企業経営理論
最優先労働関連法規(労働基準法、労働契約法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、パートタイム・有期雇用労働法、労働安全衛生法、労働組合法、労働施策総合推進法、労働者派遣法、労働保険・社会保険)
労働基準法、労働契約法、均等法、育介法、派遣法、社会保険を最厚で扱う。
この章で覚えておきたいこと
この論点は、人的資源管理の中でも毎年のように出る最優先領域です。出題は「法律名を知っているか」ではなく、労働条件、解雇、就業規則、賃金、労働時間、休業、派遣、保険の場面で、どの制度をどう適用するかを問う。迷ったら、まず「労働者保護の最低基準か」「契約内容の合理性か」「差別・不利益取扱いの禁止か」「保険給付・保険料の話か」を切り分ける。
最初に覚える数字は次のとおりです。
- 論点: 必須暗記
- 労働条件明示: 契約期間、就業場所・業務、始業終業、賃金、退職などは重要。2024年4月以降は就業場所・業務の変更範囲、有期契約の更新上限、無期転換申込機会なども狙われる。
- 有期労働契約: 原則上限3年。一定の専門的知識等を有する者や満60歳以上の者は上限5年。通算5年超で労働者が申し込むと無期転換。
- 試用期間中の解雇: 試用期間だから自由に解雇できるわけではありません。採用後14日を超えると解雇予告制度の対象になり得る。
- 解雇予告: 少なくとも30日前の予告。予告しない場合は30日分以上の平均賃金。
- 解雇制限: 業務上傷病による休業期間とその後30日、産前産後休業期間とその後30日は原則解雇禁止。
- 労働時間: 法定労働時間は原則1日8時間、週40時間。休憩は6時間超で45分以上、8時間超で1時間以上。
- 36協定: 原則は月45時間・年360時間。特別条項でも年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間以内が軸。
- 割増賃金: 時間外・深夜は25%以上、法定休日は35%以上。管理監督者でも深夜割増は残る。
- 年次有給休暇: 年10日以上付与される労働者には、使用者が年5日を確実に取得させる義務がある。
- 就業規則: 常時10人以上で作成・届出義務。作成・変更時は過半数労組または過半数代表者の意見聴取。必要なのは原則「同意」ではありません。
- 減給制裁: 1回は平均賃金1日分の半額以下、総額は一賃金支払期の賃金総額の10分の1以下。
- 産前産後休業: 産前6週間、多胎妊娠は14週間、産後8週間が基本。産前が短くなっても産後が自動延長されるわけではありません。
- 介護休業: 対象家族1人につき通算93日まで、分割取得可能。過去問では「1回だけ」「93日」の古い整理に注意し、現行制度では分割できる点も押さえる。
- 育児休業: 要件を満たす申出を、繁忙や代替要員不足を理由に拒めない。休業中の給付は会社の賃金支払い義務ではなく、主に雇用保険給付の論点。
- 安全衛生: 常時50人以上の事業場で産業医、衛生管理者、衛生委員会などが問われやすい。ストレスチェックも常時50人以上が基本。
- 労災保険: 業務災害・通勤災害をカバー。業務上傷病の休業補償は平均賃金の60%が軸。労災給付があれば使用者責任が調整される。
- 雇用保険: 失業、雇用継続、教育訓練、育児・介護休業給付を支える制度。
- 健康保険: 業務外の疾病・負傷・死亡・出産をカバー。出産も給付対象。
- 厚生年金保険: 老齢・障害・死亡をカバー。疾病・負傷そのものの給付ではありません。
- 社会保険料: 健康保険・厚生年金は原則労使折半。事業主は被保険者負担分を控除できなくても納付義務を負う。
- 労働者派遣: 紹介予定派遣は禁止ではありません。派遣先にも責任が及ぶ。違法派遣では労働契約申込みみなし制度が問われる。
- パワハラ: 優越的な関係、業務上必要かつ相当な範囲を超える言動、就業環境の害の3要素。本人の主観だけでは決まらない。
労働関連法規は改正が多い。過去問の古い選択肢をそのまま暗記するのではなく、「当時の出題意図」と「現在の基本ルール」を分けて押さえる。特に育児・介護休業、有期契約の労働条件明示、ハラスメント、派遣労働者の待遇は近年の更新が狙われやすい。
出題パターン
この分野の典型的な問われ方は、次の5つです。
- 労働基準法の数字を問う
休憩、解雇予告、割増賃金、36協定、有期契約の期間、就業規則、減給制裁などです。数字を少し変えた選択肢が多い。例えば、解雇予告を21日前、休憩を6時間以上、法定休日をすべて週休2日の休日などとする選択肢は疑って読む。
- 「同意」と「意見聴取」を入れ替える
就業規則の作成・変更では、過半数労組または過半数代表者の意見を聴くことが必要であり、労基法上の作成・届出手続として全労働者の同意が必要なわけではありません。一方、労働条件の個別変更では労働者との合意が問題になり、就業規則の不利益変更では周知と合理性が問題になる。
- 「原則禁止」と「例外あり」を入れ替える
有期契約中の解雇、解雇制限、育児休業申出、派遣期間制限、ハラスメント判断などは、全面的にできる・全面的にできないという選択肢が出やすい。法律問題で「いかなる場合も」「理由の如何にかかわらず」「一切できない」が出たら、例外の有無を確認する。
- 労働法と社会保険を混ぜる
育児休業中に会社が賃金を支払うのか、雇用保険から給付が出るのか。業務災害で会社が休業補償をするのか、労災保険から給付されるのか。社会保険料は労使折半なのか、事業主だけが負うのか。このように、給付主体と負担主体を取り違えさせる。
- 派遣・非正規・均等法の責任主体を問う
派遣元、派遣先、事業主、使用者、労働者のどれが義務を負うかを問う。派遣先は単なる受入先ではなく、派遣契約解除時の配慮、均等・均衡に必要な情報提供、ハラスメント防止、違法派遣時のみなし申込みなどで責任が問われる。
基本知識
労働基準法
労働基準法は、労働条件の最低基準を定める法律です。最低基準に達しない労働条件は、その部分が無効となり、労基法の基準に置き換わる。契約全体が当然に無効になるわけではありません。
労働者性は、名称ではなく実態で判断する。業務委託、インターン、配送委託、役員などの名称だけでは決まらず、使用従属関係、指揮命令、報酬の労務対償性、事業者性の有無を見る。2023年第1回第25問では、インターンでも実態として使用従属関係があれば労働者に当たり得ることが問われた。
労働条件の明示では、賃金、労働時間、退職、契約期間、就業場所・業務などを押さえる。有期契約では、更新の有無、更新判断基準、更新上限、無期転換申込機会、無期転換後の労働条件も狙われる。退職手当・賞与・昇給の有無は、実際に支給対象となるかとは別に、制度の有無として明示論点になる。
賃金は、労働の対償として使用者が労働者に支払うものをいう。賃金支払いの5原則は、通貨払い、直接払い、全額払い、毎月1回以上払い、一定期日払いです。ただし、本人同意による本人名義口座への振込や、法令に基づく源泉所得税・社会保険料の控除は認められる。
労働時間では、法定労働時間と所定労働時間を分ける。所定労働時間が7時間の会社で1時間残業しても、実労働が8時間に収まるなら、労基法上の時間外割増は発生しない。過去問ではこの区別が繰り返し出る。
休憩は、6時間を超える労働で45分以上、8時間を超える労働で1時間以上を労働時間の途中に与える。休日は原則として毎週少なくとも1回であり、完全週休2日制の土日すべてが法定休日になるわけではありません。
36協定は、法定労働時間を超える時間外労働や法定休日労働を可能にするための協定です。協定があっても無制限ではありません。原則は月45時間・年360時間、特別条項付きでも年720時間、時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満、複数月平均80時間以内を押さえる。
変形労働時間制とフレックスタイム制は、制度名と要件を混同しやすい。
- 制度: 試験での軸
- 1か月単位の変形労働時間制: 1か月以内を平均して週40時間以内。労使協定または就業規則等。協定による場合は届出が問われる。
- 1年単位の変形労働時間制: 対象期間を平均して週40時間以内。1日10時間・1週52時間が上限。48時間超の週の連続・回数制限が出る。
- フレックスタイム制: 始業・終業を労働者に委ねる。清算期間は最大3か月。標準となる1日の労働時間などを協定で定める。
- 裁量労働制: 実労働時間ではなく、協定・決議で定めた時間働いたものとみなす。制度ごとの導入要件が問われる。
就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に作成・届出義務がある。パートやアルバイトも人数に含める。絶対的必要記載事項として、始業・終業時刻、休憩、休日、休暇、賃金、退職などがある。「8時間勤務」とだけ書いても、始業・終業時刻や休憩時間の記載として足りない。
就業規則の変更は、手続と効力を分ける。作成・変更手続では過半数代表者等の意見を聴き、届出・周知する。労働条件の不利益変更の効力は、労働契約法上、変更後の就業規則が周知され、変更内容が合理的であれば、個別同意がなくても有効となる場合がある。
解雇では、次の3点を分ける。
- 論点: 内容
- 解雇権濫用法理: 客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当でない解雇は無効。
- 解雇予告: 原則30日前予告または30日分以上の平均賃金。試用期間中でも採用後14日を超えれば対象になり得る。
- 解雇制限: 業務上傷病休業中とその後30日、産前産後休業中とその後30日は原則解雇禁止。
労働契約法
労働契約法は、労働契約の基本ルールを定める。労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者が賃金を支払うことについて合意することで成立する。
頻出は、就業規則変更法理、懲戒、解雇、有期労働契約です。懲戒は、就業規則上の根拠があり、客観的合理的理由と社会通念上の相当性が必要です。減給制裁は労基法の上限もセットで問われる。
有期労働契約では、次を押さえる。
- 論点: 判断軸
- 契約期間上限: 原則3年。一定の専門的知識等を有する者や満60歳以上の者は5年。
- 期間途中の解雇: やむを得ない事由がなければ、契約期間満了前に解雇できない。
- 雇止め: 反復更新や更新期待の合理性がある場合、客観的合理的理由・社会通念上の相当性が問題になる。
- 無期転換: 同一使用者との有期契約が通算5年を超え、労働者が申し込むと無期契約に転換する。
- 転換後条件: 当然に正社員や同種無期労働者と同一条件になるわけではありません。別段の定めがなければ従前と同一の労働条件が基本。
男女雇用機会均等法
均等法は、募集・採用、配置、昇進、教育訓練、福利厚生、定年・退職・解雇などでの性別差別を禁止する。女性だけでなく男性に対する差別も対象です。
試験では、直接差別と間接差別が出る。例えば、合理的な理由なく「転居を伴う転勤に応じられること」を募集・採用要件にすると、間接差別に当たり得る。女性が少ない職種で女性を増やすためのポジティブ・アクションは、均等法違反とは限らない。
妊娠・出産を理由とする解雇、退職強要、不利益取扱いは禁止される。妊娠中および出産後1年以内の解雇は、事業主が妊娠・出産等を理由とするものでないことを証明しない限り無効とされる点も重要です。
育児・介護休業法
育児休業は、要件を満たす労働者から申出があれば、事業主が繁忙期や代替要員不足を理由に拒めない。出生時育児休業は、子の出生後8週間以内に取得できる制度として整理する。男性向けに説明されることが多いが、「男性に限る」と断定する選択肢は危ない。
休業中の所得保障は、会社が当然に賃金を支払う制度ではなく、主に雇用保険の育児休業給付として整理する。社会保険料の免除も過去問で出ている。育児休業中の厚生年金・健康保険の保険料免除は、申出と対象期間を押さえる。
介護休業は、要介護状態の対象家族を介護するための休業です。通算93日を軸にし、現行制度では分割取得も押さえる。2025年施行の改正では、介護離職防止のための個別周知・意向確認、雇用環境整備などが重視される。試験では、介護休業そのものだけでなく、仕事と介護の両立支援措置として問われる可能性がある。
妊娠・出産、育児休業、介護休業に関するハラスメント防止措置は、均等法・育介法とあわせて出る。派遣労働者については、派遣元だけでなく派遣先にも一定の措置義務が及ぶ点を押さえる。
パートタイム・有期雇用労働法
この法律は、短時間労働者・有期雇用労働者について、通常の労働者との不合理な待遇差を禁止し、均等待遇・均衡待遇を求める。試験では「同じ仕事なら必ずすべて同一待遇」と短絡させる選択肢に注意する。
- 考え方: 内容
- 均等待遇: 職務内容と職務内容・配置の変更範囲が通常の労働者と同じ場合、差別的取扱いをしてはならない。
- 均衡待遇: 職務内容、変更範囲、その他事情を考慮して、不合理な待遇差を設けてはならない。
- 説明義務: 待遇内容、待遇決定にあたって考慮した事項、通常の労働者との待遇差の内容・理由について説明が問題になる。
退職手当、賞与、手当、休暇、教育訓練など、待遇ごとに性質・目的を見て判断する。出題では、待遇差の存在だけで直ちに違法とする選択肢や、非正規だから説明不要とする選択肢が誤りになりやすい。
労働安全衛生法
安全衛生は、人数基準と制度目的を覚える。常時50人以上の事業場では、衛生管理者、産業医、衛生委員会、ストレスチェックが問われやすい。常時10人以上50人未満では、業種により安全衛生推進者または衛生推進者を選任する。
健康診断は、雇入時・定期健康診断・海外派遣時などが出る。海外派遣では、6か月以上の派遣前と帰任後の健康診断が問われた。
長時間労働者への医師による面接指導は、労働時間の把握、労働者の申出、医師意見の聴取、記録保存、就業上の措置を一連で押さえる。ストレスチェックは、本人への結果通知、本人同意なしに事業者へ結果提供しないこと、一次予防と職場環境改善が目的ですことが重要です。受検拒否を理由とする懲戒処分はできない。
労働組合法
労働組合法は、団結権、団体交渉権、団体行動権を支える。試験では、団体交渉拒否、不当労働行為、合同労組、労働協約が出る。
団体交渉は、正当な理由なく拒否できない。労働条件に関する事項は義務的団体交渉事項になりやすい。使用者が交渉相手を一方的に限定したり、唯一交渉団体条項を理由に他組合との交渉を当然に拒むと誤りになりやすい。
合同労組は、企業別組合ではなく、企業を超えて個人加入できる組合として整理する。中小企業の労務問題では、社内に組合がなくても、外部の合同労組から団体交渉を申し入れられる場面がある。
労働施策総合推進法
パワーハラスメント防止措置が最重要です。パワハラの3要素は、優越的な関係を背景とした言動、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、労働者の就業環境が害されることです。
代表的な類型は、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害です。2025年第26問では、集団で無視して孤立させる行為が「人間関係からの切り離し」に含まれることが問われた。
該当性は、労働者本人の主観だけで決まらない。客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲を超えているかで判断する。適正な業務指示や指導が、労働者にとって不満だから直ちにパワハラになるわけではありません。一方、相談窓口の整備・周知などの措置義務は事業所規模だけで当然免除されるものではありません。
外国人雇用では、外国人労働者の雇入れ・離職時の届出が問われる。特別永住者など一部を除き、氏名、在留資格、在留期間などをハローワーク経由で届け出る。
労働者派遣法
労働者派遣は、派遣元が労働者を雇用し、派遣先が指揮命令する三者関係です。請負との違いは、指揮命令関係がどこにあるかで見る。
- 論点: 試験での判断
- 紹介予定派遣: 禁止ではありません。派遣終了後の直接雇用を予定する制度として認められる。
- 禁止業務: 港湾運送、建設、警備、医療関連の一部などは注意。警備業務は頻出。
- 期間制限: 原則3年の枠組みがあるが、派遣元に無期雇用される派遣労働者など例外がある。
- 派遣契約解除: 派遣先都合の解除では、派遣先にも就業機会確保や費用負担などの配慮が問題になる。
- 違法派遣: 派遣先が違法派遣と知りながら受け入れると、労働契約申込みみなし制度が問題になる。
- 派遣労働者の待遇: 派遣先均等・均衡方式または労使協定方式により、不合理な待遇差を防ぐ。
2024年第25問では、紹介予定派遣は禁止ではありませんこと、無期雇用派遣労働者には期間制限の扱いで例外があること、警備業務の違法派遣では労働契約申込みみなしが問題になることが問われた。
労働保険・社会保険
労働保険は、労災保険と雇用保険です。社会保険は、健康保険、厚生年金保険、介護保険を中心に押さえる。
- 制度: カバーする主なリスク
- 労災保険: 業務災害、通勤災害。業務上・通勤上の負傷、疾病、障害、死亡。
- 雇用保険: 失業、雇用継続、教育訓練、育児・介護休業。
- 健康保険: 業務外の疾病・負傷・死亡・出産。
- 厚生年金保険: 老齢、障害、死亡。
- 介護保険: 介護を要する状態。健康保険とあわせて保険料徴収される年齢層がある。
社会保険料は、原則として被保険者と事業主が2分の1ずつ負担する。事業主は被保険者負担分を賃金から控除できなかったとしても、自己負担分とあわせて納付義務を負う。ボーナスにも健康保険・厚生年金の保険料がかかる。
株式会社など法人の事業所は、従業員数が少なくても健康保険・厚生年金の適用事業所になる点が問われる。新規適用届、被保険者資格取得届などの手続は事業主が日本年金機構に提出する。
労災保険では、業務上災害と通勤災害を区別する。通勤は、就業に関し、住居と就業場所との往復などを合理的な経路・方法で行うことをいう。逸脱・中断があると原則として通勤災害から外れるが、日常生活上必要な行為など例外がある。
判断手順
労働法規の問題は、文章が長くても次の順で分解すれば解ける。
- 場面を特定する
募集・採用、契約締結、就業中、賃金支払い、労働時間、休業、退職・解雇、派遣、保険のどれかを先に決める。場面が決まれば使う法律が絞れる。
- 当事者を特定する
使用者、事業主、事業者、派遣元、派遣先、労働者、被保険者のどれかを見る。安全衛生法では「事業者」、均等法や育介法では「事業主」、派遣では「派遣元・派遣先」の責任分担が重要です。
- 原則と例外を分ける
原則禁止だが例外あり、原則義務だが要件あり、原則対象だが一部除外あり、という構造で読む。選択肢の「常に」「一切」「理由の如何にかかわらず」は、例外を消していないか確認する。
- 数字を照合する
30日、14日、6週間、8週間、93日、3年、5年、10人、50人、45時間、360時間、720時間、100時間未満、80時間以内などを確認する。数字が1つでもずれていれば切れる。
- 義務の内容を確認する
「同意を得る」「意見を聴く」「届け出る」「周知する」「説明する」「申出に応じる」「相談体制を整備する」は、それぞれ違う。就業規則なら意見聴取、育休なら申出拒否不可、パワハラなら相談体制整備、と対応させる。
- 給付・負担・手続の主体を確認する
育児休業給付は雇用保険、業務災害は労災保険、健康保険・厚生年金は日本年金機構への届出が基本、社会保険料は労使折半で事業主が納付する。会社が賃金として払う話なのか、保険から給付される話なのかを分ける。
労働基準法の問題で迷ったときは、次の順に判定すると速い。
- 問われた事項: 最初に見る点
- 解雇: 解雇制限か、解雇予告か、解雇権濫用か。
- 賃金: 労働の対償か、支払い5原則か、割増賃金か、平均賃金か。
- 労働時間: 法定労働時間を超えるか、所定労働時間を超えるだけか。
- 休日: 法定休日か、法定外休日か。
- 就業規則: 記載事項、意見聴取、届出、周知、不利益変更の合理性。
- 有期契約: 期間上限、途中解雇、雇止め、無期転換、労働条件明示。
誤答しやすいポイント
労働関連法規のひっかけは、ほぼ決まっている。
- ひっかけ: 正しい見方
- 試用期間中は自由に解雇できる: 試用期間中でも解雇権濫用法理が働く。採用後14日を超えれば解雇予告も問題になる。
- 採用内定は就業前なので自由に取り消せる: 新卒採用内定は、一般に始期付解約権留保付労働契約として保護される。取消しには客観的合理性と相当性が必要。
- 就業規則の作成・変更には全労働者の同意が必要: 労基法上の手続は過半数労組・過半数代表者の意見聴取。効力は周知・合理性などを別に見る。
- パート用就業規則はパートだけの代表に聞けばよい: 同一事業場の就業規則なら、事業場全体の過半数代表者等の意見聴取が問題になる。
- 所定労働時間を超えたら必ず割増賃金: 労基法上の割増は法定労働時間超、法定休日、深夜で判断する。所定外でも法定内なら割増義務とは限らない。
- 完全週休2日の土日は両方とも法定休日: 法定休日は原則週1回。もう一方は法定外休日になり得る。
- 管理監督者には割増賃金が一切不要: 労働時間・休憩・休日規制は除外され得るが、深夜割増は残る。
- 有期契約は期間満了まで絶対に解雇できない: やむを得ない事由があれば期間途中の解雇が可能な場合がある。
- 無期転換すると正社員と同じ待遇になる: 無期転換は契約期間が無期になる制度。待遇が当然に正社員と同一になるわけではありません。
- 育児休業は会社が忙しければ拒める: 要件を満たす申出は、繁忙や代替要員不足を理由に拒めない。
- 育児休業中は会社が平均賃金の一定割合を払う: 主に雇用保険の育児休業給付の論点。会社の当然の賃金支払い義務ではありません。
- 出生時育児休業は男性だけ: 男性取得が想定されやすいが、条文上男性限定と断定しない。
- 妊娠したら自然退職と定めれば有効: 妊娠・出産を理由とする退職扱いや解雇は原則許されない。
- ポジティブ・アクションも性差別として禁止: 男女格差是正のための一定の積極的取組は許容される。
- パワハラは本人が不満なら成立: 客観的に業務上必要かつ相当な範囲を超えるかを見る。
- ストレスチェックはメンタル不調者発見が主目的: 一次予防と職場環境改善が中心。結果は実施者から本人へ通知される。
- 紹介予定派遣は禁止: 紹介予定派遣は認められている。
- 無期雇用派遣にも3年制限が一律にかかる: 無期雇用派遣労働者は期間制限の例外として問われやすい。
- 派遣先は派遣労働者に責任を負わない: 派遣先にも安全衛生、ハラスメント、契約解除時配慮、違法派遣時のみなし申込みなどの責任がある。
- 健康保険は出産を対象にしない: 健康保険には出産育児一時金や出産手当金がある。
- 社会保険料は控除できなければ納付不要: 事業主の納付義務は消えない。
- 労災は業務災害だけ: 通勤災害も対象。ただし合理的経路・方法、逸脱・中断の扱いに注意。
この章のまとめ
試験直前は、次の問いに即答できるか確認する。
- 労働基準法は最低基準を定める法律であり、基準未満の部分は無効になると言えるか。
- 労働者性は契約名ではなく、使用従属関係と事業者性で判断できるか。
- 労働条件明示で、有期契約の更新基準・更新上限・無期転換関連事項を思い出せるか。
- 解雇予告は30日前、採用後14日超の試用期間者にも注意と答えられるか。
- 解雇制限は、業務上傷病休業・産前産後休業とその後30日と答えられるか。
- 休憩は6時間超45分、8時間超1時間と即答できるか。
- 36協定は月45時間・年360時間、特別条項でも年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間以内と覚えているか。
- 所定外労働と法定時間外労働を区別できるか。
- 就業規則は10人以上、意見聴取、届出、周知、必要記載事項を言えるか。
- 就業規則の不利益変更は、同意がなくても周知と合理性で有効となる余地があると判断できるか。
- 有期契約は原則3年、一定の例外5年、通算5年超で無期転換と整理できるか。
- 育児休業は、会社の繁忙を理由に拒めないと判断できるか。
- 介護休業は通算93日を軸に覚えているか。
- 妊娠・出産、育児・介護休業を理由とする不利益取扱いを切れるか。
- 均等法の間接差別とポジティブ・アクションを区別できるか。
- パート・有期は、均等待遇と均衡待遇を分けられるか。
- ストレスチェックは、本人通知、受検拒否による懲戒不可、一次予防が目的と答えられるか。
- パワハラの3要素と6類型を思い出せるか。
- 紹介予定派遣は禁止ではありません、無期雇用派遣は期間制限の例外、違法派遣はみなし申込みと答えられるか。
- 労災、雇用、健康、厚生年金、介護の保険給付対象を区別できるか。
- 健康保険は出産も対象、厚生年金は老齢・障害・死亡、労災は業務災害・通勤災害と整理できるか。
- 社会保険料は原則労使折半で、事業主に納付義務があると判断できるか。
この分野は、暗記量が多いが、出題パターンは安定している。まず労働基準法の数字と就業規則・解雇・賃金を固め、次に労働契約法、育児・介護、均等法、派遣法、社会保険を重ねる。最後にハラスメントと安全衛生を確認すれば、近年の4問セットにも対応しやすい。
一次試験過去問での出方
労働関連法規は、2007年から2025年までほぼ継続的に出題されている。特に近年は、労働基準法の基本数字に加え、働き方改革、ハラスメント、育児・介護、派遣、社会保険が厚い。
- 年度・問題: 主な論点。学習上のポイント
- 2007年第20問: 個別労働関係紛争のあっせん。裁判以外の紛争解決制度。労働局の関与を押さえる。
- 2007年第21問: 通勤災害。合理的経路・方法、逸脱・中断の扱い。
- 2007年第23問、2011年第21問、2020年第24問: 36協定。原則限度、特別条項、上限規制、届出。
- 2008年第22問、2014年第23問、2018年第26問、2022年第24問、2024年第27問: 就業規則。記載事項、意見聴取、届出、周知、不利益変更。
- 2009年第18問、2011年第24問、2017年第25問、2021年第27問: 解雇。解雇予告、解雇制限、試用期間、雇止め。
- 2009年第19問、2011年第23問、2015年第24問、2019年第23問、2025年第25問: 安全衛生。健康診断、衛生管理体制、長時間労働面接指導、ストレスチェック。
- 2009年第21問、2024年第25問: 労働者派遣。禁止業務、紹介予定派遣、期間制限、みなし申込み。
- 2010年第18問、2012年第21問、2015年第25問、2019年第25問、2023年第1回第27問: 労働保険・社会保険。外国人、海外派遣、健康保険・厚生年金、保険料負担、届出。
- 2010年第19問、2011年第25問、2015年第22問、2017年第26問、2018年第25問、2021年第26問、2023年第1回第24問、2023年第2回第19・21問: 賃金・平均賃金・割増賃金。5原則、控除、法定時間外、深夜、休日、平均賃金。
- 2010年第21問、2014年第25問、2022年第26問: 労働組合法。団体交渉、合同労組、不当労働行為。
- 2012年第23問、2019年第24問、2024年第24問: 均等法・募集採用・妊娠出産。間接差別、ポジティブ・アクション、妊娠出産不利益取扱い。
- 2013年第21問、2019年第24問、2024年第26問: 育児・介護休業。産前産後、育児休業、介護休業、保険料免除、会社都合拒否不可。
- 2013年第22問、2016年第22問、2018年第24問、2025年第24問: 労働契約・有期契約。就業規則変更、期間上限、無期転換、途中解雇、雇止め。
- 2013年第20問、2017年第27問、2020年第25問、2021年第25問、2023年第1回第26問、2025年第27問: 変形労働時間制・フレックス。制度ごとの要件、協定、届出、上限。
- 2020年第26問、2025年第26問: パワーハラスメント。3要素、代表類型、相談体制、職場の範囲。
代表的な近年問題の切り方は次のとおりです。
2024年第24問は、募集・採用、内定、試用期間、労働契約を一問で横断した。試用期間中でも解雇予告が当然に不要ではありません。転居転勤要件は合理的理由がなければ間接差別になり得る。採用内定は自由取消しできない。労働契約は労務提供と賃金支払いの合意で成立する。
2024年第25問は、派遣法です。紹介予定派遣は禁止ではありません。派遣先都合の契約解除では派遣先にも配慮・費用負担が問題になる。無期雇用派遣労働者には期間制限の例外がある。禁止業務と知りながら受け入れた場合には、労働契約申込みみなし制度が問題になる。
2024年第26問は、育児休業です。会社が忙しい、人員が足りないという理由で、要件を満たす育児休業申出を拒めない。休業中の所得保障は会社の賃金支払い義務ではなく、雇用保険給付と分ける。
2024年第27問は、就業規則です。始業・終業時刻や休憩時間は具体的に記載する。作成・変更時に必要なのは同意ではなく意見聴取。不利益変更は、周知と合理性があれば有効となる余地がある。
2025年第24問は、有期雇用です。期間上限、退職手当等の明示、期間途中の解雇、雇止めを分ける。有期契約でも途中解雇が絶対禁止ではなく、やむを得ない事由があれば可能な場合がある。
2025年第25問は、ストレスチェックです。結果は実施した医師等から本人に通知される。受検は労働者の義務ではなく、拒否を理由に懲戒できない。目的は不調者の発見だけでなく、未然防止と職場環境改善です。
2025年第26問は、パワハラです。集団で無視して孤立させる行為は「人間関係からの切り離し」に含まれる。本人の主観だけで決まらず、業務上必要かつ相当な範囲を超えるかを客観的に見る。
2025年第27問は、1年単位の変形労働時間制です。1日10時間、1週52時間、48時間超の週の制限をセットで押さえる。制度は繁閑対応のためであり、長時間労働を無制限に認めるものではありません。