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NARITAI

企業経営理論

体系補助

国際経営戦略と組織

国際戦略に対応する組織形態を補助的に扱う。

この章で覚えておきたいこと

このトピックは、国際経営戦略の類型を組織設計の面から補強する論点です。独立した暗記項目として深追いするよりも、国際戦略の選択肢を判定するための補助線として使います。

国際経営では、戦略だけでなく、誰が意思決定するのか、どこに経営資源を置くのか、本社と海外子会社をどう結ぶのかが問われます。

押さえる対応は次のとおりです。

  • 本社主導・集中管理: グローバル統合を重視する組織運営です。
  • 現地子会社への権限委譲: ローカル適応を重視する組織運営です。
  • 本国能力の海外展開: インターナショナル戦略を支える組織運営です。
  • 拠点間ネットワーク: トランスナショナル戦略を支える組織運営です。

前トピックで学んだ4類型と重なりますが、このトピックでは「戦略の名前」よりも、「その戦略を実現する組織の形」を中心に読みます。

基本知識

国際戦略は組織構造に表れる

国際戦略は、組織構造や権限配分に表れます。世界共通製品を標準化して販売するなら、各国が自由に仕様を変えるより、本社が標準仕様や資源配分を統制した方が効率的です。

一方で、各国市場の文化、制度、流通、顧客ニーズに合わせるなら、現地をよく知る子会社に権限を渡した方が対応しやすくなります。国際経営の組織問題では、この戦略と組織の整合性を確認します。

試験では、「グローバル統合」「ローカル適応」という言葉が直接出なくても、選択肢に本社集権、現地分権、子会社間調整、ネットワーク、知識共有といった表現が出ます。これらを戦略類型に結びつけて判断します。

国際事業部制の位置づけ

国際事業部制は、海外事業を国内事業とは別の事業部としてまとめる組織形態です。国際化の初期から中期に、輸出や海外販売、海外子会社管理を一括して扱うために使われます。

国際事業部制の利点は、海外事業に関する専門知識や経験を一つの部門に蓄積しやすいことです。海外展開がまだ大きくない段階では、国内部門の中に海外対応を分散させるより、国際事業部に集約した方が管理しやすくなります。

ただし、海外売上や海外拠点が拡大すると、国際事業部だけでは各製品や各地域の事情に対応しにくくなります。国内事業部と国際事業部の間で製品戦略が分断されることもあります。そのため、国際化が進むと、地域別組織、製品別組織、マトリックス組織などへ移行することがあります。

地域別組織と製品別組織

地域別組織は、アジア、欧州、北米のような地域単位で海外事業をまとめる組織です。地域ごとの制度、文化、流通、顧客ニーズに合わせやすいため、ローカル適応を重視する場合に向きます。

地域別組織では、各地域が販売、マーケティング、生産、場合によっては製品調整まで担います。現地対応力は高まりますが、地域ごとに似た機能を重複して持ちやすく、世界全体での標準化や規模の経済は弱くなりやすいです。

製品別組織は、製品分野や事業分野ごとに世界事業をまとめる組織です。製品技術、ブランド、製品ラインを世界で一貫して管理しやすいため、グローバル統合を重視する場合に向きます。

製品別組織では、製品ごとの研究開発、生産、販売方針を統一しやすくなります。ただし、地域ごとの制度や顧客ニーズへの対応が弱くなることがあります。試験では、地域別組織は適応、製品別組織は統合に結びつけて読むと整理しやすいです。

グローバル・マトリックス組織

グローバル・マトリックス組織は、製品軸と地域軸のように、複数の管理軸を同時に持つ組織です。製品ごとの世界統合と、地域ごとの現地適応を同時に追求しようとする発想です。

この組織では、ある海外拠点が製品部門と地域部門の両方から指示や調整を受けることがあります。製品別の効率性と地域別の対応力を両立しやすい一方で、指揮命令系統が複雑になり、調整コストや責任の曖昧さが生じやすいです。

Stopford and Wellsの議論では、国際化が進むにつれて組織構造が変化することが扱われます。一般に、国際事業部制から、海外売上比率や製品多様性の高まりに応じて、地域別組織や製品別組織、さらにマトリックス型へ進む流れで理解します。試験では、地域別事業部制から製品別事業部制へ移行した後にマトリックスへ向かう、といった単純な一方向の順序をそのまま選ばせるとは限らないため、何の軸で組織化しているかを読み取ります。

ネットワーク型の組織運営

ネットワーク型の組織運営は、トランスナショナル戦略を支える考え方です。本社が一方的に指示するだけでなく、海外子会社同士も結びつき、各地で得た知識やノウハウを企業全体で活用します。

ネットワーク型では、拠点ごとに役割が専門化されることがあります。ある国の拠点が研究開発に強みを持ち、別の国の拠点が生産や販売に強みを持つ場合、それぞれの学習成果を全社で共有します。

この形は、統合と適応を同時に求める場合に有効です。ただし、現地適応だけを最重要視する条件でネットワーク型を選ぶと、統合や知識共有の要素が強すぎる場合があります。2024年のように「標準化を最小限に抑え、現地適応を最重要視する」と書かれている場合は、密接なネットワークよりも、海外子会社への権限分散を優先して読みます。

本社と海外子会社の関係を読む

組織問題では、本社と海外子会社の関係が重要な判断材料になります。

  • 本社が公式的に管理・統制する: 統合や標準化を重視する説明です。
  • 海外子会社が独自に判断する: 現地適応を重視する説明です。
  • 本社の能力を海外子会社が適用する: インターナショナル戦略の説明です。
  • 子会社間で知識を共有する: トランスナショナル戦略やネットワーク型の説明です。

本社による統制があるから悪い、現地分権だから良い、という判断ではありません。事業特性と組織運営が合っているかを見ます。標準化と規模の経済が必要なら本社主導が合理的です。文化や制度への対応が重要なら現地子会社の自律性が合理的です。

この章のまとめ

国際経営戦略と組織は、戦略類型を実現するための権限配分として理解します。グローバル統合を重視するなら本社主導、ローカル適応を重視するなら現地子会社への権限委譲、本国能力を海外へ広げるなら国際事業部や本社能力の移転、統合と適応を両立するならネットワーク型やマトリックス型が手がかりになります。

ひっかけは、組織形態の名称だけで判断することです。地域別組織は現地適応に強く、製品別組織は世界統合に強い傾向がありますが、実際の設問では、どの権限がどこに置かれ、どのような調整が行われているかを読み取る必要があります。

最後は、問題文が求める圧力と組織運営が合っているかを確認します。現地適応最優先なら、子会社への権限分散が自然です。統合と適応の両立なら、密接なネットワークや知識共有が自然です。本社集権は、標準化や規模の経済を追求する条件で選びます。

一次試験過去問での出方

このトピック単独の直接参照はありません。ただし、2023年第1回ではStopford and Wellsの組織変遷が選択肢に含まれ、2024年は現地適応重視の条件に合う組織運営として、海外子会社への権限分散と親会社との緩やかなつながりが問われました。したがって、国際事業部制、地域別・製品別・マトリックス組織、ネットワーク型運営は、国際経営戦略の類型を判定する補助知識として使います。