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NARITAI

企業経営理論

補助

戦略的人的資源管理

戦略的人的資源管理を補助論点として扱う。

この章で覚えておきたいこと

戦略的人的資源管理は、人事施策を単なる採用・評価・賃金管理ではなく、経営戦略を実現するための仕組みとして考える論点です。

試験では、細かな学説名よりも、次の対応を押さえる。

  • 見る軸: 確認すること
  • 経営戦略との整合: 事業の競争優位に合う人材の採用、育成、評価、処遇になっているか
  • 人的資本: 人材の知識、技能、経験、発想を競争優位の源泉として扱っているか
  • コミットメント: 従業員が組織に関与し、能力を発揮し続ける仕組みになっているか
  • 成果主義: 結果で統制する場面と、プロセスや育成を重視する場面を混同していないか

過去問では出題参照が少ないため、他の人事管理論点を解くための補助知識として押さえればよい。

出題パターン

主な出方は2つです。

1つ目は、人的資源戦略を図表の軸で読ませる問題です。2014年第22問では、人材の調達先を「内部育成か外部登用か」、管理対象を「仕事の結果か仕事のプロセスか」に分け、各戦略を対応させた。

2つ目は、多様な人材を組織の変革やイノベーションにつなげる考え方です。2016年第21問では、ダイバーシティを単なる属性の違いではなく、異質な視点を組織に取り込むものとして問うた。

したがって、暗記すべき中心は「人事施策が何の戦略目的に結び付くか」です。

基本知識

戦略的人的資源管理では、経営戦略と人事施策の整合を重視する。低コスト戦略をとる企業なら、標準化された業務、効率的な配置、成果の測定が重視されやすい。差別化戦略や新製品開発を重視する企業なら、専門性、創造性、学習、部門横断の協働が重要になる。

人的資本とは、人材が持つ知識、技能、経験、関係性、発想力などを資本として見る考え方です。設備や資金と違い、人材は学習し、経験を蓄積し、組織に新しい視点を持ち込む。戦略的人的資源管理では、この人的資本を競争優位の源泉として活用する。

コミットメントは、従業員が組織に関わり続け、目標達成に向けて力を出す状態と関係する。単に賃金で従業員を動かすだけでなく、組織の目標に納得し、成長機会や公正な評価を通じて能力を発揮できる状態を作ることが重要です。

成果主義は、成果や結果を評価・処遇に反映する考え方です。ただし、戦略的人的資源管理と成果主義は同じ意味ではありません。成果主義は人事施策の一部であり、経営戦略に合う場合に有効に使う。短期成果だけを重視すると、能力開発、協働、長期的な人的資本の形成を損なうことがある。

2014年第22問で出た人的資源戦略のマトリクスは、名称の印象ではなく、図の2軸で判断する。

  • 類型: 人材の調達先。管理対象
  • コミットメント型: 内部育成。仕事の結果
  • 家父長型: 内部育成。仕事のプロセス
  • 協力型: 外部登用。仕事の結果
  • 伝統型: 外部登用。仕事のプロセス

この対応は、図表問題として出た形をそのまま押さえる。

判断手順

  1. 問題文が、人事制度そのものを聞いているのか、経営戦略との結び付きを聞いているのかを確認する。
  2. 「採用、配置、育成、評価、処遇」が、どのような競争優位につながる設定かを見る。
  3. 図表問題では、理論名の印象で選ばず、軸の意味を先に読む。
  4. 内部育成か外部登用か、結果重視かプロセス重視かを分ける。
  5. ダイバーシティが出たら、属性の多さだけでなく、異質な視点を意思決定、組織変革、新商品開発に生かす話かを確認する。
  6. 成果主義が出たら、短期結果への連動だけでなく、育成やコミットメントとの整合を見落とさない。

迷ったら、「この人事施策は、どの戦略目的を支えているか」と言い換える。経営戦略とのつながりが説明できない選択肢は、戦略的人的資源管理として弱い。

誤答しやすいポイント

戦略的人的資源管理を、単なる人事部門の効率化と読むと誤りやすい。中心は、経営戦略と人事施策を結び付けることです。

成果主義を絶対視する選択肢に注意する。結果で統制することが有効な場面はあるが、すべての人材や職務に短期成果だけを当てはめればよいわけではありません。

コミットメント型という名称から、必ずプロセス重視だと推測しない。2014年第22問では、図の配置上、コミットメント型は内部育成かつ仕事の結果に対応していた。

ダイバーシティを、格差是正策や少数派意見の強制反映と同一視しない。2016年第21問では、異質な視点を社内に取り込み、組織変革や新商品開発につなげる点が正しい方向であった。

多様性があると必ずコミュニケーションが悪化する、と決めつける選択肢も危ない。共通目標や管理の仕方によって、多様性は学習や創造性の資源になりうる。

この章のまとめ

  • 戦略的人的資源管理は、経営戦略と人事施策を整合させる考え方です。
  • 人的資本は、知識、技能、経験、発想などを競争優位の源泉として見る。
  • コミットメントは、人材が能力を発揮し続けるための重要な視点です。
  • 成果主義は人事施策の一部であり、戦略的人的資源管理そのものではありません。
  • 2014年第22問のマトリクスは、内部育成か外部登用か、結果かプロセスかの2軸で読む。
  • 2016年第21問のダイバーシティは、異質な視点を組織変革やイノベーションに生かす話として押さえる。

一次試験過去問での出方

2014年第22問では、SHRMを人的資源を競争優位の源泉として見る考え方として示したうえで、人材の調達先と管理対象の2軸から人的資源戦略を分類した。正解判断では、協力型が外部登用かつ仕事の結果による統制に対応する点が問われた。

2016年第21問では、人材のダイバーシティが組織に与える影響が問われた。異質な見方を社内に取り込むことで、組織変革や新商品開発などのイノベーションが期待される、という方向で判断する問題であった。

この2問から、戦略的人的資源管理では「人材を戦略資源としてどう使うか」「多様性やコミットメントを成果につなげるか」が問われやすいと整理できる。