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NARITAI

企業経営理論

標準

経営戦略と組織

戦略と組織の適合を扱う。

この章で覚えておきたいこと

  • チャンドラーの命題は「組織は戦略に従う」です。多角化が進めば、単一事業向きの機能別組織では管理しにくくなり、事業部制などが必要になりやすいです。
  • ただし、組織は戦略に一方的に従うだけではない。既存の組織構造、権限配分、管理プロセスは、次に選べる戦略を制約します。
  • Miles and Snow の戦略類型は、探索型、防衛型、分析型、受動型の4つで押さえる。試験では「戦略の特徴」と「合う組織構造」の対応が問われる。
  • 探索型は新製品・新市場を探るため、柔軟で分権的な組織に合う。防衛型は狭い既存領域で効率を高めるため、安定的で統制の強い組織に合う。分析型は既存事業の安定と新分野探索を両立します。受動型は一貫した戦略を欠く失敗類型に近い。
  • Galbraith & Nathanson は、戦略の変化に応じて組織形態が移行する関係を整理した。垂直統合、関連多角化、規模の経済、非関連事業の買収といった戦略が、機能別組織、事業部制、世界的組織などへの移行と対応します。
  • 複合組織では、既存事業を効率よく運用する活動と、新しい収益機会を探索する活動を両立させる必要があります。環境変化への対応を専門部署の長期計画だけに任せる発想は硬直的です。

試験で問われる形

この論点は、細かな年号暗記よりも「戦略に対してどの組織が合うか」を選択肢で判定する形で出る。

よく問われるのは次の4パターンです。

  • チャンドラーの命題を使い、多角化、地理的拡大、機能別組織、事業部制の対応を判断します。
  • Miles and Snow の4類型について、探索型・防衛型・分析型・受動型の説明文の正誤を判断します。
  • Galbraith & Nathanson のモデルで、図中の矢印が表す戦略を選ぶ。
  • 複合組織が環境変化へ適応するために、既存事業の運用と新規探索をどう組織化するかを判断します。

選択肢では、前半が正しくても後半の組織形態がずれていることが多い。たとえば「探索型は新製品・新市場を開発する」は正しいが、「中央集権的な統制システムを採用する」と続けば不適切です。

基本知識

チャンドラー「組織は戦略に従う」

チャンドラーは、企業が成長戦略を変えると、それに合わせて組織構造も変わると考えた。単一事業で規模を拡大する段階では、購買、生産、販売、財務などの機能別組織で専門性を発揮しやすいです。しかし、製品や市場が増え、多角化が進むと、機能別組織だけでは各事業の成果責任や資源配分が見えにくくなる。

そこで、多角化した企業では事業部制が採用されやすいです。事業部制では、製品別、地域別、顧客別などの単位ごとに利益責任を持たせ、各事業の戦略実行を進める。全社本部は、どの事業に資源を配分するか、事業間の調整をどう行うかを担う。

試験では、「多角化が進むと事業部制が合う」は押さえる。一方で、「地理的拡大が進むと機能別組織が採用される」といった選択肢は疑う。地理的拡大なら地域別組織などが論点になりやすく、機能別組織とは直結しません。

Miles and Snow の戦略類型

Miles and Snow は、企業が環境にどう適応するかを、戦略類型と組織特性の対応で整理した。試験では4類型を次のように覚える。

  • 探索型: 新製品・新市場を積極的に探す戦略です。組織は柔軟、分権的、有機的で、試行錯誤しやすい形が合います。
  • 防衛型: 限定された既存領域を守り、効率を高める戦略です。組織は安定、集権的、公式化、コスト管理重視になりやすいです。
  • 分析型: 既存領域の安定運営と新分野開発を両立する戦略です。組織は安定性と柔軟性のバランスが必要です。
  • 受動型: 一貫した戦略を欠き、環境変化に後追いで対応する状態です。適合した組織形態を持ちにくい点を押さえます。
    探索型は「新しいことをするから、中央で強く統制する」と考えると誤る。新市場や新製品を探るには、現場の情報を生かし、柔軟に試せる分権的な仕組みが必要です。

防衛型は、イノベーションを広く追う型ではない。狭く定義した事業領域で効率化、品質、コスト管理を重視します。分析型は、探索型と防衛型の中間ではあるが、単なる中途半端ではない。既存事業では安定運用を行い、新分野では探索するという二面性を持つ。

受動型は、社内ベンチャー制度やボトムアップの創造性を備えた望ましい組織ではない。一貫した戦略がなく、環境変化に受け身で対応する類型として処理します。

Galbraith & Nathanson の戦略と組織形態

Galbraith & Nathanson は、戦略と組織形態の組み合わせを、企業組織の発展過程として整理した。試験では図表問題として出やすく、図の箱が組織形態、矢印が戦略を表す。

丸暗記しすぎるより、次の対応を押さえる。

  • 単純な組織が量的に拡大すると、機能別組織が必要になりやすいです。
  • 垂直統合を進めると、川上・川下の活動を取り込むため、より統合された機能部門の管理が必要になります。
  • 関連多角化を進めると、複数事業を管理するため、事業部制組織が必要になりやすいです。
  • 世界規模で活動する段階では、規模の経済を生かす世界的職能部門制や、複数事業を束ねる世界的事業部制が論点になります。
  • 非関連事業の買収では、持株会社や複数事業部制との関係が問われやすいです。

2020年第17問では、A:垂直統合、B:関連多角化、C:規模の経済の活用、D:非関連事業の買収の対応が問われた。図表問題では、選択肢の用語を単独で眺めず、「どの組織形態から、どの組織形態へ移る矢印か」を見る。

複合組織の探索と運用

企業が成長すると、製品、サービス、地域、顧客ごとに専門化された複数の組織単位を持つ複合組織になります。複合組織では、既存事業を安定的に回す「運用」と、将来の利益を生む新しい機会を探す「探索」を両立させることが重要になります。

既存事業部に戦略的な重点課題を割り当てること、通常業務と新規利益創出業務の予算を分けること、経営者が専門化された組織間を調整することは、環境適応のために有効です。

一方で、環境分析を専門部署に閉じ込め、変化の渦中でも持続可能な長期戦略計画を立てさせればよい、という発想は危うい。変化が大きい環境では、長期計画だけでなく、事業部間の調整、現場からの情報、実験的な取り組み、資源配分の柔軟性が必要になります。

この章のまとめ

解き方・判断手順

  1. まず、設問が「組織形態そのもの」を聞いているのか、「戦略と組織の適合」を聞いているのかを確認します。
  2. 戦略の方向を読む。単一事業の規模拡大か、多角化か、垂直統合か、地理的拡大か、新市場探索か、既存領域防衛かを分ける。
  3. 組織形態を対応させる。単一事業なら機能別組織、多角化なら事業部制、地域拡大なら地域別組織、グループ再編なら持株会社という基本線で考える。
  4. Miles and Snow は、探索型、防衛型、分析型、受動型のどれかを先に決める。次に、柔軟・分権か、安定・統制かを見る。
  5. 図表問題では、箱ではなく矢印に注目します。矢印が「経営戦略」を表すなら、前後の組織形態を見て、垂直統合、関連多角化、規模の経済、非関連買収などを当てはめる。
  6. 複合組織の問題では、既存事業の運用と新規探索を両立しているかを確認します。長期計画だけ、専門部署だけ、トップだけに閉じた説明は不適切になりやすいです。

ひっかけポイント

  • 「組織は戦略に従う」を、どの戦略にも同じ組織が合うという意味にしません。戦略が変われば、合う組織も変わる。
  • 多角化と地理的拡大を混同しません。多角化は事業部制、地理的拡大は地域別組織が論点になりやすいです。
  • 機能別組織の部門長に、事業戦略全体の最終責任を負わせる選択肢は疑う。機能別部門長の責任は、基本的には自部門の機能責任です。
  • カンパニー制を独立法人格と決めつけない。カンパニー制は社内組織であり、独立法人格を持つとは限らない。
  • プロダクト・マネジャー制を、研究開発型ベンチャーの事業部制と読まない。製品単位で調整・責任を持つ制度であり、責任範囲は研究開発だけではない。
  • Miles and Snow の探索型に「中央集権的統制」を結びつけない。探索型は柔軟で分権的な組織と対応します。
  • 防衛型に「コア外にも広くイノベーションを追求する」とあれば疑う。防衛型は限定領域の効率化が中心です。
  • 受動型を望ましい創造的組織として読まない。受動型は一貫した戦略を欠く類型です。
  • 複合組織の環境適応を、専門部署による長期計画だけで解決しようとする選択肢は硬直的です。

一次試験過去問での出方

  • 2013年第14問では、複合組織が環境変化に適応するための行動が問われた。正解は「最も不適切なもの」として、環境分析を専門部署に任せ、変化の渦中でも長期的戦略計画を立てさせる選択肢でした。探索と運用の両立、事業部間調整、新規利益創出業務の予算確保が判断軸になります。
  • 2014年第15問では、Miles and Snow の戦略類型が問われた。分析型は既存製品・市場の維持と新しい製品・市場の開発のバランスを取る類型であり、安定性と柔軟性のバランスを取る組織が必要とされた。
  • 2020年第17問では、Galbraith & Nathanson の組織発展段階モデルが図表で問われた。矢印が戦略を表し、垂直統合、関連多角化、規模の経済の活用、非関連事業の買収を、組織形態の移行と対応させる問題でした。
  • 2021年第15問では、経営戦略に関連する組織の運営・設置が問われた。チャンドラーの命題、機能別組織、カンパニー制、プロダクト・マネジャー制、持株会社の説明を切り分ける問題であり、持株会社は中小企業でも目的に応じて活用しうるという選択肢が正解でした。

最後に確認すること

  • 多角化が進む企業では、機能別組織より事業部制が合いやすいです。
  • 地理的拡大を機能別組織と直結させる選択肢は疑う。
  • 探索型は柔軟・分権、防衛型は安定・統制、分析型は両立、受動型は一貫戦略なし。
  • Galbraith & Nathanson の図表では、箱は組織形態、矢印は戦略として読む。
  • 複合組織では、既存事業の運用と新規探索を分けつつ、経営者が組織間調整を行う。
  • 「専門部署に長期計画を任せれば環境適応できる」という説明は、変化対応として硬直的です。