企業経営理論
標準企業の競争市場戦略(企業のミッション、企業のドメイン・事業の定義、企業の市場環境分析、成長機会の評価)
ミッション、ドメイン、市場環境分析、成長機会を扱う。
企業の競争市場戦略
この章で覚えておきたいこと
企業の競争市場戦略では、企業が何のために存在し、どの市場で、どの競争相手を見ながら、どの成長機会を選ぶのかを整理します。一次試験では、理念の暗記よりも、企業ドメインと事業ドメイン、外部環境と内部環境、既存市場と新市場、既存製品と新製品を切り分ける力が問われます。
- ミッションは、企業の存在意義や社会に対する基本的役割です。短期の販売目標や個別キャンペーンではありません。
- ドメインは、企業や事業の活動領域です。企業ドメインは全社の活動範囲、事業ドメインは個別事業の顧客・顧客機能・技術を示します。
- 市場環境分析では、PESTは外部マクロ環境、SWOTは内部環境と外部環境の両方を整理します。
- 有効市場は、関心、購買力、アクセス可能性を持つ消費者の集合です。
- アンゾフの成長マトリクスは、既存製品・新製品と既存市場・新市場の2軸で成長機会を判断します。
基本知識
ミッションは存在意義を示す
ミッションは、企業がどのような価値を社会や顧客に提供するために存在するのかを示す基本的な考え方です。意思決定の基準にはなりますが、広告施策、販売促進、短期売上目標そのものではありません。選択肢でミッションを「短期利益の最大化だけ」とする表現があれば疑います。
企業ドメインと事業ドメインを分ける
企業ドメインは、全社としてどの事業領域を持つか、どのような事業の集合体として存在するかを示します。多角化企業では、事業間の関連性、企業アイデンティティ、資源配分の範囲と関係します。
事業ドメインは、個別事業がどの市場でどのように競争するかを示します。代表的には、顧客、顧客機能、技術の3次元で考えます。顧客は「誰に」、顧客機能は「どのようなニーズを満たすか」、技術は「どのような方法で満たすか」です。製品名だけで事業を定義すると、代替品や新用途を見落とします。
市場環境分析は外部と内部を分ける
外部環境には、マクロ環境、業界構造、競争相手、顧客、代替品などがあります。内部環境には、自社の経営資源、能力、ブランド、販売チャネル、技術、組織能力などがあります。
PEST分析は、政治的環境、経済的環境、社会的環境、技術的環境から外部マクロ環境を整理する方法です。SWOT分析は、内部環境である強み・弱みと、外部環境である機会・脅威を合わせて整理します。SWOTを内部環境だけの分析とする選択肢は誤りです。
市場と競争相手の範囲を読む
市場を定義するときは、単に関心がある人だけでなく、購買力とアクセス可能性も確認します。有効市場は、関心、購買力、アクセス可能性を満たす消費者の集合です。
競争相手の捉え方には段階があります。
- ブランド競争: 同じ製品カテゴリー内の類似ブランド同士の競争です。
- 産業競争: 同じ製品カテゴリーや産業内の競争です。
- 形態競争: 同じ機能や便益を異なる形態で満たす製品・サービスとの競争です。
- 一般競争: 消費者の限られた支出を奪い合う広い競争です。
市場占有率は分母と測定単位を見る
市場占有率は、分母に何を含めるか、金額ベースか数量ベースかを確認します。高価格で差別化された製品は、販売数量ベースのシェアよりも売上高ベースのシェアが高く出ることがあります。相対的市場シェアでは、自社シェアを最大競合のシェアで割るのが基本です。
アンゾフの成長マトリクスで成長機会を判断する
アンゾフの成長マトリクスは、製品と市場の新規性で成長機会を分類します。
- 市場浸透: 既存製品を既存市場でより多く売ります。販促強化、購入頻度向上、既存顧客へのEC販売などが該当します。
- 市場開拓: 既存製品を新しい地域、顧客層、用途へ広げます。
- 新製品開発: 既存市場に新しい製品を投入します。
- 多角化: 新製品を新市場へ投入します。製品も市場も新しいことがポイントです。
選択肢を切る判断手順
まず、全社戦略、事業戦略、機能分野別戦略のどの階層の話かを確認します。次に、企業ドメインか事業ドメインかを見ます。市場環境分析では、PEST、SWOT、有効市場、競争範囲、市場占有率の定義に戻ります。成長機会は、施策名の印象ではなく、誰に何を売るのかで分類します。
この章のまとめ
- ミッションは存在意義や基本的役割であり、短期施策そのものではありません。
- 企業ドメインは全社の活動領域、事業ドメインは個別事業の顧客・機能・技術です。
- PESTは外部マクロ環境、SWOTは内部環境と外部環境の両方を整理します。
- 有効市場は、関心、購買力、アクセス可能性を満たす消費者の集合です。
- 市場占有率は、金額ベースか数量ベースか、分母に何を含めるかを確認します。
- ブランド競争、産業競争、形態競争、一般競争は、競争相手の範囲で見分けます。
- アンゾフは、既存製品・新製品と既存市場・新市場の2軸で分類します。
- チャネル追加や販促強化だけなら、市場浸透にとどまりやすいです。
- 既存市場向けの新製品は新製品開発、製品も市場も新しければ多角化です。
一次試験過去問での出方
2013年 第26問 設問1では、市場占有率の読み方が問われました。金額ベースと数量ベースの違い、相対シェア、分母に何を含めるかが論点でした。
2017年 第30問 設問2と2025年 第2問では、アンゾフの成長マトリクスが事例形式で問われました。既存製品を既存市場でEC販売する施策は、多角化ではなく市場浸透として読みます。
2017年 第31問 設問3では、PEST、SWOT、相対的市場シェア、有効市場の定義が問われました。PESTのEは経済的環境、SWOTは内部と外部の両方、有効市場は関心・購買力・アクセス可能性を満たす集合です。
2017年 第32問では、ブランド競争、形態競争、一般競争の区別が問われました。競争相手の範囲を狭い順から広い順へ読むことが得点につながります。