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経営情報システム

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価値評価(投資対効果、ROI、BSC活用)

ROI、BSC、投資対効果を基本定義中心に扱う。

価値評価

この章で覚えておきたいこと

  • 価値評価は、情報システム投資が経営目的に対して妥当か、費用に見合う効果があるかを判断する考え方である。
  • ROI は投資効率を見る財務指標、BSC は財務・顧客・業務プロセス・学習と成長の 4 視点で評価する枠組みである。
  • TCO は総保有コスト、ポートフォリオ分析は複数案件の比較、スコアリングモデルは複数基準の点数化、ファンクションポイントは機能規模の測定である。
  • IT 投資評価では、事前評価だけでなく導入後評価も必要であり、金銭効果だけでなく定性的効果も評価対象になる。
  • 品質評価の論点と違い、ここでは「不具合を見つけるか」ではなく「投資として価値があるか」を判断している点を意識する。
情報システム投資の価値評価を費用、効果、定性的効果、導入後評価で俯瞰する図解

基本知識

IT 投資の価値評価とは何か

情報システムへの投資では、開発費や導入費だけでなく、運用費、保守費、教育費、障害対応費なども発生する。一方で、業務時間短縮、ミス削減、売上拡大、顧客満足度向上、意思決定の迅速化などの効果が期待される。価値評価は、こうした費用と効果を、投資目的に照らして妥当かどうか判断するための考え方である。

IT投資の費用側と効果側を店舗とオフィスの場面で対応づける図解

2013 年第 22 問では、IT 投資をインフラ型、業務効率型、戦略型に分けると評価基準を設定しやすいことが問われた。安定運用やセキュリティを重視する投資と、売上拡大や顧客接点強化を重視する投資では、同じ尺度で評価しにくいからである。

ROI

ROI は Return on Investment の略で、投資額に対してどれだけのリターンが得られたかを見る財務指標である。試験では、厳密な会計処理を問うよりも、「投資効率を比較するための指標」と理解できているかが重視される。投資額が同じなら効果が大きいほど ROI は高く、効果が同じなら投資額が小さいほど ROI は高い。

ROIを投資額と効果のバランスで投資効率を見る指標として示す図解

ただし、ROI だけでは顧客満足度向上や将来の柔軟性のような定性的・長期的価値を十分に表せない。この弱点を補うために、他の評価手法と併用することが多い。

BSC

BSC はバランスト・スコアカードであり、財務指標だけに偏らず、戦略を複数の視点から評価する枠組みである。4 つの視点は、財務、顧客、業務プロセス、学習と成長である。2019 年第 21 問では、この 4 視点に含まれないものとして「競合企業の視点」を選ばせた。

BSCの財務、顧客、業務プロセス、学習と成長の4視点を会社の周囲に配置した図解

情報システム投資の文脈では、売上や利益だけでなく、顧客対応の改善、業務品質の向上、人材育成や知識共有の促進まで含めて評価できる点が強みである。

TCO

TCO は Total Cost of Ownership の略で、導入費だけでなく、運用、保守、教育、サポートなどを含めた総保有コストを見る考え方である。2012 年第 23 問では、TCO を狭く解釈した選択肢が誤りとして出題された。TCO は価値そのものを直接測る指標ではなく、費用全体を見落とさないための考え方である。

TCOを導入費、運用費、保守費、教育費、サポートまで含めた総保有コストとして示す図解

ポートフォリオ分析

ポートフォリオ分析は、複数の IT 投資案件を、リスクとベネフィット、重要度と収益性などの軸で比較し、優先順位や投資配分を検討する手法である。2012 年第 23 問では、複数案をリスクとベネフィットの軸で比較する考え方として問われた。単一案件の費用を細かく見積もる手法ではない。

複数のIT投資案件をリスクとベネフィットの軸で比較して優先順位を検討する図解

スコアリングモデル

スコアリングモデルは、複数の評価項目に点数や重みを付けて、投資案を総合評価する手法である。2009 年第 22 問では、ファンクションポイントや BSC と区別して出題された。関係者が重視する基準を数値化しやすいが、点数の付け方に主観が入りやすい点には注意が必要である。

評価項目に点数と重みを付けて投資案を総合評価するスコアリングモデルの図解

ファンクションポイント

ファンクションポイントは、ソフトウェアが持つ機能の規模を測る考え方であり、見積りや生産性比較に使う。2009 年第 22 問では、機能数を数える手法として問われた。投資価値や戦略適合性そのものを評価する手法ではないため、BSC や ROI と同じ列で読まないことが重要である。

ソフトウェアの入力、出力、照会、ファイルなどの機能規模を数えるファンクションポイントの図解

リアルオプション

リアルオプションは、不確実性がある投資に対して、将来の拡張、延期、中止などの選択権に価値を認める考え方である。2012 年第 23 問では、顧客に購入希望価格を尋ねるような説明と入れ替えて誤答を誘っていた。将来の柔軟性を評価する考え方だと押さえれば足りる。

不確実性の中で拡張、延期、中止の選択権を残すリアルオプションの図解

IT 投資評価で見落としやすい点

2013 年第 22 問では、IT 投資評価は構想・企画段階だけでなく導入後にも行うべきこと、金銭的効果だけでなく利用者満足度や業務品質向上などの定性的効果も評価対象になることが問われた。「人員削減だけで判断する」「事前評価だけで十分」といった限定表現は誤りになりやすい。

導入後評価で利用者満足、業務品質、金銭効果を確認する図解

この章のまとめ

  • 価値評価では、まず費用を見る話か、投資効率を見る話か、複数案件を比較する話かを切り分ける。
  • ROI は投資効率、BSC は 4 視点評価、TCO は総保有コスト、ポートフォリオ分析は案件比較、スコアリングモデルは点数化、ファンクションポイントは機能規模の測定である。
  • IT 投資の目的がインフラ型、業務効率型、戦略型のどれに近いかで、重視すべき評価軸は変わる。
  • 金銭的効果だけでなく、顧客満足、業務品質、意思決定の迅速化などの定性的効果も評価対象になる。
  • 価値評価は、品質評価のテスト手法とは別領域であり、「投資判断」の問題として読む。
ROI、BSC、TCO、案件比較、点数化、機能規模を投資判断の観点で切り分けるまとめ図解

一次試験過去問での出方

  • 2009 年第 22 問では、ファンクションポイント、スコアリングモデル、BSC の区別が問われた。
  • 2010 年第 19 問では、IT-VDM/VOM により、IT 投資価値を価値ドメインや価値プロセスなどで多面的に整理する考え方が出題された。
  • 2012 年第 23 問では、ポートフォリオ分析、TCO、リアルオプション、人員削減だけで投資価値を判断する考え方の違いが問われた。
  • 2013 年第 22 問では、IT 投資を目的別に分類して評価基準を設定すること、事前評価だけでなく導入後評価も必要なこと、定性的効果も評価対象になることが問われた。
  • 2019 年第 21 問では、BSC の 4 視点に含まれないものを選ばせる形で出題された。