企業経営理論
補助横断的関係
部門横断、水平関係、調整役を短く扱う。
この章で覚えておきたいこと
横断的関係は、部門や階層をまたいで情報共有・調整を行うための水平的なつながりです。縦の命令系統だけでは処理しにくい課題に対して、関係部門どうしが直接やり取りできる経路を追加します。
一次試験では、横断的関係そのものの細かな制度よりも、J.ガルブレイスの情報処理モデルにおける位置づけが問われやすいです。横断的関係は、発生した情報や調整課題を処理する力を増やすため、情報処理能力を高める方策に入ります。
一方で、自己完結的職務やスラック資源は、他部門との調整や切迫した例外処理を減らすため、情報処理の必要性を減らす方策に入ります。この対比を逆にした選択肢が典型的なひっかけです。
基本知識
横断的関係の意味
組織は分業によって専門性を高めます。しかし、営業、開発、生産、管理などがそれぞれ自部門の目標だけを追うと、製品仕様、納期、品質、コスト、顧客対応の調整が遅れやすくなります。
横断的関係は、このような部門間のずれを補うために設ける仕組みです。基本の階層構造をなくすのではなく、縦の命令系統に加えて、部門をまたぐ連絡・協議・共同作業の経路をつくるものです。
代表例は次のとおりです。
- リエゾン: ある部門の担当者が、他部門との連絡役になります。
- タスクフォース: 特定課題の解決のために、一時的に関係者を集めます。
- 委員会: 複数部門の代表者が、継続的に検討・調整します。
- プロジェクトチーム: 製品開発や業務改革などの目的に向けて、部門横断で活動します。
これらは強さや継続期間に違いはありますが、試験上は「部門をまたぐ直接調整を増やす仕組み」と押さえれば十分です。
ガルブレイスの情報処理モデル
ガルブレイスの考え方では、環境の不確実性が高いほど、組織は多くの情報を処理しなければなりません。需要の変化が大きい、製品が複雑である、部門間の相互依存が強いといった状況では、単純な階層的報告だけでは処理が追いつきにくくなります。
このときの組織デザインは、大きく二つに分けて考えます。
-
情報処理の必要性を減らす方策
- 規則や手続を使い、定型的な判断を標準化します。
- 自己完結的職務をつくり、現場や単位組織の中で処理を完結させます。
- スラック資源を持たせ、余裕によって切迫した調整を減らします。
-
情報処理能力を高める方策
- 垂直的情報システムを整え、階層を通じた情報伝達を速くします。
- 横断的関係をつくり、部門間で直接調整できるようにします。
横断的関係は、「調整が必要な課題をなくす」のではなく、「調整が必要な課題を処理できるようにする」方策です。ここを取り違えないことが重要です。
横断的関係の長所と短所
横断的関係の長所は、部門をまたぐ問題に早く対応できることです。上司を通じて情報を上げ下げするだけでなく、関係部門どうしが直接話し合えるため、不確実性の高い課題や例外的な課題への対応力が高まります。
ただし、横断的関係を増やせば常に良いわけではありません。会議や調整に時間がかかり、誰が最終責任を負うのかがあいまいになりやすいです。プロジェクトリーダーと所属部門の上司の指示が食い違うと、メンバーが板挟みになることもあります。
したがって、横断的関係は「部門間調整を促進するが、調整コストや責任のあいまい化も生じうる」と整理します。
試験での判断軸
選択肢を読むときは、まず「必要性を減らす」のか「能力を高める」のかを分けます。
横断的関係、横断的組織、プロジェクトチーム、委員会などが出てきたら、部門をまたぐ直接調整に注目します。これらは主に、情報処理能力を高める側です。
自己完結的職務、規則、スラック資源が出てきたら、他部門との調整や例外処理を減らす側です。これらは主に、情報処理の必要性を減らす側です。
2015年の出題では、横断的組織の導入について、情報処理の必要性が高い課題に対応しつつ、組織の情報処理能力も高くするという理解が問われました。2024年の出題では、横断的な関係の創出が情報処理能力を増大させるという分類が問われました。表現は少し違っても、横断的関係を「能力を高める方策」と判断する軸は同じです。
この章のまとめ
横断的関係は、縦の命令系統だけでは足りない部門間調整を補うための水平的な関係です。リエゾン、タスクフォース、委員会、プロジェクトチームなどは、いずれも部門をまたぐ直接調整をしやすくする仕組みです。
ガルブレイスの情報処理モデルでは、次の対比を必ず確認します。
- 横断的関係と垂直的情報システムは、情報処理能力を高める方策です。
- 自己完結的職務、規則、スラック資源は、情報処理の必要性を減らす方策です。
- 横断的関係は調整能力を高めますが、調整コストや責任のあいまい化も生じます。
ひっかけは、「横断的関係は情報処理の必要性を減らす」「自己完結的職務やスラック資源は必要性を増やす」「垂直的情報システムは能力を低下させる」といった逆の説明です。選択肢では、用語そのものよりも、効果の方向が合っているかを確認します。
一次試験過去問での出方
2015年 第12問では、組織を情報処理システムとして見た場合の組織デザインが問われました。横断的組織は、部門間の調整を必要とする課題に対応しながら、組織の情報処理能力を高めるものとして判断します。
2024年 第14問では、ガルブレイスの組織デザイン方策として、横断的な関係の創出が情報処理能力を増大させることが問われました。自己完結的職務、垂直的情報システム、スラック資源の効果を逆にした選択肢を切れるかがポイントでした。