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NARITAI

財務・会計

標準

予算・実績差異分析

予算差異、価格差異、数量差異、標準原価差異を整理する。

この章で覚えておきたいこと

予算と実績の差を価格差異、数量差異、有利不利、変動予算の視点で整理する図解

差異分析は、計画と実績の差を見つけるだけではなく、その差が何によって生じたかを分解するための考え方です。一次試験では、売上差異、材料費差異、労務費差異、固定費差異を価格要因と数量要因に切り分けられるかが中心になります。

  • 売上差異は、販売価格の差と販売数量の差に分けて考えます。
  • 材料費差異は価格差異と数量差異、労務費差異は賃率差異と能率差異に分けます。
  • 売上と原価では、有利差異と不利差異の向きが逆になります。
  • 操業度が変わる問題では、静態予算ではなく変動予算で比較する視点が重要です。

基本知識

差異分析の目的

予算と実績の差を価格、数量、効率などの原因へ分けて改善につなげることを示す図解

予算や標準と実績の差には、単価のズレ、数量のズレ、作業効率のズレなど複数の原因が混ざっています。差異分析は、その原因を分けて改善につなげるための道具です。

単に「予算より悪かった」と見るだけでは、販売価格が下がったのか、販売数量が減ったのか、材料を余分に使ったのかが分かりません。一次試験では、この原因分解の発想を数式で扱えるかが問われます。

売上差異

売上差異を販売価格の違いと販売数量の違いへ分けて見ることを示す図解

売上高の差は、価格差異と数量差異に分けて考えるのが基本です。細かな式の流儀は問題により異なりますが、標準価格と実際価格、標準数量と実際数量のどこを比べているかを押さえれば対応できます。

  • 売上価格差異は、販売価格の違いによる差です。
  • 売上数量差異は、販売数量の違いによる差です。

数量差異では標準価格を掛ける構成が多く、価格差異では実際数量を掛ける構成がよく使われます。2021年の過去問では、売上面と原価面の差異をまとめて読ませるため、どの基準で比較しているかを落ち着いて確認する必要がありました。

材料費差異と労務費差異

材料費差異を価格差異と数量差異に、労務費差異を賃率差異と能率差異に分ける対応関係を示す図解

標準原価計算では、材料費差異を価格差異と数量差異に、労務費差異を賃率差異と能率差異に分けます。

材料価格差異 = (実際価格 - 標準価格) × 実際数量

材料数量差異 = (実際数量 - 標準数量) × 標準価格

労務費賃率差異 = (実際賃率 - 標準賃率) × 実際時間

労務費能率差異 = (実際時間 - 標準時間) × 標準賃率

材料数量差異や能率差異では、数量面や時間面のムダがないかを見ます。2010年の過去問では、材料費差異と労務費差異の分解そのものがストレートに問われました。

有利差異と不利差異

売上は実績が大きいほど有利、原価は実績が小さいほど有利になることを示す図解

差異分析で混乱しやすいのは、売上と原価で有利差異の意味が逆になる点です。

  • 売上差異では、実績売上が大きい方向が有利です。
  • 原価差異では、実績原価が大きい方向が不利です。

したがって、同じプラスの差でも、売上なら良い差、原価なら悪い差という場合があります。数式の符号だけで判断せず、何を比べた差なのかを必ず確認します。

静態予算と変動予算

静態予算と変動予算を比較し、実際操業度に合わせて変動費を組み替える考え方を示す図解

静態予算は、当初の操業度のまま比較する予算です。一方、変動予算は、実際操業度に合わせて変動費部分を調整した予算です。

操業度が大きく変わると、静態予算のままでは、数量の増減による差と単価・能率による差が混ざってしまいます。そのため、変動費を実際操業度に合わせて組み替えた変動予算を用いると、差の原因を切り分けやすくなります。2012年の過去問は、この違いを理解していないと判断しにくい構成でした。

固定費差異の見方

固定費差異を予算額、実績額、標準配賦額の違いとして読み、操業度差も確認することを示す図解

固定費差異では、予算額と実績額の差だけでなく、操業度差や予算差異に分ける考え方が出ることがあります。固定費自体は操業度に応じて比例しないため、変動費差異と同じ感覚で読むと混乱します。

2011年の過去問では、固定費の標準配賦額や操業度差の考え方が問われ、固定費も「予算との差」「配賦との差」という複数の見方があることを確認する内容でした。

この章のまとめ

予算差異分析の最後に売上原価、価格数量、標準単価、操業度、固定費を確認する図解

差異分析では、まず売上差異か原価差異かを見分け、そのうえで価格要因と数量要因に分解します。売上は大きいほど有利、原価は小さいほど有利という基本を外さなければ、符号の混乱をかなり防げます。

  • 売上差異では、販売価格と販売数量のどちらがズレたかを分けて見ます。
  • 材料費差異と労務費差異では、価格差異と数量差異、賃率差異と能率差異の対応を固定します。
  • 数量差異や能率差異では標準単価や標準賃率を掛ける構成が基本です。
  • 操業度が変わっているときは、静態予算ではなく変動予算で見る必要がないかを確認します。
  • 固定費差異は、変動費と同じ感覚で比例計算せず、予算額と配賦の考え方を分けて読みます。

一次試験過去問での出方

  • 2009年 第9問: 売上差異を価格差異と数量差異へ分解する基本問題。
  • 2010年 第11問: 材料費差異と労務費差異を標準原価差異として分けて考える問題。
  • 2011年 第12問: 固定費差異の見方と配賦額の扱いを問う問題。
  • 2012年 第8問: 静態予算と変動予算の違いを前提にした差異分析。
  • 2015年 第8問: 予算差異分析の基本概念と差異の読み方。
  • 2021年 第8問: 売上差異と原価差異を横断して、どこが有利差異か不利差異かを判断する総合問題。

差異分析は、公式暗記だけでなく「何を基準に比べているか」を読めるかが重要です。一次試験では、売上と原価で有利差異の向きが逆になる点が繰り返し狙われています。