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NARITAI

企業経営理論

補助

戦略策定プロセス

分析、選択、実行、統制の流れを押さえる。

この章で覚えておきたいこと

  • 戦略策定は、環境分析、戦略案の立案、戦略選択、実行、評価・統制の流れで考えます。
  • 長期経営計画は、過去実績の延長や本社主導に偏ると、環境変化や現場実態から離れやすくなります。
  • ローリングプランは、計画を定期的に見直して硬直化を防ぐ考え方です。
  • 創発的戦略は、当初の計画にない行動や対応が、事後的に戦略として形になるものです。
  • 戦略は策定して終わりではなく、実行過程で機会や脅威を学習し、必要に応じて修正します。
  • シナリオ分析は未来を確定する道具ではなく、複数の不確実な未来に備える道具です。

基本知識

戦略策定は分析から統制までの流れで見る

戦略策定プロセスは、まず外部環境と内部環境を分析し、目的に合う戦略案を作り、複数案から実行すべき戦略を選び、組織や資源を動かして実行し、結果を評価・統制する流れで整理します。

この流れは、経営戦略を体系的に考えるための基本形です。ただし、一次試験では「この順番を暗記しているか」だけでなく、計画通りに進まないときの修正まで問われます。戦略は紙の上で完成するものではなく、実行を通じて検証されます。

外部環境の変化、顧客反応、競合の動き、技術変化、現場の工夫は、計画段階では十分に見えないことがあります。そのため、戦略策定プロセスは一方向の作業ではなく、実行結果を見て再び分析や選択へ戻る循環として理解します。

長期経営計画は硬直化と現場乖離に注意する

長期経営計画は、企業が中長期の方向性、投資、事業領域、資源配分を計画的に進めるために使います。規模が大きい企業ほど、部門間の調整や資金計画をそろえる必要があるため、計画の役割は大きくなります。

一方で、長期経営計画には弱点もあります。

  • 過去実績の延長に偏ると、環境変化から離れた現状維持的な計画になりやすいです。
  • 本社の企画部門だけで作ると、営業や生産など現場の知識が反映されにくくなります。
  • 計画と統制を短い周期で強く結びつけすぎると、現場の創意工夫を圧迫しやすくなります。
  • 一度作った計画を固定すると、計画そのものが環境変化に追いつかなくなります。

ここで押さえるのが ローリングプランです。ローリングプランは、長期計画を定期的に見直し、最新の環境変化や実績を織り込む方法です。試験では「計画のローリングは不可能」といった断定が出たら疑います。

計画的戦略と創発的戦略を分ける

ミンツバーグは、戦略を「事前に計画したもの」だけでなく、組織行動の中から実際に現れたパターンとしても捉えました。ここで重要なのが、計画的戦略と創発的戦略の区別です。

計画的戦略は、経営者が意図した戦略が、ほぼそのまま実現される場合です。トップが方向性を決め、計画に落とし込み、組織がそれを実行するイメージです。

創発的戦略は、当初は意図していなかった行動や対応が積み重なり、後から一貫した戦略として認識される場合です。偶発的な事象、現場の試行錯誤、顧客への対応、環境変化への適応が定着し、結果として戦略になります。

創発的戦略は、単なる思いつきや新規事業そのものではありません。問われているのは、戦略の内容ではなく戦略が形成される過程です。「シナジーを意図する」「新たな事業ドメインを作る」「計画を具体化する」といった説明は、創発的戦略の定義とはずれます。

戦略学習とシナリオ分析で修正力を高める

戦略学習とは、戦略の実行過程で得た知見をもとに、計画にない機会や脅威を取り込み、戦略を修正していく考え方です。2013年度の過去問では、経営計画になかった機会や脅威を取り入れるには、計画遂行プロセスで学習が起こることが重要だと問われました。

戦略学習では、本社の計画部門と事業部門の双方向のやり取りも重要です。現場は顧客や競合の変化を早く察知しやすく、本社は全社的な資源配分や方向性を調整できます。したがって、本社と事業部門の対話を「機会や脅威の発見に無効」とする選択肢は疑います。

シナリオ分析も、戦略の柔軟性を高める道具です。複数の将来像を描き、それぞれの場合にどのような対応が必要かを考えます。ただし、シナリオ分析は未来を確定する分析ではありません。未来を当てるためではなく、不確実性に備えるために使います。

この章のまとめ

戦略策定プロセスでは、まず「分析、立案、選択、実行、評価・統制」という基本の流れを押さえます。そのうえで、一次試験では計画の限界と修正の考え方を問われやすいと意識します。

長期経営計画は有用ですが、過去実績の延長、本社主導、硬直的な統制に偏ると問題が生じます。ローリングプランは、計画を定期的に見直して環境変化へ対応する方法です。

計画的戦略と創発的戦略は、選択肢で最も混同されやすい論点です。計画的戦略は意図した戦略が実現されるもの、創発的戦略は当初意図しなかった行動の蓄積が事後的に戦略になるものです。

問題を解くときは、選択肢の表現を次の順で確認します。

  1. 「意図する」「計画する」「具体化する」が中心なら、計画的戦略を疑います。
  2. 「偶発的事象」「現場対応」「試行錯誤」「事後的」が中心なら、創発的戦略を考えます。
  3. シナリオ分析は、未来の確定ではなく複数未来への備えとして判断します。
  4. 本社と事業部門の対話、実行過程の学習、計画の見直しを一律に否定する選択肢は疑います。

一次試験過去問での出方

2024年度第1問では、ミンツバーグの創発的戦略が問われました。正解は、もともとの経営計画に組み込まれていない偶発的事象への対応が、事後的に戦略として形成されるという内容です。

2013年度第1問では、経営計画になかった機会や脅威を、計画遂行プロセスでの学習を通じて取り込むことが問われました。定量データだけで新機軸の戦略を必ず作れる、シナリオ分析で未来を確定できる、といった断定を切ります。

2007年度第2問設問1では、長期経営計画の問題点が問われました。過去実績の延長、現場乖離、統制の硬直化は弱点ですが、ローリングプランによる定期見直しは可能です。