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財務・会計

標準

資金繰りと資金計画

資金収支、運転資金、売上債権・棚卸資産・仕入債務の関係を押さえる。

この章で覚えておきたいこと

資金繰りで利益と資金のズレ、運転資金、残高推移、最小残高を最初に押さえる図解

利益が出ていても、現金が足りないことは普通に起こります。一次試験の資金繰り分野では、この「利益と資金のズレ」を正しく説明できるか、さらにそのズレを月次の資金計画や運転資金の式に落とし込めるかが問われます。

  • 売上や費用は発生主義で計上されるため、現金の入出金時期とは一致しません。
  • 売上債権や棚卸資産が増えると資金が寝て、仕入債務が増えると支払を先送りできるため資金負担が軽くなります。
  • 資金繰り表では、営業収支だけでなく借入や設備投資も含めて残高を見ます。
  • 借入必要額は月末残高だけでなく、期間中の最小残高や前払利息の控除後手取りで判断します。

基本知識

利益と現金は一致しない

損益計算書の利益は、取引が発生した時点で認識する発生主義で計算されます。一方、資金繰りは、実際に現金がいつ入って、いつ出ていくかで判断します。

売上を計上しても、まだ回収前なら売掛金であり現金は増えていません。逆に、仕入や経費を計上しても、支払前なら買掛金や未払費用であり現金はまだ減っていません。このズレが、黒字倒産という現象の背景になります。

利益と現金のタイミング差を、店舗の売掛金・未払費用・在庫で説明する図解

2012年の過去問では、減価償却費のような非資金費用や、売掛金、買掛金、棚卸資産の増減が利益と資金をどうずらすかが問われました。

資金繰り表の見方

資金繰り表は、一定期間の現金収入と現金支出を時系列で並べ、資金残高が不足しないかを確認する表です。月次で作る問題が多く、経常収支と経常外収支に分ける形もあります。

  • 経常収入には売上代金回収など、営業活動による入金が入ります。
  • 経常支出には仕入代金支払、人件費支払、経費支払などが入ります。
  • 経常外収入には借入金受取や固定資産売却収入が入ります。
  • 経常外支出には借入返済、設備購入、配当支払などが入ります。
月次の入金・出金と繰越残高から資金不足を確認する資金繰り表の図解

2009年の過去問では、各月の収支と繰越残高をつないで、資金ショートが起きる月を読ませる形で出題されました。

運転資金

日常の営業活動を回すために必要な資金を運転資金といいます。一次試験では、まず次の基本式を押さえます。

運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 - 仕入債務

売上債権は、売上計上済みでも未回収の資金です。棚卸資産は、まだ売上回収に変わっていない資金です。仕入債務は、仕入済みでも未払いであるため、資金負担を軽くする方向に働きます。

売上債権・棚卸資産・仕入債務から運転資金の増減方向を整理する図解

したがって、売上債権や棚卸資産が増えると必要運転資金は増え、仕入債務が増えると必要運転資金は減ります。2021年の過去問は、この増減方向をそのまま問う基本問題でした。

回収サイトと支払サイト

同じ利益水準でも、売掛金の回収が遅くなれば資金繰りは厳しくなります。逆に、買掛金の支払サイトが長ければ、その分だけ手元資金を長く確保できます。

  • 回収サイトが長いほど、売上債権が増えやすくなります。
  • 在庫保有期間が長いほど、棚卸資産に資金が滞留しやすくなります。
  • 支払サイトが長いほど、仕入債務で資金負担を後ろへずらせます。
仕入から在庫・販売・回収・支払までのサイトが資金繰りに与える影響の図解

この3つの関係を押さえると、なぜ成長企業ほど運転資金が重くなることがあるのかも説明しやすくなります。

借入必要額の考え方

資金計画では、最終月末残高がプラスでも安心できません。月中に一時的な資金不足があれば、その時点を埋める借入が必要です。2022年の過去問では、月末ではなく期間中最小残高を見る発想が重要でした。

さらに、借入時に利息が天引きされる前払利息方式では、必要手取り額より大きい元本を借りる必要があります。必要手取り額をそのまま借入額にすると不足します。

期間中最小残高と前払利息を踏まえて借入必要額を逆算する図解

たとえば、必要手取り額が100で利率が2%なら、借入元本は 100 ÷ (1 - 0.02) のように逆算します。一次試験では、この逆算がそのまま狙われます。

この章のまとめ

資金繰りの問題では、利益の式ではなく現金の流れに頭を切り替えることが最優先です。損益計算書で黒字でも、売掛金、在庫、設備投資、借入返済が重なれば資金は不足します。

資金繰り表・運転資金・最小残高・前払利息をまとめて復習する図解
  • 利益と資金の違いは、発生主義と現金主義のズレから生まれます。
  • 運転資金は 売上債権 + 棚卸資産 - 仕入債務 で見て、増減方向を逆にしないようにします。
  • 資金繰り表では、経常収支だけでなく借入や設備投資も含めて時系列で残高を追います。
  • 借入必要額は、月末残高だけでなく期間中最小残高で判断します。
  • 前払利息付き借入では、必要手取り額から元本を逆算します。

一次試験過去問での出方

  • 2009年 第11問: 資金繰り表を読み取り、各月の収支と繰越残高を判断する問題。
  • 2012年 第12問: 利益と資金の違いを、減価償却費や運転資金増減と関連づけて問う問題。
  • 2021年 第13問: 運転資金の基本式と、売上債権、棚卸資産、仕入債務の増減方向を確認する問題。
  • 2022年 第13問 設問1・2: 最低必要借入額と、前払利息がある借入の逆算を問う問題。

資金繰り分野では、「黒字なら安全」という思い込みが典型的な誤答につながります。一次試験では、現金化のタイミングまで追えるかがそのまま得点差になります。