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NARITAI

企業経営理論

標準

資源依存

資源依存の考え方と外部資源確保を扱う。

この章で覚えておきたいこと

  • 資源依存は、組織が存続に必要な資源を外部の組織やステークホルダーに依存しているため、その相手から影響を受けると考える見方です。
  • 依存度は、資源の重要性が高いほど、代替先が少ないほど、相手側の自社依存が小さいほど大きくなります。
  • 依存が強い側は、相対的なパワーが弱くなりやすいです。
  • 依存を下げるには、在庫を増やすだけでなく、代替調達先、代替資源、設計変更、内製化、買収などで依存構造を変える必要があります。
  • 契約、提携、合弁、取締役兼任、業界団体、公式調整機関は、依存先との関係を安定化させる手段として問われます。
  • 試験では、資産評価額、品質向上、在庫増加のように、依存関係を直接変えない要素を混ぜてきます。

基本知識

資源依存の基本発想

企業は、原材料、部品、資金、販売チャネル、技術、人材、情報、正当性などを、すべて自社内で保有できるわけではありません。多くの場合、外部の企業、金融機関、顧客、行政、業界団体、地域社会などから必要資源を獲得します。

資源依存では、組織は外部環境にただ適応するだけでなく、外部環境に働きかけて自社の裁量を確保しようとすると考えます。つまり、外部資源に縛られる側面と、環境を操作しようとする側面をセットで押さえます。

依存度を決める三つの視点

依存度は、次の順に見ると判定しやすいです。

  1. その資源が事業にとって重要か。
  2. その資源を提供できる代替先があるか。
  3. 相手も自社にどの程度依存しているか。

重要で、代替がなく、相手側の自社依存が小さいほど、自社の依存は強くなります。例えば、製品製造に不可欠な部品を一社からしか調達できず、その供給者は他社にも多数販売しているなら、自社は強く依存しています。

一方で、供給者の売上の大半が自社向けであれば、供給者も自社に依存しています。この場合、力関係は一方的になりにくくなります。

依存と相対的パワー

資源依存でいうパワーは、相手が自社にどれだけ依存しているかによって生じる影響力です。依存している側ほど、価格、納期、品質、供給量、契約条件などで不利になりやすいです。

ここで最も重要なのは、依存が強い側ほどパワーは弱いという向きです。A社がB社に強く依存しているなら、A社のB社に対するパワーが強いのではなく、B社の方が強くなりやすいと読みます。

2023年第1回第21問や2025年第21問では、この向きを事例で判定する力が問われています。資産評価額や製品品質ではなく、必要資源、代替可能性、相手側の販売依存度、法的制約を見ます。

不確実性とコンフリクト

資源依存では、環境の構造によって焦点組織が直面する不確実性が変わります。重要資源が豊富で代替可能性が高ければ、組織間の取り合いは弱まり、不確実性は低くなりやすいです。

反対に、重要資源が希少で、組織間の相互依存や連結が高い場合は、交渉や調整の必要が増えます。連結が高いから常に安定する、相互依存が高いから常にコンフリクトが低い、とは読みません。

2011年第19問設問1では、重要資源が豊富であれば相互依存が高くてもコンフリクト可能性が低くなり、不確実性が下がるという判断が問われました。

環境変化から内部権力への影響

資源依存モデルでは、外部環境は組織内部の権力関係にも影響します。環境が変わると、どの資源が重要か、どの部門が外部資源を握っているかが変わります。その結果、組織内の権力配分や経営者の選任にも影響が及びます。

流れは次のように押さえるとよいです。

  1. 環境コンテキストが変化する。
  2. 組織内の権力関係が変化する。
  3. 経営者の継承・交代に影響する。
  4. 組織行動や組織構造が変化する。
  5. 組織が環境へ働きかける。

2011年第19問設問2では、この順序を入れ替えた選択肢を落とすことが問われました。個別用語よりも、因果の順番を固定して覚えます。

依存構造を変える手段

依存を下げる第一の方向は、今の相手に頼らざるを得ない構造を変えることです。

  • 代替調達先の確保: 特定供給者に限定される状態を避けます。
  • 代替資源の開発: 既存の原材料や部品に頼らない方法を作ります。
  • 設計変更や新製品開発: 依存している部品そのものを使わない方向へ変えます。
  • 内製化: 外部から買っていた資源を自社内で作ります。
  • 買収: 相手の資源や意思決定権を直接コントロールしやすくします。

在庫を増やすことは、供給途絶への時間的余裕を作る緩衝策です。しかし、特定供給者に頼る構造は残るため、依存の解消とは区別します。

関係を安定させる手段

依存を完全に消せない場合でも、外部主体との関係を安定化させることはできます。

  • 契約やライセンス: 独立性を保ちながら、必要資源へのアクセスや条件を安定させます。
  • 交渉: 将来の行動や条件を当事者間で折衝します。
  • 提携や共同事業: 資源やリスクを分担し、共通目標に向けて協力します。
  • 合弁: 共同で別組織を作り、資源やリスクを共有します。ただし、親会社の影響を受けないわけではありません。
  • 取締役兼任や代表参加: 外部主体を意思決定へ取り込み、利害調整をしやすくします。
  • 公式調整機関: 複数組織間の調整を制度化します。

2007年第16問設問1や2019年第19問では、これらの手段を狭く捉えすぎないことが問われました。協調戦略には、協定、代表参加、共同事業、公式調整機関の設置まで含まれます。

環境操作戦略

資源依存は、環境に支配されるだけの理論ではありません。企業は、環境そのものへ働きかけることがあります。

  • 業界団体の設立: 同じ利害を持つ企業と協力し、製品やサービスの正当性を高めます。
  • 広報活動: 利害関係者の認識に働きかけ、好ましいイメージを形成します。
  • 戦略的選択: 多角化、事業売却、調達先の多様化などでドメインを変えます。
  • 標準化への関与: 複数企業で規格やルール形成に関わり、市場や取引条件を整えます。

2014年第18問では、交渉、包摂、代替資源開発、標準化などの用語と具体例の対応が問われました。金融機関の代表を取締役会に招く行動は、外部主体を意思決定へ取り込む包摂の例です。

この章のまとめ

資源依存を解くときは、まず焦点組織を決めます。A社について問われているのか、B社について問われているのかを取り違えないことが出発点です。

次に、焦点組織が何に依存しているかを特定します。原料、部品、資金、販路、技術、正当性、情報など、問題文に出てくる必要資源を拾います。

そのうえで、次の順に判断します。

  1. その資源がないと事業に大きな支障があるか。
  2. 他の調達先や代替資源があるか。
  3. 相手は自社以外にも販売先や取引先を持っているか。
  4. 法律や規制で相手の裁量が制約されているか。
  5. 選択肢の行動が、依存構造を変えるのか、一時的に緩衝するだけなのか。

ひっかけは、依存度とパワーを逆にする選択肢です。依存が高いから自社のパワーが強い、という記述は原則として誤りです。

また、在庫増加や品質向上のように、一見よさそうでも依存構造を変えない行動に注意します。依存を下げるには、代替先、代替資源、設計変更、内製化、買収など、必要資源や依存先そのものに変化があるかを確認します。

最後に、組織間関係の手段を問う問題では、契約、提携、合弁、取締役兼任、買収、業界団体、公式調整機関を、依存の低減または関係安定化の手段として整理します。

一次試験過去問での出方

2007年第16問では、取締役兼任、買収、ライセンス契約、合弁、業界団体、広報活動、戦略的選択など、資源依存と環境操作戦略が問われました。合弁企業が親会社の影響を受けない、規制が内部資源に影響しない、といった記述を誤りとして切ります。

2011年第19問では、資源依存モデルにおける不確実性と、環境コンテキストが内部権力、経営者選任、組織行動・構造へ及ぶ順序が問われました。資源の豊富さ、相互依存、連結、権力集中を単独で断定せず、因果の順序も確認します。

2014年第18問では、環境操作戦略が問われました。代替原材料の開発は依存関係を変える行動であり、取締役会への金融機関代表の参加は包摂、当事者間の折衝は交渉として読みます。

2019年第19問では、ステークホルダーとの協調戦略が問われました。資源交換の協定、代表の政策決定機関への参加、共同事業、公式調整機関の設置は、いずれも協調戦略に含まれます。

2023年第1回第21問と2025年第21問では、事例中の依存度と相対的パワーが問われました。代替調達、相手側の販売依存、法的制約、資源の重要性を読み、資産評価額、品質向上、在庫増加のようなずれた根拠に注意します。