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経営情報システム

重要

経営革新と情報システム(DX、ビジネスモデル、業務プロセス改善(BPR)、エンタープライズアーキテクチャ(EA))

DX、BPR、EA、ビジネスモデル変革を頻出論点として扱う。

経営革新と情報システム

この章で覚えておきたいこと

経営革新と情報システムの主要用語を対象と目的で切り分ける全体像
  • DX は、デジタル技術の導入そのものではなく、製品・サービス、業務、組織、企業文化、ビジネスモデルを変革して企業価値を高める取り組みです。
  • DXの設問では、経営戦略起点 か、事業部門が主体 か、組織・人材・ITシステム・セキュリティまで含む かを確認します。
  • BPR は、今の業務を少し便利にする話ではなく、業務プロセスを根本から見直して成果を大きく改善する考え方です。
  • EA は、企業全体の業務と情報システムを ビジネス・データ・アプリケーション・テクノロジー の4体系で整理し、全体最適を図る枠組みです。
  • ビジネスモデルキャンバス は、業務手順を描く道具ではなく、誰にどんな価値をどう届け、どう収益化するかを9要素で整理する枠組みです。
  • RPA は、物理ロボットではなく、PC上の定型操作をソフトウェアで自動化する技術です。
  • 製造分野DX は、工場の効率化だけでは終わりません。OTのデジタル化を軸に、製品、サービス、ビジネスモデルの変革まで広げる考え方です。
  • 製造分野DX度チェックの レベル3 は、「課題が分かった」「取り組んでいる」段階ではなく、変化に対応できる仕組みが回っている 状態です。

この論点は、似た言葉を入れ替えた選択肢が多いです。用語を雰囲気で覚えるのではなく、何を対象にし、何を目的にするか で切り分けることが得点につながります。

基本知識

DXは経営と事業の変革を問う

DXが単なるIT導入ではなく経営戦略起点の全社変革であることを示す図解

DXは、単なるIT化やデジタル化ではありません。データやデジタル技術を使って、顧客価値、業務、製品・サービス、ビジネスモデル、組織のあり方を変える考え方です。

試験では、次の誤りが頻出です。

  • デジタル技術を導入しただけでDXとみなす。
  • ベンダーや情報システム部門に任せればDXが進むと考える。
  • PoCを先に回し、その後で経営戦略を考える。
  • 短期間でシステムを作れたかだけでDXの成否を評価する。

正しくは、経営トップが方向を示し、事業部門がオーナーシップを持ち、組織、人材、ITシステム、セキュリティ、成果指標まで含めて進めます。2021年の過去問でも、ITシステムのオーナーシップは情報システム部門やベンダーではなく、事業部門が持つ と整理できるかが問われました。

DX関連制度は「戦略」と「実行基盤」を分けて読む

DX関連制度を戦略と実行基盤に分けて読むための図解

DX認定制度やデジタルガバナンス・コードでは、DXを経営として進める準備があるかが問われます。ここでは、戦略そのものと、戦略を動かす基盤を混同しないことが重要です。

押さえるべき流れは次のとおりです。

  • 経営ビジョン・ビジネスモデル を定める。
  • DX戦略 を策定する。
  • 戦略を進めるための 組織づくりデジタル人材の育成・確保ITシステム・サイバーセキュリティ を整える。
  • 成果指標 を置き、見直す。
  • ステークホルダーとの対話 を行う。

2024年の過去問では、DX認定制度の「組織づくり・人材・企業文化に関する方策」が、IT環境整備ではなく 戦略を効果的に進めるための体制 に対応することが問われました。2025年には、デジタルガバナンス・コード3.0の5つの柱として、DX戦略の推進デジタル人材の育成・確保ステークホルダーとの対話 が問われています。

BPRは「自動化」ではなく「業務の再設計」

BPRが自動化ではなく顧客価値と全体最適から業務を再設計する考え方であることを示す図解

BPRは、Business Process Re-engineering の略です。既存業務をそのままシステムに載せ替える話ではなく、顧客価値や全体最適の観点から業務プロセスを抜本的に見直す考え方です。

ここで区別したいのは次の3つです。

  • BPR
    業務プロセスそのものを根本から見直します。
  • 要求定義
    新システムに何を求めるかを整理します。
  • 単純な効率化
    現行業務を前提に部分改善します。

試験では、要求定義とBPRを入れ替えた選択肢が出やすいです。2013年の関連論点でも、要求定義とBPRは同じではないと判断できるかが重要でした。また、2020年の過去問では、スクラッチ開発したシステムをパッケージへ刷新するとき、過度なカスタマイズを避けるために 現状の業務プロセスの見直し が必要だと問われています。これはBPRの発想そのものです。

業務プロセス改善では「流れを見る技法」と「調整を見る技法」を分ける

業務プロセス改善で流れを見る技法と調整を見る技法を分ける図解

業務プロセスの改善では、どの記法が何を見るためのものかも問われます。特に、工程の流れを表す技法と、組織間の調整を表す技法は区別して覚えます。

  • BPMN
    業務の流れ、分岐、担当を表します。
  • EPC
    イベントと機能の連鎖で業務プロセスを表します。
  • ペトリネット
    並行処理や同期も含めた処理の流れを形式的に表します。
  • DEMO
    アクター間の約束、取引、調整に着目します。

2015年の過去問では、DEMO が調整的視座に立つモデリング技法として問われました。BPRやDXの文脈では、作業フローだけでなく、承認、依頼、責任分担の設計まで見ないと改善が進まないことがあります。

EAは企業全体の構造を4体系で整理する

EAをビジネス、データ、アプリケーション、テクノロジーの4体系で整理する図解

EAは、Enterprise Architecture の略です。部門ごと、システムごとの個別最適ではなく、企業全体で業務と情報システムの整合を取るための枠組みです。

4体系は次のように整理します。

  • ビジネスアーキテクチャ
    業務機能、業務プロセス、組織、業務ルールを整理します。代表的な成果物は機能構成図、業務フローです。
  • データアーキテクチャ
    データの内容、構造、関連性を整理します。代表的な成果物は E-R図 です。
  • アプリケーションアーキテクチャ
    業務を支える情報システムやアプリケーションの役割分担と連携を整理します。代表的な成果物は情報システム関連図です。
  • テクノロジーアーキテクチャ
    ハードウェア、OS、ネットワークなどの技術基盤を整理します。代表的な成果物はネットワーク構成図です。

2018年の過去問では、ビジネスアーキテクチャが 共通化・合理化した業務の姿 を体系化するものだと問われました。2023年度第2回では、EAそのものを BSC、オブジェクト指向、ERP、SOA と区別する問題が出ています。

ここでのひっかけは、どれももっともらしく「全体最適」に見えることです。しかし、対象範囲が違います。

  • EA
    企業全体の業務と情報システムの構造を整理します。
  • ERP
    基幹業務を統合管理する仕組みです。
  • BSC
    財務、顧客、業務プロセス、学習と成長の視点で経営を評価します。
  • SOA
    サービス部品を組み合わせてシステムを構成する考え方です。

ビジネスモデルキャンバスは「価値提供の仕組み」を見る

ビジネスモデルキャンバスが価値提供と収益化の仕組みを9要素で整理する図解

ビジネスモデルキャンバスは、企業がどのように価値を創造し、顧客へ届け、収益化するかを整理する枠組みです。業務手順やシステム要件を細かく描く道具ではありません。

9要素は次のとおりです。

  • 顧客セグメント
  • 価値提案
  • チャネル
  • 顧客との関係
  • 収益の流れ
  • 主要リソース
  • 主要活動
  • 主要パートナー
  • コスト構造

2024年の過去問では、ビジネスモデルキャンバスを、要求分析、業務フロー分析、オープンイノベーション、EAと区別する問題が出ました。判定軸は単純です。

  • 顧客価値と収益化の仕組みを見るなら、ビジネスモデルキャンバス です。
  • 業務の流れや役割を見るなら、業務フロー分析です。
  • システムに必要な機能を見るなら、要求分析です。
  • 業務と情報システムの全体構造を見るなら、EAです。

RPAは定型的なPC操作の自動化

RPAがPC上の定型操作をソフトウェアで自動化する技術であることを示す図解

RPAは、Robotic Process Automation の略です。人型ロボットではなく、PC上で人が繰り返している定型操作をソフトウェアで自動化する技術です。

典型例は次のような業務です。

  • Webサイトへアクセスする。
  • 条件を入力する。
  • ファイルをダウンロードする。
  • データを転記する。
  • 帳票を作成する。

2020年の過去問では、卸売企業のWebサイトへアクセスし、条件を設定してPOSデータを収集する作業を自動化する事例がRPAとして問われました。

ここで混同しやすい概念も整理しておきます。

  • RPA
    画面操作や転記などの定型事務を自動化します。
  • IoT
    機器やセンサーからデータを取得します。
  • AI
    認識、分類、予測、推論を行います。
  • 物理ロボット
    現実空間で動作します。

RPAは導入しやすい一方で、例外処理が多い業務や、人の判断が多い業務には向きません。対象業務の標準化まで含めて考えることが重要です。

製造分野DXは「工場の効率化」で終わらない

製造分野DXがOTのデジタル化から製品、サービス、ビジネスモデル変革へ広がる図解

製造分野DXでは、OTのデジタル化を起点に、製品、サービス、ビジネスモデルの変革まで広げます。工場内の見える化だけに縮めないことが大切です。

整理したい用語は次の3つです。

  • スマートファクトリー
    生産設備や製造プロセスをデジタル化し、データをやり取りしながら効率化・最適化する工場です。
  • スマートプロダクト
    デジタル技術を組み込んで製品そのものの価値を高める考え方です。
  • スマートサービス
    利用状況データなどを使って、保守、支援、ノウハウ提供などの継続的な価値を提供するサービスです。

2024年の過去問では、スマートサービス、スマートファクトリー、製造分野DXの定義がそのまま問われました。ここでのひっかけは、「収益につながりやすいから最初にスマートプロダクトへ取り組む」と決めつける記述です。実際には、まず製造装置や製造プロセスからデータを集め、活用できる状態にすることが出発点になります。

DX成熟度レベルは「認識」「実行」「仕組み化」で見分ける

DX成熟度レベルを未着手、課題認識、取り組み実行、仕組み化で見分ける図解

成熟度評価では、同じDXでも到達度が違います。製造分野DX度チェックでは、次のように見分けます。

  • レベル0
    取り組みができていません。
  • レベル1
    課題が明確になっています。
  • レベル2
    取り組みを実行しています。
  • レベル3
    変化に対応できる仕組みが構築できています。

2025年の過去問では、企業間でシステムや設備のデジタルデータをやり取りし、データを活用している状態がレベル3として問われました。

ここでの判定軸は次のとおりです。

  • 「課題が明確」は レベル1 です。
  • 「施策をやっている」は レベル2 です。
  • 「部門や個人に閉じた改善」は レベル2 にとどまりやすいです。
  • 「継続的に回り、変化に対応できる」は レベル3 です。

DXの設問では、戦略があるだけで高レベルとは限りません。運用として回り続けるかまで読む必要があります。

この章のまとめ

経営革新と情報システムの用語を対象範囲と目的の2軸で復習するまとめ図解
  • DX は、デジタル技術を使った経営・事業・組織の変革です。単なるIT導入ではありません。
  • DX関連制度では、戦略そのものと、組織・人材・ITシステム・セキュリティといった実行基盤を分けて読みます。
  • BPR は業務プロセスの根本的な再設計であり、要求定義や部分改善とは別です。
  • EA は企業全体を4体系で整理する枠組みです。ERP、BSC、SOAとは対象が違います。
  • ビジネスモデルキャンバス は、価値提案と収益化の仕組みを9要素で整理する道具です。業務フロー図ではありません。
  • RPA は、定型的なPC操作の自動化です。IoT、AI、物理ロボットと混同しないようにします。
  • 製造分野DXでは、スマートファクトリー、スマートプロダクト、スマートサービスの違いを押さえ、OTのデジタル化から価値変革へ広げる流れで理解します。
  • 成熟度レベルは、課題認識実行仕組み化 のどこかで見分けます。レベル3 は仕組みが定着している状態です。

最後は、各用語を次の2軸で言い換えられるかを確認してください。

  • 対象範囲
    事業全体なのか、業務プロセスなのか、企業全体の構造なのか、定型事務なのか。
  • 目的
    変革なのか、再設計なのか、全体最適なのか、価値提供の整理なのか、自動化なのか。

この2軸で整理できれば、似た言葉を並べた選択肢でも迷いにくくなります。

一次試験過去問での出方

2007年 第17問では、業務と情報システムの関係をどう構想するかが問われました。

2015年 第20問では、BPMNやEPCではなく、調整的視座に立つ技法として DEMO が問われました。

2018年 第19問では、EAのビジネスアーキテクチャが、機能構成図や業務フローを生む層として問われました。

2020年 第16問では、パッケージ導入時に現状業務プロセスの見直しを考慮する必要があると問われました。

2020年 第25問では、Webアクセスやデータ収集のような定型的なPC操作を自動化する事例が RPA として問われました。

2021年 第16問では、DX推進では事業部門がオーナーシップを持つこと、技術起点ではなく経営戦略起点で進めることが問われました。

2022年 第9問では、DXレポート2.1の企業類型が問われ、単なる外部委託やコスト削減はDXの担い手ではないと整理できるかが問われました。

2023年度第2回 第11問では、EAをBSC、オブジェクト指向、ERP、SOAと区別できるかが問われました。

2024年 第10問では、DX認定制度とデジタルガバナンス・コードの対応関係、製造分野DXの定義と進め方が連続して問われました。

2024年 第12問では、ビジネスモデルキャンバスを、要求分析、業務フロー分析、オープンイノベーション、EAと切り分ける問題が出ました。

2025年 第21問では、デジタルガバナンス・コード3.0の5つの柱が問われました。

2025年 第22問では、製造分野DX度チェックの進展レベル3が、「変化に対応できる仕組み」の段階として問われました。