N
NARITAI

財務・会計

最優先

ポートフォリオ理論(ポートフォリオのリスクとリターン、効率的ポートフォリオ、最適ポートフォリオの選択)

期待収益率、標準偏差、相関、効率的ポートフォリオを最厚で扱う。

ポートフォリオ理論

この章で覚えておきたいこと

ポートフォリオ理論で覚える期待収益率、リスク、相関、安全資産、効率的フロンティア、資本市場線、分散可能リスクを整理した図解
  • 期待収益率は加重平均 で求めます。2資産ポートフォリオなら、投資比率を掛けて足せばよく、相関係数は使いません。
  • リスクは分散または標準偏差 で測ります。分散を求めたあと、標準偏差を聞かれているなら平方根を取ります。
  • 共分散と相関係数はリスク計算だけに効く ので、期待収益率の計算と混同しないことが重要です。
  • 2資産ポートフォリオの分散効果 は相関係数で決まります。相関係数が 1 なら分散効果はなく、-1 に近いほど大きくなります。
  • 安全資産を含むと投資機会集合は直線 になります。期待収益率も標準偏差も、危険資産の保有比率に応じて動きます。
  • 安全資産がないときの最適点 は、危険資産だけの効率的フロンティア上から投資家ごとに選びます。
  • 安全資産があるときの最適な危険資産ポートフォリオ は、投資家の危険回避度にかかわらず共通です。違うのは安全資産との配分です。
  • 効率的フロンティアと資本市場線を区別 できるようにします。前者は危険資産だけ、後者は安全資産を含めた最良の直線です。
  • 分散投資で消せるのは非システマティック・リスク です。市場全体に関わるシステマティック・リスクは残ります。

基本知識

期待収益率は確率平均と投資比率平均で求めます

期待収益率を確率または投資比率の加重平均で求め、相関係数を使わないことを示す図解

期待収益率は、将来の収益率をその発生確率で重み付けした平均です。シナリオが与えられている問題では、期待収益率 = Σ(確率 × 収益率) で求めます。2015年問17や2008年問19では、この確率加重平均を先に出せるかどうかが出発点でした。

ポートフォリオの期待収益率も考え方は同じです。資産Aへの投資比率を w、資産Bへの投資比率を 1-w とすると、期待収益率は w × Aの期待収益率 + (1-w) × Bの期待収益率 です。2018年問18では、相関係数や標準偏差が表に載っていても、目標期待収益率を作る投資比率は加重平均だけで求めました。

試験では、期待収益率の問題に相関係数や共分散の数字を混ぜてくることがあります。しかし、それらはリスク計算用の情報です。期待収益率だけを問う設問なら、まず加重平均で片づくかを疑うのが基本です。

分散と標準偏差は平均からの散らばりで測ります

平均からの偏差を二乗して分散を求め、平方根で標準偏差へ直す図解

分散は、収益率が期待収益率からどれだけ離れているかを表す指標です。手順は、期待収益率を求める、平均との差を出す、その差を二乗する、確率を掛けて合計する、の順です。2008年問19は、まさにこの定義を式で問う基本問題でした。

標準偏差は分散の平方根です。単位が収益率とそろうため、実務でも試験でもリスクの大きさを読むときに使いやすい指標です。2015年問17では、分散 10.8 をそのまま答えると誤りで、√10.8 ≒ 3.3% と直す必要がありました。

試験でよくあるミスは、分散と標準偏差を取り違えることです。選択肢に「3.3%」と「10.8」が並んでいたら、平方根を取ったかどうかを確認する作りが多いです。問題文がどちらを聞いているかを先に固定してください。

共分散と相関係数は一緒に動く向きを示します

2資産が同じ方向または逆方向に動くことを共分散と相関係数で読む図解

共分散は、2資産の収益率が同じ方向に動きやすいか、逆方向に動きやすいかを示します。相関係数は、それを -1 から 1 の範囲に標準化したものです。2016年問15では、シナリオ別収益率から共分散を求め、そのあと相関係数へ落とし込む流れが問われました。

相関係数の意味は次のとおりです。

  • ρ = 1: 常に同じ方向に動くので、分散効果はありません。
  • -1 < ρ < 1: 分散効果があります。0 より小さいほど効果は大きくなります。
  • ρ = -1: 完全な逆方向なので、比率しだいでリスクを 0 にできることがあります。

2015年問19は、完全な正の相関では分散投資をしてもリスク分散効果が得られないことを直接問いました。相関係数が低いほど安全になるのではなく、1 からどれだけ離れているか が分散効果の大きさを決めます。

2資産ポートフォリオでは期待収益率とリスクの式を分けて考えます

期待収益率は加重平均、リスクは各資産のリスクと相関を含めて計算する図解

2資産ポートフォリオの期待収益率は加重平均ですが、リスクは単純な加重平均ではありません。分散は次の形で考えます。

  • σp^2 = w^2σA^2 + (1-w)^2σB^2 + 2w(1-w)σAσBρAB

前半の2項は各資産自身のリスクで、最後の項が2資産の連動のしかたを表します。2016年問15では共分散と相関係数、2023年度第2回問15と2022年問15では安全資産を含む簡略形が問われました。

この式で重要なのは、期待収益率の式よりも情報量が多いことです。標準偏差だけでなく、相関係数または共分散が必要になります。したがって、問題文に相関係数や共分散が書かれていたら、期待収益率ではなくリスクの設問である可能性が高いと判断できます。

相関係数で投資機会集合の形が変わります

相関係数に応じて投資機会集合が直線、左にふくらむ曲線、ゼロリスク点を含む形へ変わる図解

2資産ポートフォリオを、横軸を標準偏差、縦軸を期待収益率とする平面に描くと、相関係数によって形が変わります。2008年問20、2017年問19はこの形を図で判定させる代表問題です。

形の読み方は次のとおりです。

  • ρ = 1: 2資産を結ぶ直線になります。分散効果はありません。
  • -1 < ρ < 1: 左にふくらむ曲線になります。2008年問20がこの形です。
  • ρ = -1: ゼロリスク点を含む折れ線状、またはV字型になります。2017年問19で問われた形です。

ここで大事なのは、相関係数は主に横方向、つまりリスクの形に効くということです。期待収益率は投資比率で直線的に変わるので、図の違いはリスク側に現れます。図形問題では、直線なのか、左にふくらむのか、ゼロリスク点に届くのか を先に見ます。

安全資産を含むと期待収益率と標準偏差は直線で動きます

安全資産と危険資産を組み合わせると期待収益率と標準偏差が直線で動く図解

安全資産は収益率が確定している資産で、標準偏差は 0 です。2012年問19、2022年問15、2023年度第2回問15では、安全資産と危険資産を等額で組み合わせたときの期待収益率と標準偏差を計算させました。

安全資産を含むと、期待収益率は加重平均、標準偏差は危険資産の保有比率に比例します。危険資産の比率を w とすると、次のように整理できます。

  • 期待収益率: E(Rp) = w × E(Rrisk) + (1-w) × Rf
  • 標準偏差: σp = w × σrisk

このため、期待収益率と標準偏差の関係は直線になります。なお、2014年問17では「安全資産と危険資産の相関係数」を問われ、試験上は 0 扱い することが基本でした。厳密な数学の定義よりも、金融論の試験上の処理を優先します。

効率的フロンティアは危険資産だけの最良部分です

危険資産だけの投資機会集合から上側の最良部分を効率的フロンティアとして読む図解

投資機会集合とは、作ることができるポートフォリオ全体です。そのうち、同じリスクならより高い期待収益率を与え、同じ期待収益率ならより低いリスクを与える部分だけを取り出したものが 効率的フロンティア です。2016年問18、2025年問20の設問1で、この上側部分を選べるかが問われました。

安全資産がないとき、投資家は危険資産だけの効率的フロンティア上から最適点を選びます。最小分散点より下側は、同じリスクでより高い期待収益率の点に支配されるため選ばれません。2025年問20では、まさにこの「下側は非効率、上側が効率的」という判定が問われています。

2024年問20はリスク中立的投資家の設問でした。これは効率的フロンティアそのものではなく、投資家の選好の違いを問う問題ですが、リスク中立なら期待収益率だけで選ぶ という例外処理を知っておくと図表問題に対応しやすくなります。

資本市場線は安全資産を含めた最良の直線です

無リスク利子率から効率的フロンティアへの接線として資本市場線を読む図解

安全資産があり、同じ無リスク利子率で貸付も借入もできるとき、危険資産の効率的フロンティアに接する直線が 資本市場線 です。2009年問17、2018年問17、2017年問23、2025年問20が頻出の出方です。

このとき重要なのは、危険資産だけで選んだ無数の候補のうち、資本市場線と効率的フロンティアの接点にある危険資産ポートフォリオだけが、全投資家に共通する最適な危険資産ポートフォリオになることです。2017年問23や2021年問20では、投資家の危険回避度とは無関係に決まる と問われました。

また、2009年問17では借入まで可能なら、資本市場線は接点を超えてさらに右上へ延びることが問われました。貸付だけなら無リスク資産から接点まで、借入も可能なら接点を超えたレバレッジ領域までが効率的になります。

最適ポートフォリオは投資家ごとの無差別曲線との接点で決まります

資本市場線または効率的フロンティアと無差別曲線の接点で最適ポートフォリオが決まる図解

最適ポートフォリオは、効率的フロンティアまたは資本市場線と、投資家の無差別曲線が接する点です。安全資産がないときは危険資産だけの効率的フロンティア上、安全資産があるときは資本市場線上で決まります。2025年問20、2021年問20、2017年問23がこの整理を問う代表例です。

ここで区別すべきなのは次の2つです。

  • 危険資産ポートフォリオ自体の選択: 市場環境から決まり、投資家ごとに共通です。
  • 安全資産との配分比率: 投資家の危険回避度で変わります。

したがって、安全資産がある世界では「投資家によって最適な危険資産ポートフォリオが変わる」という記述は誤りです。変わるのは、同じ接点ポートフォリオをどれだけ持つかだけです。

分散可能リスクと分散不能リスクを切り分けます

銘柄数を増やすと非システマティックリスクは減り、市場全体のシステマティックリスクは残る図解

ポートフォリオの総リスクは、非システマティック・リスクシステマティック・リスク に分けられます。2018年問16と2015年問19では、この切り分けが直接問われました。

非システマティック・リスクは企業固有のリスクで、銘柄数を増やすほど小さくできます。一方、システマティック・リスクは市場全体の変動に由来するため、分散投資だけでは消えません。2018年問16の図では、銘柄数を増やすと急速に下がる部分が非システマティック・リスクで、最後に水平に残る下限部分がシステマティック・リスクでした。

この論点は後続のCAPMにもつながります。投資家が最終的に報われるべきリスクは、分散しても残るシステマティック・リスクだという発想につながるからです。

この章のまとめ

ポートフォリオ理論の解答前に、期待収益率、分散、標準偏差、相関、資本市場線、リスク分類を確認する図解
  • 期待収益率を聞かれたら、まず 確率または投資比率の加重平均 で処理します。
  • 分散や標準偏差を聞かれたら、平均からの偏差 → 二乗 → 確率加重 → 必要なら平方根 の順で進めます。
  • 2資産ポートフォリオのリスクでは、相関係数または共分散の有無 を必ず確認します。
  • 相関係数が 1 なら直線、-1 より大きく 1 未満なら左にふくらむ曲線、-1 ならゼロリスク点を含む形 になります。
  • 安全資産があるときは、期待収益率と標準偏差の組み合わせは 直線 になり、図では資本市場線を意識します。
  • 安全資産がないときは、投資家は 危険資産だけの効率的フロンティア から最適点を選びます。
  • 安全資産があるときは、接点ポートフォリオは全投資家で共通 で、違うのは安全資産との配分だけです。
  • 分散投資で消せるのは 非システマティック・リスク であり、システマティック・リスク は残ります。
  • ひっかけとして多いのは、分散と標準偏差の取り違え期待収益率の計算に相関係数を混ぜる誤り資本市場線と証券市場線の混同 です。

一次試験過去問での出方

  • 2025年問20、2021年問20、2017年問23では、安全資産がある場合とない場合で、効率的フロンティア、資本市場線、接点ポートフォリオ、投資家の危険回避度の役割をどう読み分けるかが問われました。
  • 2024年問20では、リスク中立的投資家は標準偏差ではなく期待収益率だけで選ぶ、という選好の前提が問われました。通常のリスク回避的投資家との違いを確認しておく必要があります。
  • 2023年度第2回問15、2022年問15、2012年問19では、安全資産と危険資産を組み合わせたときの期待収益率と標準偏差を、等額投資の計算で素早く出せるかが問われました。
  • 2018年問18では、相関係数や標準偏差の情報があっても、期待収益率だけを使って目標リターンを満たす投資比率を求める問題が出ました。何を聞かれているかを切り分ける力が重要です。
  • 2016年問15では、シナリオ別収益率から共分散と相関係数を求める計算が出題されました。期待値、偏差、偏差積、確率加重の順に整理する基本形です。
  • 2008年問19と2015年問17では、確率分布から期待収益率、分散、標準偏差を求める基本計算が繰り返し問われました。分散を求めて終わらず、標準偏差なら平方根を取るところまでが得点ポイントです。
  • 2008年問20と2017年問19では、相関係数に応じて2資産ポートフォリオの軌跡の形がどう変わるかを図で判定させました。ρ=1-1<ρ<1ρ=-1 の3パターンは頻出です。
  • 2014年問17では、安全資産と危険資産の相関係数を試験上どう扱うかが問われました。安全資産を含むリスク計算を簡略化する前提として押さえておきたい論点です。
  • 2018年問16と2015年問19では、分散投資で減る非システマティック・リスクと、残るシステマティック・リスクの区別が問われました。後続のCAPMの土台になるため、用語だけでなく図でも説明できるようにしておく必要があります。