企業経営理論
補助組織目標
組織目標の設定と共有を扱う。
この章で覚えておきたいこと
組織目標は、組織が何を達成しようとしているのかを示し、分業された活動を同じ方向へそろえる基準です。一次試験では、目標そのものの定義だけでなく、目標を共有して協働を成り立たせる条件や、組織が存続する条件と結びつけて問われます。
特に重要なのは、次の点です。
- バーナードの組織成立要件は、コミュニケーション、貢献意欲、共通目的の3つです。
- 組織目標は、経営者が掲げるだけでなく、部門目標や個人の役割へ落とし込まれて初めて行動を方向づけます。
- 組織均衡論では、参加者は組織から受ける誘因と、自分が提供する貢献を比較して、参加を続けるかを判断します。
- 有効性は組織目的の達成度、能率は参加者にとっての満足や納得に関わる概念です。
基本知識
組織目標の役割
組織目標とは、組織が達成しようとする目的を具体化したものです。企業であれば、利益、成長、顧客価値、社会的責任、事業継続などが上位の目標になり、それが事業部、部門、チーム、個人の目標へ展開されます。
組織目標には、主に3つの役割があります。
- 方向づけ: 成員の行動を同じ方向へ向けます。
- 調整: 分業された部門や職務の活動を結びつけます。
- 評価: 成果や意思決定の妥当性を判断する基準になります。
目標があるだけでは、組織は自然にまとまりません。全社目標と部門目標・個人目標がずれていると、各部門が自分の成果だけを追う部分最適になりやすくなります。そのため、組織目標は、設定、共有、具体化、評価までを一連の流れで捉えることが大切です。
バーナードの組織成立要件
バーナードは、組織を単なる人の集まりではなく、共通目的を達成するための協働システムとして捉えました。組織が成立するには、次の3要素が必要です。
- コミュニケーション: 成員の間で意思や情報が伝わることです。情報伝達がなければ、協働は始まりません。
- 貢献意欲: 成員が組織のために協力しようとする意思です。参加者が貢献しようと思わなければ、活動は続きません。
- 共通目的: 成員が協働によって達成しようとする目的です。これが組織目標の中核になります。
試験では、これら3要素を、階層・分権化・統合化、計画・指揮・統制、分業・専門化・調整などの別論点の用語セットと取り違えさせる選択肢が出ます。バーナードの3要素は、組織の構造や管理機能の分類ではなく、協働が成立するための条件だと押さえてください。
組織均衡論と誘因・貢献
組織均衡論では、組織は参加者から貢献を受け取り、その代わりに参加者へ誘因を提供することで存続すると考えます。
- 貢献: 参加者が組織に提供する労働、知識、時間、努力、協力などです。
- 誘因: 組織が参加者に提供する賃金、地位、承認、成長機会、働きがいなどです。
参加者は、組織から得る誘因が自分の貢献に見合っていると知覚すれば、参加を続けやすくなります。逆に、貢献の負担が誘因を上回ると感じれば、離職、協力低下、抵抗などが起こりやすくなります。
ここでのひっかけは、誘因と貢献の向きです。参加者が貢献し、組織が誘因を与えると整理します。「参加者が誘因を提供する」「組織が貢献を与える」といった表現は逆です。
有効性と能率
バーナードの議論では、組織の存続を考えるときに、有効性と能率を区別します。
- 有効性: 組織目的が達成されている程度です。売上目標、品質目標、顧客価値の実現など、組織として掲げた目的をどれだけ達成したかに関わります。
- 能率: 参加者にとって誘因が十分であり、参加を続けるだけの満足や納得が得られているかに関わります。
有効性は「組織側の目的達成」、能率は「参加者側の納得」と分けると判断しやすくなります。組織目的を達成していても、参加者が強い不満を抱えていれば、長期的な存続は不安定になります。一方で、参加者の満足だけが高くても、組織目的が達成できなければ組織としては成果を上げていません。
この章のまとめ
組織目標の問題では、まず「成立条件」を聞いているのか、「存続条件」を聞いているのかを確認します。
成立条件であれば、バーナードの3要素を思い出します。
- コミュニケーション
- 貢献意欲
- 共通目的
存続条件であれば、組織均衡論を思い出します。
- 参加者は貢献を提供します。
- 組織は誘因を提供します。
- 参加者は誘因と貢献を比較して参加継続を判断します。
有効性と能率が出たら、次のように切り分けます。
- 有効性は、組織目的の達成度です。
- 能率は、参加者にとっての満足や納得です。
- 目標達成だけで、参加者の誘因と貢献のバランスが自動的に維持されるわけではありません。
選択肢では、「共通目的だけで組織が成立する」「誘因と貢献の向きが逆」「有効性を参加者個人の目的達成度とする」といった表現を注意して切ることが重要です。
一次試験過去問での出方
2020年 第14問では、バーナードが示した組織の要素として、コミュニケーション、貢献意欲、共通目的を選ばせています。別論点の用語セットと混同しないことがポイントです。
2023年第2回 第12問では、組織均衡論について、参加者が誘因と貢献を比較して参加継続を判断することが問われています。あわせて、有効性は組織目的の達成度であり、参加者側の満足や納得は能率の側面で捉える点も確認されています。