企業経営理論
補助マーケティング・コンセプト
顧客志向、社会志向などコンセプトを短く整理する。
この章で覚えておきたいこと
マーケティング・コンセプトは、企業が市場に向き合うときの基本的な考え方です。一次試験では、細かな歴史を暗記するよりも、選択肢の表現がどの志向を指しているかを見抜く力が問われます。
- 顧客志向は、顧客ニーズを理解し、顧客満足を高める考え方です。
- 販売志向は、売り込みや販売促進によって売上を作ろうとする考え方です。
- 社会志向は、顧客満足、企業利益、社会の長期的利益を調和させる考え方です。
- ソーシャル・マーケティングは、SNS活用そのものではありません。社会的課題の解決にマーケティング手法を用いる考え方です。
- ソサイエタル、サステイナブル、コーズ・リレーテッド、ソーシャル・マーケティングは関連しますが、同義ではありません。
基本知識
マーケティング・コンセプトは売り込みではない
マーケティング・コンセプトは、企業活動を「作ったものをどう売るか」ではなく、「誰にどのような価値を提供するか」から組み立てる考え方です。
よく問われる志向は、次のように区別します。
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製品志向
良い製品を作れば売れるという発想です。製品性能や品質を重視します。ただし、一次試験では「製品志向は常に不要」と断定する選択肢に注意します。技術やシーズが革新的な製品の出発点になることもあります。 -
販売志向
売り込み、販売努力、販売促進を中心に売上を伸ばそうとする発想です。顧客理解よりも「売る活動」そのものに焦点があります。顧客と競合の両方を意識して市場に対応する考え方は、販売志向ではなく市場志向に近いです。 -
顧客志向
顧客ニーズを理解し、競合より効果的・効率的に顧客満足を提供する発想です。ただし、顧客アンケートで上位の項目だけを見て、少数派のニーズを一律に無視することは顧客志向とはいえません。 -
社会志向
顧客満足と企業利益に加え、消費者や社会の長期的利益まで考える発想です。環境、健康、安全、地域社会への影響を考慮しながら、長期的な信頼やブランド価値を築く考え方です。
ドラッカーの「Marketing is to make selling unnecessary」という趣旨は、不用品を売ることではありません。顧客を深く理解し、顧客に合った価値を設計することで、過度な売り込みに頼らない状態を目指すという意味です。
4Pと4Cは売り手目線と買い手目線で対応する
マーケティング・ミックスの4Pは、売り手側から見たマーケティング・ツールです。これを買い手側から見ると4Cとして整理できます。
- Product は、買い手側では Customer Value です。製品そのものではなく、顧客が得る価値として見ます。
- Price は、買い手側では Cost です。支払価格だけでなく、時間、手間、心理的負担も含めて考えます。
- Place は、買い手側では Convenience です。どこで、どれだけ便利に入手できるかを見ます。
- Promotion は、買い手側では Communication です。一方的な告知ではなく、顧客との情報伝達や関係づくりとして見ます。
過去問では、PlaceをCustomer costに対応させるような入れ替えが出ます。PlaceはConvenience、PriceはCostと押さえます。
社会志向の周辺用語は射程で分ける
社会志向の論点では、「ソーシャル」「ソサイエタル」「サステイナブル」など似た語が並びます。意味をまとめて覚えるのではなく、何を目的にしているかで分けます。
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ソサイエタル・マーケティング・コンセプト
標的市場のニーズ、欲求、利益を正しく判断し、顧客満足を他社より効果的・効率的に提供しながら、消費者と社会の幸福も維持・向上させる考え方です。企業利益、顧客利益、社会的利益の調和が軸です。 -
ソーシャル・マーケティング
禁煙、環境保護、健康増進など、社会的課題の解決や望ましい行動変容のためにマーケティング手法を応用する考え方です。SNSを活用した顧客関係づくりは、ソーシャルメディア・マーケティングであり、ソーシャル・マーケティングとは別です。 -
サステイナブル・マーケティング
消費者の長期的利益や社会的利益への配慮を、企業の長期的な経営計画と結びつける考え方です。ソサイエタル・マーケティングと関連しますが、同義とまではいえません。 -
コーズ・リレーテッド・マーケティング
製品の売上の一定額を社会的課題の解決に寄付するなど、販売活動と社会的な大義を結びつける手法です。社会的価値と結びついたソサイエタル・マーケティングの実践例として問われます。
社会貢献活動は、長期的には企業イメージ、ブランド・ロイヤルティ、顧客との関係性に結びつくことがあります。「社会貢献はマーケティング成果に影響しない」とする断定は疑って読みます。
この章のまとめ
マーケティング・コンセプトの問題では、最初に「中心に置いているもの」を確認します。売り込みが中心なら販売志向、顧客ニーズと満足が中心なら顧客志向、社会全体の長期的利益まで含むなら社会志向です。
ひっかけを避けるために、次を最後に確認します。
- セリング志向を、市場志向や顧客志向と混同しない。
- 顧客志向でも、一部の顧客ニーズを一律に無視しない。
- 製品志向やシーズ志向を、常に否定すべきものとして扱わない。
- SNS活用はソーシャルメディア・マーケティングであり、ソーシャル・マーケティングとは区別する。
- 4Pと4Cは、Product=Customer Value、Price=Cost、Place=Convenience、Promotion=Communicationで対応させる。
- ソサイエタル、サステイナブル、コーズ・リレーテッド、ソーシャル・マーケティングを同義にしない。
一次試験過去問での出方
2018年第33問では、ソサイエタル・マーケティング・コンセプト、SNS活用とソーシャル・マーケティングの違い、4Pと4Cの対応が問われました。
2020年第28問では、販売志向と市場志向の混同、顧客志向を理由に一部ニーズを無視する誤り、製品志向を常に否定する誤りが問われました。
2020年第35問では、ソサイエタル・マーケティング、サステイナブル・マーケティング、コーズ・リレーテッド・マーケティング、ソーシャル・マーケティングの区別が問われました。