経営法務
重要著作権(著作者人格権、著作権、著作隣接権、プログラムの著作権)
著作者人格権、財産権、著作隣接権、職務著作、プログラム著作物を扱う。
著作権
この章で覚えておきたいこと
- 著作権は、思想または感情を創作的に表現した著作物に、創作と同時に発生します。特許権や商標権のような登録による発生ではありません。
- 著作者人格権は、公表権、氏名表示権、同一性保持権からなり、著作者の一身に専属するため譲渡できません。
- 著作財産権は、複製権、公衆送信権、譲渡権、翻案権などからなり、譲渡や利用許諾の対象になります。
- 二次的著作物を作るには翻案権などが関わり、作成後の利用でも原著作者の権利が残ります。契約では著作権法27条・28条を特掲するかが重要です。
- 職務著作では、要件を満たすと法人等が著作者になります。プログラムの著作物は、一般の著作物と要件が少し異なります。
- 著作隣接権は著作者の権利ではなく、実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者など、著作物を公衆へ伝達する側を保護する権利です。
- 引用、私的使用、写り込み、公開美術の利用など、権利制限規定は要件を外すと侵害になります。
- 保護期間は一律ではありません。自然人の著作物、法人名義著作物、映画の著作物で起算点が異なります。
基本知識
著作物と登録不要主義
著作物とは、思想または感情を創作的に表現したもので、文芸、学術、美術、音楽の範囲に属するものをいいます。単なるアイデア、事実、ありふれた表現、データそのものは、原則として著作物ではありません。2022年度第10問や2023年度第2回第12問では、講演、地図、無言劇、美術工芸品などが著作物に当たるかどうかが問われました。
著作権は、著作物を創作した時点で発生します。文化庁への登録や申請をしなければ権利が生じないわけではありません。これを登録不要主義といいます。2015年度第7問や2023年度第2回第12問では、この点を産業財産権と混同させる形で問われました。
もっとも、登録制度が全く無意味というわけではありません。実名の登録、第一発行年月日等の登録、著作権譲渡の登録などは、紛争時の立証や第三者対抗のために使われます。ただし、登録は権利発生の要件ではない、という軸を先に押さえることが重要です。
著作者人格権と著作財産権
著作者人格権は、著作者の人格的利益を守る権利です。代表例は次の3つです。
- 公表権: いつ公表するかを決める権利です。
- 氏名表示権: 実名で出すか、変名で出すか、無名にするかを決める権利です。
- 同一性保持権: 著作者の意に反する改変を受けない権利です。
著作者人格権は一身専属であり、譲渡できません。2014年度第10問、2017年度第11問、2019年度第9問、2022年度第15問、2025年度第15問では、著作財産権は譲渡できても、著作者人格権は譲渡できないという違いが繰り返し問われました。
これに対して著作財産権は、経済的利益を守る権利です。試験でよく出るのは、複製権、公衆送信権、譲渡権、展示権、演奏権、翻案権などです。例えば、店舗でBGMを流す場面は演奏権、公衆に送信する場面は公衆送信権が関わります。問題文で「改変」「公表」「氏名表示」が出たら人格権、「コピー」「配信」「販売」「上映」が出たら財産権を疑うと整理しやすいです。
二次的著作物と著作権譲渡の注意点
原著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化などして新たに作られたものを二次的著作物といいます。ここで問われやすいのが、著作権法27条と28条です。
- 27条: 原著作物を翻案する権利などは著作者が専有します。
- 28条: 二次的著作物が作られた後も、その利用について原著作者は同種の権利を持ちます。
そのため、著作権譲渡契約で「著作権を全部譲渡する」とだけ書いても、27条と28条の権利は当然には移らないと推定されます。2015年度第14問、2019年度第9問、2025年度第15問は、この特掲の要否をそのまま問う典型問題でした。受験では、譲渡契約の論点が出たら「27条・28条は別扱い」と即答できるようにしておくべきです。
職務著作とプログラムの著作物
職務著作は、法人その他使用者の発意に基づき、その法人等の業務に従事する者が職務上作成し、法人等が自己の著作名義の下に公表するなどの要件を満たすときに、法人等が著作者となる制度です。要件を満たすと、著作者人格権も著作財産権も法人等に帰属します。2020年度第9問では、キャラクターを社員が業務として作成した場合に、誰が著作者となるかが問われました。
ただし、「社員が作ったものは常に会社のもの」とは限りません。法人等の発意、職務上作成、公表名義といった要件を外すと、通常どおり自然人である作成者が著作者になります。
プログラムの著作物には特則があります。一般の職務著作では法人名義で公表する要件が必要ですが、プログラムの著作物についてはその要件が不要です。2023年度第2回第12問では、この違いを知らないと誤るように作られていました。また、プログラムで保護されるのは具体的な表現であり、アルゴリズムやアイデアそのものではない点も併せて押さえます。
著作隣接権
著作隣接権は、著作者以外で著作物の伝達に重要な役割を果たす者を保護する権利です。代表的な主体は次のとおりです。
- 実演家
- レコード製作者
- 放送事業者
- 有線放送事業者
著作隣接権は、著作者人格権や著作財産権とは別物です。2017年度第11問や2022年度第15問では、著作隣接権を著作者本人の権利と取り違えさせる選択肢が出ました。著作者が持つのは著作者人格権と著作財産権であり、著作隣接権は実演家等の権利だと整理しておけば、かなり切りやすくなります。
引用、私的使用、公開美術などの権利制限
著作権法には、権利者の許諾がなくても利用できる場面がありますが、要件を満たさなければ侵害になります。頻出なのは次の論点です。
- 引用
公表された著作物であること、報道・批評・研究など正当な目的があること、主従関係が明確であること、引用部分が区別されていること、出所明示があることが重要です。2020年度第15問では、未公表著作物、出所明示なし、正当な範囲を超える利用は引用に当たらないと判断させました。 - 私的使用
個人的または家庭内その他これに準ずる限られた範囲での複製に限られます。会社内サーバーに置いて全従業員が閲覧できるようにする行為は、私的使用とはいえません。2013年度第12問や2015年度第13問では、違法配信と知りながらのダウンロードや業務利用との違いが問われました。 - 写り込み
たまたま写り込んだ程度で、著作権者の利益を不当に害しない場合は適法になることがあります。2013年度第12問と2015年度第13問はこの典型です。 - 公開美術の利用
屋外の場所に恒常的に設置された美術の著作物などは、一定の場合に自由利用できますが、美術の著作物の複製物を販売目的で複製するような場合は除外されます。2025年度第14問でこの文言が問われました。
権利制限規定は、キーワードだけでなく要件の組み合わせで問われます。「私的使用だから常に大丈夫」「引用だから出典は不要」といった極端な理解をしないことが重要です。
保護期間
保護期間は次の整理が基本です。
- 自然人が著作者の著作物
原則として著作者の死後70年です。 - 法人名義著作物
原則として公表後70年です。 - 映画の著作物
原則として公表後70年です。
2017年度第12問では自然人著作物の満了日を、2019年度第11問では自然人、法人名義著作物、映画の著作物を比較させました。試験では「誰が著作者か」「映画かどうか」でまず分類し、そこから死後起算か公表後起算かを決めるのが基本手順です。
なお、過去問は出題当時の法改正前後が混ざることがあります。保護期間の年数だけでなく、問題文の前提時点も確認する癖を付けておくと安全です。
この章のまとめ
- 著作権は創作と同時に発生し、登録不要主義を採ります。
- 著作者人格権は譲渡できず、著作財産権は譲渡や利用許諾ができます。
- 二次的著作物では27条・28条が重要で、契約では特掲の有無を確認します。
- 職務著作は要件を満たしたときだけ法人等が著作者になります。プログラムの著作物では公表名義要件が不要です。
- 著作隣接権は実演家等の権利であり、著作者の権利とは別です。
- 引用、私的使用、写り込み、公開美術の利用は、要件を満たすかどうかで結論が変わります。
- 保護期間は自然人、法人名義著作物、映画の著作物で起算点が異なります。
- 過去問では、「譲渡できるか」「誰に帰属するか」「例外が使えるか」を切り分ける問題が中心です。
一次試験過去問での出方
2013年度第12問、2015年度第13問、2020年度第15問では、私的使用、引用、写り込みなどの権利制限規定が問われました。
2015年度第7問、2017年度第12問、2019年度第11問では、登録不要主義や保護期間の起算点が頻出でした。
2017年度第11問、2020年度第9問、2022年度第15問、2025年度第15問では、著作者人格権と著作財産権、職務著作、譲渡契約の処理が繰り返し問われました。
2023年度第2回第12問と2025年度第14問では、プログラムの職務著作の特則や公開美術の利用など、条文を正確に読ませる問題が出ています。