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NARITAI

企業経営理論

補助

その他

変革・成長の周辺論点を短く扱う。

この章で覚えておきたいこと

  • このページは、組織変革と組織成長の周辺論点を短く押さえる補助トピックです。
  • デュアル・コア・モデルでは、組織を「経営管理コア」と「技術コア」に分けて考える。
  • 管理的イノベーションは、戦略・組織構造・制度・報酬システムなどの変更であり、経営管理コアが中央集権的に主導しやすいです。
  • 技術的イノベーションは、製品・工程・技術プロセスの変更であり、技術コア、現場知識、有機的組織、ボトムアップと結びつきやすいです。
  • 個体群生態学モデルは、個々の組織が柔軟に自己変革する理論ではなく、組織個体群が環境によって「変異-選択・淘汰-保持」される見方です。

試験で問われる形

このトピックは出題数が少ないため、理論の細部よりも「どの主体が、どの変革を担うか」「組織が自ら適応するのか、環境が選別するのか」を切り分けられるかが問われる。

代表的には、次の形で出る。

  • デュアル・コア・モデルで、経営管理コアと技術コアの役割を入れ替えた選択肢を見抜く。
  • 管理的イノベーションをボトムアップ、有機的組織、技術コア中心とする誤りを見抜く。
  • 技術的イノベーションを機械的組織や中央集権的統制で進めるとする誤りを見抜く。
  • 個体群生態学モデルを、組織が環境変化に柔軟に自己変革する理論として説明する誤りを見抜く。
  • 変異・選択・保持の意味を、自然淘汰モデルとして整理します。

基本知識

デュアル・コア・モデル

デュアル・コア・モデルは、組織を2つの中核部分に分けて、イノベーションの性質に応じた担い手の違いを説明する考え方です。

経営管理コアは、組織構造、管理制度、戦略、報酬システム、統制の仕組みなどを扱う。組織階層上は技術コアより上位に位置し、全社的な調整や意思決定を担う。

技術コアは、原材料や情報を製品・サービスへ変換するビジネスプロセスを担う。製品開発、工程改善、生産技術、サービス提供プロセスなど、現場の専門知識と結びつきやすいです。

管理的イノベーションと技術的イノベーション

管理的イノベーションは、戦略、組織構造、制度、権限配分、報酬制度など、組織の管理システムを変えるイノベーションです。全体整合性が必要になるため、経営管理コアが中央集権的に主導する整理が基本になります。

技術的イノベーションは、製品、サービス、工程、技術プロセスなど、価値を生み出す現場側の変化です。専門知識や試行錯誤が重要になるため、技術コア、有機的組織、分権、ボトムアップと結びつきやすいです。

個体群生態学モデル

個体群生態学モデルは、共通の組織形態を持つ組織群と環境との関係を分析する理論です。個々の組織が自在に形を変えて生き残るというより、環境に適合した組織形態が選ばれ、残り、定着するという見方をとる。

変異は、新しい組織形態が生まれる段階です。既存組織からの派生も、独立した企業者活動もありうる。

選択・淘汰は、環境がどの組織形態を生き残らせるかをふるい分ける段階です。市場、制度、技術、規制、顧客ニーズなどが選択圧になります。

保持は、選ばれた組織形態が定着し、継続して残る段階です。既存形態を保持しようとする力が強いほど、新しい組織形態は生まれにくくなる。

この章のまとめ

解き方・判断手順

  1. まず、問われている変化が「管理の変化」か「技術・現場の変化」かを判定します。
  2. 戦略変更、ダウンサイジング、事業再構築、報酬制度変更、組織構造変更なら、管理的イノベーションとして経営管理コア・中央集権・トップダウン寄りで考える。
  3. 製品開発、工程改善、生産技術、現場プロセスの変化なら、技術的イノベーションとして技術コア・有機的組織・ボトムアップ寄りで考える。
  4. 個体群生態学モデルでは、個別組織の柔軟な自己変革を強調する選択肢を疑う。
  5. 「変異は新しい形態の発生」「選択・淘汰は環境によるふるい分け」「保持は選ばれた形態の定着」と対応させる。

ひっかけポイント

  • 「技術革新」という語があるだけで、すべてを技術コア中心にしてよいわけではない。事業再構築や報酬制度変更は管理的イノベーションです。
  • 管理的イノベーションを「分権化された経営管理コア」「有機的組織」「ボトムアップ」で説明する選択肢は疑う。
  • 技術的イノベーションを「機械的組織」「中央集権的統制」で進めるとする選択肢は、原則として相性が悪い。
  • 個体群生態学モデルを「環境変化に合わせて組織自身が柔軟に変わる理論」と読むと誤りやすいです。
  • 変異は独立起業だけに限定されない。既存組織から新しい形態が派生することもある。
  • 規制緩和は、保持される組織形態の多様性を必ず減らすとはいえない。選択圧が弱まり、多様化しやすい方向で考える。

一次試験過去問での出方

2007年第18問では、デュアル・コア・モデルが出題された。正解判断の軸は、管理的イノベーションと技術的イノベーションを分け、経営管理コアと技術コアの役割を逆にしないことでした。事業再構築や報酬制度変更は、経営管理コアが中央集権的に主導する管理的イノベーションとして整理します。

2022年第20問では、個体群生態学モデルが出題された。変異・選択・保持の自然淘汰モデルとして、組織の内部適応ではなく環境による選別を重視する点が問われた。既存形態の保持が強いほど新しい組織形態が生まれにくい、という記述を正しく選ぶ問題でした。

最後に確認すること

  • 管理的イノベーションは、経営管理コア・中央集権・トップダウンと結びつけたか。
  • 技術的イノベーションは、技術コア・有機的組織・ボトムアップと結びつけたか。
  • 経営管理コアと技術コアの役割を逆にしていないか。
  • 個体群生態学モデルを、個別組織の柔軟な自己変革モデルとして読んでいないか。
  • 変異・選択・保持を、それぞれ「発生」「環境によるふるい分け」「定着」と説明できるか。