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企業経営理論

標準

ソーシャルマーケティング(非営利組織のマーケティング、社会貢献と社会責任のマーケティング、企業における実行概念)

非営利、社会貢献、社会責任のマーケティングを整理する。

ソーシャルマーケティング

この章で覚えておきたいこと

ソーシャルマーケティングは、社会的に望ましい行動や考え方を広げるために、マーケティングの発想を使うことです。営利企業が商品を売る活動だけではなく、非営利組織、政府機関、企業が、健康、環境、教育、地域、消費者保護などの社会課題に働きかける場面で使われます。

  • Productは有形の商品だけではありません。投票、寄付、健康行動、環境配慮行動、社会参加の提案も対象になります。
  • 非営利組織のマーケティングでは、受益者、寄付者、ボランティア、行政、地域社会など複数の関係者を意識します。
  • ソサイエタル・マーケティングは、顧客満足、企業利益、社会全体の福祉を調和させる考え方です。
  • CSRは企業の社会的責任です。法令遵守だけで完結するものではありません。
  • CSVは、社会課題の解決を本業に組み込み、社会価値と経済価値を同時に高めようとする考え方です。
  • コーズ・リレイテッド・マーケティングは、売上や購買行動の一部を特定の社会的大義への支援に結び付ける手法です。

基本知識

ソーシャルマーケティングは行動変容を促す

ソーシャルマーケティングの中心は、社会的に望ましい行動変容を促すことです。禁煙を促す、健康診断を受けてもらう、投票に行ってもらう、環境配慮型の商品を選んでもらう、地域活動に参加してもらう、といった活動が考えられます。

この場合のProductは、商品だけではなく、望ましい行動、考え方、参加の提案まで含みます。Priceは金銭価格だけでなく、手間、時間、心理的負担、習慣を変える抵抗も含みます。Placeは行動しやすい場所や接点、Promotionは理解しやすく納得できる伝え方です。

非営利組織では交換関係が複雑になる

非営利組織のマーケティングでは、支援を受ける人と、資金を出す人が同じとは限りません。福祉団体であれば、受益者、寄付者、ボランティア、行政、地域住民がそれぞれ異なる期待を持ちます。

そのため、非営利組織は受益者への価値提供だけでなく、寄付者への説明責任、ボランティアの参加しやすさ、地域からの信頼も設計する必要があります。

ソサイエタル・マーケティングは利益を否定しない

ソサイエタル・マーケティングは、顧客満足と企業利益だけでなく、社会全体の長期的な福祉も考慮する考え方です。企業利益を否定する概念ではありません。短期的な販売や顧客満足だけを追い、社会全体に害を及ぼす活動を避けるという発想です。

CSRとCSVを区別する

CSRは、企業が社会の一員として負う責任です。法令遵守は当然必要ですが、それだけで十分とはいえません。倫理的な行動、消費者保護、環境配慮、地域貢献、ステークホルダーへの配慮なども含めて考えます。

CSVは、社会課題の解決を本業と結びつけ、企業の競争力や収益性も高めようとする考え方です。CSRをすべて本業外、CSVをすべて本業内と機械的に割り切るよりも、CSVは本業との接続をより強く意識すると押さえます。

コーズ・リレイテッド・マーケティングを識別する

コーズ・リレイテッド・マーケティングは、企業の商品販売や購買行動を、特定の社会的大義への支援に結びつける方法です。売上の一部を寄付する、ポイントを学校や地域活動に寄付する、特定商品の購入が社会課題支援につながる、といった形で出やすいです。

環境訴求に限定されるならグリーン・マーケティングの文脈もありますが、教育、福祉、地域、災害支援など広い社会的大義なら、コーズ・リレイテッドとして判断します。

メセナとフィランソロピーを混同しない

メセナは文化・芸術支援、フィランソロピーは慈善的な社会貢献です。どちらも企業の社会貢献活動になり得ますが、それだけで直ちにソーシャルマーケティングと同一ではありません。ソーシャルマーケティングとして見るには、標的とする行動、便益、負担、接点、伝達方法を設計しているかを確認します。

選択肢を切る判断手順

まず、何を変えようとしているかを見ます。商品購入だけでなく、健康行動、環境配慮、投票、寄付、地域参加などの行動変容を促していれば、ソーシャルマーケティングの文脈で考えます。次に、活動主体が企業、非営利組織、政府機関のどれであっても対象になり得ることを確認します。最後に、企業利益の扱い、CSRの水準、寄付連動型かどうか、メセナやフィランソロピーとの違いを見ます。

この章のまとめ

  • ソーシャルマーケティングは、社会的に望ましい行動や考え方を広げるためにマーケティングを使う活動です。
  • 非営利組織や政府機関が社会問題に働きかける活動も含まれます。
  • Productは有形財に限られず、行動、アイデア、社会参加の提案も含みます。
  • ソサイエタル・マーケティングは、顧客満足、企業利益、社会全体の福祉を調和させる考え方です。
  • CSRは法令遵守だけでは不十分です。
  • CSVは社会課題の解決を本業と結びつけ、社会価値と経済価値を同時に高める考え方です。
  • コーズ・リレイテッド・マーケティングは、購買や売上を特定の社会的大義への支援に結びつけます。
  • メセナは文化支援、フィランソロピーは慈善活動です。
  • 「利益につながってはならない」「法令遵守で十分」「有形財に限る」という断定は疑って読みます。

一次試験過去問での出方

2008年 第35問では、消費者の権利が問われました。安全である権利、知らされる権利、選択できる権利、意見を反映させる権利に加え、消費者教育を受ける権利も確認します。

2009年 第30問 設問1では、ポイントカードと学校への寄付を結びつけた活動が問われました。購買行動を社会的大義への支援につなげるため、コーズ・リレイテッド・マーケティングとして読みます。

2009年 第30問 設問2では、社会的責任マーケティングに関して、法令遵守だけで十分かが問われました。法令遵守は必要条件ですが、それだけで社会的責任を果たしたとはいえません。

2023年度第1次 第36問では、CSR、CSV、コーズ・マーケティング、ソサイエタル・マーケティング、サステイナブル消費が問われました。CSVは社会価値と経済価値の両立、サステイナブル消費は態度と行動のギャップが論点です。

2024年 第29問では、ソーシャルマーケティングのProductが有形財に限られず、「投票に行こう」という社会的提案も含み得る点が問われました。