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企業経営理論

補助

デジタル・マーケティング(デジタル・マーケティングの概念、デジタル・マーケティングの実行)

デジタル・マーケティングの実行を短く整理する。

デジタル・マーケティング

この章で覚えておきたいこと

デジタル・マーケティングは、Webサイト、検索、SNS、アプリ、メール、EC、レビューサイトなどのデジタル接点を使い、顧客との関係を設計・実行・測定するマーケティングです。単に広告媒体がインターネットに変わるだけではありません。顧客の情報探索、比較、購買、利用、共有、再購買までの流れを、オンラインとオフラインをまたいで捉える点が重要です。

一次試験では、細かなツール名よりも、次の判断軸が問われやすいです。

  • タッチポイントは、店舗だけでなくWebサイト、SNS、アプリ、メール、レビューなどにも広がります。
  • O2Oは、オンラインで接点を作り、オフライン店舗などへ誘導する考え方です。
  • OMOは、オンラインとオフラインを分けず、一体の顧客体験として設計する考え方です。
  • ダイナミック・プライシングは、需要、時期、在庫、顧客属性などに応じて価格を柔軟に変える考え方です。
  • クラウド・ファンディング、クラウドソーシング、プラットフォーム、シェアリング・サービスは混同しやすい用語です。

基本知識

デジタル接点とカスタマー・ジャーニー

デジタル・マーケティングでは、顧客との接点を1つの広告や店舗に限定しません。顧客は、検索で情報を調べ、SNSやレビューで評判を確認し、ECサイトや店舗で購入し、購入後に口コミを投稿することがあります。この一連の流れを、カスタマー・ジャーニーとして捉えます。

試験では、タッチポイントを「企業が直接管理する接点」だけに限定しないことが大切です。SNS上の口コミ、レビューサイト、比較サイト、インフルエンサーの投稿も、顧客が企業やブランドを認識する接点になり得ます。

押さえるポイントは次のとおりです。

  • 企業サイト、EC、アプリ、メール、SNS広告などは企業が設計しやすい接点です。
  • SNS投稿、レビュー、口コミは企業が完全には統制できませんが、顧客の判断に大きく影響します。
  • デジタル接点は購買前だけでなく、利用後の共有や再購入にも関わります。
  • オフライン店舗とオンライン接点を切り離すと、顧客行動を読み違えます。

顧客データとターゲティング

デジタル環境では、顧客の閲覧履歴、購買履歴、検索語、広告反応、メール開封、アプリ利用、位置情報などを把握しやすくなります。これらを使うと、顧客ごと、またはセグメントごとに、より適した情報提供や広告配信が可能になります。

ただし、データが多ければよいわけではありません。試験では、顧客データを活用する目的を、売り込みの強化だけでなく、顧客理解、体験改善、関係維持、効果測定につなげて考えます。

代表的な使い方は次のとおりです。

  • 購買履歴から再購入候補を推定する。
  • 閲覧履歴から関心の高い製品カテゴリを推定する。
  • メールや広告の反応から訴求内容を調整する。
  • 休眠顧客や優良顧客を区分し、異なる施策を打つ。

一方で、ターゲティングが細かすぎると、顧客に不快感を与えたり、プライバシー上の問題を招いたりします。データ活用は、顧客価値と企業収益の両方を高める範囲で行う必要があります。

検索・SNS・メール・プラットフォームの使い分け

デジタル・マーケティングの手段は多様ですが、試験では「何のために使うか」を押さえると整理しやすくなります。

検索は、顧客が能動的に情報を探している場面で有効です。検索広告やSEOは、ニーズが顕在化した顧客との接点を作る手段です。

SNSは、認知拡大、共感形成、口コミ拡散、ファンとの関係づくりに向いています。ただし、企業発信だけでなく消費者同士の情報交換が起こるため、企業が意図しない形で情報が広がることもあります。

メールやアプリ通知は、既存顧客との継続的な接点に向いています。購買後フォロー、再購入促進、会員向け案内などに使われます。

プラットフォームは、複数の利用者グループを結びつけ、ネットワーク効果によって価値を高める場です。プラットフォーマーは、自社製品を必ず販売する事業者ではありません。場を提供し、利用者同士の取引や交流を成立させる点が中心です。

混同しやすい用語は次のように整理します。

  • クラウドソーシング: 業務やアイデアをオンライン上の多数の人に依頼することです。
  • クラウド・ファンディング: 資金をオンライン上の多数の人から集めることです。
  • シェアリング・サービス: 資産やサービスの利用を共有・仲介する仕組みです。利用者間マッチングだけでなく、事業者が資産を保有する形もあり得ます。
  • ネットワーク効果: 利用者が増えるほど、サービス全体の価値が高まる効果です。

効果測定、同意、オンラインとオフラインの連携

デジタル施策は、広告表示、クリック、サイト訪問、資料請求、購買、継続利用などを測定しやすい点に特徴があります。施策の成果は、単なる閲覧数だけでなく、最終的な目的に近い指標で確認します。

代表的な指標には、クリック率、コンバージョン率、顧客獲得単価、リピート率、解約率、顧客生涯価値などがあります。重要なのは、指標を施策目的と対応させることです。認知拡大を目的にする施策と、購入獲得を目的にする施策では、見るべき指標が異なります。

また、顧客データを扱う以上、プライバシーと同意の視点が欠かせません。取得目的、利用範囲、第三者提供、配信停止の方法を明確にし、顧客が納得できる形でデータを扱うことが必要です。

オンラインとオフラインの連携では、次の違いを押さえます。

  • O2O: オンライン上の広告、クーポン、検索、SNSなどから、店舗などのオフライン行動へ誘導します。
  • オムニチャネル: 複数チャネルを統合し、どのチャネルでも一貫した購買体験を提供します。
  • OMO: オンラインとオフラインの区別を弱め、顧客体験全体を一体として設計します。

試験では、O2Oを「店舗顧客をオンラインへ誘導すること」とだけ読むと誤りになりやすいです。典型的には、オンライン接点を起点にオフライン購買へつなげる施策として理解します。

この章のまとめ

デジタル・マーケティングは、媒体のデジタル化ではなく、顧客接点、データ活用、施策実行、効果測定を一体で設計する考え方です。

最後に、次の点を確認してください。

  • タッチポイントは、店舗、Web、SNS、レビュー、アプリ、メールなどに広がります。
  • 顧客データは、ターゲティングだけでなく顧客理解と体験改善にも使います。
  • クラウドソーシングとクラウド・ファンディングを混同しないようにします。
  • プラットフォーマーは、複数の利用者グループをつなぐ場を提供する事業者です。
  • ダイナミック・プライシングは、デジタル以前にも存在しますが、デジタル化で精緻化されています。
  • O2O、オムニチャネル、OMOは、オンラインとオフラインの連携度合いで整理します。
  • データ活用では、プライバシー、同意、透明性が重要です。

一次試験過去問での出方

2019年 第30問設問1では、デジタル・マーケティングにおけるタッチポイント、クラウド・ファンディングとクラウドソーシング、デジタル財の特徴が問われました。2020年 第31問では、O2O、プラットフォーマー、シェアリング・サービスの定義が問われました。2023年度 第32問設問1では、アドネットワーク、O2O/OMO、ペイド・メディア、ダイナミック・プライシングの区別が問われています。