N
NARITAI

企業経営理論

重要

リーダーシップ(特性論、行動論、状況論、変革型リーダーシップ)

特性論、行動論、状況論、変革型リーダーシップを扱う。

この章で覚えておきたいこと

リーダーシップ論は、理論名を丸暗記するより、「何を有効性の決め手と見る理論か」で整理します。試験では、理論名と説明を入れ替えたり、状況条件を逆にしたりする選択肢が多く出ます。

  • 特性論は、リーダー本人の資質や能力に注目します。
  • 行動論は、リーダーがどのような行動をとるかに注目します。課題達成と人間関係の2軸が中心です。
  • 状況論は、リーダー行動やリーダー特性が、状況や部下特性に合っているかを見ます。
  • LMX理論は、リーダーと各メンバーの二者関係の質に注目します。
  • 変革型リーダーシップは、価値観や意欲を高め、より高い目標へ向かわせるリーダーシップです。
  • 交換型リーダーシップは、報酬や逸脱管理を通じて、目標達成を促すリーダーシップです。

特に頻出なのは、フィードラー、パス・ゴール理論、SL理論、LMX理論、変革型・交換型リーダーシップです。近年は複数理論を横断して、どの説明が正しいかを問う形が増えています。

基本知識

リーダーシップ論の流れを押さえる

リーダーシップ研究は、リーダーの「資質」から始まり、次に「行動」、さらに「状況との適合」へと関心が移ってきました。近年の出題では、変革型、交換型、サーバント、LMXなど、リーダーとフォロワーの関係や価値観への働きかけも問われます。

まず、選択肢を読んだら次のように分類します。

  • リーダーの性格、知性、自信、社交性を見ているなら、特性論です。
  • 目標達成行動と集団維持行動を見ているなら、行動論です。
  • 状況好意性、部下特性、課題特性、成熟度を見ているなら、状況論です。
  • リーダーと部下一人ひとりの交換関係を見ているなら、LMX理論です。
  • ビジョン、模範、知的刺激、個別支援を見ているなら、変革型リーダーシップです。
  • 条件付き報酬や例外管理を見ているなら、交換型リーダーシップです。

特性論はリーダー本人の資質を見る

特性論は、有効なリーダーには共通した個人的特性があると考える立場です。能力、知性、自信、社交性、責任感など、リーダー本人の資質に注目します。

ただし、試験で重要なのは、特性論だけではどの状況でも有効なリーダーを説明しきれないという流れです。そのため、リーダーが何をするかに注目する行動論、状況に応じた有効性を考える状況論へ進んでいきます。

行動論は課題達成と人間関係の2軸で見る

行動論は、有効なリーダーがどのように行動するかに注目します。中心は、課題達成に向けた行動と、人間関係や集団維持に向けた行動の2軸です。

PM理論では、P機能とM機能を区別します。PはPerformanceで、目標達成、業績向上、仕事の指示、計画、統制などに関わります。MはMaintenanceで、集団維持、人間関係、メンバーの士気、チームのまとまりに関わります。PもMも高いPM型が望ましいとされます。

オハイオ研究では、リーダー行動を「構造づくり」と「配慮」の2次元で捉えます。構造づくりは、仕事の割り当て、役割、手順、目標を明確にする行動です。配慮は、部下との信頼関係、尊重、支援、気遣いに関わる行動です。この2つは独立した次元であり、片方が高いともう片方が必ず低くなるわけではありません。

マネジリアル・グリッドは、ブレイクとムートンの理論です。軸は「業績への関心」と「人間への関心」であり、9・9型が理想型とされます。ここで、オハイオ研究の「構造づくり」と「配慮」をそのまま軸にした説明が出たら、取り違えとして疑います。

リッカートのシステム論では、権威主義的な管理から参加型管理までを段階的に捉えます。支持的関係の原理や連結ピン機能が、従業員の信頼感や高い業績目標を通じて、生産性などへ影響すると整理します。

フィードラーの条件適合理論はスタイルと状況の適合を見る

フィードラーは、リーダーの基本スタイルと状況好意性の適合を考えました。リーダーの基本スタイルはLPCで測ります。苦手な同僚を低く評価する低LPCリーダーはタスク志向、比較的好意的に評価する高LPCリーダーは人間関係志向と整理します。

状況好意性は、次の3要因で決まります。

  • リーダーとメンバーの関係: 信頼や受容があるか。
  • 課業の構造化: 仕事の手順や成果基準が明確か。
  • 職位に基づくパワー: 公式権限、報酬、処罰などを使えるか。

状況が非常に好ましい場合と非常に好ましくない場合は、タスク志向型が有効になりやすいです。中程度の状況では、人間関係志向型が有効になりやすいです。試験では、「極端な状況では人間関係志向型が有効」とする選択肢が典型的なひっかけです。

フィードラーは、リーダーが状況に応じて自在にスタイルを変える理論ではありません。リーダーの基本スタイルと状況を適合させる考え方です。この点が、パス・ゴール理論やSL理論との違いになります。

パス・ゴール理論は不足要因を補完する

パス・ゴール理論は、ハウスの理論です。リーダーの役割は、部下が目標に到達する道筋を明確にし、障害を取り除き、必要な支援を与えることにあります。

覚えるべき発想は、不足要因の補完です。部下や仕事環境に欠けているものをリーダー行動で補うと、部下の満足度や業績が高まりやすくなります。

  • 指示型: 何をどう行うかを明確に示します。課題が曖昧、経験が少ない、外的統制感が強い部下に合いやすいです。
  • 支援型: 配慮し、働きやすさを高めます。仕事が単調、ストレスが高い、仕事自体から満足を得にくい場合に合いやすいです。
  • 参加型: 意思決定に部下を参加させます。内的統制感が強く、自分の意見を反映したい部下に合いやすいです。
  • 達成志向型: 困難な目標を示し、高い期待を伝えます。能力や意欲があり、挑戦で動機づけられる部下に合いやすいです。

課題が高度に構造化されているほど指示型が満足度を高める、とは考えません。課題が曖昧なときに指示型が効きやすく、仕事自体から満足を得にくいときは支援型が効きやすいです。

SL理論はフォロワーの成熟度に合わせる

SL理論は、ハーシーとブランチャードの状況的リーダーシップ論です。フォロワーの成熟度、つまり能力や意欲、自律性の程度に応じてリーダー行動を変えます。

基本対応は、成熟度が低いほど指示を増やし、成熟度が高いほど委任へ近づけることです。

  • 成熟度が低い: 指示型。具体的に指示し、手順を示します。
  • 成熟度がやや低い: 説得型。指示しながら理由を説明し、意欲も高めます。
  • 成熟度がやや高い: 参加型。意思決定に参加させ、支援します。
  • 成熟度が高い: 委任型。権限を委ね、自律的に任せます。

成熟度が高く自律的なフォロワーには、委任型が基本です。成熟度が高いのに、参加型や指示型を当てる選択肢には注意します。

LMX理論は個々の部下との交換関係を見る

LMX理論は、リーダー・メンバー交換理論です。リーダーとメンバー集団全体の平均的な関係ではなく、リーダーと各メンバーの二者関係の質に注目します。

高品質なLMXでは、信頼、尊重、支援、裁量、役割外の貢献が生じやすくなります。低品質なLMXでは、公式の役割や契約の範囲にとどまりやすくなります。リーダーは部下を完全に同じように扱うとは限らず、内集団と外集団のような関係差が生じることがあります。

内集団のメンバーは多くの支援や機会を得る一方で、追加的責任や挑戦的な課題も期待されやすいです。「リーダーとメンバー集団全体との包括的な交換関係を見る理論」と書かれていたら誤りです。

変革型リーダーシップと交換型リーダーシップを行動例で分ける

変革型リーダーシップは、フォロワーの価値観、態度、自己認識を高め、より高い目標へ向かわせるリーダーシップです。社会や組織の転換期、変革が必要な場面で説明されやすいです。

変革型リーダーシップの代表要素は次のとおりです。

  • 理想化された影響: 模範となり、尊敬や誇りを生みます。
  • 鼓舞的動機づけ: 魅力的な将来ビジョンや使命を示します。
  • 知的刺激: 前提を問い直し、新しい視点や発想転換を促します。
  • 個別的配慮: 一人ひとりのニーズや能力に応じて成長を支援します。

交換型リーダーシップは、目標達成と報酬、逸脱と是正といった交換関係を基礎にします。

  • 条件付き報酬: 目標を達成したら報酬を与えると示します。
  • 能動的例外管理: 基準逸脱を日常的に監視し、早めに是正します。
  • 受動的例外管理: 問題が起きてから介入します。

2024年の過去問では、ビジョン提示、模範、知的刺激、個別的配慮を変革型に、条件付き報酬や例外管理を交換型に分類させる問題が出ました。用語だけでなく、行動例から判断できる状態にしておきます。

サーバント・リーダーシップはリーダーが奉仕する

サーバント・リーダーシップは、リーダーがまずメンバーに奉仕し、メンバーの成長や自律を支える考え方です。リーダーが上から命令することでも、メンバーがリーダーに自己犠牲的に尽くすことでもありません。

主語を間違えないことが重要です。奉仕するのはリーダーであり、成長を支えられるのはメンバーです。

制度的リーダーシップと特異性-信頼理論も押さえる

制度的リーダーシップは、セルズニックの考え方です。公式組織に価値や使命を注入し、単なる目的達成の道具ではなく、独自の価値を持つ制度へ育てる機能を指します。キーワードは価値注入です。

ホランダーの特異性-信頼理論では、リーダーがフォロワーから信頼を得るために、集団の目的に貢献する有能性と、集団規範への同調が重要です。信頼を得たリーダーは、一定の逸脱や新しい提案を受け入れられやすくなります。

帰属集団への一体化とリーダーシップ

組織メンバーは、自分が属する集団の威信や成功、外部集団との競争を通じて、帰属集団への一体化を強めることがあります。他集団との競争が激しくなり、自集団の威信が高まると、集団への一体化は強まりやすくなります。

この場面では、集団内部だけでなく、上位集団や他集団に対して影響力を持つリーダーシップが有効になることがあります。単に公式権限で命令すればよい、という話ではありません。

この章のまとめ

リーダーシップ論の問題では、まず理論がどの系統かを判定します。資質なら特性論、行動の2軸なら行動論、状況や部下特性との適合なら状況論、部下ごとの関係ならLMX、価値観の変化や報酬管理なら変革型・交換型です。

次に、その理論が見る変数を確認します。フィードラーなら状況好意性、パス・ゴール理論なら部下や課題に欠けている要因、SL理論ならフォロワーの成熟度、LMX理論ならリーダーと各部下の関係の質です。ここがずれている選択肢は誤りになりやすいです。

最後に、条件対応が逆になっていないかを見ます。フィードラーでは、極端な状況はタスク志向、中程度は人間関係志向です。パス・ゴール理論では、曖昧な課題には指示型、単調で満足を得にくい仕事には支援型、内的統制感の強い部下には参加型が合いやすいです。SL理論では、成熟度が高いほど委任型に近づきます。

行動論の問題では、2軸の名称を確認します。オハイオ研究は構造づくりと配慮、マネジリアル・グリッドは業績への関心と人間への関心、PM理論はP機能とM機能です。似ていますが、理論名ごとの軸を入れ替える問題が多く出ます。

変革型・交換型の問題では、選択肢中の動詞を見ます。ビジョンを示す、模範となる、前提を問い直す、個々を支援するなら変革型です。報酬を示す、逸脱を監視する、問題後に介入するなら交換型です。

試験直前は、次を確認します。

  • PM理論は、Pが目標達成、Mが集団維持です。
  • オハイオ研究の構造づくりと配慮は、独立次元です。
  • フィードラーは、低LPCがタスク志向、高LPCが人間関係志向です。
  • パス・ゴール理論は、目標への道筋を示し、不足要因を補います。
  • SL理論は、成熟度に応じて、指示、説得、参加、委任へ移ります。
  • LMX理論は、リーダーと各部下の二者関係の質を見ます。
  • サーバント・リーダーシップは、リーダーがメンバーに奉仕し、成長を支えます。
  • 制度的リーダーシップは、組織に価値を注入します。

一次試験過去問での出方

2007年第13問設問3では、公式組織に価値を注入して活性化する機能として、制度的リーダーシップが問われました。キーワードは「価値注入」です。

2008年第15問では、PM理論、パス・ゴール理論、フィードラー、オハイオ研究、リッカートが並び、理論名と説明の対応が問われました。PM理論はP機能とM機能、パス・ゴール理論は目標達成支援、フィードラーは状況好意性との適合です。

2009年第16問と2021年第16問では、フィードラーのLPC、状況好意性の3要因、オハイオ研究の構造づくりと配慮、ミシガン研究、SL理論の成熟度が問われました。

2010年第12問、2018年第16問、2019年第17問、2023年度第1次試験第18問、2025年第20問では、パス・ゴール理論が繰り返し問われています。指示型、支援型、参加型、達成志向型を、部下特性や課題特性に対応させる必要があります。

2011年第17問と2025年第20問では、LMX理論が問われました。リーダーと個々のメンバーとの交換関係の質、内集団と外集団、高品質な関係で期待される追加的貢献を押さえます。

2020年第18問では、帰属集団への一体化とリーダーシップが問われました。他集団との競争や集団の威信が一体化を強め、上位集団や他集団に影響力を持つリーダーシップが有効になるという文脈です。

2024年第17問では、変革型リーダーシップと交換型リーダーシップの行動例の分類が問われました。ビジョン、模範、知的刺激、個別的配慮は変革型、条件付き報酬と例外管理は交換型です。

2025年第20問では、フィードラー、オハイオ研究、サーバント・リーダーシップ、パス・ゴール理論、LMX理論が横断的に問われました。正解は、パス・ゴール理論においてリーダーがメンバーや業務環境に欠けている要因を補完すると、業績や満足度が上がりやすいという記述でした。