企業経営理論
標準組織コミットメント
組織コミットメントの種類を整理する。
この章で覚えておきたいこと
組織コミットメントは、個人が特定の組織に対して持つ心理的な結び付きです。試験では、難しい理論展開よりも、組織に残る理由を分類できるかが問われます。
- 情緒的コミットメントは「この組織にいたい」という愛着や同一化です。
- 継続的コミットメントは「辞めると損だから辞めにくい」という離職コストに基づく結び付きです。
- 規範的コミットメントは「組織に残るべきだ」という義務感に基づく結び付きです。
- 3つのコミットメントは排他的ではなく、同じ人の中に同時に存在しえます。
- 専門分野や職業そのものへの愛着は、組織コミットメントではなく、キャリア・コミットメントやプロフェッショナル・コミットメントとして区別します。
基本知識
組織コミットメントの全体像
組織コミットメントは、組織と個人の心理的距離を説明する概念です。単なる在籍年数や勤続意思だけではなく、組織の価値や目標を受け入れるか、組織のために努力したいか、組織にとどまりたいかといった態度を含みます。
試験では、組織に残る理由を短く言い換えると判断しやすくなります。好きだから残るなら情緒的、損だから残るなら継続的、そうすべきだから残るなら規範的です。
情緒的コミットメント
情緒的コミットメントは、組織への愛着や同一化に基づきます。「この組織にいたい」という心理です。
典型例は次のとおりです。
- 組織の価値観や目標に共感している。
- 所属していることに誇りを感じている。
- 組織の一員であることを自分らしさと結び付けている。
- 組織のメンバーに好意や一体感を持っている。
情緒的コミットメントは、職務満足、協力的態度、組織市民行動と結び付きやすく、離職意思やストレスは低くなりやすい方向で整理します。
継続的コミットメント
継続的コミットメントは、組織を離れることのコストに基づきます。「辞めにくい」という心理です。
典型例は次のとおりです。
- 退職すると賃金、地位、退職給付などを失う。
- 他社では評価されにくい組織特殊的技能を持っている。
- 転職先や代替機会が少ない。
- 年功序列的な賃金体系の下で、短期離職が経済的に不利になる。
継続的コミットメントは離職抑制にはつながりやすい一方、組織が好きで積極的に貢献したい心理とは限りません。職務態度や組織市民行動へのプラス効果は、情緒的コミットメントほど強くないと整理します。
規範的コミットメント
規範的コミットメントは、組織に残るべきだという義務感に基づきます。「残るべきだ」という心理です。
典型例は次のとおりです。
- 組織へ恩義を感じている。
- 長期勤続が望ましいという社会的規範を持っている。
- 忠誠を尽くすべきだと考えている。
- 道徳的に組織を離れるべきではないと感じている。
価値観の一致を規範的コミットメントとする選択肢は誤りになりやすいです。価値観の一致や誇りは、主に情緒的コミットメントです。
態度的コミットメント
態度的コミットメントは、組織の価値や目標を受け入れ、組織に積極的に関与し、組織にとどまりたいと考える心理的な結び付きを指します。3次元モデルだけでなく、組織目標の受容と積極的関与という広い態度として押さえます。
2011年の過去問では、態度的コミットメントの説明として、組織の価値や目標の受容と、関連する役割への積極的関与が問われました。
職業・専門分野への愛着との区別
組織コミットメントは、特定の組織への結び付きです。専門分野や職業そのものへの愛着は、キャリア・コミットメントやプロフェッショナル・コミットメントに近い概念です。
例えば、専門職としての誇りが強い人は、現在の組織よりも専門性を発揮できる場を選んで転職することがあります。したがって、専門職への愛着をそのまま特定組織へのコミットメントと読む選択肢には注意します。
この章のまとめ
組織コミットメントの問題は、選択肢の理由を短く言い換えると解きやすくなります。
- 「好きだからいる」なら情緒的コミットメントです。
- 「損だからいる」なら継続的コミットメントです。
- 「そうすべきだからいる」なら規範的コミットメントです。
- 「専門職が好き」なら、組織コミットメントではなく職業・専門分野へのコミットメントを疑います。
ひっかけでは、価値観の一致を規範的コミットメントとする選択肢、義務感を継続的コミットメントとする選択肢、生活水準への不安を情緒的コミットメントとする選択肢がよく出ます。
3つのコミットメントは、どれか1つしか持てないわけではありません。同じ人が、組織への愛着、離職コスト、義務感を同時に持つことがあります。
一次試験過去問での出方
2011年問16では、態度的コミットメントの説明が問われました。組織の価値や目標を受け入れ、関連する役割へ積極的に関与するという説明を正しいものとして判断します。
2017年問17では、組織コミットメントが高まる理由として不適切なものが問われました。専門分野や職業への心理的愛着は、特定の組織へのコミットメントではない点がポイントです。
2021年問17では、価値観の一致、社会的規範、組織特殊的技能、年功序列による離職コストの切り分けが問われました。
2025年問18では、情緒的・継続的・規範的コミットメントの定義と、3つが同時に併存可能である点が問われました。価値観の一致を規範的、義務感を継続的、生活水準への不安を情緒的とする選択肢を切れるようにします。