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関連章の確認用として使う。

この章で覚えておきたいこと

実物投資で最初に押さえる増分キャッシュフロー、現在価値、NPV・IRR、不確実性、資本コストの見取り図
  • このページは、実物投資の独立論点を増やすためではなく、貨幣の時間価値とDCF投資評価基準不確実性下の投資決定 を一連の流れとしてつなぐための補助ページです。
  • 学習順序は、まず 将来キャッシュフローを現在価値へ直す、次に NPVやIRRで採否を決める、最後に 不確実性やリスクを加味して判断を補正する という順番です。
  • 実物投資で最も大切なのは、会計上の利益ではなく 将来の増分キャッシュフロー を使うことです。
  • 割引率は章の外から突然出てくる数字ではありません。B_07で学ぶ 資本コストやWACC が、B_08のDCFやNPVの前提になります。
  • 不確実性の処理はB_08で終わりません。期待値、標準偏差、リスク・プレミアムの感覚は、そのままB_09の 証券投資、ポートフォリオ理論、CAPM につながります。

基本知識

実物投資章を一本の流れで捉える

実物投資の章は、個別の公式をばらばらに覚えるより、判断の流れで覚えるほうが得点につながります。流れは次のとおりです。

実物投資章で増分キャッシュフローからリスク確認までを順に見る図解
  1. 投資案を採用したときに増減するキャッシュフローを拾います。
  2. そのキャッシュフローを割引率で現在価値へ直します。
  3. 現在価値を使って、NPV、IRR、回収期間法、収益性指数法などの評価基準で採否を決めます。
  4. 将来が不確実なら、期待値、感応度分析、シナリオ分析、リスク調整割引率法などで判断を補強します。

この順序が崩れると、式は覚えていても設問で迷いやすくなります。たとえば、NPVを計算する前に割引率の意味が曖昧だと、なぜその率で割り引くのかが分からなくなります。逆に、DCFの意味が分かっていれば、NPVやIRRは「現在価値をどう使って比較するか」の違いとして整理できます。

DCFから投資評価基準へつなぐ考え方

貨幣の時間価値と割引キャッシュフローで学ぶDCFは、実物投資章の土台です。将来のキャッシュフローをそのまま足し合わせるのではなく、同じ時点の価値にそろえて比較するために現在価値へ直します。そのうえで、投資評価基準は次のように役割が分かれます。

DCFで現在価値に直した後、NPV・IRR・PI・回収期間で判断する図解
  • NPV法 は、企業価値をいくら増やすかを金額で示します。
  • IRR法 は、投資案が何%の収益率を持つかを率で示します。
  • 収益性指数法 は、投資1単位当たりの効率を示します。
  • 回収期間法 は、資金をどれだけ早く回収できるかを見ます。
  • 会計的投資利益率法 は、会計利益ベースの補助指標です。

この中で中心に置くべきなのは NPV法 です。企業価値や株主価値を増やすかどうかを問われたら、まずNPVで考えます。IRRが高く見えても、相互排他的な投資案ではNPVが大きい案を選ぶのが基本です。収益性指数法や回収期間法は便利ですが、投資規模の差や回収後のキャッシュフローを十分に表せないことがあります。

不確実性下では評価基準を捨てずに補正する

不確実性下の投資決定は、DCFやNPVと別の話ではありません。むしろ、確定的に計算した評価基準を、不確実性の情報で補正する段階 と考えると理解しやすくなります。

シナリオ・確率・期待NPV・リスク補正で不確実性を扱う図解

不確実性が入るときの基本的な見方は次のとおりです。

  • 将来の結果が複数あるなら、まず各シナリオのキャッシュフローやNPVを出します。
  • 次に、それぞれに確率を掛けて 期待値期待NPV を求めます。
  • 期待値だけでなく、結果のぶれの大きさ、つまり リスク も見ます。
  • リスクを考慮する方法として、キャッシュフロー側を調整する方法と、割引率側を調整する方法があります。

ここで重要なのは、不確実性があるからといってNPVやDCFを使わなくなるわけではない点です。実際には、期待NPVを見たり、リスク・プレミアムを上乗せした割引率を使ったりして、DCFの枠組みを保ったまま判断します。したがって、不確実性下の投資決定は、貨幣の時間価値と投資評価基準の発展として読むのが正しい順序です。

B_07とB_09への接続

実物投資章は、前後の章と切り離して覚えると弱くなります。

資本コスト、実物投資、証券投資のつながりを示す図解

まずB_07との接続です。B_08で使う割引率は、問題文に突然現れる数字ではなく、B_07で学ぶ 負債コスト、自己資本コスト、WACC から来ます。資本コストが高ければ将来キャッシュフローの現在価値は小さくなり、NPVは下がります。したがって、B_07の理解が浅いと、B_08の計算はできても意味づけが弱くなります。

次に証券投資論との接続です。不確実性下の投資決定で出てくる期待値、標準偏差、リスク・プレミアム、リスク調整の考え方は、ポートフォリオ理論やCAPMへつながります。実物投資では「不確実な投資案をどう評価するか」を学び、証券投資論では「リスクとリターンを市場全体の中でどう捉えるか」へ広げていきます。したがって、学習順序としては 資本コストで割引率の根拠を理解し、実物投資へ適用し、リスクと期待収益率の理論へ進む のが自然です。

この章のまとめ

実物投資章の最終確認としてDCF、増分CF、NPV優先、補助指標、期待NPV、戻る先を整理する図解
  • B_08の学習順序は、DCFの前提評価基準で採否判定不確実性の補正 です。
  • 実物投資で最初に見るのは会計利益ではなく、投資によって変わる 増分キャッシュフロー です。
  • 企業価値の増大を問われたら、まず NPV法 を軸に判断します。
  • IRR、収益性指数、回収期間法は補助指標として便利ですが、相互排他的投資案では結論がずれることがあります。
  • 不確実性がある問題でも、DCFの考え方は捨てません。各シナリオのNPV、期待NPV、リスクの大きさを順に確認します。
  • 割引率の意味で迷ったらB_07へ戻り、リスクの扱いで迷ったらB_09への橋渡しを意識すると整理しやすくなります。
  • このページ自体を単独暗記する必要はありません。主要3トピックを解くときに、今どの段階を処理しているのかを確認するための見取り図として使うのが効果的です。

一次試験過去問での出方

このページとしての直接参照はありません。したがって、このページは単独出題対策ではなく、実物投資章全体の復習導線として使います。

貨幣の時間価値と割引キャッシュフローでは、2021年第18問や2022年第14問のように、現在価値、年金現価係数、税引後キャッシュフローを正しく作れるかが問われました。ここでつまずくと、後続のNPVやIRRは解けません。

投資評価基準では、2024年第17問、2024年第18問、2025年第17問から第19問のように、NPV計算、IRRによる採否、埋没原価と機会原価、相互排他的投資案の判断が頻出です。実物投資章の中心はこの論点です。

不確実性下の投資決定では、2022年第22問や2023年度第2回第17問、第18問のように、確実性等価法、リスク調整割引率法、シナリオ分析、ディシジョン・ツリー分析、期待NPVが問われました。DCFの枠組みに不確実性をどう載せるかが焦点です。

一次試験では、これら3トピックが別々に見えても、実際には「キャッシュフローを作る」「現在価値へ直す」「評価基準で判定する」「不確実性を加味する」という1本の流れで出題されています。この流れを意識して学ぶと、B_07やB_09ともつながりやすくなります。