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投資評価基準

この章で覚えておきたいこと

投資評価基準で最初に覚えるNPV、IRR、PI、回収期間法、ARR、関連キャッシュフロー、税引後営業キャッシュフローの要点図解

基本知識

投資評価基準の全体像

投資評価基準の評価軸をNPV、IRR、PI、回収期間法、ARRに分けて示す図解

投資評価基準は、何を重視するかで役割が分かれます。

試験では、まず 金額指標か、率指標か、効率指標か、会計利益指標か を切り分けると誤りにくくなります。

NPV法

NPV法で将来キャッシュフローを現在価値に戻し初期投資額を差し引く考え方の図解

NPV は、将来キャッシュフローの現在価値合計から初期投資額を差し引いた金額です。

NPV = 将来キャッシュフローの現在価値合計 - 初期投資額

各期のキャッシュフローを CF1, CF2, ... , CFn、割引率を r、初期投資額を I0 とすると、考え方は次のとおりです。

NPV = CF1 / (1 + r) + CF2 / (1 + r)^2 + ... + CFn / (1 + r)^n - I0

判断基準は明快です。

NPV 法が最重要なのは、企業価値の増加額を直接示すからです。問題文に 企業価値、価値増大、株主価値 という語があれば、まず NPV を基準に考えます。

2025 年第 17 問では、初期投資は第 1 期首、つまり時点 0 なので割り引かない ことが問われました。初期投資まで割り引く誤りは頻出です。

IRR法

IRRをNPVがゼロになる割引率として資本コストと比較する図解

IRR は、NPV を 0 にする割引率です。

0 = 将来キャッシュフローの現在価値合計 - 初期投資額

判断基準は、IRR と資本コストの比較です。

通常型投資、つまり 最初にマイナス、その後はプラスのキャッシュフロー という形では、IRR 法と NPV 法の採否は一致しやすいです。2024 年第 17 問は、永続年金の形でも IRR 12.5% > 資本コスト 10%、かつ NPV > 0 となる典型でした。

ただし、IRR 法には限界があります。

2025 年第 19 問は、この 複数 IRR を正しく指摘できるかを問う問題でした。

PI法

PI法で現在価値合計を初期投資額で割り投資効率を見る図解

PI は、将来キャッシュフローの現在価値合計を初期投資額で割った指標です。

PI = 将来キャッシュフローの現在価値合計 ÷ 初期投資額

判断基準は次のとおりです。

PI は効率指標なので、投資額が違う案では有用ですが、相互排他的投資案では注意が必要です。2021 年第 19 問では、NPV 法では設備 B、PI 法では設備 C が採択となり、両者の結論が分かれました。

PI と NPV の関係も押さえておきます。

PI = 1 + NPV ÷ 初期投資額

したがって、PI は NPV そのものではありません。2008 年第 23 問でも、PI を NPV ÷ 投資額とする誤り が問われました。

回収期間法と割引回収期間法

回収期間法と割引回収期間法でキャッシュフローを累計して初期投資の回収時点を探す図解

回収期間法は、初期投資を何年で回収できるかを見る方法です。毎年のキャッシュフローが一定なら、次のように考えます。

回収期間 = 初期投資額 ÷ 年間キャッシュフロー

キャッシュフローが毎年異なる場合は、各期のキャッシュフローを累計して初期投資額に達する時点を探します。

回収期間法の長所は、簡単で資金回収の早さを見やすいことです。一方で短所も明確です。

割引回収期間法は、各期のキャッシュフローを割り引いてから累計するので、時間価値は考慮します。ただし、回収後を見ない 弱点は残ります。また、2025 年第 19 問で問われたとおり、キャッシュフローが不均一でも適用可能 です。

ARR法

ARR法で会計利益と平均投資額を使い投資収益性を見る図解

ARR は、会計利益を使って投資の収益性を見る方法です。

代表的には、次のように表します。

ARR = 年平均会計利益 ÷ 平均投資額

ただし、試験では分母や分子の定義を問題文が指定することがあります。必ずその定義に従います。

ARR 法のポイントは次のとおりです。

2008 年第 24 問では、税引後キャッシュフロー 220 万円から 税引後利益 120 万円 を逆算できるかが問われました。税引後キャッシュフローが与えられているのに、もう一度税率を掛ける誤りに注意します。

税引後営業キャッシュフローと終価

税引後営業キャッシュフローと最終年度の残存価額や運転資金回収を確認する図解

設備投資の NPV 問題では、税引後営業キャッシュフロー を正しく作れるかが得点差になります。

基本形は次の 2 つです。

減価償却費は現金支出ではありませんが、課税所得を減らすため 税効果 を通じてキャッシュフローに影響します。

最終年度は次の項目を落とさないことが重要です。

2009 年第 16 問は、減価償却の税シールドを使った税引後営業キャッシュフローの基本問題でした。2025 年第 18 問は、そこに 残存価額の現在価値 を加える直近の代表例です。

関連キャッシュフロー

関連キャッシュフローとして含める増分キャッシュフローと除外する埋没原価を仕分ける図解

投資評価に含めるのは、その投資案を採用するかどうかで変化する将来キャッシュフロー です。これを 関連キャッシュフロー と呼びます。

含めるものは次のとおりです。

含めないものは、すでに支出して回収不能な過去の支出 です。これが 埋没原価 です。

2024 年第 18 問は、この整理をそのまま聞いてきました。

相互排他的投資案で NPV を優先する理由

相互排他的投資案でIRRやPIではなくNPV最大基準を優先する理由の図解

相互排他的投資案とは、複数の案のうち 1 つしか選べない 関係にある投資案です。この場合、最終判断は NPV 最大基準 で行います。

その理由は、NPV が 企業価値の増加額 を直接示すからです。

IRR や PI が NPV とずれる主な理由は次の 2 つです。

たとえば、小さな投資で高い IRR を出す案よりも、大きな投資でより大きな NPV を生む案のほうが、企業価値を多く増やすことがあります。2014 年第 16 問は、IRR は X 案が高いが、NPV は Y 案が高い 場面を扱いました。2022 年第 21 問も、IRR だけで相互排他的投資案を判定すると企業価値最大化と整合しない と問うています。

資金制約があるときでも、原則は 総 NPV 最大化 です。2012 年第 18 問では、同額投資の複数案から NPV 合計が最大 になる組み合わせを選ばせています。

資本コストの使い分け

投資案ごとのリスクに対応した資本コストで採否を判断する図解

IRR や NPV の判断では、比較相手となる割引率が重要です。ここで使うべきなのは、その投資案のリスクに対応した資本コスト です。

2023 年第 1 回第 17 問では、リスクの高い H 事業部と低い L 事業部で、同じ全社平均資本コストを使ってはいけないことが問われました。投資案の採否は、案件に対応する資本コスト と比較して判断します。

したがって、試験で事業部別や案件別のリスク差が与えられたら、全社一律の WACC を機械的に使わないようにします。

この章のまとめ

投資評価基準のまとめとしてNPV最大、IRRとPIの限界、関連キャッシュフロー、税効果、終価チェックを確認する図解

一次試験過去問での出方

代表論点は、次のように分類して復習します。

| 年度 | 主な論点 | 復習先 |

|---|---|---|

| 2013年・2015年・2016年 | NPV、IRR、回収期間、税引後CFの基本計算 | NPV法、IRR法、税引後営業CF |

| 2018年・2019年 | 投資案比較、関連CF、資本制約 | 相互排他的投資案、関連キャッシュフロー |

| 2021年・2022年 | PIとNPVの結論差、IRRの限界 | PI法、相互排他的投資案 |

| 2024年 | IRRとNPVの採否、埋没原価・機会原価 | IRR法、関連キャッシュフロー |

| 2025年 | NPV計算、税引後営業CF、複数IRR、投資評価基準の正誤 | NPV法、税引後営業CF、IRR法 |

- 2008年 第23問では、IRR、PI、回収期間法の定義と性質がまとめて問われました。PI は NPV ÷ 投資額ではない こと、回収期間法は回収後を見ない ことが基本です。

- 2008年 第24問では、ARR 法の前提となる 税引後キャッシュフローから税引後利益を逆算する 問題が出ました。

- 2009年 第16問では、税引後営業キャッシュフロー と 減価償却の税効果 を使った NPV 計算が出題されました。

- 2012年 第18問では、資金制約下で NPV 合計が最大 になる投資案の組み合わせを選ばせています。

- 2014年 第16問では、相互排他的投資案で IRR と NPV の順位が逆転 する場面が出題され、最終判断は NPV 基準で行うことを確認させています。

- 2021年 第19問では、NPV 法と PI 法で採択案が分かれる 典型問題が出ました。

- 2022年 第21問では、回収期間法は回収後を無視する こと、IRR 法は相互排他的投資案で企業価値最大化と整合しないことがある ことが問われました。

- 2023年 第1回 第17問では、事業部ごとのリスク差を踏まえ、案件に対応した資本コスト で IRR を比較する問題が出ました。

- 2024年 第17問では、永続年金を使って IRR と NPV の採否が通常型投資では一致する ことが問われました。

- 2024年 第18問では、埋没原価は除外し、機会原価やカニバリゼーションは含める という関連キャッシュフローの原則がそのまま出ました。

- 2025年 第17問では、初期投資は時点 0 なので割り引かない ことを前提に、NPV を正確に計算させています。

- 2025年 第18問では、税引後営業キャッシュフロー、減価償却の税効果、残存価額の現在価値 をそろえて NPV を求めさせました。

- 2025年 第19問では、IRR は複数存在し得る、PI は NPV と常に整合しない、割引回収期間法は不均一キャッシュフローにも使える という典型論点が正誤問題で問われました。