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運営管理(オペレーション・マネジメント)

標準

経済性分析

現価、年価、終価、投資案評価を計算問題として整理する。

この章で覚えておきたいこと

  • 独立案 は採用基準を満たせば複数採用できます。排反案 はどれか1つしか選べないので、案同士の優劣比較が必要です。
  • 現価 は将来の金額を現在へ直した値、終価 は現在の金額を将来へ直した値、年価 は毎年均等額へ直した値です。比較するときは、必ず時点をそろえます。
  • NPV は将来キャッシュフローの現在価値合計から初期投資を引いた値です。IRR は NPV が 0 になる割引率なので、IRR が資本コストを下回れば NPV は負になります。
  • 回収期間法 は回収の速さを見る方法であり、収益性そのものを完全には表しません。割引回収期間では、割引後キャッシュフローの累計で判定します。
  • 排反案は単独の採算だけでなく、差額の追加投資 が見合うかで比較します。追加部分の NPV が正なら、上位案へ乗り換える価値があります。
  • 能力制約がある設備比較では、固定費と変動費の交点だけでは不十分です。能力を超えると 売り逃し が起こるため、総費用ではなく利益で比較する場面があります。
  • 手直し、特殊注文、短期の追加判断では、今後の意思決定で変わる 差額原価 だけを見ます。すでに発生した原価や増えない固定費は判断から外します。

基本知識

独立案と排反案

独立案は、ある案を採用しても別の案も同時に採用できる投資案です。したがって、各案をそれぞれ採算基準に照らし、条件を満たすものを採用します。

排反案は、複数案のうち どれか1つだけ を選ぶ投資案です。このときは「採算があるか」だけでは足りません。どの案が最も有利かを比較しなければなりません。

試験では、案の本数が増えると混乱しやすいですが、考え方は同じです。

  • 独立案: 基準を満たす案を個別に採用する
  • 排反案: 案同士を比較して最も有利なものを選ぶ
  • 排反案では、単独評価に加えて 差額比較 が重要になる

現価・年価・終価で時点をそろえる

経済性分析では、時点の異なる金額をそのまま足したり比べたりしてはいけません。現在の 100 万円と 5 年後の 100 万円は、価値が同じではないからです。

  • 現価: 将来の金額を現在時点へ割り引いた価値
  • 終価: 現在の金額を将来時点まで運用した価値
  • 年価: ある投資案を、毎年均等に発生する金額へ換算した値

試験で大事なのは、係数名を丸暗記することよりも、どの時点にそろえているかを見失わないことです。

  • 初期投資と将来の節減額を比べるなら 現価 へそろえる
  • 複数年にわたる投資を毎年の負担額で比べるなら 年価 を使う
  • 将来時点での累積額を比べるなら 終価 を使う

2019年度第19問のように「6年で回収するために必要な毎年の原価低減額」を問われたら、投資額を年額へ直す発想が必要です。これは、投資額を 資本回収係数 で年価に変換していると考えると整理しやすくなります。

NPV・IRR・回収期間の読み方

NPV は、将来キャッシュフローを資本コストで割り引いた現在価値の合計から、初期投資額を差し引いて求めます。判定基準は単純です。

  • NPV > 0: 採算に合う
  • NPV = 0: ちょうど見合う
  • NPV < 0: 採算に合わない

IRR は NPV が 0 になる割引率です。したがって、IRR と資本コストの大小関係だけで NPV の符号を判定できます。

  • IRR > 資本コスト: NPV は正
  • IRR = 資本コスト: NPV は 0
  • IRR < 資本コスト: NPV は負

2012年度第18問は、この関係をそのまま使う問題でした。IRR が約 4% で資本コストが 7% なら、割引率のほうが高いので NPV は負です。また、割引後キャッシュフローの累計が 5 年で初期投資に届かなければ、割引回収期間 は 5 年を超えます。

ここで混同しやすい点も押さえておきます。

  • 回収期間法: 投資額を何年で回収できるかを見る
  • 割引回収期間法: 割引後キャッシュフローで回収年数を見る
  • 投資利益率法: 年間利益 ÷ 投資額 で比率を見る

2023年度第2回第18問のように、定義の正誤を問う問題では 投資額 ÷ 年間利益 と逆にしていないかが典型的なひっかけです。

排反案は差額で比較する

排反案で迷いやすいのは、各案が単独では採算に合っていても、どれを選ぶべきかは別問題だという点です。ここで使うのが 差額法 です。

ある案から別の案へ乗り換えるときは、次の差だけを取り出します。

  • 初期投資額の差
  • 毎年の節減額や収入の差
  • その差額部分の割引回収期間や NPV

2023年度第1回第17問では、単独案 A・B・C がいずれも計画期間内に回収できても、差額案で見ると順位が変わりました。考え方は次のとおりです。

  1. 追加投資案の割引回収期間が計画期間以内なら、その追加投資の NPV は正です。
  2. 追加投資案の割引回収期間が計画期間を超えるなら、その追加投資の NPV は負です。
  3. 追加部分が正なら上位案へ進む価値があり、負なら下位案のほうが有利です。

この考え方を知っていると、排反案の比較で「単独案の回収期間が短い順」に並べてしまう誤りを避けられます。

能力制約がある設備比較

設備比較では、総費用直線の交点だけで優劣分岐点を求める問題が基本です。ただし、設備ごとに生産能力が異なるときは、それだけでは不十分です。

2024年度第9問では、能力の小さい設備があるため、需要が能力を超えると生産量が頭打ちになりました。この場合は、単純な総費用比較ではなく、販売単価まで含めた 利益式 で考えます。

手順は次の順です。

  1. 能力の範囲内では、各設備の利益式を作る
  2. 単純な交点が能力の外にあるかを確認する
  3. 能力を超える設備は、売り逃しにより利益が頭打ちになる
  4. 頭打ち後の利益と、もう一方の設備の利益を比べて真の分岐点を出す

3案比較でも同じ発想です。2016年度第19問のように優劣分岐点が複数与えられたら、各区間でどの設備の総費用が最小かを順に追います。中間の案が一度も最適にならないこともあるため、「3案あるなら真ん中の案がどこかで最適になるはず」と決めつけてはいけません。

差額原価で短期意思決定をする

短期の意思決定では、今後の判断で変わる収入と費用だけを見ます。これが 差額原価 の考え方です。

差額計算で見るものは次のとおりです。

  • 追加で得られる売上
  • 回避できる費用
  • 追加で発生する費用

逆に、次のものは判断から外すことが多いです。

  • すでに発生している原価
  • 受注の有無で増えない固定費
  • 共通に発生する費用

2024年度第18問では、不適合品を廃棄するか、手直しして販売するかを比較しました。ここで効くのは、手直しにより 追加売上 が入ることと、廃棄費用を回避 できることです。すでにそこまで加工した原価は、どちらを選んでも変わらないので差額計算に入れません。

2025年度第20問では、能力に余裕があるときのスポット注文が問われました。この場合、最低受注単価の基準は 追加変動費 です。固定費を製品1個当たりに配賦して最低価格へ入れると、採算判断を誤ります。

ただし、能力に余裕がなければ話は変わります。既存注文を犠牲にするなら、失う限界利益まで考慮しなければなりません。したがって、特殊注文はまず 余力があるか を確認してから判断します。

この章のまとめ

経済性分析では、最初に「何を比較する問題か」を見分けることが重要です。

  • 投資案の採算判定なら、現価へそろえて NPV を考える
  • 用語の正誤判定なら、各手法が何を比べる方法かを確認する
  • 排反案の順位付けなら、差額の追加投資 で比べる
  • 設備比較で能力制約があるなら、総費用ではなく 利益式 に切り替える
  • 手直しや特殊注文なら、差額原価 だけを抜き出す

最後に確認したいひっかけは次のとおりです。

  • IRR < 資本コスト なのに採算ありとしない
  • 投資利益率 = 年間利益 ÷ 投資額 を逆にしない
  • 割引回収期間で、割引前の金額をそのまま足さない
  • 能力制約があるのに、固定費と変動費の交点だけで結論を出さない
  • 差額計算で、すでに発生した原価や増えない固定費を入れない

一次試験過去問での出方

2012年度第18問では、IRR・NPV・割引回収期間 の関係が問われました。IRR と資本コストの大小関係から NPV の符号を判断できるかが重要です。
2016年度第19問では、3案の 優劣分岐点 を使って、どの生産量帯で最適設備が変わるかを判定させました。
2019年度第19問では、投資額を 年価 に直して、毎年必要な原価低減額を求める計算が出ました。
2023年度第1回第17問では、排反案を 差額の追加投資 で比較し、NPV の大小関係を順位付けさせました。
2023年度第2回第18問では、原価比較法・回収期間法・NPV法・投資利益率法 の定義そのものが問われました。
2024年度第9問では、能力制約による 売り逃し を含めた設備比較が出題され、2024年度第18問と2025年度第20問では 差額原価 による手直し判断と特殊注文判断が問われました。