちょうど相殺されるため、企業全体の価値は変わらないと考えます。
MM理論の法人税あり
法人税だけを導入すると、負債利子を損金算入できるため、節税効果が生まれます。このときの頻出式は次です。
V_L = V_U + Tc × D
V_Lは負債利用企業価値V_Uは無借金企業価値Tcは法人税率Dは負債額
つまり、法人税率 × 負債額 だけ企業価値が上乗せされます。2023年の過去問でも、負債5億円、法人税率20%から、企業価値増加額1億円を求める形で問われました。
現実の最適資本構成
現実には、負債を増やしても企業価値が無限に高まるわけではありません。負債が増えると、次のコストが大きくなります。
- 倒産リスクの上昇
- 財務的窮境コスト
- 信用低下による追加コスト
- エージェンシーコスト
そのため、実務では 節税効果のメリット と 倒産コストなどのデメリット のバランスで最適資本構成を考えます。これがトレードオフ理論です。
ペッキングオーダー仮説
ペッキングオーダー仮説では、企業は情報の非対称性や発行コストを背景に、次の順で資金調達を好むとされます。
- 内部資金
- 負債
- 株式
株式発行は、経営者が株価を割高・割安と見ているのではないかと市場に疑われやすく、既存株主の持分希薄化もあるため、最後に選ばれやすいと考えます。
試験での判断軸
最適資本構成の問題では、次の4つを切り分けて処理します。
- ROEの計算問題か
- MM理論の前提判定か
- 法人税ありMM理論の企業価値増加額の計算か
- 現実の最適資本構成やペッキングオーダーの文章判定か
一見似ていても、使う式と論点が違います。営業利益と利子率が出てきたらROE、法人税率と負債額だけが出てきたら Tc × D をまず疑います。
この章のまとめ
最適資本構成は、財務レバレッジとMM理論をつなげて理解すると整理しやすいです。
- ROAが負債利子率を上回れば、負債はROEを高めやすいです。
- 法人税なしMM理論では、資本構成を変えても企業価値とWACCは不変です。
- 法人税ありMM理論では、節税効果の分だけ企業価値が上がります。
- 現実では、倒産コストや信用低下もあるので、負債を増やしすぎれば逆効果になります。
- 調達順序は、内部資金、負債、株式の順で覚えます。
ひっかけは、法人税なしと法人税ありの結論を混同すること、Tc × D の式を忘れること、ROE計算で利息控除や自己資本額を誤ることです。この章は出題数が多いので、計算型と文章型の両方に慣れておきます。
一次試験過去問での出方
最適資本構成は、2007年から2023年まで反復出題されている章の中心論点です。
2008年、2017年、2020年、2021年、2023年はMM理論の前提判定、2010年、2014年、2019年、2023年はTc × Dによる企業価値増加額、2012年、2019年、2023年は財務レバレッジによるROE計算が問われました。
「ROAと負債利子率の比較」「法人税の有無」「企業価値かROEか」を最初に見分けると、難しそうな設問でも落ち着いて処理できます。