N
NARITAI

企業経営理論

標準

機械的管理システム・有機的管理システム

機械的管理システムと有機的管理システムを環境条件で整理する。

この章で覚えておきたいこと

  • バーンズとストーカーは、外部環境の不確実性に応じて、適した組織内部の管理システムが変わると考えました。
  • 機械的管理システムは、安定した環境、反復的な業務、標準化しやすい仕事に適しやすい管理様式です。
  • 有機的管理システムは、変化が大きく、不確実性が高い環境に適しやすい管理様式です。
  • 機械的管理システムは、明確な職務分担、階層、命令系統、上司への服従、公式ルールを重視します。
  • 有機的管理システムは、柔軟な役割、水平的コミュニケーション、相互調整、分権的な意思決定を重視します。
  • 周辺論点として、ウッドワードの技術と組織構造、ローレンスとローシュの分化と統合、情報処理論、官僚制の逆機能も同じ問題で混ざりやすいです。

この論点は「どちらが優れているか」を問うものではありません。一次試験では、環境条件と管理様式の適合を判断します。安定環境なら機械的、不確実環境なら有機的、という大きな対応を最初に置くと、選択肢の入れ替えに気づきやすくなります。

基本知識

環境条件と管理システムの対応

機械的管理システムと有機的管理システムは、コンティンジェンシー理論の代表的な論点です。コンティンジェンシー理論では、唯一最善の組織形態があるとは考えず、環境、技術、規模、戦略などの条件に応じて適した組織構造が変わると考えます。

安定した環境では、発生する問題や業務内容をある程度予測できます。作業を細かく分け、手続きや責任を明確にし、上位者が統制する方が効率的に処理しやすくなります。この場合は、機械的管理システムが適合しやすいです。

一方、不確実性が高い環境では、あらかじめ定めた職務や手続きだけでは対応しにくくなります。顧客ニーズ、技術、競争状況が変化するため、現場や専門担当者が持つ情報を横につなぎ、部門を越えて調整する必要があります。この場合は、有機的管理システムが適合しやすいです。

機械的管理システムの特徴

機械的管理システムは、組織を安定的に動かすための仕組みです。反復的な仕事、標準化できる仕事、効率性を重視する場面で力を発揮します。

押さえる特徴は次のとおりです。

  • 職務と責任が明確です。誰が何を担当するかが固定的に定められます。
  • 階層と命令系統が重視されます。上司から部下への指示、部下から上司への報告が中心になります。
  • 公式化と標準化が進みます。規則、手続き、職務記述書、マニュアルによって統制します。
  • 権限は上位に集中しやすくなります。重要な判断は上層部で行われます。
  • 上司への服従や職務責任の遂行が強調されます。

選択肢では、「水平的な相談」「柔軟な役割」「分権化」が機械的管理システムに結びつけられていたら疑います。これらは有機的管理システム側の特徴です。

有機的管理システムの特徴

有機的管理システムは、変化に合わせて組織が学習し、調整しながら動くための仕組みです。研究開発、新製品開発、技術変化への対応、新規事業のように、不確実性が高い仕事に向きます。

押さえる特徴は次のとおりです。

  • 役割が柔軟です。状況に応じて担当範囲や協力関係が変わります。
  • 水平的コミュニケーションが重視されます。命令と報告だけでなく、助言、相談、相互調整が多くなります。
  • 権限が分散します。現場や専門担当者が持つ情報を意思決定に生かします。
  • タスクへのコミットメントが重視されます。上司への服従よりも、優れた仕事をしようとする姿勢が問われます。
  • 部門横断的な協働が起こりやすくなります。専門知識を結びつけて問題を解きます。

一次試験では、「有機的管理システムでは情報と意思決定の権限を上位に集中させる」といった記述が誤りとして出ます。有機的管理システムは、柔軟性と分権化をセットで覚えます。

機械的と有機的の対比

対比で覚えるときは、長い表ではなく、次の対応を縦に確認します。

  • 環境
    • 機械的管理システム: 安定的、不確実性が低い。
    • 有機的管理システム: 変化が大きい、不確実性が高い。
  • 職務
    • 機械的管理システム: 明確、固定的、専門分化。
    • 有機的管理システム: 柔軟、相互依存的、状況対応。
  • 権限
    • 機械的管理システム: 上位階層に集中しやすい。
    • 有機的管理システム: 現場や専門担当者に分散しやすい。
  • コミュニケーション
    • 機械的管理システム: 垂直的な命令、報告が中心。
    • 有機的管理システム: 水平的な助言、相談、相互調整が中心。
  • 統制
    • 機械的管理システム: 規則、手続き、公式化で統制します。
    • 有機的管理システム: 専門知識、相互調整、タスクへのコミットメントで統制します。

正誤判断では、単語だけでなく文全体を読みます。たとえば「専門知識」という語は有機的管理システムと相性がよいですが、その後に「意思決定権限を上位に集中させる」と続くなら、有機的管理システムの説明としては誤りです。

情報処理論とのつながり

組織は、環境から発生する情報を処理するシステムとして見ることもできます。不確実性が高いほど、必要な情報処理量が増えます。そこで組織は、処理すべき情報量を減らすか、処理能力を高めるかのどちらかで対応します。

情報量を減らす方策には、次のようなものがあります。

  • 自己完結的職務の形成: 仕事をできるだけ一つの単位で完結させ、部門間調整を減らします。
  • 調整付加資源の投入: 余裕人員、予備能力、バッファを持たせ、例外処理を吸収します。

情報処理能力を高める方策には、次のようなものがあります。

  • 横断的関係の構築: 部門横断チーム、リエゾン、会議体などで横の連携を強めます。
  • 縦系列の情報処理システムの改善: 上下方向の情報伝達や情報システムを整えます。

2007年 第12問では、この「情報量を減らす方策」と「処理能力を高める方策」の区別が問われました。自己完結的職務と調整付加資源は情報量を減らす方向、横断的関係と縦系列の改善は処理能力を高める方向です。

ウッドワードの技術と組織構造

ウッドワードは、生産技術と組織構造の適合を扱いました。バーンズとストーカーが主に環境の不確実性と管理システムを扱うのに対し、ウッドワードは技術の違いに注目します。

一次試験で押さえる順序は、次の流れです。

  1. 単品生産・小規模バッチ生産
  2. 大規模バッチ・大量生産
  3. 装置生産、連続的処理を行うプロセス技術

2020年 第15問と2025年 第15問では、この順に技術が移るにつれて、組織階層数、管理者や監督者の割合、直接労働者に対する間接労働者の割合が高まる傾向が問われました。

注意したいのは、ウッドワードの技術分類を機械的・有機的管理システムと単純に同一視しないことです。大量生産は標準化と結びつきやすい一方、単品生産や装置生産では専門的判断や状況対応が重要になります。設問が「技術」を聞いているのか、「環境」を聞いているのかを分けて読みます。

ローレンスとローシュの分化と統合

ローレンスとローシュは、環境不確実性が高いほど、組織内の各部門がそれぞれ異なる環境に適応するために分化しやすくなると考えました。

ただし、分化だけでは組織全体がばらばらになります。高業績の組織では、分化した部門を結びつける統合の仕組みも必要になります。統合には、調整役、横断チーム、会議体、共通目標、情報共有の仕組みなどが含まれます。

2025年 第15問では、「不確実性が高い環境では分化だけを進め、統合をできるだけ抑える」という趣旨の選択肢が誤りとして出ています。高不確実性では、分化と統合の両方が重要です。

官僚制の逆機能との切り分け

機械的管理システムは、安定環境では効率性を高める有効な仕組みです。しかし、ルールや階層が行き過ぎると、官僚制の逆機能が起こります。

代表例は次のとおりです。

  • 形式主義: 規則や手続きを絶対視し、杓子定規な対応になることです。
  • セクショナリズム: 組織全体よりも自部門の利益を優先することです。
  • 繁文縟礼: 過剰な手続きや書類作成に煩わされることです。
  • 目的置換: 本来は手段である規則や手続きが目的化することです。
  • 計画のグレシャムの法則: 定型業務に忙殺され、非定型的な計画業務が後回しになることです。

2016年 第14問では、官僚制の逆機能の用語と内容が問われました。機械的な仕組みそのものを悪いものと覚えるのではなく、適合する環境では有効だが、過度に硬直化すると逆機能が生じる、と整理します。

この章のまとめ

機械的管理システムと有機的管理システムは、環境との適合で判断します。安定環境、反復業務、標準化しやすい仕事なら機械的管理システムです。変化が大きく、不確実性が高く、現場情報や専門知識を横につなぐ必要があるなら有機的管理システムです。

解くときは、次の順で確認します。

  1. 設問が問う軸を確認します。バーンズとストーカーなら環境と管理システム、ウッドワードなら技術、ローレンスとローシュなら分化と統合、情報処理論なら情報量と処理能力です。
  2. 環境条件を読みます。安定・低不確実性なら機械的、変化・高不確実性なら有機的です。
  3. 選択肢の管理特徴を抜き出します。階層、命令、服従、詳細な責任規定、上位集中なら機械的です。水平的相談、助言、相互調整、柔軟な役割、分権なら有機的です。
  4. 周辺理論が混ざる場合は、理論名と判断軸を対応させます。技術を問う選択肢を環境論として読まないことが重要です。

ひっかけは、ほとんどが特徴の入れ替えです。「有機的なのに上位集中」「機械的なのに水平的相談」「高不確実性なのに分化だけで統合しない」といった記述は疑ってください。

一次試験過去問での出方

2007年 第12問では、組織を情報処理システムとして見たときの設計方策が問われました。自己完結的職務の形成と調整付加資源の投入は、処理すべき情報量を減らす方策です。

2016年 第14問では、官僚制の逆機能が問われました。形式主義、セクショナリズム、繁文縟礼、目的置換、計画のグレシャムの法則を、現象の中身とセットで押さえる必要があります。

2020年 第15問では、ウッドワードの生産技術分類が問われました。小規模バッチ生産から大量生産、さらにプロセス技術へ進む順序と、階層数や管理者比率の傾向がポイントでした。

2020年 第16問では、バーンズとストーカーの機械的管理システムと有機的管理システムが正面から問われました。高不確実性では、階層トップへの知識集中ではなく、タスクへのコミットメントと柔軟な協働が重要です。

2023年度 第1回 第15問では、両システムの対比が問われました。機械的管理システムでは、有機的管理システムよりも上司への服従が強調される、という方向が正解でした。

2025年 第15問では、ウッドワード、ローレンスとローシュ、バーンズとストーカーが横断的に問われました。理論ごとに「技術」「分化と統合」「環境と管理システム」の軸を分けることが重要です。