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財務・会計

標準

キャッシュ・フロー管理(フリー・キャッシュ・フロー、運転資金の管理、キャッシュ・フロー関連比率)

FCF、運転資金、営業CF、キャッシュ・フロー関連比率を扱う。

この章で覚えておきたいこと

キャッシュ・フロー管理で最初に覚える営業CF、運転資金、FCF、比率の要点の図解

キャッシュ・フロー管理では、利益がどれだけ現金として残るかを追います。一次試験では、営業CFの調整項目、フリー・キャッシュ・フローの意味、運転資金増減の方向、キャッシュ・フロー関連比率の分母分子が頻出です。

  • 利益をそのまま現金とみなさず、非資金費用や運転資金増減を調整して営業CFを考えます。
  • 売上債権増加と棚卸資産増加は営業CFにマイナス、仕入債務増加はプラスです。
  • フリー・キャッシュ・フローは、営業活動で稼いだ現金から設備投資などを差し引いた後の余力です。
  • キャッシュ・コンバージョン・サイクルや営業CF比率は、現金化の速さや返済余力を見る指標です。

基本知識

営業CFの考え方

損益計算書の利益には、現金支出を伴わない費用や、まだ回収していない売上が含まれます。そのため、営業CFでは利益を起点に調整を入れます。

  • 減価償却費は費用ですが現金支出を伴わないため加算します。
  • 売上債権の増加は、売上は計上したが未回収なので減算します。
  • 棚卸資産の増加は、資金が在庫に滞留しているので減算します。
  • 仕入債務の増加は、まだ支払っていない分だけ現金が残るので加算します。
利益から営業CFへ調整する項目の図解

2010年の過去問は、この増減方向をそのまま問う基本問題でした。見た目の利益増加と営業CF増加を同じに考えないことが大切です。

フリー・キャッシュ・フロー

フリー・キャッシュ・フローは、企業が営業活動で生み出した現金から、事業維持や成長のために必要な投資を差し引いた後に自由に使える現金です。

代表的な見方は次のとおりです。

FCF = 営業CF - 設備投資額

問題によっては、税引後営業利益を起点にして、

FCF = 税引後営業利益 + 減価償却費 - 設備投資額 - 運転資金増加額

のように表されることもあります。2014年、2023年第2回の過去問では、この形で設備投資や運転資金増加をどちら向きに調整するかが問われました。

営業CFから設備投資と運転資金増加を差し引いてFCFを考える図解

運転資金管理と正味運転資本

キャッシュ・フロー管理でも、運転資金の増減は重要です。正味運転資本は、営業循環に必要な資金の滞留を表し、基本的には売上債権、棚卸資産、仕入債務の関係で見ます。

正味運転資本 = 売上債権 + 棚卸資産 - 仕入債務

売上債権、棚卸資産、仕入債務と正味運転資本の関係の図解

この値が増えると、それだけ資金が営業循環に取られるため、営業CFやFCFにはマイナスに効きます。2023年第1回、第2回の問題では、この増減方向をCF問題へつなげる構成が見られました。

キャッシュ・コンバージョン・サイクル

キャッシュ・コンバージョン・サイクルは、仕入から販売、回収までの間、どれだけ現金が拘束されるかを日数で示す指標です。

CCC = 売上債権回転日数 + 棚卸資産回転日数 - 仕入債務回転日数

仕入から販売、回収までのキャッシュ・コンバージョン・サイクルの図解

CCCが短いほど、現金回収が速く、資金効率がよいと考えられます。逆に、売上債権回収が遅れたり在庫日数が長くなったりするとCCCは長くなります。2023年第1回では、この日数感覚と運転資金のつながりが問われました。

キャッシュ・フロー関連比率

キャッシュ・フロー関連比率は、売上、資産、負債と営業CFを比べて、現金創出力や返済余力を測る指標群です。

  • 売上高営業CF比率は、売上高に対してどれだけ営業CFを生み出せているかを見ます。
  • 総資本営業CF比率は、保有資産がどれだけ現金創出につながっているかを見ます。
  • 債務償還年数は、有利子負債を営業CFで何年で返せるかを見る考え方です。
営業CFを売上高、総資本、有利子負債と比べるキャッシュ・フロー関連比率の図解

2011年と2025年の過去問では、分子に営業CFを置くのか当期純利益を置くのか、分母に売上高を置くのか有利子負債を置くのかを取り違えないかが狙われました。

営業CF、投資CF、財務CFの区分

キャッシュ・フロー計算書では、現金の流れを営業活動、投資活動、財務活動に分けます。

  • 営業CFは本業の収入と支出に関する現金の流れです。
  • 投資CFは固定資産の取得や売却、有価証券投資などに関する流れです。
  • 財務CFは借入、返済、増資、配当など資金調達と返済の流れです。
営業CF、投資CF、財務CFを取引内容で区分する図解

2012年の過去問では、この区分そのものを正しく整理できるかが問われました。

この章のまとめ

営業CF調整、FCF、キャッシュ・フロー関連比率を計算前に確認する図解

キャッシュ・フロー管理では、利益から現金へ置き換える調整を正しく追えるかが基本です。特に、減価償却費は足す、運転資金増加は引く、設備投資はFCFを減らすという3点は頻出です。

  • 営業CFでは、非資金費用を加算し、運転資金の増減を反映します。
  • 売上債権増加と棚卸資産増加はマイナス、仕入債務増加はプラスです。
  • FCFは営業活動で稼いだ現金から投資額を引いた余力として見ます。
  • 正味運転資本が増えると、その分だけ営業CFやFCFは圧迫されます。
  • 比率問題では、分子と分母を日本語で言い換えて意味を確認すると誤りにくくなります。

一次試験過去問での出方

  • 2010年 第12問: 営業CFを求める際の運転資金増減の方向を問う問題。
  • 2011年 第13問: キャッシュ・フロー関連比率の分子分母と意味を問う問題。
  • 2012年 第14問: 営業CF、投資CF、財務CFの区分を確認する問題。
  • 2014年 第13問: フリー・キャッシュ・フローの計算と設備投資の扱いを問う問題。
  • 2023年 第1回 第13問: 営業CFとキャッシュ・コンバージョン・サイクルのつながりを問う問題。
  • 2023年 第2回 第12問・第13問: FCF、運転資金管理、営業CF調整を横断する総合問題。
  • 2025年 第21問: キャッシュ・フロー関連比率をまとめて判定する問題。

最近の出題では、単独の公式暗記よりも、運転資金の増減とCFの向きを同時に判断させる形が増えています。売上債権、棚卸資産、仕入債務の3項目を即座にプラス・マイナスへ変換できるようにしておくことが重要です。