N
NARITAI

企業経営理論

補助

持株会社

持株会社の統治と分権を短く扱う。

この章で覚えておきたいこと

持株会社は、他社の株式を保有して子会社を支配・管理する会社です。一次試験では、特に純粋持株会社を押さえます。純粋持株会社は、自ら事業を行わず、グループ全体の戦略策定、資源配分、子会社管理に特化します。

この論点は、2017年第5問でカンパニー制との比較として問われました。細かな会社法の制度論よりも、「グループ本社が何を担うか」「事業会社が何を担うか」「社内分社化と別会社化の違い」を判断できることが重要です。

最低限、次を押さえます。

  • 持株会社は、株式保有を通じて子会社を支配・管理します。
  • 純粋持株会社は、自ら事業を行わない点が特徴です。
  • 持株会社は、グループ戦略、資源配分、子会社管理を担います。
  • 個々の事業運営は、原則として傘下の事業会社が担います。
  • 持株会社制では、事業会社ごとに人事制度や労働条件を柔軟に設計しやすくなります。
  • カンパニー制は社内分社化、持株会社制は法的に別会社を束ねる仕組みです。

基本知識

持株会社と純粋持株会社

持株会社とは、他社の株式を保有し、その会社を支配・管理する会社です。傘下の会社は、持株会社から見ると子会社やグループ会社になります。

持株会社には、大きく2つの見方があります。

事業持株会社は、自らも事業を行いながら、他社の株式を保有して支配・管理する会社です。

純粋持株会社は、自らは事業を行わず、子会社の支配・管理を主目的とする会社です。一次試験では、純粋持株会社の特徴が問われやすいです。

純粋持株会社を覚えるときは、「グループ全体を見る本社機能」と考えると分かりやすくなります。製造、販売、サービス提供などの日常的な事業運営は、傘下の事業会社が担います。

グループ本社機能と事業会社機能

持株会社制では、グループ全体の方向づけと、個々の事業運営を分けて考えます。

持株会社が担いやすい役割は次のとおりです。

  • グループ全体の戦略策定
  • 経営資源の配分
  • 子会社の業績管理
  • 事業ポートフォリオの見直し
  • グループ全体のリスク管理
  • M&Aや撤退などの全社的意思決定

一方、傘下の事業会社が担う役割は次のとおりです。

  • 製品やサービスの開発
  • 生産、販売、営業
  • 顧客対応
  • 現場の人材管理
  • 事業ごとの日常的な意思決定

2017年第5問では、純粋持株会社が「グループ全体の戦略策定と個々の事業運営を統合して行う」とする選択肢が不適切でした。純粋持株会社は、個々の事業運営まで一体的に行うのではなく、グループ戦略や資源配分に特化し、事業運営は傘下企業へ委ねると整理します。

持株会社制の狙い

持株会社制の狙いは、グループ全体の統治と、事業会社ごとの自律性を両立することです。事業会社を法的に分けることで、事業ごとの責任範囲が明確になり、各事業の環境に合った意思決定をしやすくなります。

主な狙いは次のとおりです。

  • 事業ごとの責任を明確にする。
  • 成長事業、成熟事業、撤退候補をグループ全体で見直しやすくする。
  • グループ全体で資金、人材、経営資源を配分しやすくする。
  • 業界特性に合わせて、事業会社ごとの制度を設計しやすくする。
  • M&Aや事業再編を進めやすくする。

ただし、持株会社制にすれば自動的に全社最適が実現するわけではありません。持株会社と事業会社の役割分担、業績評価、権限委譲、グループ内調整が不十分であれば、部分最適や重複コストが生じます。

カンパニー制との違い

持株会社制は、カンパニー制と比較して問われやすいです。判断軸は、法人格を持つ別会社かどうかです。

カンパニー制は、社内分社化です。1つの会社の中に、独立性の高い事業単位を置きます。各カンパニーは、事業部制より強い責任を持つことがありますが、通常は法的な別会社ではありません。

持株会社制は、持株会社が法的に別会社である事業会社を束ねる仕組みです。子会社は別法人であり、事業ごとに制度や責任を分けやすくなります。

2017年第5問では、カンパニー制について「不確実性の高い新事業を法人格を持つ別会社として制度的に独立させる」とする選択肢が不適切でした。これはカンパニー制ではなく、子会社化やスピンオフに近い説明です。

また、カンパニー制は、事業部制よりも独立性を高めた社内制度です。同一市場内に複数のカンパニーがある場合、各カンパニーの個別最適が進みすぎると、同じ企業グループ内で顧客を奪い合うカニバリゼーションが起こる可能性があります。

標準化ではなく柔軟化を読む

持株会社制では、グループ全体の資源配分は行いやすくなります。しかし、それは雇用形態や労働条件を一律に標準化するという意味ではありません。

むしろ、傘下の事業会社が法的に分かれることで、事業会社ごとに人事制度、賃金体系、労働条件を柔軟に設計しやすくなります。業界の慣行、収益構造、必要人材、競争環境が違えば、同じグループ内でも制度設計を変える方が合理的な場合があります。

2017年第5問では、純粋持株会社が「雇用形態や労働条件の設定を標準化する機能を持つ」とする選択肢が不適切でした。試験では、次のように判断します。

  • グループ全体の戦略策定や資源配分を担う、という記述は妥当です。
  • 個々の事業運営を持株会社が統合して行う、という記述は疑います。
  • 雇用形態や労働条件を一律に標準化する、という記述は疑います。
  • 事業会社ごとに制度を柔軟に設計しやすい、という記述は妥当です。

この章のまとめ

持株会社は、他社の株式を保有して子会社を支配・管理する会社です。特に純粋持株会社は、自ら事業を行わず、グループ全体の戦略策定、資源配分、子会社管理に特化します。

問題を解くときは、まず「持株会社が何をする」と書かれているかを確認します。グループ戦略、資源配分、子会社管理なら妥当です。個々の事業運営まで持株会社が統合して行う、と書かれていれば不適切です。

次に、社内分社化か別会社化かを見ます。カンパニー制は社内分社化で、通常は法人格を持ちません。持株会社制は、法的に別会社である事業会社を束ねる仕組みです。

最後に、標準化と柔軟化を取り違えないことが重要です。持株会社制は、グループ全体の資源配分を行いやすくしますが、雇用形態や労働条件を一律に標準化する制度ではありません。事業会社ごとに柔軟に設計しやすくなる点を押さえます。

一次試験過去問での出方

2017年第5問では、カンパニー制と持株会社に関する正誤判断が問われました。持株会社そのものは誤答肢として出ていますが、純粋持株会社の役割分担を確認するうえで重要です。

同問では、純粋持株会社について、グループ全体の戦略策定と個々の事業運営を統合して行うという記述が不適切でした。純粋持株会社は、グループ戦略や資源配分に特化し、個々の事業運営は傘下の事業会社に委ねます。

また、企業グループ全体の効率的な資源配分が可能になること自体は妥当ですが、雇用形態や労働条件を標準化する機能を持つという記述は不適切でした。持株会社制では、別会社化により、事業会社ごとの柔軟な制度設計がしやすくなると読みます。

カンパニー制との比較も重要です。カンパニー制は社内分社化であり、法人格を持つ別会社ではありません。法人格を持って切り離す説明が出たら、カンパニー制の説明としては疑います。