中小企業経営・中小企業政策
最優先小規模企業支援(小規模企業振興基本法、持続化補助金、マル経融資)
小規模企業振興基本法、持続化補助金、マル経融資、商工会・商工会議所の関与を扱う。
小規模企業支援
この章で覚えておきたいこと
- 小規模企業者 は、小規模企業振興基本法では中小企業基本法上の小規模企業者を指し、さらに 小企業者 はおおむね常時使用する従業員数 5人以下 です。
- 小規模事業者持続化補助金 の対象判定では、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は 5人以下、宿泊業・娯楽業と製造業その他は 20人以下 です。
- 小規模企業振興基本法 は、個別制度の要件を並べる法律ではなく、事業の持続的な発展 を軸に小規模企業政策の方向を定める基本法です。
- 商工会・商工会議所による伴走支援は、小規模事業者支援法 の 経営発達支援計画 と 経済産業大臣の認定 で整理します。
- 小規模事業者持続化補助金 は、経営計画 に基づく 販路開拓等 を支援する補助金です。一般型の基本数字は 補助率3分の2、補助上限50万円 です。
- 持続化補助金の共同申請は、過去問で狙われやすい数字として 最大10者、50万円×事業者数 を先に固定します。
- マル経融資 は、商工会・商工会議所等の経営指導と推薦を前提に、日本政策金融公庫が 無担保・無保証人 で貸し付ける融資です。
- マル経融資は、原則6か月以上 の経営指導、地区内で 1年以上 の事業継続、限度額 2,000万円、設備資金 10年以内、運転資金 7年以内 が頻出です。
- 小規模企業共済 は、従業員向けではなく、経営者向けの退職金制度 です。掛金は 全額所得控除、貸付けは 掛金の範囲内 で受けられます。
基本知識
小規模企業者と小規模事業者の判定
この分野では、最初に「誰が対象か」を切り分ける必要があります。ここで曖昧だと、持続化補助金もマル経融資も判断できません。
まず、小規模企業振興基本法は、小規模企業者と小企業者を次のように置いています。
第二条 この法律において「小規模企業者」とは、中小企業基本法第二条第五項に規定する小規模企業者をいう。
2 この法律において「小企業者」とは、おおむね常時使用する従業員の数が五人以下の事業者をいう。
試験では、ここからさらに制度ごとの対象定義へ落とし込みます。持続化補助金の対象者は、公式案内で次のように示されています。
対象者 小規模事業者(商業・サービス業は5人以下、製造業その他は20人以下)
申請要件 商工会または商工会議所の伴走支援を受けていること
- 商業・サービス業は 5人以下 です。
- それ以外の業種は 20人以下 が基本です。
一方、持続化補助金のような個別制度では、小規模事業者 の基準で出題されます。過去問では次の整理で対応します。
- 卸売業、小売業、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は 5人以下 です。
- 宿泊業・娯楽業は 20人以下 です。
- 製造業その他は 20人以下 です。
2022年度第22問では、この人数基準そのものが問われました。個人事業主か法人かよりも、まず 業種 と 常時使用する従業員数 を見ます。
小規模企業振興基本法の位置づけ
小規模企業振興基本法は、小規模企業の振興に関する基本理念、国や地方公共団体の責務、施策の基本方向を定める法律です。試験対策上は、基本法 であることを押さえるのが重要です。
基本原則と基本方針は、そのまま覚える価値があります。
第三条 小規模企業の振興は、人口構造の変化、国際化及び情報化の進展等の経済社会情勢の変化に伴い、国内の需要が多様化し、若しくは減少し、雇用や就業の形態が多様化し、又は地域の産業構造が変化する中で、顧客との信頼関係に基づく国内外の需要の開拓、創業等を通じた個人の能力の発揮又は自立的で個性豊かな地域社会の形成において小規模企業の活力が最大限に発揮されることの必要性が増大していることに鑑み、個人事業者をはじめ自己の知識及び技能を活用して多様な事業を創出する小企業者が多数を占める我が国の小規模企業について、多様な主体との連携及び協働を推進することによりその事業の持続的な発展が図られることを旨として、行われなければならない。
第六条 政府は、次に掲げる基本方針に基づき、小規模企業の振興に関する施策を講ずるものとする。
一 国内外の多様な需要に応じた商品の販売又は役務の提供の促進及び新たな事業の展開の促進を図ること。
二 小規模企業の経営資源の有効な活用並びに小規模企業に必要な人材の育成及び確保を図ること。
三 地域経済の活性化並びに地域住民の生活の向上及び交流の促進に資する小規模企業の事業活動の推進を図ること。
四 小規模企業への適切な支援を実施するための支援体制の整備その他必要な措置を図ること。
この法律で直接覚えるべきポイントは次のとおりです。
- 小規模企業の 持続的な発展 を後押しするという考え方です。
- 地域経済や雇用を支える存在として小規模企業を位置づけます。
- 個別の補助率、貸付限度額、返済期間のような実施条件を定める法律ではありません。
したがって、商工会・商工会議所が計画を作り、認定を受け、伴走型支援を行うという実施枠組みは、次に見る小規模事業者支援法の論点として整理します。
小規模事業者支援法と経営発達支援計画
2023年度第1回第23問では、この論点がそのまま出ています。小規模企業関連の法律名は似ていますが、役割で切り分けると整理しやすいです。
法律上の根拠は次のとおりです。
第二条 この法律において「小規模事業者」とは、商工会法(昭和三十五年法律第八十九号)第二条に規定する商工業者で、常時使用する従業員の数が次の各号に掲げる区分に応じ当該各号に定める数以下のものをいう。
一 製造業その他の業種(次号に掲げる業種及び第三号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの 二十人
二 商業又はサービス業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの 五人
三 政令で定める業種に属する事業を主たる事業として営むもの 当該業種ごとに政令で定める数
第七条 商工会又は商工会議所は、関係市町村と共同して、小規模事業者を支援する次に掲げる事業であって、小規模事業者の技術の向上、新たな事業の分野の開拓その他の小規模事業者の経営の発達に特に資するもの(以下「経営発達支援事業」という。)についての計画(以下「経営発達支援計画」という。)を作成し、経済産業省令で定めるところにより、これを経済産業大臣に提出して、その経営発達支援計画が適当である旨の認定を受けることができる。
一 小規模事業者の経営資源の内容、財務内容その他経営の状況の分析
二 小規模事業者が単独で又は共同して行う事業計画の策定に係る指導及び助言並びに当該計画に従って行われる事業の実施に関し必要な指導及び助言
三 小規模事業者が販売する商品又は提供する役務の需要の動向及び地域の経済動向に関する情報の収集、整理、分析及び提供
四 小規模事業者が販売する商品又は提供する役務に関する広報、商談会、展示会、即売会その他これらに類するものの開催その他小規模事業者が販売する商品又は提供する役務の需要の開拓に寄与する事業
押さえるべき組み合わせは次の1本です。
- 商工会・商工会議所
- 経営発達支援計画
- 関係市町村と共同作成
- 経済産業大臣が認定
この流れを外さなければ、選択肢をかなり切れます。
特に注意したいのは、次の取り違えです。
- 小規模企業振興基本法 は基本理念の法律です。
- 小規模事業者支援法 は、商工会・商工会議所による支援の実施枠組みを定める法律です。
- 経営発達支援計画 は、商工会・商工会議所が 関係市町村と共同して作る計画 です。
- 経営革新計画 は、個別企業の承認制度であり、同じ計画ではありません。
- 認定主体は 都道府県知事ではなく経済産業大臣 です。
2023年度第1回第23問のように、法律名、計画名、認定主体を空欄補充でまとめて問う出題は今後も対応できるようにしておきたいところです。
小規模事業者持続化補助金の目的と対象
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者等が 経営計画を作成し、その計画に沿って行う販路開拓等 を支援する補助金です。
公式案内では、制度趣旨が次のように示されています。
「小規模事業者持続化補助金」は、小規模事業者が販路開拓や生産性向上を目的として行う取り組みを支援する補助金制度です。
目的 販路開拓・業務効率化を支援
対象事業 販路開拓のためのチラシ作成、ECサイト構築、展示会出展、設備導入 等
ここでまず区別したいのは、次の2点です。
- 補助金 であり、融資ではありません。
- 市区町村の認定を受けた事業計画 の制度ではなく、自ら作成する 経営計画 に基づく制度です。
2023年度第1回第25問設問1は、この違いを正面から問いました。試験では「認定を受ける制度」「補助率2分の1」というもっともらしい誤答肢が出やすいので注意が必要です。
対象となる取組の理解としては、次の表現で十分です。
- 販路開拓の取組を支援します。
- それとあわせて行う業務効率化も対象になります。
- チラシ、ウェブサイト、展示会出展など、売上拡大につながる施策をイメージすると整理しやすいです。
持続化補助金で問われる数字
持続化補助金は制度趣旨よりも、数字 と 条件 の組み合わせで出題されやすい分野です。過去問ベースでまず覚えるべき数字は次のとおりです。
公式案内の現行通常枠は次の数字です。
補助上限額 上限50万円(特定条件で上限250万円)
補助率 2/3
共同申請の頻出数字は、過去の公式公募資料で次のように示されています。
また、補助上限額は「1事業者あたりの補助上限額(50万円)×連携小規模事業者等の数」の金額となります(ただし、500万円を上限とします)。
※各事業者の補助金交付申請額は、補助対象経費小計額の3分の2以内です。
- 一般型の 補助率は3分の2 です。
- 一般型の 補助上限は50万円 です。
- 共同申請は 最大10者 として押さえます。
- 共同申請の補助上限は 50万円×事業者数 です。
2023年度第1回第25問設問2では、まさにこの共同申請の数字が問われました。ひっかけはほぼ決まっています。
- 5者か10者か
- 50万円か100万円か
この2本です。迷ったら、「共同申請は最大10者、1事業者あたり50万円」と機械的に当てはめます。
なお、共同申請の制度設計は公募回で変動があります。試験対策では 補助率3分の2、50万円、最大10者 を先に暗記し、実務では最新公募要領を確認する切り分けで対応します。
マル経融資の仕組み
マル経融資は、小規模事業者経営改善資金融資制度 の通称です。2024年度第18問、2023年度第1回第26問で連続して出題されており、直近では最重要論点です。
日本政策金融公庫の制度概要は次のとおりです。
ご利用いただける方
商工会、商工会議所又は都道府県商工会連合会の実施する経営指導を受けている小規模事業者(商工業者に限る。)であって、商工会、商工会議所等の長の推薦を受けたもの融資限度額
2,000万円ご返済期間
10年以内(うち据置期間2年以内)担保・保証人
無担保・無保証人(保証協会の保証も不要)
制度の骨格は次のとおりです。
- 商工会・商工会議所等が、経営指導と推薦を行います。
- 日本政策金融公庫が、実際に融資を行います。
- 無担保・無保証人 で利用できる制度です。
- 無利息 ではありません。ここは誤答肢で入れ替えられやすいです。
また、対象資金もよく問われます。
- 運転資金 が対象です。
- 設備資金 も対象です。
2023年度第1回第26問設問1では、「補助金の説明に見える選択肢」や「担保付き・無利息という誤った説明」を切れるかが問われました。制度名を見た瞬間に、補助金ではなく融資 と判断できる状態にしておくことが重要です。
マル経融資の要件と数字
マル経融資は数字問題として非常に出しやすく、実際に直近の出題もそこに集中しています。過去問で優先して覚えるべき内容は次のとおりです。
要件は、日本政策金融公庫の説明でそのまま確認できます。
②指導要件
原則6カ月以上、商工会、商工会議所等の経営改善普及事業に基づく経営指導を受けている者であること③居住要件
最近1年以上、商工会、商工会議所等の地区内で事業を行っていること
また、返済期間は日本商工会議所の案内で区分して確認できます。
融資限度額 2,000万円
運転資金 7年以内(据置期間1年以内)
設備資金 10年以内(据置期間2年以内)
出典: 日本商工会議所 マル経融資
- 商工会・商工会議所の経営指導を 原則6か月以上 受けていること
- 同一の商工会等の地区内で 1年以上事業を行っていること
- 通常枠の融資限度額は 2,000万円
- 設備資金の返済期間は 10年以内
- 設備資金の据置期間は 2年以内
- 運転資金の返済期間は 7年以内
- 運転資金の据置期間は 1年以内
- 申込先は、推薦を行う 地区の商工会・商工会議所等 です。
2024年度第18問では、さらに次の点まで踏み込んで出題されました。
- 1,500万円超 の貸付には追加要件があります。
- 貸付前に事業計画を作成します。
- 貸付後は、残高が1,500万円以下になるまで、経営指導員による実地訪問を半年ごとに受けます。
この追加要件は細かいですが、直近論点なので一度は見ておくべきです。ただし、まずは 6か月、1年、2,000万円、10年、7年 を確実に固定する方が優先です。
小規模企業共済の基本
このトピックの中心は持続化補助金とマル経融資ですが、2023年度第1回第21問では 小規模企業共済 も出ています。出題実績がある以上、最低限は押さえておく必要があります。
制度の概要は、中小機構が次のように示しています。
国の機関である中小機構が運営する小規模企業共済制度は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための、積み立てによる退職金制度です。
月々の掛金は1,000~70,000円まで500円単位で自由に設定が可能で、加入後も増額・減額できます。確定申告の際は、その全額を課税対象所得から控除できるため、高い節税効果があります。
共済金の受け取り方は「一括」「分割」「一括と分割の併用」が可能です。
契約者の方は、掛金の範囲内で事業資金の貸付制度をご利用いただけます。
小規模企業共済は、次のように整理します。
- 小規模企業の 経営者や個人事業主 のための制度です。
- 従業員向けの退職金制度ではありません。
- 廃業や退職後の生活、事業再建に備える 経営者向けの退職金制度 です。
- 掛金は 全額所得控除 です。
- 共済金は 一括、分割、一括と分割の併用 で受け取れます。
- 貸付けは 納付した掛金合計額の範囲内 で受けられます。
試験では、従業員向け退職金共済の助成制度と混ぜた誤答肢が作られやすいです。制度の対象者が 経営者 なのか 従業員 なのかを先に確認すると、かなり判断しやすくなります。
この章のまとめ
- 制度名を見て、基本法、補助金、融資、共済 のどれかを最初に決めます。
- 対象者判定では、法人か個人事業主かより先に、業種 と 常時使用する従業員数 を確認します。
- 商工会・商工会議所が出てきたら、経営発達支援計画 と 国の認定 を連想します。
- 持続化補助金では、経営計画、販路開拓等、補助率3分の2、補助上限50万円、共同申請最大10者 を順に確認します。
- マル経融資では、経営指導6か月、地区内で1年以上、限度額2,000万円、設備10年、運転7年 をそのまま当てはめます。
- 小規模企業共済では、経営者向け、掛金全額所得控除、掛金合計額の範囲内で貸付け を押さえます。
- 6か月と1年 は、どちらもマル経融資ですが、前者は経営指導期間、後者は地区内での事業継続期間です。
- 小規模企業振興基本法 と 小規模事業者支援法 は別です。前者は基本理念、後者は支援実施の枠組みです。
- 経営発達支援計画 と 経営革新計画 は別です。前者は商工会・商工会議所、後者は個別企業の制度です。
- 持続化補助金 と マル経融資 は、どちらも小規模事業者向けですが、前者は補助金、後者は融資です。
- 小規模企業共済 は経営者向けであり、従業員向け退職金制度とは目的も助成の仕組みも異なります。
一次試験過去問での出方
- 2024年度第18問設問1・2では、マル経融資の通常枠が連続で問われました。経営指導6か月、地区内で1年以上、限度額2,000万円、設備10年、運転7年、申込先は商工会という数字と主体の整理がそのまま得点になります。
- 2023年度第1回第25問設問1・2では、持続化補助金が出題されました。経営計画に基づく販路開拓等の支援、補助率3分の2、共同申請最大10者、補助上限50万円×事業者数が問われています。
- 2023年度第1回第26問設問1・2では、マル経融資が再度出題されました。補助金との違い、設備資金も対象であること、対象要件の数字が確認されています。
- 2023年度第1回第21問設問1・2では、小規模企業共済が出題されました。経営者向け制度であること、掛金合計額の範囲内で貸付けを受けられること、受取方法、掛金の全額所得控除が論点です。
- 2022年度第22問では、持続化補助金の対象者判定が単独で問われました。卸売業・小売業・サービス業・製造業の従業員数基準を、そのまま使える状態にしておく必要があります。
- 少しさかのぼると、2021年度第23問では小規模事業者支援法と経営発達支援計画、2021年度第25問では持続化補助金、2021年度第26問ではマル経融資が出題されています。このトピックは制度をまたいで繰り返し問われるため、単発暗記ではなく横断整理が重要です。