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財務・会計

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投資評価基準(回収期間法、会計的投資利益率法、内部収益率(IRR)法、正味現在価値(NPV)法、収益性指数法)

NPV、IRR、回収期間法、収益性指数法を厚く扱う。

投資評価基準

この章で覚えておきたいこと

投資評価基準で最初に覚えるNPV、IRR、PI、回収期間法、ARR、関連キャッシュフロー、税引後営業キャッシュフローの要点図解
  • NPV法 は、将来キャッシュフローの現在価値合計から初期投資額を差し引いて、企業価値をいくら増やすかで判断します。NPV > 0 なら採択し、相互排他的投資案では NPV が最大の案 を選びます。
  • IRR法 は、NPV を 0 にする割引率 を求める方法です。IRR > 資本コスト なら採択しますが、相互排他的投資案の順位付けでは NPV と結論がずれることがあります。
  • PI法 は、将来キャッシュフローの現在価値合計 ÷ 初期投資額 で求めます。PI > 1 なら採択ですが、効率を見る比率指標なので、投資規模が違う案の比較では NPV と整合しないことがあります。
  • 回収期間法 は回収の早さを見る簡便法です。通常の回収期間法は 貨幣の時間価値を考慮せず、さらに 回収後のキャッシュフローを無視 します。割引回収期間法でも、回収後を見ない弱点は残ります。
  • ARR法会計利益 を使う方法であり、キャッシュフローを使う NPV 法や IRR 法とは性質が異なります。問題文で、年平均利益や平均投資額の定義を必ず確認します。
  • 投資評価に入れるのは、投資案を採用することで将来増減する増分キャッシュフロー だけです。埋没原価は除外 し、機会原価、既存資産の売却価額、既存製品の売上減少、運転資金の増減 は含めます。
  • 税金がある問題では、営業キャッシュフローを 税引後利益 + 減価償却費 で作るか、(売上高 - 現金支出費用) × (1 - 税率) + 減価償却費 × 税率 で作ります。最終年度は 残存価額、売却損益の税効果、運転資金回収 も確認します。
  • 直近では 2024 年に IRR と NPV の採否判定関連キャッシュフローと埋没原価 が出題され、2025 年には NPV 計算税引後営業キャッシュフロー投資評価基準の正誤 が連続で出ています。

基本知識

投資評価基準の全体像

投資評価基準は、何を重視するかで役割が分かれます。

投資評価基準の評価軸をNPV、IRR、PI、回収期間法、ARRに分けて示す図解
  • NPV法 は、企業価値をいくら増やすかという 価値の絶対額 を見ます。
  • IRR法 は、投資が何%の利回りを生むかという 収益率 を見ます。
  • PI法 は、投資 1 単位当たりの効率という 比率 を見ます。
  • 回収期間法 は、何年で回収できるかという 資金回収の早さ を見ます。
  • ARR法 は、会計利益ベースの 会計上の収益性 を見ます。

試験では、まず 金額指標か、率指標か、効率指標か、会計利益指標か を切り分けると誤りにくくなります。

NPV法

NPV は、将来キャッシュフローの現在価値合計から初期投資額を差し引いた金額です。

NPV法で将来キャッシュフローを現在価値に戻し初期投資額を差し引く考え方の図解

NPV = 将来キャッシュフローの現在価値合計 - 初期投資額

各期のキャッシュフローを CF1, CF2, ... , CFn、割引率を r、初期投資額を I0 とすると、考え方は次のとおりです。

NPV = CF1 / (1 + r) + CF2 / (1 + r)^2 + ... + CFn / (1 + r)^n - I0

判断基準は明快です。

  • NPV > 0 なら採択します。
  • NPV = 0 なら、資本コストちょうどの投資です。
  • NPV < 0 なら棄却します。

NPV 法が最重要なのは、企業価値の増加額を直接示すからです。問題文に 企業価値価値増大株主価値 という語があれば、まず NPV を基準に考えます。

2025 年第 17 問では、初期投資は第 1 期首、つまり時点 0 なので割り引かない ことが問われました。初期投資まで割り引く誤りは頻出です。

IRR法

IRR は、NPV を 0 にする割引率です。

IRRをNPVがゼロになる割引率として資本コストと比較する図解

0 = 将来キャッシュフローの現在価値合計 - 初期投資額

判断基準は、IRR と資本コストの比較です。

  • IRR > 資本コスト なら採択します。
  • IRR = 資本コスト なら NPV は 0 です。
  • IRR < 資本コスト なら棄却します。

通常型投資、つまり 最初にマイナス、その後はプラスのキャッシュフロー という形では、IRR 法と NPV 法の採否は一致しやすいです。2024 年第 17 問は、永続年金の形でも IRR 12.5% > 資本コスト 10%、かつ NPV > 0 となる典型でした。

ただし、IRR 法には限界があります。

  • 相互排他的投資案 では、投資規模や回収時期の違いで NPV と順位がずれることがあります。
  • キャッシュフローの符号が 複数回変化 すると、IRR が複数存在 することがあります。
  • 収益率は高くても、企業価値の増加額が最大とは限りません。

2025 年第 19 問は、この 複数 IRR を正しく指摘できるかを問う問題でした。

PI法

PI は、将来キャッシュフローの現在価値合計を初期投資額で割った指標です。

PI法で現在価値合計を初期投資額で割り投資効率を見る図解

PI = 将来キャッシュフローの現在価値合計 ÷ 初期投資額

判断基準は次のとおりです。

  • PI > 1 なら採択します。
  • PI = 1 なら NPV は 0 です。
  • PI < 1 なら棄却します。

PI は効率指標なので、投資額が違う案では有用ですが、相互排他的投資案では注意が必要です。2021 年第 19 問では、NPV 法では設備 B、PI 法では設備 C が採択となり、両者の結論が分かれました。

PI と NPV の関係も押さえておきます。

PI = 1 + NPV ÷ 初期投資額

したがって、PI は NPV そのものではありません。2008 年第 23 問でも、PI を NPV ÷ 投資額とする誤り が問われました。

回収期間法と割引回収期間法

回収期間法は、初期投資を何年で回収できるかを見る方法です。毎年のキャッシュフローが一定なら、次のように考えます。

回収期間法と割引回収期間法でキャッシュフローを累計して初期投資の回収時点を探す図解

回収期間 = 初期投資額 ÷ 年間キャッシュフロー

キャッシュフローが毎年異なる場合は、各期のキャッシュフローを累計して初期投資額に達する時点を探します。

回収期間法の長所は、簡単で資金回収の早さを見やすいことです。一方で短所も明確です。

  • 回収後のキャッシュフローを無視 します。
  • 通常の回収期間法は 貨幣の時間価値を無視 します。
  • 回収期間が短いからといって、必ず IRR が高いとは限りません。

割引回収期間法は、各期のキャッシュフローを割り引いてから累計するので、時間価値は考慮します。ただし、回収後を見ない 弱点は残ります。また、2025 年第 19 問で問われたとおり、キャッシュフローが不均一でも適用可能 です。

ARR法

ARR は、会計利益を使って投資の収益性を見る方法です。

ARR法で会計利益と平均投資額を使い投資収益性を見る図解

代表的には、次のように表します。

ARR = 年平均会計利益 ÷ 平均投資額

ただし、試験では分母や分子の定義を問題文が指定することがあります。必ずその定義に従います。

ARR 法のポイントは次のとおりです。

  • 使うのは キャッシュフローではなく会計利益 です。
  • 減価償却方法 の影響を受けます。
  • NPV 法や IRR 法とは違って、企業価値増加額を直接は示しません。

2008 年第 24 問では、税引後キャッシュフロー 220 万円から 税引後利益 120 万円 を逆算できるかが問われました。税引後キャッシュフローが与えられているのに、もう一度税率を掛ける誤りに注意します。

税引後営業キャッシュフローと終価

設備投資の NPV 問題では、税引後営業キャッシュフロー を正しく作れるかが得点差になります。

税引後営業キャッシュフローと最終年度の残存価額や運転資金回収を確認する図解

基本形は次の 2 つです。

  • 税引後営業キャッシュフロー = 税引後利益 + 減価償却費
  • 税引後営業キャッシュフロー = (売上高 - 現金支出費用) × (1 - 税率) + 減価償却費 × 税率

減価償却費は現金支出ではありませんが、課税所得を減らすため 税効果 を通じてキャッシュフローに影響します。

最終年度は次の項目を落とさないことが重要です。

  • 残存価額や売却収入
  • 売却損益に対する税効果
  • 運転資金の回収
  • 撤去費用などの追加支出

2009 年第 16 問は、減価償却の税シールドを使った税引後営業キャッシュフローの基本問題でした。2025 年第 18 問は、そこに 残存価額の現在価値 を加える直近の代表例です。

関連キャッシュフロー

投資評価に含めるのは、その投資案を採用するかどうかで変化する将来キャッシュフロー です。これを 関連キャッシュフロー と呼びます。

関連キャッシュフローとして含める増分キャッシュフローと除外する埋没原価を仕分ける図解

含めるものは次のとおりです。

  • 新製品導入による 追加売上
  • 現金支出の増減
  • 既存資産を転用したときの 売却可能額
  • 遊休施設を使うことで失う 賃貸料収入
  • 新製品が既存製品の売上を奪う カニバリゼーション
  • 運転資金の増加と最終回収

含めないものは、すでに支出して回収不能な過去の支出 です。これが 埋没原価 です。

2024 年第 18 問は、この整理をそのまま聞いてきました。

  • 過去に購入した施設への支出は 埋没原価 なので除外します。
  • 既存機械の売却見積額は、実施時に得られる 将来のキャッシュインフロー なので含めます。
  • 遊休施設の賃貸料収入は 機会原価 なので含めます。
  • 新製品への乗り換えによる既存製品売上の減少は、負の増分キャッシュフロー なので含めます。

相互排他的投資案で NPV を優先する理由

相互排他的投資案とは、複数の案のうち 1 つしか選べない 関係にある投資案です。この場合、最終判断は NPV 最大基準 で行います。

相互排他的投資案でIRRやPIではなくNPV最大基準を優先する理由の図解

その理由は、NPV が 企業価値の増加額 を直接示すからです。

IRR や PI が NPV とずれる主な理由は次の 2 つです。

  • 投資規模の違い
  • キャッシュフロー発生時期の違い

たとえば、小さな投資で高い IRR を出す案よりも、大きな投資でより大きな NPV を生む案のほうが、企業価値を多く増やすことがあります。2014 年第 16 問は、IRR は X 案が高いが、NPV は Y 案が高い 場面を扱いました。2022 年第 21 問も、IRR だけで相互排他的投資案を判定すると企業価値最大化と整合しない と問うています。

資金制約があるときでも、原則は 総 NPV 最大化 です。2012 年第 18 問では、同額投資の複数案から NPV 合計が最大 になる組み合わせを選ばせています。

資本コストの使い分け

IRR や NPV の判断では、比較相手となる割引率が重要です。ここで使うべきなのは、その投資案のリスクに対応した資本コスト です。

投資案ごとのリスクに対応した資本コストで採否を判断する図解

2023 年第 1 回第 17 問では、リスクの高い H 事業部と低い L 事業部で、同じ全社平均資本コストを使ってはいけないことが問われました。投資案の採否は、案件に対応する資本コスト と比較して判断します。

したがって、試験で事業部別や案件別のリスク差が与えられたら、全社一律の WACC を機械的に使わないようにします。

この章のまとめ

投資評価基準のまとめとしてNPV最大、IRRとPIの限界、関連キャッシュフロー、税効果、終価チェックを確認する図解
  • 企業価値の増加額 を直接示すのは NPV 法です。相互排他的投資案では NPV 最大 を優先します。
  • IRR 法 は採否判断には便利ですが、投資規模差、回収時期差、複数 IRR の問題があるため、順位付けでは万能ではありません。
  • PI 法 は効率指標なので、資本制約下の参考にはなりますが、相互排他的投資案では NPV と一致しないことがあります。
  • 回収期間法 は簡便ですが、通常は時間価値を見ず、さらに 回収後キャッシュフローを無視 します。
  • ARR 法 は会計利益ベースです。税引後利益と税引後キャッシュフローを混同しないことが大切です。
  • 投資評価では 増分キャッシュフロー だけを扱います。埋没原価は除外 し、機会原価やカニバリゼーションは含める と覚えます。
  • 計算問題では、時点 0 の初期投資は割り引かない減価償却費は税効果を通じて効く最終年度の残存価額や運転資金回収を落とさない の 3 点を最後に確認します。
  • 直近 2024 年から 2025 年は、単なる定義暗記ではなく、採否判定、関連キャッシュフロー、税引後営業キャッシュフローの作成 まで踏み込んで問われています。

一次試験過去問での出方

  • 2008年 第23問では、IRR、PI、回収期間法の定義と性質がまとめて問われました。PI は NPV ÷ 投資額ではない こと、回収期間法は回収後を見ない ことが基本です。
  • 2008年 第24問では、ARR 法の前提となる 税引後キャッシュフローから税引後利益を逆算する 問題が出ました。
  • 2009年 第16問では、税引後営業キャッシュフロー減価償却の税効果 を使った NPV 計算が出題されました。
  • 2012年 第18問では、資金制約下で NPV 合計が最大 になる投資案の組み合わせを選ばせています。
  • 2014年 第16問では、相互排他的投資案で IRR と NPV の順位が逆転 する場面が出題され、最終判断は NPV 基準で行うことを確認させています。
  • 2021年 第19問では、NPV 法と PI 法で採択案が分かれる 典型問題が出ました。
  • 2022年 第21問では、回収期間法は回収後を無視する こと、IRR 法は相互排他的投資案で企業価値最大化と整合しないことがある ことが問われました。
  • 2023年 第1回 第17問では、事業部ごとのリスク差を踏まえ、案件に対応した資本コスト で IRR を比較する問題が出ました。
  • 2024年 第17問では、永続年金を使って IRR と NPV の採否が通常型投資では一致する ことが問われました。
  • 2024年 第18問では、埋没原価は除外し、機会原価やカニバリゼーションは含める という関連キャッシュフローの原則がそのまま出ました。
  • 2025年 第17問では、初期投資は時点 0 なので割り引かない ことを前提に、NPV を正確に計算させています。
  • 2025年 第18問では、税引後営業キャッシュフロー減価償却の税効果残存価額の現在価値 をそろえて NPV を求めさせました。
  • 2025年 第19問では、IRR は複数存在し得るPI は NPV と常に整合しない割引回収期間法は不均一キャッシュフローにも使える という典型論点が正誤問題で問われました。