N
NARITAI

企業経営理論

補助

生産財マーケティング(生産財マーケティングの特徴と実行)

生産財マーケティングの特徴を短く整理する。

生産財マーケティング

この章で覚えておきたいこと

生産財マーケティングは、企業や組織を顧客とするBtoBのマーケティングです。消費者向けのBtoCと比べると、顧客数が少なく、1件あたりの取引額が大きく、購買が組織的に行われる点に特徴があります。

一次試験では、次の点が問われやすいです。

  • BtoBでも、ブランド、信頼、評判は重要です。
  • 組織購買では、購買担当者だけでなく、使用者、技術部門、経理部門、経営層など複数者が関与します。
  • 生産財需要は、最終消費財の需要から生じる派生需要です。
  • 少数大口顧客への深い取引により、高い市場シェアを維持できる場合があります。
  • 技術、仕様、納期、保守、アフターサービス、関係構築が重要です。

基本知識

組織購買と購買センター

BtoBでは、購買意思決定が1人の消費者だけで完結しにくいです。製品を使う部門、仕様を評価する技術部門、価格を確認する購買部門、予算を承認する経営層など、複数の人や部門が関与します。この関与者の集合を、購買センターと呼びます。

購買センターには、次のような役割があります。

  • 使用者: 実際に製品やサービスを使う人です。
  • 影響者: 技術仕様、品質、性能などについて意見を出す人です。
  • 購買者: 取引条件や発注手続きを担当する人です。
  • 決定者: 採用する製品や取引先を決める人です。
  • 門番: 情報の流れや営業担当者との接触を管理する人です。

試験では、「BtoBの購買は技術的専門知識だけで決まる」といった記述に注意します。技術は重要ですが、価格、納期、安定供給、保守、既存システムとの適合、取引関係、リスク低減も判断材料になります。

また、組織購買であっても、最後に判断するのは人です。そのため、購買担当者の個人的特性や価値観、リスク回避傾向が市場細分化の手がかりになる場合もあります。

派生需要と少数大口顧客

生産財の需要は、最終消費財の需要から派生します。たとえば、食品メーカー向けの容器需要は、最終消費者が食品を買う需要に影響されます。自動車部品の需要も、自動車の販売動向に左右されます。このように、BtoB需要は最終市場の変化を受けやすいです。

BtoB市場では、顧客数が少なく、1社あたりの購買量が大きいことがあります。そのため、数社の大口顧客を獲得できると、高い市場シェアを維持できる場合があります。一方で、特定顧客への依存度が高くなると、取引停止や仕様変更の影響も大きくなります。

押さえるポイントは次のとおりです。

  • 少数顧客でも、寡占企業と深く取引できれば大きな売上につながります。
  • 顧客企業の業績や最終市場の需要変動が、自社需要に影響します。
  • 大口顧客への依存は、安定取引の強みと交渉力低下のリスクを併せ持ちます。
  • BtoBの市場細分化では、企業規模だけでなく、業種、用途、購買方針、発注頻度、技術水準も見ます。

「企業規模で分ければセグメント内の企業はすべて均一になる」という考え方は誤りです。規模が同じでも、用途、購買基準、技術力、発注タイミングは異なります。

技術・仕様・アフターサービスの価値

生産財では、製品そのものの性能だけでなく、導入前後のサポートが価値になります。顧客企業は、自社の生産、販売、品質、納期に影響するため、単に安い製品よりも、安定して使える製品や問題発生時に対応してくれる取引先を重視します。

重要な価値は次のとおりです。

  • 技術仕様が顧客の工程や設備に合っていること。
  • 品質が安定していること。
  • 納期と供給量が安定していること。
  • 導入時の技術支援があること。
  • 保守、修理、部品供給、問い合わせ対応が整っていること。
  • 顧客の先にいる流通業者や最終消費者の便益まで説明できること。

2012年の容器の事例のように、汎用性の高い製品では、特定1社に合わせてサービスや配送まで過度にカスタマイズすると、コストが膨らみ、他社へ横展開しにくくなります。BtoBでは個別対応が重要ですが、常に最大限カスタマイズすればよいわけではありません。

人的販売と長期的な関係構築

生産財マーケティングでは、人的販売の重要性が高くなります。営業担当者は、製品説明をするだけでなく、顧客の課題を聞き、技術部門や生産部門と連携し、提案を組み立てます。

人的販売で重視することは次のとおりです。

  • 顧客の業務プロセスや制約条件を理解する。
  • 技術担当者、購買担当者、経営層それぞれに合わせて説明する。
  • 導入後の効果やリスク低減を示す。
  • 納入後も問題解決や改善提案を続ける。
  • 信頼関係を通じて、継続取引や追加受注につなげる。

BtoBでもブランディングは不要ではありません。ブランドは、品質、技術力、納期遵守、サポート体制、信頼性を示す手がかりになります。新規取引では特に、企業としての信頼を伝えることが重要です。

ただし、顧客第一主義を「既存顧客の要望に専ら従うこと」と捉えるのは危険です。既存顧客の要望だけに合わせすぎると、他市場への展開、標準化、収益性、新規顧客開拓を損なう場合があります。

この章のまとめ

生産財マーケティングでは、組織購買、派生需要、少数大口顧客、技術・仕様・サービス、人的販売を一体で理解します。

最後に、次の点を確認してください。

  • BtoBの購買は、複数の関与者による組織購買です。
  • 購買センターには、使用者、影響者、購買者、決定者、門番などがいます。
  • 生産財需要は、最終消費財需要から生じる派生需要です。
  • BtoBでもブランドは重要で、信頼やリスク低減に役立ちます。
  • 少数大口顧客への深い取引で高シェアを維持できる場合があります。
  • 技術、仕様、納期、保守、アフターサービスは重要な差別化要素です。
  • 個別対応は重要ですが、過度なカスタマイズは横展開や収益性を損ないます。

一次試験過去問での出方

2012年 第29問では、BtoBの新製品提案で、汎用価値を活かすか過度に個別対応するかが問われました。2019年 第27問では、BtoB市場細分化で購買担当者の個人的特性を使えるかが問われました。2019年 第29問では、BtoBでもブランドが重要であること、購買が技術知識だけで決まらないこと、少数大口顧客により高シェアを維持できる場合があることが問われています。