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NARITAI

運営管理(オペレーション・マネジメント)

最優先

作業管理

標準作業、標準時間、余裕、レイティング、多能工化を厚く扱う。

この章で覚えておきたいこと

  • 標準作業 は、標準的な技能の作業者が再現できる、現時点で最もよい作業方法です。熟練者しかできない名人芸を基準にしません。
  • 作業標準 は、作業順序、方法、使用設備、品質確認、安全上の注意などを具体化した基準です。教育訓練や改善の土台になります。
  • 標準時間 は、習熟した作業者が、所定条件の下で、必要な余裕をもち、正常な作業ペースで仕事をするために必要な時間です。
  • 標準時間は 正味時間 + 余裕時間 で構成されます。観測時間からいきなり標準時間を求めるのではなく、レイティングで正常時間に直してから余裕を加えます。
  • レイティングでは、観測対象が標準より速ければ補正係数は 100より大きく なります。ここは頻出の逆転ポイントです。
  • 余裕率は、外掛け法 なら正味時間を分母、内掛け法 なら標準時間を分母にします。分母を取り違えると計算を外します。
  • 多能工化、職務拡大、職務充実、職務転換、集団作業化は、現場の柔軟性やモラールに関わる論点として繰り返し問われます。

基本知識

作業管理の役割

作業管理は、作業方法と作業時間を管理して、品質、コスト、納期、安全、モラールを安定させる考え方です。単に「速く作る」ための管理ではありません。作業方法が人によってばらつくと、品質不良、手待ち、過負荷、教育の属人化が起こるため、まず標準を定め、実績との差を見て改善します。

試験では、作業管理を「決める」「守る」「直す」の流れで理解できているかが問われます。作業者が勝手に標準を変えるのではなく、改善効果を確認し、標準を改訂して全体へ展開する、という順序が重要です。

標準作業と作業標準

標準作業は、現時点で最も合理的と認められる作業方法です。次の性格をまとめて押さえます。

  • 標準的作業者が実施できること
    熟練者だけができる方法は標準になりません。
  • 4Mを有効に使うこと
    Man、Machine、Material、Method の組み合わせを前提にします。
  • 品質と安全の条件が入ること
    速さだけでなく、品質確認や安全上の注意も標準の一部です。
  • 条件が変われば見直すこと
    設備、材料、品質要求、工程条件が変われば改訂します。

作業標準は、その標準作業を共有できる形へ落とし込んだ基準です。紙の手順書だけに限られず、図、写真、動画なども使えます。加工や組立だけでなく、検査、準備段取、運搬、保全、異常処理なども標準化の対象になります。

標準時間の定義と構成

標準時間は、生産計画、進捗管理、原価管理、人員計画の基礎になる時間です。定義をそのまま問う問題もあるため、次の4語を落とさず覚えます。

  • 適性と習熟
  • 所定の作業条件
  • 必要な余裕
  • 正常な作業ペース

構成は次のとおりです。

  • 正味時間
    標準的なペースで作業そのものを行うために必要な時間です。
  • 余裕時間
    作業遂行上必要と認められる遅れの時間です。

時間区分では、主体作業時間と準備段取作業時間を切り分けます。主体作業時間は、主作業時間と付随作業時間に分かれます。主作業時間は加工や組立など対象物へ直接働きかける時間、付随作業時間は部品の取り出し、工具交換、確認など主作業に伴って必要な時間です。

レイティングと余裕率

レイティングは、観測した作業者のペースを正常ペースへ補正する操作です。観測時間が短いから標準時間も短い、とは限りません。観測対象が標準より速く動いていれば、正常時間へ直すために時間を伸ばします。

判断の軸は次のとおりです。

  • 観測者が標準より速いときは、補正係数は 100超 です。
  • 観測者が標準より遅いときは、補正係数は 100未満 です。
  • PTS法標準時間資料法 は既定時間や資料を使うので、通常の時間観測のようなレイティングを行いません。

余裕率は、与えられ方を見て式を選びます。

  • 外掛け法
    標準時間 = 正味時間 × (1 + 余裕率)
  • 内掛け法
    標準時間 = 正味時間 ÷ (1 - 余裕率)
  • ワークサンプリングで全時間に対する余裕割合が与えられる場合
    内掛け法と同じ考え方で処理します。

標準時間の設定方法

標準時間の設定方法は、どのデータから時間を決めるかで分かれます。

  • ストップウォッチ法
    実作業を観測して時間を測定します。反復作業の基本手法です。
  • PTS法
    到達、把持、移動、位置決めなどの基本動作へ分解し、既定時間を積み上げます。
  • 標準時間資料法
    過去に整備した数式、図、表などの資料から求めます。
  • 実績資料法
    過去の実績記録を基にします。
  • 経験見積法
    経験者や管理者の知見で見積もります。

近年は、MTM法を PTS 法の一種として理解できるか、標準時間資料法を「モジュール化された要素作業を編集する方法」と誤認しないか、といった切り口でも出ています。

多能工化と職務設計

多能工化は、1人の作業者が複数工程や複数作業を担当できるようにする考え方です。変種変量生産、人員応援、ラインバランス調整に役立ちます。単に負担を増やす話ではなく、教育訓練や標準作業と組み合わせて進める点が重要です。

職務設計では、次の用語を一言で区別できるようにします。

  • 職務拡大
    同じ水準の仕事の幅を横に広げます。
  • 職務充実
    計画、判断、責任、改善まで含めて仕事を深くします。
  • 職務転換
    担当する仕事を順次入れ替えます。
  • 集団作業化
    チーム内で応援や交替ができる体制にします。

教育訓練も頻出です。OJT は職場内の実地指導、Off-JT は職場外の体系的教育、SD は自己啓発、TWI は監督者訓練です。

この章のまとめ

  • 標準作業は「熟練者しかできない方法」ではなく、標準的作業者が再現できる最良の方法です。
  • 標準時間は、観測時間 → 正常時間 → 標準時間 の順に組み立てます。途中を飛ばさないことが大切です。
  • レイティングでは、速い作業者ほど係数が大きくなります。直感と逆なので、式で確認します。
  • 余裕率は、外掛け法か内掛け法かを先に判定します。分母の違いが最大のひっかけです。
  • PTS法と標準時間資料法は、既定時間や資料を使うため、観測法のようなレイティングを前提にしません。
  • 多能工化と職務設計は、現場の柔軟性とモラールに関わるため、用語の方向を短く説明できるようにします。

一次試験過去問での出方

2024年第6問では標準時間の設定方法が、2023年第2回第13問では標準時間の構成が、2022年第15問では作業標準の対象範囲が問われました。標準時間は定義、構成、設定方法、余裕率計算を横断して出るため、用語暗記だけでなく式の順序まで再現できることが必要です。

2021年第15問と2023年第2回第13問では、主作業時間、付随作業時間、準備段取作業時間、余裕時間の切り分けが出ました。2021年第16問と2007年第5問では、職務設計とモラールの考え方が問われています。

2017年第14問では標準時間を使った PDCA、2017年第16問と2014年第15問では余裕率計算、2010年第16問では標準作業と改善の関係が問われました。計算、定義、改善運用の3方向で反復される章だと理解しておくと得点しやすくなります。