経営情報システム
標準情報システムの適用領域(SCM、CRM、ERP、ナレッジマネジメント等)
SCM、CRM、ERP、ナレッジマネジメントを業務目的と対応づける。
情報システムの適用領域
この章で覚えておきたいこと
- SCM は、調達から販売までの供給連鎖全体を最適化する考え方です。在庫削減、欠品防止、納期短縮が主な狙いです。
- CRM は、顧客との関係を維持・強化するために顧客情報を活用する考え方です。購買履歴や問い合わせ履歴を使って継続利用や再購入につなげます。
- ERP は、会計、販売、購買、在庫、生産、人事などの基幹業務を統合する仕組みです。クラウドかどうかは本質ではありません。
- ナレッジマネジメント は、個人や部門に埋もれた知識を共有し、再利用できる形で組織の資産にする取り組みです。
- SFA は営業活動支援、CTI は電話とコンピュータの連携、RPA は定型事務の自動化、SEO は検索エンジン最適化です。CRMやERPと役割を混同しないことが重要です。
- Webマーケティング指標は、「何を成果とみるか」「どの行動を測るか」で区別します。コンバージョン率、チャーン率、直帰率、離脱率、回遊率は定番です。
- LTV は顧客生涯価値です。試験では、1期間当たり利益と平均継続期間から計算させる形が頻出です。
この論点は、略語の正式名称を覚えるだけでは不十分です。試験では、「誰に関する情報を扱うか」「どの業務を支援するか」「何を改善したいのか」で選択肢を切り分けます。
基本知識
まずは「対象」と「目的」で切り分ける
似た横文字が並んだときは、最初に対象を見ます。
- 企業内部の基幹業務をまとめるなら ERP です。
- 顧客との関係を強化するなら CRM です。
- 営業担当者の行動や案件進捗を管理するなら SFA です。
- 取引先を含む供給連鎖を最適化するなら SCM です。
- 知識やノウハウの共有ならナレッジマネジメントです。
- 電話応対と顧客情報を連動させるなら CTI です。
- 定型事務を自動化するなら RPA です。
- 検索結果で見つけてもらいやすくする施策なら SEO です。
この切り分けができると、略語問題の多くは解けます。逆に、クラウド、AI、最適化のような広い言葉に引っ張られると誤答しやすくなります。
SCMは「企業間を含む全体最適」が軸です
SCM は Supply Chain Management の略です。原材料の調達、生産、在庫、物流、販売、納品までを一つの流れとして捉え、供給連鎖全体で最適化します。
SCMで重視するのは次の観点です。
- 在庫を持ちすぎないこと
- 欠品を防ぐこと
- 納期を短くすること
- 需要変動に合わせて生産や物流を調整すること
ここで重要なのは、SCMは自社内だけでは完結しない点です。取引先、物流事業者、小売なども含めて情報共有することで効果が出ます。
過去問では、企業間取引を支える標準コードもこの文脈で出ます。EDI で使う標準企業コード、GLN、UN/EDIFACT などは、受発注や出荷のデータを共通ルールでやり取りするための基盤です。コードの名前を丸暗記するより、「何を識別するコードか」で押さえるほうが安定します。
CRMは「顧客との関係維持」、SFAは「営業活動支援」です
CRM は Customer Relationship Management の略です。顧客属性、購買履歴、問い合わせ履歴、クレーム履歴、キャンペーン反応などを蓄積し、顧客との関係を深めるために使います。
CRMの主な目的は次のとおりです。
- 顧客満足度の向上
- 継続利用や再購入の促進
- 優良顧客の育成
- 顧客ごとの提案精度の向上
一方、SFA は Sales Force Automation の略で、営業担当者の活動を支援する仕組みです。典型機能は次のとおりです。
- 行動履歴の記録
- 商談の進捗管理
- 案件情報の共有
- 受注見込みの把握
CRM と SFA は連携することが多いですが、同じものではありません。
- CRM は顧客関係を軸に見ます。
- SFA は営業プロセスを軸に見ます。
さらに、電話応対の現場では CTI が登場します。CTI は Computer Telephony Integration の略で、電話とコンピュータシステムを連携させる仕組みです。着信時に顧客情報を表示したり、通話履歴を残したりできるため、コールセンターやサポート窓口で CRM と組み合わせて使われます。
ERPは「基幹業務の統合」が本質です
ERP は Enterprise Resource Planning の略です。会計、販売、購買、在庫、生産、人事などの基幹業務を、共通データを用いて一体的に処理する仕組みです。
ERPの効果として押さえるべき点は次のとおりです。
- 部門ごとの二重入力を減らせる
- データの整合性を保ちやすい
- 受注から出荷、請求、会計処理までを連携できる
- 全社で業務を標準化しやすい
試験で特に狙われやすいひっかけは、ERPを提供形態で説明する選択肢です。たとえば「クラウド上で動く統合情報システム」という説明は不十分です。クラウド ERP もありますが、オンプレミス ERP もあります。ERP の本質は 基幹業務の統合 にあります。
また、「経営資源の戦略的活用を計画するシステム」という説明も要注意です。ERP は分析や計画だけを行う仕組みではなく、基幹業務プロセスの実行を支える実行系システムとして捉えるのが基本です。
ナレッジマネジメントは「知識を再利用できる形にする」取り組みです
ナレッジマネジメントは、個人の経験やノウハウを組織で共有し、継続的に活用できるようにする考え方です。
対象になるものの例は次のとおりです。
- 業務手順書
- FAQ
- 提案書や事例集
- 失敗事例と改善策
- ベテラン担当者の判断ノウハウ
単にファイルを保存するだけでは、ナレッジマネジメントとは言えません。検索しやすく、再利用しやすく、他の担当者が業務改善に使える状態にして初めて意味があります。
この論点は単独出題よりも、CRM、意思決定支援、グループウェア、情報共有の文脈で周辺的に問われやすいです。目的が「知識の蓄積」ではなく、組織学習 や業務品質向上にあることを押さえておきます。
RPAとSEOは「自動化」と「集客」で役割が違います
RPA は Robotic Process Automation の略で、定型的な事務処理をソフトウェアロボットで自動化する技術です。
RPA が向く処理の例は次のとおりです。
- 定型入力
- 帳票転記
- データ照合
- 定時実行の事務処理
RPA は物理的なロボットではありません。工場や倉庫の搬送ロボットと混同しないことが重要です。
SEO は Search Engine Optimization の略で、検索エンジン最適化を指します。検索結果で自社サイトが見つかりやすくなるよう、ページ構成やコンテンツを改善する取り組みです。
SEO は集客施策であり、顧客情報の一元管理ではありません。顧客に合った提案をする仕組みは CRM 側の話です。試験では、SEO と CRM の役割の違いを問うひっかけが出やすいです。
Webマーケティング指標は「何を測るか」で覚えます
Webマーケティングの指標は、名称が似ているため混同しやすいです。次のように整理すると判定しやすくなります。
- コンバージョン率
購入、申込、会員登録など、サイトの目的行動を達成した割合です。 - チャーン率
顧客や会員が解約、離反した割合です。サブスクリプション型サービスで特に重要です。 - 直帰率
最初の1ページだけ見て、他ページへ移動せずに離れた割合です。 - 離脱率
特定ページを最後にサイトから離れた割合です。 - 回遊率
1回の訪問でどれだけページを閲覧したかを見る指標です。
ここでの頻出論点は次の2組です。
- チャーン率と購買相関は別物です。購買相関は商品の組み合わせを見る分析で、チャーン率は顧客離反を見る指標です。
- 直帰率と離脱率は別物です。最初の1ページだけで終わるなら直帰率、あるページを最後に離れるなら離脱率です。
LTVは「利益 × 継続期間」で考えます
LTV は Life Time Value の略で、顧客生涯価値を表します。顧客が取引期間全体で企業にもたらす価値を見る指標です。
試験では、簡便計算として次の形がよく使われます。
- LTV = 1期間当たり利益 × 平均継続期間
さらに、解約率が一定と仮定されるときは、平均継続期間を次で求めます。
- 平均継続期間 = 1 ÷ 解約率
たとえば、月間平均利益が 10,000 円、月次解約率が 5% なら、平均継続期間は 20 か月です。したがって LTV は 200,000 円になります。
この種の問題では、問題文が与えた式を素直に使うことが重要です。割引率や顧客獲得コストが書かれていないのに、勝手に複雑な計算へ広げないようにします。
この章のまとめ
- 略語問題は、正式名称より先に「対象」と「目的」を確認すると解きやすくなります。
- SCM は供給連鎖全体の最適化、ERP は企業内部の基幹業務統合、CRM は顧客関係の維持・強化です。
- SFA は営業活動支援、CTI は電話連携、RPA は定型事務自動化、SEO は検索経由の集客施策です。
- ナレッジマネジメントは、知識を保存すること自体ではなく、共有して再利用し、組織の成果につなげることが目的です。
- Web 指標は、成果達成ならコンバージョン率、解約なら チャーン率、最初の1ページだけで離れるなら直帰率、特定ページを最後に離れるなら離脱率と切り分けます。
- LTV は顧客の長期価値を見る指標で、試験では「1期間当たり利益 × 平均継続期間」の形で計算できるようにしておきます。
- ERP をクラウドの有無で定義したり、CRM を業務フロー最適化と読み替えたりする選択肢は典型的な誤りです。
一次試験過去問での出方
- 2012年 第14問では、EDI で用いる標準企業コード、GLN、UN/EDIFACT の関係が問われました。SCM や企業間連携の基盤として、何を識別するコードかを区別できるかが論点でした。
- 2015年 第13問では、CRM、ERP、クラウドソーシング、インソーシングの定義が並びました。用語の響きではなく、対象業務と目的で切り分ける問題でした。
- 2019年 第15問では、ERP システムの説明として最も具体的で適切なものを選ばせました。基幹業務を統合パッケージで連携させる実行系システムという理解が必要でした。
- 2020年 第14問と 2023年度第2回 第14問では、コンバージョン率、チャーン率、直帰率、離脱率、回遊率が出題されました。Web 指標は繰り返し問われるため、定義の違いを確実に押さえる必要があります。
- 2021年 第23問では、月額課金サービスの LTV 計算が出題されました。解約率の逆数から平均継続期間を求める形はそのまま使えるようにしておきます。
- 2025年 第17問では、AR、CTI、RPA、SEO、SFA の略語が問われました。特に SFA と CRM、RPA と物理ロボット、SEO と顧客管理の取り違えに注意が必要です。