中小企業経営・中小企業政策
重要分野別サポート(農商工連携、観光、伝統的工芸品等)
農商工連携、地域資源、観光、伝統的工芸品の対象者と制度目的を整理する。
この章で覚えておきたいこと
- 農商工連携は、中小企業者と農林漁業者が有機的に連携し、それぞれの経営資源を活用して新商品、新サービス、需要開拓を行う制度です。単なる仕入れや売買関係では足りません。
- 地域資源活用は、誰と連携するかではなく、何を地域資源として活用するかで見分けます。過去問では、農林水産物等、鉱工業品又はその生産技術、観光資源の整理が重要でした。
- 観光は、地域資源活用の中でも特に、観光資源の特徴を活かした商品や役務が問われやすい論点です。ツアーや体験サービスも対象になり得ます。
- 伝統的工芸品は、経済産業大臣が指定した工芸品を前提に、産地振興、後継者育成、需要開拓、人材育成を支援する制度です。一般的な地域産品や単なる地場産業とは区別します。
- 試験では、制度名を暗記するだけでなく、対象者、制度目的、認定主体、認定計画の中身で切り分けることが重要です。
基本知識
農商工連携は「誰が連携するか」で見分ける
農商工連携は、中小企業者と農林漁業者がそれぞれの経営資源を持ち寄り、新たな商品やサービスの開発、生産、提供、需要の開拓を行う取り組みを支援する制度です。過去問では、法律の目的条文にある 有機的に連携 という表現そのものも問われています。
この制度で最初に確認するべき点は、連携の当事者です。
- 中小企業者がいること
- 農林漁業者がいること
- その両者が共同で計画を作成すること
- それぞれの経営資源を活用して、新商品・新サービスの開発や需要開拓を行うこと
したがって、次のような肢は誤りになりやすいです。
- 農林漁業者がいない
- 中小企業者だけの単独事業である
- 単なる原材料の仕入れにすぎない
- 既存商品の売上増加だけを目的にしている
過去問では、認定主体は国であること、漁業者も農林漁業者に含まれること、金融支援や信用保証、専門家支援が用意されることも問われました。逆に、支援機関であるNPO法人や地方自治体そのものが、認定事業者として直接支援対象になると読むのは誤りです。
地域資源活用は「何を活用するか」で見分ける
地域資源活用は、地域に存在する資源の特徴を活かして事業化する考え方です。農商工連携との最大の違いは、連携相手よりも活用する地域資源の内容が判定軸になることです。
過去問で押さえるべき地域資源の整理は、次の3つです。
- 農林水産物等
- 鉱工業品又はその生産に係る技術
- 観光資源
この論点では、「地域資源を使っていれば何でも対象になる」と考えると誤ります。過去問では、制度の対象になる商品や役務が、当該地域資源の特徴を活かしているかどうかまで問われました。
特に注意したい点は次のとおりです。
- 農林水産物を扱う場合は、一次産品そのものの需要開拓と、その資源を原材料として用いた商品開発を区別する
- 観光資源は、商品だけでなく役務の提供にもつながる
- その地域の資源としての結び付きが必要であり、地域外で切り離して生産すれば足りるわけではない
なお、過去問で問われた 中小企業地域資源活用促進法 は後に廃止されています。ただし一次試験では、当時の制度内容を前提に、農商工連携との違いや観光資源の扱いが問われました。したがって、過去問学習では旧制度の整理も必要です。
観光は「観光資源を使った商品・役務」で見る
観光はこの章では独立制度としてよりも、地域資源活用の中で問われることが多い論点です。見分けるポイントは、観光資源の特徴を利用しているかと、商品だけでなく役務も対象になり得るかです。
過去問で押さえたい整理は次のとおりです。
- 観光資源を使ったツアーや体験サービスは対象になり得る
- 観光資源を使った土産品や関連商品の開発も対象になり得る
- 観光客向けだから自動的に対象になるのではなく、地域資源との結び付きが必要である
したがって、観光を見たら「地域の交流人口を増やす施策」という大きな理解だけで終わらず、地域資源活用の一類型としてどう問われるかまで押さえておくことが重要です。
伝統的工芸品は「指定された工芸品」と「産地振興」で見る
伝統的工芸品は、地域の特産品一般ではありません。過去問では、伝統的工芸品産業の振興に関する法律に基づき、経済産業大臣が指定した工芸品であることが前提になっていました。
この論点で重要なのは、対象そのものと制度目的です。
- 対象は、伝統的工芸品として指定された工芸品
- 目的は、産地全体の振興
- 支援内容は、後継者育成、需要開拓、人材育成・交流支援など
また、伝統的工芸品の問題では、複数の計画名が出てきても、単に名前を覚えるのではなく、誰が何のために計画を作るのかで見分けることが重要です。特に、産地全体の振興を図る計画なのか、支援者側の計画なのか、販売事業者等と連携した活性化計画なのかで切り分けます。
誤答しやすいポイントは次のとおりです。
- 伝統的工芸品を、一般的な地場産品や土産品と同一視する
- 支援対象を、雇用調整のような他分野の政策まで広げてしまう
- 計画名だけで判断し、主体と目的を読まない
4つの論点の見分け方
試験では、似たように「地域」「連携」「活性化」という言葉が並ぶため、次の順で切り分けると安定します。
- まず、誰が主体かを見る
- 次に、何を活用する制度かを見る
- さらに、何を達成したい制度かを見る
具体的には、次のように整理できます。
- 農商工連携
- 主体: 中小企業者と農林漁業者
- 目的: 新商品、新サービス、需要開拓
- 見分け方: 共同作成、有機的連携、双方の経営資源
- 地域資源活用
- 主体: 地域資源を活用する事業者
- 目的: 地域資源を活かした商品・役務の開発や需要開拓
- 見分け方: 農林水産物等、鉱工業品等、観光資源の3類型
- 観光
- 主体: 観光資源を活かす事業者
- 目的: 観光資源の特徴を使った商品・役務の提供
- 見分け方: ツアー、体験、土産品など、観光資源を使った商品・役務
- 伝統的工芸品
- 主体: 産地や特定製造協同組合等、認定計画の主体
- 目的: 産地振興、後継者育成、需要開拓
- 見分け方: 経済産業大臣指定、伝産法、産地単位の振興
この章のまとめ
- 農商工連携は、中小企業者と農林漁業者の連携が核心です。通常の売買関係だけでは足りず、有機的連携と共同計画が必要です。
- 地域資源活用は、地域資源の3類型で整理します。特に、観光資源は役務にも使えること、一次産品そのものの需要開拓とは限らないことが重要です。
- 観光は、地域活性化一般ではなく、観光資源の特徴を使った商品・役務として問われます。
- 伝統的工芸品は、経済産業大臣の指定を前提に、産地振興、後継者育成、需要開拓を目的とする制度です。
- 切り分けに迷ったら、誰が対象か、何を活用するか、制度の目的は何かの3点で整理します。
一次試験過去問での出方
2009年は農商工等連携促進法の認定主体、支援対象、支援機関との違いが問われました。2010年と2012年、2016年は農商工連携の目的条文、有機的連携、共同作成、認定要件、支援措置が繰り返し出題されています。
2010年は地域資源活用でも、地域資源の類型、観光資源を使った商品・役務、一次産品そのものとの違いが問われました。農商工連携と地域資源活用を混同させる選択肢も典型です。
2019年は伝統的工芸品について、伝産法に基づく計画の主体と内容、補助対象となる事業の範囲が問われました。制度目的に合う支援かどうかで正誤を切るタイプです。