企業経営理論
補助広告計画と効果測定(広告計画の流れと役割、効果測定)
広告計画と効果測定を短く扱う。
広告計画と効果測定
この章で覚えておきたいこと
広告計画は、広告を出すこと自体を目的にする活動ではありません。マーケティング目標を達成するために、誰に、何を、どの媒体で、いつ、どの程度伝え、どの指標で成果を確認するかを決める活動です。
一次試験では、広告計画の細かな実務手順よりも、広告目標、広告予算、媒体選択、広告効果測定の考え方を混同せずに選べるかが問われます。特に、DAGMAR、売上高比率法、競争者対抗法、タスク法、前期実績基準、リーチ、フリークエンシー、インプレッションの区別が重要です。
押さえるべきポイントは次のとおりです。
- 広告計画は、目標設定、ターゲット設定、予算設定、媒体計画、表現計画、スケジュール、効果測定の流れで考えます。
- 広告目標は、認知を高めるのか、態度を変えるのか、行動を促すのかで分けます。
- 広告予算には、売上高比率法、競争者対抗法、タスク法、前期実績基準などがあります。
- リーチは到達した人数や割合、フリークエンシーは接触頻度、インプレッションは広告の表示回数です。
- 効果測定は、売上だけでなく、認知率、好意度、購買意向、クリック、問い合わせ、来店、購入などを目的に合わせて選びます。
- デジタル広告の詳細な配信技術やSNS施策は別トピックで扱うため、ここでは広告計画全体の中で必要な指標の意味を押さえます。
基本知識
広告計画の全体像
広告計画は、企業のマーケティング目標から逆算して組み立てます。新製品を知ってもらう段階なのか、ブランドへの好意を高めたい段階なのか、資料請求や購買につなげたい段階なのかによって、広告の設計は変わります。
基本的な流れは次のように整理できます。
- マーケティング目標と広告目標を決める。
- ターゲットを明確にする。
- 広告予算を決める。
- 媒体を選ぶ。
- 広告表現を設計する。
- 掲出時期や接触回数を計画する。
- 効果測定の指標と方法を決める。
この順序は、固定的な作業手順として暗記するよりも、目標から手段へ落とす考え方として理解することが大切です。目的が曖昧なまま媒体や表現を先に決めると、広告効果を正しく評価できません。
広告目標とターゲット設定
広告目標は、消費者の反応段階に合わせて設定します。代表的には、認知、理解、好意、選好、購買意向、購買行動などの段階です。
たとえば、新ブランドの発売直後であれば、まずは認知率や商品理解を高める目標が中心になります。一方、すでに認知されている商品であれば、比較検討時の想起、購買意向、来店、資料請求、購入などを目標にします。
ターゲット設定では、誰に広告を届けるのかを具体化します。年齢や性別だけでなく、利用場面、抱えている課題、購買プロセス上の段階、既存顧客か新規顧客かといった切り口で考えます。
BtoBマーケティングでも広告は不要ではありません。受け手が特定少数であっても、認知形成、信頼形成、見込み客獲得、展示会やWebサイトへの誘導などのために広告は使われます。「BtoBだから広告は不要」とする記述は疑ってください。
DAGMARと広告効果階層
DAGMARは、広告目標を測定可能なコミュニケーション目標として定義する考え方です。正式には、Defining Advertising Goals for Measured Advertising Results の略です。
試験では、DAGMARをAIDAやAISASのような消費者行動モデルと混同させる選択肢が出やすいです。DAGMARは、単にオンライン上の行動を説明するモデルではありません。広告によって、認知、理解、確信、行動などのどの段階をどれだけ変えるのかを明確にし、測定できるようにする考え方として押さえます。
AIDAは、注意、興味、欲求、行動の流れで消費者反応を捉えるモデルです。広告計画では、こうした反応段階を参考にしながら、広告目標と効果測定指標を対応させます。
広告予算の決め方
広告予算には複数の決め方があります。一次試験では、それぞれの考え方を説明文から判別できることが重要です。
- 売上高比率法: 売上高や予想売上高に一定比率を掛けて広告予算を決めます。簡便ですが、売上が低いと広告投資も減りやすい点に注意します。
- 競争者対抗法: 競合企業の広告支出水準を参考にして予算を決めます。競争上の見劣りを避けやすい一方、自社の目標との対応は弱くなりがちです。
- タスク法: 達成したい広告目標を決め、そのために必要な活動を積み上げて予算を決めます。目標と施策の対応が明確になりやすい方法です。
- 前期実績基準: 前期や前年の広告予算実績をもとに、増減調整して予算を決めます。理論的に最適とは限りませんが、実務ではよく使われます。
2020年の過去問では、売上高比率法、競争者対抗法、タスク法だけでなく、前期実績を基準に予算を決める企業も多いという実務的な理解が問われました。広告予算は「理論上望ましい方法」だけでなく、現実の企業行動として出題されることがあります。
媒体計画と広告表現
媒体計画では、広告目標とターゲットに合う媒体を選びます。マスメディアは広い認知形成に向き、Web広告やSNS広告はターゲティングや反応測定に向きます。店頭、イベント、ダイレクトメール、メールマガジンなどは、購買直前の接点や既存顧客への接触に使いやすい媒体です。
媒体選択では、次のような観点を見ます。
- ターゲットに届くか。
- 広い認知に向くか、絞り込んだ訴求に向くか。
- 商品特性を十分に伝えられるか。
- 予算内で必要な接触量を確保できるか。
- 効果測定に必要なデータを得られるか。
広告表現は、何をどのように伝えるかを設計する活動です。便益を訴求するのか、情緒的なイメージを作るのか、比較を示すのか、ティーザー広告のように興味を引いて後続接点へ誘導するのかを決めます。
テレビCMで一部だけ見せて「続きはこちら」とWebへ誘導する施策は、一般にクロスメディア施策やティーザー的な表現として理解します。広告であることを隠すステルス・マーケティングとは異なります。
スケジュールと接触量の設計
広告スケジュールでは、いつ広告を出すか、どの期間に集中させるか、どの程度の接触回数を確保するかを決めます。発売直後、需要期、キャンペーン期間、競合の出稿時期などを考慮します。
接触量を考えるときは、リーチとフリークエンシーを分けます。リーチは、広告が届いた人数や割合です。フリークエンシーは、1人あたり何回接触したかを表します。
広い認知を得たい場合はリーチが重要になります。理解や記憶を高めたい場合は、一定のフリークエンシーも必要になります。ただし、接触回数を増やしすぎると広告疲れや無駄な費用が発生するため、目的に応じたバランスが必要です。
効果測定の考え方
広告効果は、認知、態度、行動のどの段階を見るかで指標が変わります。売上だけで広告を評価すると、認知形成やブランドイメージ向上の効果を見落とすことがあります。
認知段階では、広告認知率、ブランド認知率、想起率、リーチ、インプレッションなどを確認します。態度段階では、好意度、理解度、ブランドイメージ、購買意向などを確認します。行動段階では、クリック、問い合わせ、資料請求、来店、購買、コンバージョンなどを確認します。
主要な指標は次のように使い分けます。
- リーチ: 何人に届いたか、または対象者の何割に届いたかを見ます。
- フリークエンシー: 1人あたり何回接触したかを見ます。
- インプレッション: 広告が表示された延べ回数を見ます。同じ人に複数回表示されれば複数回として数えます。
- クリック: 広告からWebサイトや詳細ページへ移動した反応を見ます。
- コンバージョン: 購入、申込、資料請求、会員登録など、広告主が成果として定義した行動を見ます。
ここで重要なのは、指標を暗記するだけでなく、広告目標と対応させることです。認知目的の広告を短期の購入件数だけで評価すると、役割を過小評価するおそれがあります。逆に、獲得目的の広告で認知率だけを見ても、成果判断としては不十分です。
この章のまとめ
広告計画では、まず広告の目的を確認します。認知を広げるのか、態度を変えるのか、行動を促すのかによって、ターゲット、媒体、表現、スケジュール、効果測定指標が変わります。
広告予算の問題では、説明文のキーワードに注目します。売上に一定比率を掛けるなら売上高比率法、競合の支出を意識するなら競争者対抗法、目標と必要活動から積み上げるならタスク法、前期の実績を土台にするなら前期実績基準です。
効果測定では、リーチ、フリークエンシー、インプレッションを混同しないことが大切です。リーチは届いた人数や割合、フリークエンシーは接触頻度、インプレッションは表示回数です。クリックやコンバージョンは行動段階の指標として使います。
ひっかけとしては、DAGMARをオンライン消費者行動モデルの頭字語のように説明する選択肢、BtoBでは広告が不要とする選択肢、クロスメディア施策をステルス・マーケティングとする選択肢に注意します。広告計画は、用語の定義だけでなく、広告の目的と指標の対応関係で判断してください。
一次試験過去問での出方
2020年 第30問では、広告予算の算出方法、DAGMAR、BtoB広告、クロスメディア施策、ステルス・マーケティングの区別が問われました。正解判断では、売上高比率法、競争者対抗法、タスク法に加えて、前期の広告予算実績を基準にする企業も多いという実務的な理解が重要でした。また、DAGMARを近年のオンライン消費者行動モデルとして説明する記述や、テレビCMからWebへ誘導する施策をステルス・マーケティングとする記述は誤りとして判断します。