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企業経営理論

標準

コアコンピタンス・ダイナミックケイパビリティ

コアコンピタンスとダイナミックケイパビリティの違いを整理する。

この章で覚えておきたいこと

コア・コンピタンスは、企業の競争力を支える 中核能力 です。単に「得意なこと」や「保有している技術」ではなく、顧客価値に結びつき、競合がまねしにくく、複数の製品や市場へ展開できる能力を指します。

ダイナミック・ケイパビリティは、環境変化を知覚し、機会をつかみ、既存の経営資源や組織を再構成する能力です。安定した市場で既存業務を効率よく回す力ではなく、変化に合わせて組み替える力として理解します。

一次試験では、両者の違いがよく問われます。コア・コンピタンスは「現在と将来の競争力を支える中核能力」、ダイナミック・ケイパビリティは「変化に適応して資源を組み替える能力」と分けて読むと、選択肢を切りやすくなります。

基本知識

コア・コンピタンスは中核能力の束

ハメルとプラハラードのコア・コンピタンスは、企業の中核能力です。ただし、単一の技術、設備、特許、製品をそのまま指すわけではありません。

コア・コンピタンスは、複数のスキル、技術、知識、組織的学習を統合した 能力の束 です。個別の技術要素を競合も一部持っていても、それらを独自に結びつけて顧客価値へ変える力があれば、競争優位の源泉になります。

2010年度第3問のように、生産技術に関わる固有能力では、汎用設備の導入よりも、現場教育や技能継承が重要になります。固有能力は、設備そのものではなく、現場の暗黙知、改善活動、OJT、組織的な学習の蓄積として形成されます。

コア・コンピタンスの3つの判定軸

コア・コンピタンスかどうかは、次の3点で判断します。

  • 顧客価値 に結びつくこと。顧客が評価する便益や価値を高められることが必要です。
  • 模倣困難性 があること。競合企業が簡単にまねできないことが必要です。
  • 複数市場への展開可能性 があること。特定製品だけでなく、複数の製品、サービス、市場へ応用できることが重要です。

顧客は、コア・コンピタンスの背後にある個々の技術を詳しく理解している必要はありません。顧客が認知するのは、使いやすさ、品質、速さ、信頼性、体験価値などの便益です。

また、コア・コンピタンスは貸借対照表上の資産科目ではありません。会計上の資産と一致しなくても、技術変化、模倣、環境変化によって価値が低下することはあります。「無形だから価値が減らない」とは考えません。

コア製品は能力を市場へつなぐ中間成果

コア製品は、コア・コンピタンスによって生み出され、複数の最終製品の一部を形成する製品です。コア・コンピタンスそのものではなく、中核能力が外部に見える形になったものと考えると整理しやすいです。

コア製品と最終製品は1対1ではありません。1つのコア製品が複数の最終製品や複数の業界に展開されることがあります。そのため、コア製品の市場シェアが最終製品の市場シェアを上回ることもありえます。

2021年度第4問では、コア製品の市場シェア拡大が、追加投資や技術強化の機会を増やし、コア・コンピタンスを強化する循環につながる点が問われました。コア製品は単なる部品ではなく、中核能力を伸ばす投資機会の入口にもなります。

選択と集中はコアを強めるために使う

経営資源が限られる企業では、すべてを自社で抱えるのではなく、コア領域とノンコア領域を分けることが重要です。自社が強めるべき領域に資源を集中し、外部の専門能力を使える領域はアウトソーシングすることで、独自能力を構築しやすくなります。

2016年度第9問では、アウトソーシングする領域と自社で取り組む領域を峻別し、経営資源を特定事業領域へ集中することで、独自能力の構築を目指せる点が問われました。

ただし、アウトソーシングは丸投げではありません。コア・コンピタンスまで外部化すると、社内能力が空洞化するリスクがあります。外部化すべきなのは、原則として自社の競争優位を直接支えないノンコア領域です。

ダイナミック・ケイパビリティは変化に合わせて組み替える能力

ダイナミック・ケイパビリティは、環境変化に合わせて、経営資源、組織、プロセスを組み替える能力です。既存資源を安定的に効率運用する能力とは違います。

代表的には、次の3段階で整理します。

  • sensing は、市場や技術の変化、機会、脅威を察知する段階です。
  • seizing は、察知した機会をつかみ、投資、事業化、意思決定へ進める段階です。
  • reconfiguring は、既存の資源、組織、プロセスを再構成する段階です。

2025年度第4問では、「市場環境の変化を知覚し、新たなビジネス機会を活かし、必要時には既存の経営資源やプロセスを再構成する能力」が正答になりました。問題文に「知覚」「機会」「再構成」が出ると、ダイナミック・ケイパビリティの可能性を考えます。

通常能力とダイナミック・ケイパビリティを分ける

通常能力やオペレーショナル能力は、既存業務を安定的に効率よく回す力です。生産効率を高める、業務プロセスを改善する、既存資源をうまく使う、といった説明は通常能力に近いです。

一方、ダイナミック・ケイパビリティは、環境変化を前提にします。市場、技術、顧客ニーズ、競争条件が変わる中で、資源配分、組織構造、事業プロセス、ビジネスモデルを組み替える能力です。

試験では、ダイナミック・ケイパビリティを「外部環境から独立する能力」「成熟市場で既存資源を効率利用する能力」「業務効率化を追求する能力」と説明する選択肢が出ます。これらは誤りです。ダイナミック・ケイパビリティは、外部環境の変化を無視する能力ではなく、変化を読み取って適応する能力です。

この章のまとめ

コア・コンピタンスは、顧客価値、模倣困難性、複数市場への展開可能性を満たす中核能力です。単一技術、設備、会計上の資産、特定製品だけに閉じた能力とは考えません。重要なのは、複数のスキルや技術を企業独自に統合して、現在と将来の競争力へつなげることです。

コア製品は、コア・コンピタンスから生み出され、複数の最終製品の一部を形成しうる中間成果です。コア製品の市場シェア拡大は、投資機会を増やし、コア・コンピタンスを強化する循環につながります。

選択と集中では、コア領域とノンコア領域を分けます。ノンコアを外部化し、コアに資源を集中することで独自能力を強めます。ただし、コアまで外部化すると能力空洞化が起こりやすくなります。

ダイナミック・ケイパビリティは、環境変化を知覚し、機会をつかみ、資源や組織を再構成する能力です。通常能力は既存業務を効率よく回す力です。一方、ダイナミック・ケイパビリティは変化に合わせて組み替える力です。

一次試験過去問での出方

2025年度第4問では、ダイナミック・ケイパビリティが問われました。環境変化を知覚し、機会を活かし、経営資源やプロセスを再構成する能力として判断します。

2023年度第2回第3問では、コア・コンピタンスが問われました。顧客価値を高めるスキルや技術の集合体であり、顧客が個々の技術を詳しく理解している必要はありません。

2021年度第4問では、コア製品が問われました。コア製品は複数の最終製品へ展開され、シェア拡大がコア・コンピタンス強化の機会になります。

2019年度第4問では、コア・コンピタンスが現在の競争力だけでなく、将来の新製品や新サービスの源泉になる点が問われました。

2016年度第9問では、アウトソーシングと選択と集中が問われました。外部化する領域と自社で強化する領域を分けることで、独自能力の構築を目指します。

2010年度第3問では、生産技術に関わる固有能力の維持・構築が問われました。汎用設備よりも、現場教育や技能継承によって暗黙知を組織に残すことが重要です。