価格設定(価格政策、特売・値下げ)
この章で覚えておきたいこと
- 値入率は売価基準、粗利益率も売上高基準で考えます。仕入原価に率をそのまま掛けないことが重要です。
- 値下げは販売数量を増やしやすい一方で、1個当たりの粗利益額を減らします。値引率と値入率の関係を冷静に見ます。
- EDLPは常時低価格、ハイ・アンド・ローは通常価格と特売価格を使い分ける政策です。
- ロスリーダーは大幅値引きで集客する目玉商品です。低い値引率で集客する商品ではありません。
- 特売を繰り返すと、消費者の内的参照価格が下がり、通常価格が高く感じられやすくなります。
基本知識
値入率と粗利益率の違い
値入額は、売価から仕入原価を引いた予定上の差額です。値入率は、この値入額を売価で割った比率です。したがって、売価値入率が分かっているときは、売価を逆算する発想が必要です。
| 論点 | 式 | 注意 | |---|---|---| | 値入額 | 売価 - 仕入原価 | 予定上の差額 | | 売価値入率 | 値入額 ÷ 売価 | 分母は原価ではなく売価 | | 売価 | 仕入原価 ÷ (1 - 売価値入率) | 原価に率を上乗せしない | | 粗利益率 | 粗利益額 ÷ 売上高 | 実際販売後の利益率 |
たとえば、仕入原価が80円で売価値入率が20%なら、売価は80円に20%を上乗せした96円ではありません。売価を100円とすると、値入額20円、値入率20%になり、ここで初めて条件を満たします。2021年第27問は、この分母の取り違えを見抜けるかが中心でした。
粗利益額は、実際の売上高から売上原価を引いた金額です。値下げせずに計画どおり売れれば値入額と一致しやすいですが、特売や値下げを行うと、実際の粗利益額は予定より小さくなります。粗利益率も粗利益額÷売上高で求めるため、原価基準で考えないようにします。
複数商品の全体値入率や全体粗利益率は、各商品の率を平均してはいけません。先に総売上高、総原価、総粗利益額を出し、そのあとで全体の率を計算します。2021年第27問では、数量や金額構成が決まらないのに全体値入率を求めようとする選択肢が誤りでした。
値下げと粗利益の見方
値下げ問題では、まず通常価格で売れた数量と値下げ後に売れた数量を分けて売上高を計算します。そのうえで、総売上高から総原価を引いて粗利益額を出します。販売数量が増えても、粗利益額まで増えるとは限りません。
2021年第27問では、当初の値入率より低い値引率で特売した場合の扱いが問われました。値引率が当初の値入率を下回るなら、通常は原価割れしません。したがって、粗利益額がすぐにマイナスになるわけではありません。この論点は、値引きと赤字を短絡的に結び付ける受験生を狙った典型的なひっかけです。
値下げは在庫処分や集客には有効ですが、同時に粗利益率を下げます。したがって、単品の販売数量だけでなく、来店客数の増加、他商品の併買、在庫圧縮の効果まで含めて判断する必要があります。
EDLPとハイ・アンド・ロー
EDLPは Every Day Low Price の略で、いつ来店しても低価格だと感じてもらう政策です。日々の価格変動を小さくし、特売に強く依存しないことで、価格の分かりやすさと信頼感をつくります。2024年第28問では、価格変動が小さく売上が安定している店をEDLPと判断できるかが問われました。
ハイ・アンド・ローは、通常価格を設定したうえで、特売日に大きく値下げして集客する政策です。チラシや売場演出と組み合わせやすく、価格変化がはっきり出ます。2024年第28問では、チラシ特売による集客はEDLPよりもハイ・アンド・ローに向くことが確認されました。
2022年第30問では、EDLPだからプライスラインが1つしかないわけではない、という点も問われました。EDLPは価格帯の数ではなく、常時低価格を維持する考え方で理解します。
ロスリーダーと内的参照価格
ロスリーダーは、来店を促すために大幅値引きする目玉商品です。利益を稼ぐ商品というより、他商品の購買まで含めて店全体の売上につなげる商品です。2024年第28問でも、ロスリーダーを「低い値引率で集客できる商品」と誤って理解していないかが問われました。
価格弾力性は、価格を変えたときに需要量がどれだけ反応するかを見る指標です。基本式は 需要の価格弾力性 = 数量変化率 ÷ 価格変化率 です。通常は絶対値で大きさを見ます。絶対値が大きい商品ほど、同じ値引率でも販売数量が大きく動きやすく、価格主導型ISPの効果が出やすいと判断します。
端数価格は、198円、1,980円のように、きりのよい価格より少し下げて割安感を出す価格設定です。価格弾力性は反応の大きさ、端数価格は心理的な見え方の論点なので、式と心理効果を混同しないようにします。
消費者は、頭の中に「この商品はだいたいこのくらいの価格だろう」という基準を持っています。これが内的参照価格です。2022年第30問では、定番価格を高く設定していても、特売を頻繁に繰り返すと内的参照価格が低下することが正解肢になりました。
内的参照価格が下がると、通常価格へ戻したときに割高感が生まれ、特売待ちが起こりやすくなります。そのため、短期的な販売数量だけを見て特売を繰り返すと、長期的には通常価格販売が難しくなることがあります。
この章のまとめ
- 値入率と粗利益率は、どちらも分母を確認してから計算します。
- 複数商品の全体率は平均せず、総額から求めます。
- 値下げは数量を増やしても、粗利益率を下げる方向に働きます。
- EDLPは常時低価格、ハイ・アンド・ローは特売を織り込んだ価格政策です。
- ロスリーダーは大幅値引きの目玉商品であり、内的参照価格は特売の繰り返しで下がりやすいと整理します。
一次試験過去問での出方
2021年第27問では、マークアップ法、値入率、値引率、全体値入率の考え方が問われました。分母の確認と、全体率を単純平均しない点が重要です。
2022年第30問では、EDLP、ハイ・アンド・ロー、内的参照価格、価格弾力性、端数価格の正誤判定が出題されました。特売の繰り返しで内的参照価格が下がる点を押さえます。
2024年第28問では、日別売上から価格政策を読み取り、EDLP、チラシ特売、ロスリーダーの理解が問われました。売上データの動きと価格政策を結び付けて判断できることが必要です。