中小企業経営・中小企業政策
最優先中小企業基本法(定義、理念、政策方針)
中小企業者・小規模企業者の範囲、業種区分、基本理念、基本方針の条文を最優先で扱う。
中小企業基本法
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この章で覚えておきたいこと
- この論点は、暗記して取りにいく論点 です。長く考えず、数字と条文語句をそのまま出せる状態を目指します。
- 中小企業者は、資本金又は従業員数 で判定します。どちらか一方が基準内なら該当します。
- 小規模企業者は、従業員数だけ で判定します。資本金は見ません。
- 中小企業者の数字は、3億300人、1億100人、5,000万50人、5,000万100人 の4本で覚えます。
- 小規模企業者の数字は、20人と5人 の2本だけです。製造業その他が20人、商業・サービス業が5人です。
- 定義問題は、業種区分を先に決める のがコツです。飲食店は小売業、旅館と駐車場業はサービス業、運送業と建設業と農業法人は製造業その他で見ます。
- 条文穴埋めは、我が国の経済の基盤、経営基盤の強化、自己資本の充実、経営資源、経営の発達及び改善、適正化、福祉 が最頻出です。
- 迷ったら、定義の数字 と 条文の原文 に戻ります。意味が近い言い換えを選ぶと失点しやすいです。
基本知識
中小企業基本法は何を定める法律か
中小企業基本法は、中小企業施策の土台を定める法律です。試験では、補助金や融資の細かい制度より前に、まずこの法律で 誰が対象か、どの方向で政策を進めるか が問われます。
この法律は、中小企業に関する施策について、その基本理念、基本方針その他の基本となる事項を定めるとともに、国及び地方公共団体の責務等を明らかにすることにより、中小企業に関する施策を総合的に推進し、もつて国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。
出典: e-Gov 法令検索 中小企業基本法 第1条 https://elaws.jp/view/338AC0000000154
ここで最初に押さえるのは次の2点です。
- この法律は、個別制度の手続を覚える章ではなく、定義・理念・基本方針 を覚える章です。
- 出題の中心は、中小企業者の定義、小規模企業者の定義、基本理念、基本方針 です。
したがって、この章は理解を広げるよりも、先に 空欄を埋められる語句 を固めたほうが得点につながります。
中小企業者の定義は「資本金又は従業員数」で判定する
中小企業者の定義で最重要なのは、資本金又は従業員数 です。ここは毎年のように狙われます。又は なので、両方を満たす必要はありません。
この法律において「中小企業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者であつて、大企業者以外のものをいう。
一 資本金の額又は出資の総額が三億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であつて、製造業、建設業、運輸業その他の業種(次号から第四号までに掲げる業種及び第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
二 資本金の額又は出資の総額が一億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であつて、卸売業に属する事業を主たる事業として営むもの
三 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であつて、サービス業に属する事業を主たる事業として営むもの
四 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が五十人以下の会社及び個人であつて、小売業に属する事業を主たる事業として営むもの出典: e-Gov 法令検索 中小企業基本法 第2条第1項 https://elaws.jp/view/338AC0000000154
業種別基準は次の4本です。
- 製造業その他: 資本金3億円以下、又は従業員300人以下
- 卸売業: 資本金1億円以下、又は従業員100人以下
- 小売業: 資本金5,000万円以下、又は従業員50人以下
- サービス業: 資本金5,000万円以下、又は従業員100人以下
暗記するときは、文章で追うよりも次の並びで固めると速いです。
- 製造業その他は 3億円・300人
- 卸売業は 1億円・100人
- 小売業は 5,000万円・50人
- サービス業は 5,000万円・100人
2024年度や2025年度のように、数字だけでなく業種名を入れ替えて迷わせる問題が出ます。数字だけでなく、どの数字がどの業種か まで一体で覚える必要があります。
小規模企業者の定義は「従業員数だけ」で判定する
小規模企業者は、従業員数だけ で見ます。ここで資本金を書いてあっても、基本的にはひっかけです。
この法律において「小規模企業者」とは、おおむね常時使用する従業員の数が二十人(商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営む者については、五人)以下の事業者をいう。
出典: e-Gov 法令検索 中小企業基本法 第2条第5項 https://elaws.jp/view/338AC0000000154
- 製造業その他: 20人以下
- 商業又はサービス業: 5人以下
この論点の覚え方は単純です。
- 中小企業者は 資本金又は従業員数
- 小規模企業者は 従業員数だけ
さらに、2023年度第2回や2024年度で出たように、商業・サービス業の 5人基準 と、その他の 20人基準 を瞬時に分けられることが必要です。特に、卸売業も小売業も商業なので 5人以下 です。
まず業種区分を決める
定義問題の解き方はいつも同じです。業種区分を決める → 基準を当てる の順で見ます。これを逆にすると、数字を覚えていても外します。
頻出のひっかけは次のとおりです。
- 飲食店: 小売業です。
- パン製造小売業、飲食料品の無店舗小売業: 「製造」や「無店舗」に引っ張られず、小売業です。
- 旅館、宿泊業、駐車場業: サービス業です。
- 貨物軽自動車運送業、一般貨物自動車運送業: 製造業その他です。
- 建設業、造園工事業: 製造業その他です。
- 農業法人、養豚業を営む会社: 製造業その他です。
ここは、最近の過去問でもそのまま出ています。2023年度第2回では養豚業や駐車場業、2024年度では旅館業、運送業、造園工事業、2025年度では小売業の数字が狙われました。業種名を見た瞬間に区分が出るか が勝負です。
基本理念では中小企業を「我が国の経済の基盤」と見る
基本理念は、意味をふんわり理解するだけでは足りません。空欄補充では 条文の語句そのもの が必要です。まずは基本理念の全文を、そのまま確認します。
中小企業については、多様な事業の分野において特色ある事業活動を行い、多様な就業の機会を提供し、個人がその能力を発揮しつつ事業を行う機会を提供することにより我が国の経済の基盤を形成しているものであり、特に、多数の中小企業者が創意工夫を生かして経営の向上を図るための事業活動を行うことを通じて、新たな産業を創出し、就業の機会を増大させ、市場における競争を促進し、地域における経済の活性化を促進する等我が国経済の活力の維持及び強化に果たすべき重要な使命を有するものであることにかんがみ、独立した中小企業者の自主的な努力が助長されることを旨とし、その経営の革新及び創業が促進され、その経営基盤が強化され、並びに経済的社会的環境の変化への適応が円滑化されることにより、その多様で活力ある成長発展が図られなければならない。
出典: e-Gov 法令検索 中小企業基本法 第3条 https://elaws.jp/view/338AC0000000154
この引用のうち、空欄補充や正誤判定で特に狙われやすいのは次の語句です。この語句は必ず覚えます。
- 特色ある事業活動
- 我が国の経済の基盤
- 独立した中小企業者の自主的な努力
- 経営の革新及び創業
- 経営基盤
- 経済的社会的環境の変化への適応
このあたりは、選択肢に意味の近い一般語を混ぜて崩してきます。しかし、試験は作文ではないので、近い意味 ではなく 条文どおりか で切るのが正解です。
基本方針は4本柱で整理する
第5条の基本方針も、まずは条文全文をそのまま確認します。
政府は、次に掲げる基本方針に基づき、中小企業に関する施策を講ずるものとする。
一 中小企業者の経営の革新及び創業の促進並びに創造的な事業活動の促進を図ること。
二 中小企業の経営資源の確保の円滑化を図ること、中小企業に関する取引の適正化を図ること等により、中小企業の経営基盤の強化を図ること。
三 経済的社会的環境の変化に即応し、中小企業の経営の安定を図ること、事業の転換の円滑化を図ること等により、その変化への適応の円滑化を図ること。
四 中小企業に対する資金の供給の円滑化及び中小企業の自己資本の充実を図ること。出典: e-Gov 法令検索 中小企業基本法 第5条 https://elaws.jp/view/338AC0000000154
この引用のうち、空欄補充や正誤判定で特に狙われやすいのは次の語句です。この語句は必ず覚えます。
- 経営の革新及び創業の促進
- 経営基盤の強化
- 適応の円滑化
- 資金の供給の円滑化
- 自己資本の充実
2023年度第2回と2024年度では、この4本柱の条文がほぼそのまま空欄で出ました。よくある誤答は次の2つです。
- 経営基盤の強化 を、似ている 経営管理の合理化 に置き換えてしまうこと
- 自己資本の充実 を、別の施策表現に置き換えてしまうこと
したがって、ここは要約で覚えず、強化 と 充実 まで含めて音で覚えるほうが確実です。
小規模企業への配慮は条文用語で覚える
近年は、小規模企業への配慮もよく出ます。ここも要旨ではなく、穴埋めされる語句 を先に覚えます。
国は、次に掲げる方針に従い、小規模企業者に対して中小企業に関する施策を講ずるものとする。
三 経営資源の確保が特に困難であることが多い小規模企業者の事情を踏まえ、小規模企業の経営の発達及び改善に努めるとともに、金融、税制、情報の提供その他の事項について、小規模企業の経営の状況に応じ、必要な考慮を払うこと。出典: e-Gov 法令検索 中小企業基本法 第8条第3号 https://elaws.jp/view/338AC0000000154
- 経営資源 の確保が特に困難
- 経営の発達及び改善
- 金融、税制、情報提供その他の事項について 必要な考慮
2025年度では、この部分がそのまま問われました。意味が近い語にすると外れます。たとえば、経営資源 を「人材や資金のことだな」と理解するのは大事ですが、問題で埋めるときは 経営資源 とそのまま出せなければ得点になりません。
労働に関する施策も穴埋めで出る
労働施策は出題数こそ多くありませんが、出るときはそのまま空欄です。2025年度ではここが直球で出ました。
国は、中小企業における労働関係の適正化及び従業員の福祉の向上を図るため必要な施策を講ずるとともに、中小企業に必要な労働力の確保を図るため、職業能力の開発及び職業紹介の事業の充実その他の必要な施策を講ずるものとする。
出典: e-Gov 法令検索 中小企業基本法 第21条 https://elaws.jp/view/338AC0000000154
最優先語句は次の4つです。
- 労働関係の適正化
- 従業員の福祉の向上
- 中小企業に必要な労働力の確保
- 職業能力の開発
ここでのひっかけは、適正化 を別の一般語に変えること、福祉 を 生活 のような言葉に変えることです。条文で覚えていれば切れます。
他制度の定義と混同しない
最後に、基本法の定義と他制度の定義を混同しないことも重要です。
- 中小企業者 と 小規模企業者 は別です。
- 中小企業基本法の定義 と、税制や補助金で使う定義は一致しないことがあります。
- 小規模企業者 と、個別制度で使う 小規模事業者 も同じとは限りません。
本試験では、ここを深く聞くよりも、まず 基本法の定義を正しく言えるか が先です。受験生としては、最初に基本法を固定し、そのあと個別施策で必要な差分だけ上書きするのが最短です。
この章のまとめ
- 中小企業者は 資本金又は従業員数、小規模企業者は 従業員数だけ です。
- 中小企業者の数字は、3億300人、1億100人、5,000万50人、5,000万100人 の4本で覚えます。
- 小規模企業者の数字は、製造業その他20人、商業・サービス業5人 です。
- 定義問題は、業種区分を先に決める と安定します。
- 飲食店は小売業、旅館と駐車場業はサービス業、運送業と建設業と農業法人は製造業その他、を即答できるようにします。
- 基本理念は 我が国の経済の基盤、基本方針は 経営基盤の強化 と 自己資本の充実 を含む4本柱で押さえます。
- 小規模企業への配慮は 経営資源、経営の発達及び改善、労働施策は 適正化、福祉 が頻出です。
- この章は、意味の近い言い換えで覚えるより、条文の原文を短く反復して覚える ほうが得点につながります。
一次試験過去問での出方
定義問題は2007年度以降ほぼ反復され、近年でも2023年度第2回で中小企業者の範囲、小規模企業者の範囲、基本方針が3連続で出ました。2024年度は中小企業者の範囲、小規模企業者の範囲、基本方針の空欄補充、2025年度は小規模企業配慮、小売業の数値基準、労働施策の条文語句が出ています。
つまり、実際の本試験では 定義の数字、業種区分、第5条の条文語句 がそのまま得点源です。時間がない受験生ほど、この章は「読んで理解する章」ではなく、「数字と語句を先に固定する章」として処理すると効率が上がります。