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NARITAI

企業経営理論

補助

正当性

正当性の獲得と制度的環境を短く整理する。

この章で覚えておきたいこと

  • 正当性とは、組織の活動や組織形態が、社会から「適切である」「受け入れられる」と見なされることです。
  • 組織は効率性だけでなく、法規制、業界慣行、専門職規範、社会的評価に合わせることで正当性を得ようとします。
  • 正当性を得るために組織同士が似ていく現象を同型化といいます。
  • 同型化は、強制的同型化、模倣的同型化、規範的同型化の3つで覚えます。
  • 判断軸は、「法規制か、成功例のまねか、専門職規範か」です。
  • 資源依存や取引コストの説明と混同しないことが重要です。

基本知識

正当性と制度的環境

正当性は、組織が外部環境の中で存続しやすくなるための社会的な承認です。企業は利益を上げるだけでなく、社会、政府、取引先、業界団体、専門家集団などから「そのやり方でよい」と見なされる必要があります。

制度的環境とは、組織の行動に影響する法規制、社会規範、業界慣行、専門職規範、評価基準などの環境です。組織は市場競争だけでなく、制度的環境からの期待にも合わせて行動します。

2008年第20問では、成功した企業の組織形態を他の企業が正当性獲得のために模倣し、組織形態が類似していく記述が問われました。個々の企業が自由に最適形態を選ぶというより、環境の圧力や正当性によって似ていく点を押さえます。

同型化の基本

同型化は、組織が正当性を得ようとして、他の組織と似た構造や行動をとるようになる現象です。試験では、正当性の抽象的な意味よりも、どの要因で似ていくのかを分類する力が問われます。

同型化は次の3類型で整理します。

  • 強制的同型化: 法律、政府規制、許認可、親会社や主要取引先からの要求など、外部からの明示的な圧力によって似ていくことです。
  • 模倣的同型化: 不確実性が高い中で、成功している組織の形態や管理手法をまねることで似ていくことです。
  • 規範的同型化: 専門職規範、教育、資格、専門家団体、専門家ネットワークの共有によって似ていくことです。

表で覚えようとせず、「規制なら強制、まねなら模倣、専門職なら規範」と短く固定すると、選択肢を切りやすくなります。

強制的同型化

強制的同型化では、「従わないと不利益を受ける」「制度上求められる」という圧力が中心になります。法律や政府規制、許認可条件、親会社や主要取引先からの要求が典型です。

2021年第21問では、政府による規制を模倣的同型化とする選択肢、法律に従うことを規範的同型化とする選択肢が誤りとして問われました。法律や規制は、強制的同型化として判断します。

ただし、組織文化のような内部的な圧力を、ただちに強制的同型化としない点にも注意します。ここでいう強制は、法令、規制、親組織など外部からの圧力を中心に読みます。

模倣的同型化

模倣的同型化では、「どうすればよいか分からないので、成功している組織をまねる」という判断が中心になります。成功企業の組織形態、管理手法、事業運営をベンチマークする場面は模倣的同型化です。

模倣的同型化は、不確実性が高いときに起こりやすいです。環境が安定しており、どのようにすれば評価されるかが明確であれば、わざわざ成功例をまねて手探りする必要性は相対的に小さくなります。

2023年第1回第22問では、環境が安定的で評価基準が明確であれば模倣的同型化が生じやすい、という選択肢が誤りとして問われました。

規範的同型化

規範的同型化では、専門職として共有される考え方や標準が中心になります。同じ教育課程、資格、専門家団体、専門家ネットワークを通じて、異なる組織でも似た判断や組織運営が広がります。

2021年第21問では、同じような教育課程を受けた人々が異なる組織に所属していても、横断的な集団規範が正当性の根拠となり、規範的同型化が生じやすいという記述が正解でした。

2023年第1回第22問でも、専門家団体のような組織横断的な専門家ネットワークが発達すると、規範的同型化が生じやすいという判断が問われました。

個体群生態学との関係

2008年第20問では、組織の個体群生態学モデルの文脈で、成功企業の組織形態を模倣して組織形態が類似する記述が出題されています。

個体群生態学は、個々の組織が自由に最適化するというより、環境の選択圧のもとで、どの組織形態が残るかを見る考え方です。市場競争だけでなく、規制や正当性も選択圧になります。

この論点では、組織が合理的に最適構造を選ぶ説明と、正当性獲得や環境圧力によって似ていく説明を区別します。

この章のまとめ

正当性の問題では、まず選択肢が「社会から受け入れられるために組織が似ていく」話かを確認します。そのうえで、似る原因を3つに分類します。

  1. 法律、政府規制、許認可、親組織からの要求なら、強制的同型化です。
  2. 成功企業のベンチマークや、不確実性下でのまねなら、模倣的同型化です。
  3. 専門職規範、資格、専門家団体、同じ教育なら、規範的同型化です。

ひっかけは、分類名の入れ替えです。成功企業のベンチマークを規範的同型化にする選択肢、政府規制を模倣的同型化にする選択肢、専門家団体を強制的同型化にする選択肢は誤りです。

また、取引関係にある組織同士が資源を相互に依存しているだけでは、規範的同型化とはいえません。これは資源依存の説明であり、正当性や同型化の直接要因ではありません。

最後は、「法規制か、まねか、専門職規範か」の3択に戻します。この章は出題数が多くないため、細かな学説名よりも、過去問で使う分類軸を確実に押さえることが得点につながります。

一次試験過去問での出方

2008年第20問では、組織の個体群生態学モデルの中で、成功した企業の組織形態を他企業が正当性獲得のために模倣し、組織形態が類似していく記述が問われました。環境への自由な適応ではなく、選択圧や正当性による類似として読みます。

2021年第21問では、強制的同型化、模倣的同型化、規範的同型化の分類が直接問われました。同じ教育課程や専門職規範は規範的同型化、成功企業のベンチマークは模倣的同型化、政府規制や法律は強制的同型化です。

2023年第1回第22問でも、制度的同型化の3類型が問われました。専門家団体のような組織横断的な専門家ネットワークは規範的同型化につながり、資源依存や単なる取引関係とは区別します。