経営情報システム
最優先組織と人材(ITサービスマネジメント(ITIL)、プロジェクトマネジメント(PMBOK))
ITIL、PMBOK、プロジェクト管理、人材・組織管理を厚く扱う。
組織と人材
この章で覚えておきたいこと
- ITサービスマネジメントは、利用者に価値を提供するITサービスを安定して継続提供するための管理であり、ITILはそのベストプラクティス集です。
- 合意相手の切り分けは頻出です。顧客との合意はSLA、内部部門との合意はOLA、外部供給者との契約はUCです。
- 障害時の早期復旧はインシデント管理、根本原因の特定と再発防止は問題管理、変更の統制は変更管理、本番展開はリリース管理です。
- PMBOKはプロジェクトマネジメントの知識体系です。範囲、スケジュール、コスト、品質、資源、コミュニケーション、リスク、調達、ステークホルダーの管理を体系的に扱います。
- WBSは作業や成果物を階層分解した構造で、最下位の管理単位はワークパッケージです。100%ルールとWBS辞書も近年よく問われます。
- EVMでは、
CPI = EV / AC、SPI = EV / PVをまず再現できることが重要です。「このままのコスト効率で進む」ならEAC = BAC / CPIを使います。 - ガントチャートは日程管理、RACI図は責任分担、トルネード図は感度分析や影響度比較です。図表の用途の取り違えが典型的なひっかけです。
- IT人材標準は、そのまま全職種を社内に並べるためのものではありません。自社の業務や必要タスクに合わせて目標人材像を設計するために使います。
基本知識
ITサービスマネジメントとITIL
ITサービスマネジメントは、ITを単なる機器やソフトウェアとしてではなく、利用者に価値を提供するサービスとして管理する考え方です。中小企業でも、基幹システム、予約システム、EC、社内ネットワークなどを継続的に使える状態に保つ必要があり、そのためにサービス水準、障害対応、変更、改善を管理します。
ITILは、ITサービスマネジメントを実践するためのベストプラクティス集です。過去問では、ITILをセキュリティ基準やプログラムライブラリと取り違えさせる選択肢が出ます。ITILは「ITサービス運用の実務知識の体系」と押さえるのが基本です。
ITSMSは、ITサービスを継続的に管理する仕組みです。認証制度では ISO/IEC 20000 に関係します。ISMSは情報セキュリティ、Pマークは個人情報保護が中心なので、対象を混同しないようにします。
SLA、OLA、UC
SLAはサービス提供者と顧客の間で、稼働率、応答時間、復旧時間などのサービス水準を合意するものです。OLAは組織内部の部門間合意、UCは外部供給者との契約です。
この論点は、内容よりも相手先の切り分けで問われます。顧客はSLA、内部はOLA、外部はUCと固定して覚えると、類題に対応しやすくなります。
稼働率問題では、まず分母になる合意済みサービス時間を確認します。計画停止を含めるか除外するかを読み落とすと、計算式を知っていても誤答になります。
インシデント管理、問題管理、変更管理、リリース管理
インシデント管理は、サービス中断や品質低下が起きたときに、できるだけ早く通常サービスを回復する活動です。原因究明よりも、まず利用者影響を抑えて復旧することを優先します。
問題管理は、インシデントの根本原因を特定し、恒久対策や再発防止につなげる活動です。障害発生直後の初動ではなく、復旧後の分析と再発防止が中心です。
変更管理は、サービスや構成への変更を評価、承認、統制する活動です。リリース管理は、承認済みの変更を本番環境へ安全に展開する活動です。試験では「障害復旧」「原因究明」「変更審査」「本番展開」を場面で切り分けられるかが問われます。
PMBOKとプロジェクトマネジメント
プロジェクトは、独自の成果物やサービスを生み出すための有期的な活動です。定常運用とは異なり、開始と終了があり、目的、範囲、予算、期限、関係者が定められます。
PMBOKは、プロジェクトを体系的に管理するための知識体系です。試験では版ごとの差異よりも、範囲、スケジュール、コスト、品質、資源、コミュニケーション、リスク、調達、ステークホルダーを横断的に管理するという考え方が重要です。
外注を使う場合でも、発注者の責任は消えません。要件の明確化、外注先の評価、進捗確認、意思決定への関与は発注者が担います。一方、外注先の人事管理まで発注者が行うわけではありません。
WBSと計画技法
WBSは、プロジェクト全体の成果物や作業を階層的に分解した構造です。最下位の管理単位がワークパッケージであり、担当、工数、進捗、コストの管理に使います。
100%ルールは、上位要素の範囲を過不足なく下位要素へ分解する原則です。漏れは作業抜け、重複は責任の曖昧化や二重計上につながります。
WBS辞書は、各WBS要素の内容、成果物、責任、前提条件などを補足する文書です。プロジェクト全体のスコープ記述書とは役割が異なります。
ローリングウェーブ計画法は、近い将来の作業を詳細に、遠い将来の作業を概略で計画し、時期が近づいたら詳細化する方法です。反復開発の1サイクルを指すイテレーションとは別概念です。
EVM
EVMは、進捗を金額価値に換算して、コスト効率とスケジュール効率を把握する手法です。PVは計画上の出来高、EVは実際に獲得した出来高、ACは実際コスト、BACは完成時総予算です。
CPIは EV / AC で、コスト効率を表します。1より小さければコスト超過傾向です。SPIは EV / PV で、スケジュール効率を表します。1より小さければ進捗遅れです。
完成時総コスト見積りのEACは、前提条件で使う式が変わります。一次試験では「このままのコスト効率で進む」が定番なので、EAC = BAC / CPI を優先的に押さえます。
図表と責任分担
ガントチャートは、作業の日程を横棒で可視化する図です。PERTは作業の順序関係やクリティカルパスを把握するネットワーク技法です。
RACI図は、Responsible、Accountable、Consulted、Informed の役割で責任分担を整理する表です。誰が実行責任者か、誰が説明責任者かを明確にします。
トルネード図は、結果に与える影響度が大きい要因を比較する図で、感度分析やリスク分析で使われます。責任分担表ではありません。
IT人材・組織管理
ITSS、CCSF、iコンピテンシ ディクショナリなどは、IT人材のスキルやタスクを整理するための参照枠組みです。細かな職種名の暗記よりも、自社の業務に必要なタスクとスキルを整理し、目標人材モデルを設計するために使うという理解が重要です。
eラーニングは、ITスキルだけでなく、コンプライアンスや情報セキュリティ教育にも活用されます。情報リテラシーも、単なる操作能力ではなく、情報を適切に収集、評価、活用する力として広く捉えます。
この章のまとめ
- ITサービス運用の問題か、プロジェクト遂行の問題か、人材・組織管理の問題かを最初に分けると、候補用語が絞れます。
- SLA、OLA、UC は相手先で判断します。顧客、内部部門、外部供給者のどれかを確認してから選びます。
- 障害対応は目的で切り分けます。早期復旧ならインシデント管理、根本原因と再発防止なら問題管理です。
- 変更を評価、承認、統制するのが変更管理で、本番環境へ展開するのがリリース管理です。
- 稼働率問題では、計画停止を分母に含めるかを先に確認します。式の前に条件整理を行うのが実戦的です。
- WBS は階層分解、ガントチャートは日程、RACI図は責任分担、トルネード図は影響度比較です。図表の用途を逆にした選択肢は切りやすい典型です。
- EVMでは、分子がどちらもEVであることを起点に考えると、CPIとSPIを取り違えにくくなります。
- 「このままのコスト効率」と書かれていたら、EAC は
BAC / CPIを疑います。与えられた数値を全部使うとは限りません。 - 発注者責任や人材標準の問題では、「丸投げ」や「標準をそのまま機械的適用する」選択肢をまず疑います。
一次試験過去問での出方
- 2025年度第24問では、SLA の稼働率計算が問われました。計画停止を合意済みサービス時間から除外する条件を読めるかが勝負でした。
- 2023年度第1次試験第19問では、SLA、OLA、UC の相手先対応が出ました。顧客、内部、外部の切り分けがそのまま得点になります。
- 2023年度第1次試験第20問、2023年度再試験第16問、2024年度第21問、2025年度第23問では、EVM が連続して問われています。CPI、SPI、EAC の式を再現できることが重要です。
- 2025年度第18問では、WBS辞書、ワークパッケージ、100%ルール、ローリングウェーブ計画法が問われました。WBS周辺用語も直球で出ます。
- 2023年度再試験第17問では、RACI図、ガントチャート、トレンドチャート、トルネード図の用途が問われました。図の名前よりも用途で判断する問題でした。
- 2011年度第19問では、外注時の発注者責任が問われました。要件定義、外注先評価、進捗確認は発注者側の重要事項です。
- 2007年度第20問、2013年度第20問、2016年度第18問では、IT人材標準や人材育成の考え方が問われました。標準を自社の目標人材モデルにどう活用するかが論点です。